徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

METライブビューイングでヴェルディの「ナブッコ」鑑賞後、堺のミュシャ館を訪問

朝食は近くの人気の喫茶店へ

 翌日は7時半頃に目覚ましで目が覚める。昨晩はややうるさい部屋なんかもあったが、そこは安宿に宿泊する時に不可欠な「適度な無神経」スキル(さらに老化に伴う聴力低下もある)とこの宿の標準装備である耳栓で切り抜けて概ね爆睡している。

 爆睡が効いたのか眠気はほぼなくなり、体もやや軽い。年中体調不良の私としては比較的良い体調と言えるだろう。こういう時は朝食のために近くの喫茶に繰り出すことにする。

 立ち寄ったのは「カフェ・ド・イズミ」。実は前回立ち寄ろうとして満席で入店できなかった店である。この店は数年前にも訪問しているのだが、その後どうしたわけかGoogleマップでの評価が異常に跳ね上がって、いかにもの観光客が殺到するようになった模様。

カフェ・ド・イズミ

 私は開店の数分前を目指して出向いたが、既にいかにもの待ち客の姿も。とりあえず開店同時に入店するが数分で満席になる。

 

 

 老夫婦で切り盛りしている店のようだが、ドリンクメニューもパンメニューも豊富なのでまあそれなりに人気も出るのは分からないでもないが、Googleマップでの評価はやや過剰な気もする。以前からあれは、評価が上がりだしたらそれに迎合する評価が増えて、結果として評価が極端になる傾向はある。

塩チキンサンドとマイルドコーヒー

サンドは十分なボリューム

 私が注文したのは「塩チキンサンドとマイルドコーヒーのセット」。コーヒーはサッパリしていてミルクなどは置いていないにもかかわらず、私でも砂糖を加えただけで普通に飲めるもの。私には最適だが、もっと本格的なコーヒーにこだわる客はブレンドなど他のコーヒーを注文した方が良いだろう。なおチキンサンドは味もボリュームも十分。これで530円なんだから、まあ評価が上がるのは分かるが、この界隈で傑出しているかといえば微妙だろう。にわか客が急増したせいで、昔からの常連客が立ち寄りにくくなっている雰囲気があるようで、その辺りはネット時代特有の弊害もあり。とは言うものの、立場的には私もそういうミーハーと同じようなものなので、あまり偉そうに言えたもんでもないが。

 朝食を終えるとホテルに戻ってしばしマッタリする。今日はMETのライブビューイングに行く予定だが、それが11時から。まだ時間が半端である。結局は10時頃まで時間をつぶしてからチェックアウトする。

 METライブビューイングは大阪ステーションシティシネマで。シアターに入場すると観客はかなり多い。ザッと見ただけで50人以上はいる。この劇場は元々キノシネマ神戸国際なんかよりは客が多いのは確かだが、これだけの入りは滅多に見たことはない。やはりヴェルディの作品と言うことで人気があるんだろうか。それに「ナブッコ」は私が知っているここ数年では上映されていない作品のはずだ。

 

 

METライブビューイング ヴェルディ「ナブッコ」

指揮:ダニエレ・カッレガーリ
演出:エライジャ・モシンスキー
出演:ジョージ・ギャグニッザ、リュドミラ・モナスティルスカ、マリア・バラコーワ、ソクジョン・ベク、ディミトリ・ベロセルスキー

 ヒット作が出ない上に妻子を亡くし、もうオペラの作曲は辞めようかと考えるところまで追い込まれていたヴェルディの起死回生の初ヒット作が本作であるという。ヴェルディのオペラの初期傑作として挙げられる作品である。

 聖書のエピソードとのことで、どうしてもキリスト教の宣伝色があるので、全ての宗教を否定する立場の私から見たらシナリオ的には所々白ける部分はある。もっとも流石に音楽は立派である。合唱曲が多く歌唱の美しさが際立つ作品であり、後のヴェルディの作風が既に確立している。

 内容はエルサレムを占領したバビロニアの王ナブッコが、神を否定して自らが神と名乗ったことで神の怒りに触れて雷に打たれて錯乱、野心家の娘に王座を奪われるが、正気に戻ってヘブライの神を信じることを決意し(要はキリスト教に転向したわけだが)、再び王座へと返り咲くという話。神の怒りに触れたとか言うのは、要はいかにも血圧高そうなナブッコが脳卒中でも発症したのではとか、キリスト教に転向するのはそのことでキリスト教の神に恐れをなしたか、もしくはバビロニアの神官が娘を担いでクーデターを起こすところまで力を持っていたのでそれを削ごうという考えか、もしくはヘブライ人を支配するにはその方が都合が良いと考えたか辺りではなんていう無粋なツッコミをしたくなるところではある。

 一応は主人公はナブッコであるが、それに負けず劣らずで存在感があるのが、父を排除してクーデターを起こす娘のアビガイッレである。他は主要人物としてはナブッコのもう一人の娘のフェネーナと、彼女と恋に落ちて結果としてはヘブライ人を裏切ったような形になってしまうヘブライの王子のイズマエーレがいる。ヴェルディの後の作品なら、この2人をメインに取り上げた大恋愛悲劇ものなんかになるところだろうが、本作ではこの2人の存在はかなり小さく、先の2人がメインである。

 それだけにナブッコとアビガイッレの歌唱と演技で全てが決まる作品でもある。またこの両者とも非常に感情の振幅が大きいキャラクターなので、それを違和感なく演じきれる演技力と、それを支える歌唱力が重要となる。

 その点ではナブッコのジョージ・ギャグニッザは、この堂々たる転向者を見事に演じきったし、アビガイッレのリュドミラ・モナスティルスカは怪演と言って良い存在感であった。結局はこの両者の好演に引っ張られて、作品全体が非常に締まりのある見所の多い大スペクタクルとなっていた。

 

 

堺市のアルフォンス・ミュシャ館に立ち寄ることにする

 まずまず面白い歴史スペクタクルだったという印象。さてこれで本来の今日の予定は終了なんだが、まだ14時過ぎと早めの時間であることから、帰る前に昨日寝過ごしたせいで消化出来なかった予定の方を実行することにする。それは堺アルフォンス・ミュシャ館の訪問である。動線を考えると昨日に立ち寄った方が効率的であったのだがそこは仕方のないところ。とりあえず阪和線で堺市駅を目指す。

堺市駅にはアルフォンス・ミュシャ館の案内と、
ミュシャ風肖像画が似合いそうな中条あやみ嬢が

 堺市駅までは関空快速で30分ぐらい。堺市駅を降りるとアルフォンス・ミュシャ館の案内が出ているが、その前に遅めの昼食を先に摂ることにする。

 立ち寄ったのは堺市駅東口前の「VIDYA CAFE」。カフェではあるが15時までランチメニューがある。私が店に駆け込んだのそのギリギリ。「トンカツのランチ」を注文し、アイスコーヒーを追加する。

堺市駅東口のカフェ「VIDYA CAFE」

 

 

 ランチのご飯と豚汁はセルフサービスでお代わり自由とのこと。ランチ時間に制限があるのはこのためのようである。トンカツはまずまず。ただ計算違いは昨日に串カツを食べたせいで、連日の脂ものはいささか身体にキツさを感じたこと。どうも私の胃腸もかなり老化してきたようだ。

トンカツはまずまず

 食後にはアイスコーヒーを頂く。このコーヒーについては私の好みよりはいささか苦味が強い。

アイスコーヒーはやや苦め

 昼食を終えるとアルフォンス・ミュシャ館へ。これは堺市駅の西側に陸橋でつながっている。

アルフォンス・ミュシャ館は駅の西側

 

 

「ミュシャとパリの画塾」堺アルフォンス・ミュシャ館で3/31まで

アルフォンス・ミュシャ館

 20世紀初頭のパリ。ミュシャはそこでアカデミズムの巨匠の元で画を学ぶ。そしてその後に画家として活躍をするようになる。そして一時代をなしたミュシャは自ら画塾を開き若き画家たちを指導するようになる。そこには渡欧した日本人画家たちも存在した。そのようなミュシャが受けた教育とミュシャが行った教育について紹介する展覧会。

 観点がなかなか面白い。ミュシャは最初は歴史画家を目指してその分野の巨匠であるジャン=ポール・ローランスの元で画を学んだという。ただいかにもアカデミズムでガチガチのローランスの絵画はミュシャのイメージとは結びつかない。ミュシャはその後、どういう心境の変化があったのかは不明だが、黒田清輝らも指導を受けたラファエル・コランの画塾で学ぶことになるという。コロンの柔らかい人物画は後のミュシャとのイメージとも重なるところもあり、最終的にはこの時点でミュシャの画風は確立したと推測出来る。

ミュシャの友人の自宅暖炉のマントルピースの装飾のためのウミロフ・ミラー

 その後のコーナーにはミュシャの有名な四つの星のポスターが展示されているが、面白いのはその下絵が展示されていること。それを見るとミュシャがどのような表現にこだわったか(特に描線へのこだわりが強い)が分かる仕掛けになっている。なお北極星だけが完成作品とは左右反転状態なのだが、恐らくこれは完成した四作品を並べた時のバランスの関係で反転させたのではと推測出来る。

 次のコーナーが教師となったミュシャの指導に関する内容だが、まずはミュシャによる指南書である「装飾資料集」などが登場する。これはまさにアール・ヌーヴォーの指南書であり「これを参考にすればあなたもミュシャ調のデザインが出来る」というネタ本でもある。

ミュシャの装飾タイル

 ミュシャの指導は特に描線などに対するこだわりがあったようだが、最初の緻密なスケッチから、簡略化を進めて最終的にはステンドグラス向きの絵画にする過程などは非常に興味深かった。デザイン作家としてミュシャの優れた感性を垣間見れる。

 そしてミュシャの指導や影響を受けた日本人画家たちの作品も登場する。中村不折や鹿子木孟郎らの作品が登場。彼らはミュシャから直接の指導を受けて影響を受けた画家であるという。なおミュシャスタイルは当時は日本でも一世を風靡しており、この頃の「明星」なども展示されている

 

 

 展示のメインは4階の方で、3階はミュシャの有名作品のレプリカ展示。

ミュシャの代表的ポスターのレプリカ展示

 この建物全体がミュシャで装飾されており、エレベーター扉までミュシャという風になかなかに雅な施設である。

エレベータ扉もミュシャ

 ちなみにミュシャ作品に登場する美女達と記念写真を撮れるコーナーまで設定されていたが、さすがにこの美しい世界にあえて醜いものを加える気にもなれず、記念写真は遠慮した。

この美しい世界に醜悪な自身の姿など加える気にはならん

 実はこの美術館は数年前にも訪問しているので、昨日寝過ごした時点でもうパスかとも思ったんだが、あえてやって来ただけの価値はあったように思える。今更ミュシャの新しい作品などはないが、ミュシャという画家の成り立ちが理解出来たようにも思える興味深い内容であった。

 これで今回の遠征の予定は完全終了。JRを乗り継いで帰宅と相成ったのである。なお明日は大阪マラソンとかで大阪市内の交通の混乱は必至とのことであり、全く知らなかったのであるがちょうど好都合な日程だったように思える。

 

 

この遠征の前日の記事

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関西フィルの定期演奏会は高関指揮で力強い演奏

関西フィルの定期演奏会に出かける

 この週末は関西フィルのコンサートのために大阪に繰り出すことにした。明日も予定があるので一泊二日である。

 移動はJRを使用で大阪には昼頃に到着。まずとりあえず荷物を今日宿泊する予定のホテルサンプラザ2ANNEXに置きに行く。JR利用になってからコスト面で私のメインホテルになっているこのホテル、実は午前中からチェックインできるという便利なホテルでもある。

ここのところ利用の増えているホテルサンプラザ2ANNEX

 チェックイン手続きを済ませると部屋に荷物を置いて、身軽になってから直ちに出かける。

例によって部屋はシンプルそのもの

 当初予定ではコンサートの前に一カ所立ち寄るつもりだったが、日頃の疲れが出て予定時刻を過ぎて爆睡してしまっていたせいで出遅れたので、14時開演の公演までに時間がない。仕方ないのでホールに直行する。

 

 

昼食はホール近くで済ませるが

 さて昼食だが、寿司が食いたいと思ったんだが「元祖ぶっちぎり寿司 魚心」は何やらシャッターが降りていて工事中。ついに撤退か? この辺りは詳細不明。仕方ないので「やまがそば」と思ったら、こちらも今日が祭日のせいか休業。いよいよどうしようもなくなってきたので、それならカレーでもと思ったら「上等カレー」待ち客数人の状態。もう既に開場時刻になっていることもあり、仕方ないので隣の「まこと屋」に入店する。

スムーズに入店出来た「まこと屋」に

 注文したのは背脂醬油ラーメン。これに半炒飯をつける。

半炒飯から先に出て来た

 濃いめのスープに細麺を合わせたのがここのラーメン。ラーメンは可もなく不可もなくというところ。炒飯は私の好み。特別に印象に残るラーメンではないが、まあ再度の入店もありというところではある(1110円という支払いにはCP的にイマイチさを感じるが、昨今の相場を考えると実際はこんなものか)。

濃いめのスープに細麺の背脂醤油ラーメン

 昼食を終えるとホールへ。関西フィルの定期にしたら意外に入っているという印象。ザッと見て9割以上は入っているか。ほぼ満席に近い印象がある。

ホールへ

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第343回定期演奏会

ピアノが最初から据えてある

指揮:高関健
ピアノ:奥井紫麻

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調
プロコフィエフ:交響曲第5番変ロ長調

 奥井はほっそりした印象の若手ピアニストだが、明らかにかなりテクニックがあって音色は硬質系。ややガンガンと弾くところがある。今回も高音がかなりカンカンと聞こえるところがあって、小山実稚恵などを連想させるところがある。ただ今回は曲目が「サッカリンの砂糖漬け」ことラフマニノフの2番であるから、一応何とかバランスが取れているというところだろうか。

 オケの方もソリストがかなり「強い」タイプであるためか、ソリストに負けないようにガンガンと演奏していた印象。14型の拡大型関西フィルがかなり力強くもロマンティックな演奏を繰り広げる。

 休憩後の後半はプロコフィエフの「比較的分かりやすい」と言われる交響曲。この作曲家の場合、分かりやすいはやや無骨さにつながるのであるが、その無骨な曲を今回の高関指揮の関西フィルはかなりゴリゴリした演奏で来る。

 このような演奏になると今まで関西フィルは往々にしてパワー不足が目立つことになりがちだったが、今回に関していえばなかなかにパワー溢れる力強い演奏になっていた。その一方で木管陣の美しい演奏など、関西フィルの本来の持ち味も発揮された演奏。この辺りは高関のオケドライブ力の高さもあるのだろう

 なかなかの演奏で場内もまずまずの盛り上がり。力強い関西フィルというのは私にも初体験のような気がする。関西フィルも新境地に目覚めたか?

 

 

夕食を摂りに出向いた新世界は大混雑

 コンサートを終えると新今宮に戻ってくる。とりあえずついでにやや早めの夕食を終えておこうと思う。新世界に繰り出すが異常な混雑でどうにもならない。こりゃ出直すかと思ったところで「だるまじゃんじゃん店」がちょうど待ち客がほとんどいなくなっていたので、ここに入店することにする。

新世界はこの大混雑

だるまに入店(私の出店時にはこの混雑になっていた)

 それにしても串カツもアホノミクスのせいで価格高騰である。串カツ1本130円に価格が上がっているのも驚きだが、キャベツが有料になったのは絶句。とりあえずコーラを頼んでから10本ほど注文してつまむ。恐らくこれ以上食べたら胸が悪くなりそうだと判断したので、それで終わりにしておく。これで支払いが1750円というのは明らかにかなり価格が上がっている。

コーラに串カツこれだけで1750円。高くなったもんだ。

 これだけだと腹が足りないので、隣のうどん屋「松屋」に立ち寄る。

隣にあるうどん屋「松屋」

 ここのうどんは腰のないゆで麺だが、なぜか懐かしい感じのうどんである。客観的に見ると何ら特別なものがないが、それでもなぜか美味い。さらにここはかけうどん170円という今時信じられないCPの良さである。私はきつねうどんを注文したが、それでも230円。

これが230円のきつねうどん

 

 

 とりあえず腹を満たすと、ホテルに戻る前に夜食を購入しておくことにする。さすがに夕食がかなり早めなので夜に空腹になるのが必至と考えてのこと。ローソンに立ち寄るがこれというものがない。結局は少し足を伸ばして庶民の味方激安スーパーの玉出に立ち寄ることに。278円という驚異のハイCP鉄火巻きと菓子や茶を購入してからホテルに戻る。

ホテルの少し西にある玉出

激安鉄火巻きを購入

 ホテルに戻るととりあえずは入浴することにする。疲れがかなり出ているので体をほぐしておく。しかし風呂から戻ってくると一気に疲労が出る。仕事環境は構築したものの、肝心の頭が全く作動しない。結局はしばしベッドの上でゴロゴロすることに。

仕事環境を構築したものの、結局作業は全く出来ず

 結局はそのまま疲れが募るばかりだったので、ゴロゴロしている内に自然にかなり早い時間から就寝してしまうことになる。

 

 

この遠征の翌日の記事

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初訪問を含む阪神間4美術館を回ってから、尾高/大フィルのメンチク完結編は「讃歌」

今日はまず美術館を駆けずり回る

 翌朝は8時に起床したが、体が動かない。しばしそのままボーっとすることに。ようやく気力が少し湧いてきたところでシャワーで体を温める。結局はチェックアウトの11時手前までグダグダ過ごすことに。本当は近くの喫茶に朝食でもと思っていたのだが、そんな気力が全くない。

 ホテルをチェックアウトすると、この日の最初の目的地に向かうことにする。目指すのは逸翁美術館今日は車でないと行きにくい美術館を回る予定。そのために車で来たのである。

 阪神高速を通って池田を目指す。この頃には既に昼前。朝食を摂っていないので腹が寂しい。美術館に行く前に若干早めの昼食を先にすることにする。「かごのや」に立ち寄る。

 注文したのは「上撰牛すき焼定食(1815円)」。普通になかなか美味い。昼からいささか贅沢かと思ったが、今日は朝食とドッキングなので良しとしておこう。

贅沢な昼食

〆はうどんで

 昼食を終えると美術館に向かう。目的とする逸翁美術館は山の手の急斜面の住宅地の中にある。ここに来るのも数年ぶりのように思われる。

 

 

「The コレクター逸翁 ~その収集に理由アリ~」逸翁美術館で3/17まで

住宅地の中の逸翁美術館

 同館の所蔵品は逸翁こと小林一三のコレクションであるが、それらのコレクションには当然ながらすべてその由来があるということで、そのような由来も含めて展示すると言うことのようである。

 展示品は逸翁が美術品収集を始めるきっかけとなった作品など様々であるが、正直なところ小林一三その人に興味のない私にはそんなことはどうでも良いことであるとも言える。

 展示品については書簡なども多かったが、これは私の興味外。後は茶人でもあった逸翁の趣味を反映して茶道具などが多い。器に関しては志野などは私の好み。また面白かったのはセーヴル窯による辰砂の赤が眩しい花瓶。和洋折衷な感覚が興味深い。

 絵画に関しては呉春の絵画が数点展示されておりなかなか面白かったが、池田蕉園・輝方の掛け軸があったのがもっとも興味深かったところ。


 逸翁美術館の見学を終えると、次の美術館へ。ここは私も初訪問の美術館であるアガペ大鶴美術館。西宮の山の中に最近出来たという美術館である。アガペグループが所蔵する美術品を展示するとのことだが、アガペグループはどうやら宗教系の医療法人の模様。現地は隣接して病院なども設置されている。なおアガペがキリスト教系の言葉だと思ったが不明だったんだが、どうやら神の無償の愛の「アガペー」から来ていると推測される。

 現地に到着した途端に、それまでパラパラだった雨が突然に豪雨に転じて車から出るのも躊躇う状況になる。とりあえず入口に近いところに車を止めて駆け込む。私の到着時は電気が切られている状態で、どうやら観客は私だけの貸切状態。撮影禁止の表示があるが「撮影OKです」と言われる。

 

 

アガペ大鶴美術館

出てきたときには雨は止んでいた

 とりあえず4階から見学を始めるが、4階は巨大な象牙細工ばかりである。とにかく作品が精緻なのと大きいのとに驚く。今は象牙の取引が禁止されているから、今後はこの手の作品は出てこないだろうということを考えると貴重か。

象牙細工の塔

細工が圧巻の「牡丹に鳳凰」

親子鷲

 

 

これも圧巻の細工の天女像

象牙彫刻の「ピエタ」

「最後の晩餐」

今となっては貴重な巨大な象牙

 

 

 3階にはいきなり「日本一大きなアメジスト」なる意味不明なものがあるが、基本的には青銅器や兵馬俑など中国絡み。異様にデカい鼎に圧倒される。「鼎の軽重を問う」などと言うが、こんな鼎は問うまでもなく相当重そう。そう言えば力自慢の挙げ句に、鼎を持ち上げようとして押しつぶされて死んだアホな皇帝もいたな・・・。

日本一大きなアメジスト

木彫りのインド象

青銅器の数々

呆れるほど巨大な大克鼎

 

 

象牙細工の万里の長城

翡翠の彫刻

兵馬俑の複製品

紫檀の飾り棚

これはマンモスの牙

 

 

 なおこの階には陶器なんかも展示されており、唐三彩なんかは結構私の好み。

チベット産の壺

唐三彩の馬

景徳鎮 の壺

 

 

 2階にはシャガールのリトグラフが大量に展示されている。

シャガールのリトグラフ「アブラハムとサラ」

「モーセ」

「ソロモン」

 

 

 これ以外にも日本の陶磁器などが展示されてあり、織部とか志野は結構私好み。また唐突に若冲の鶏なんかもあったりして驚く。

織部と志野

織部の大鉢

若冲のニワトリ

これは応挙

 

 

 1階にはまたも象牙細工。象牙の日本丸とか呆れるような展示があるが、圧倒されるのは象牙の姫路城。こんなものどうやって作ったんだ? ただ日本の城なのに、どことなく中国っぽい感覚があるのは何だろうか?

象牙のだんじり

宝船は定番だが巨大すぎる

そして象牙の姫路城

圧倒されるばかり

象牙の日本丸

 

 

 これ以外にもカメラコレクションがあったり、かなりごった煮の印象。

カメラコレクションなどまで

 好事家が適当に集めたコレクションの展示って雰囲気もある。なお現在隣にシャガール館を建設中とのことで、2024年春にオープン予定とか、今回展示されたリトグラフやら他のシャガールコレクションを展示するとか。

奥で新館が建設中

 まあ魑魅魍魎とした感はあったが、意外に楽しめた。どうしてもB級感が漂うが、キッチリ見ていったら意外と楽しめる。

 初めての美術館を楽しんだところで、次の目的地を目指して山を降りる。次は何度も訪問している美術館である。

 

 

「日本画ことはじめ」西宮市立大谷記念美術館で2/18まで

大谷美術館も久しぶりか

 同館が所蔵する日本画のコレクションを展示する展覧会。

 第一章は江戸時代の作品で、狩野派の勝部如春斎や幕末の田能村直入の作品が展示されている。これらはいわゆる日本画というジャンルが確立する以前の、伝統的な日本の絵になる。田能村直入などは独得の力強さがあって面白い。

 第二章以降が明治以降のいわゆる「日本画」というジャンルの画家たちの作品。東京美術学校出身の精鋭、横山大観、菱田春草、橋本雅邦らに川合玉堂にその弟子の児玉希望、京都画壇で有名な上村松園に、その師である鈴木松年、また京都画壇の重鎮の竹内栖鳳、山本春挙ら同門や師弟関係の蒼々たる面々の作品が展示されている。

 第三章は画題に沿っての分類で、伝統的な絵画である福田眉仙、山本春挙、美人画における上村松園、伊東深水、寺島紫明、そして「日本」を描いた横山大観、堂本印象らなどが展示される。

 第四章はそこから突き抜けて新しい表現に挑んだ画家たちとして、フォーヴやキュビズムに影響を受けた山下摩起、装飾的な簡略画法の福田平八郎、紙粘土を使う下村良之介などのかなり独自性の高い面々が登場する。山下摩紀の「女三態之図」などはピカソの「アヴィニョンの娘たち」まんまな印象で面白いところ。なお福田平八郎については、近々中之島美術館で大規模な回顧展が行われる。

 予想以上に秀品が多くて、この美術館ってこんなにすごいコレクション持っていたのかと驚いた。よくよく考えてみると、この美術館を来訪するときは企画展がほとんどで、コレクション展の類いを今まで見た記憶がない。少し舐めていたか。

 

 

 美術館一回りしたところでかなり疲労が溜まってきた。そこでこの美術館内の喫茶コーナーでワッフルのセットを頂いて一服する。

庭園を眺めながらしばし喫茶で一服

 温かいワッフルと冷たいアイスの取り合わせが良い。ただコーヒーは私の感覚からしてもやや薄い感がある。


 さて時間も時間になってきたのでそろそろ大阪に戻るべき頃だが、ホールに直行だとまだ時間がかなりあまりそうである。そこで最後にもう一館だけ立ち寄ることにする。ここも数年ぶりの訪問の気がする。

 

 

「河東碧梧桐と石川九楊―筆蝕の冒険」「牡丹靖佳展 月にのぼり、地にもぐる」市立伊丹ミュージアムで2/25まで

昨年改装した市立伊丹ミュージアム

 異端の俳人である河東碧梧桐の書と彼の俳句を石川九楊が揮毫した「河東碧梧桐一〇九句選」を併せて展示。

 書に関しては完全に興味外である私だが、河東碧梧桐の書はかなり独得というか、まるで図案のようであって目を惹く。そしてそれをさらに追求して拡大したのが石川九楊の作品。ここまで行くともう既に文字ではなくて記号のように見える。中には家の間取り図のようにしか見えないようなものまであり、読もうとすればまるで絵解きである。

 かなりの独自ワールドである。時間が無いためにザッと見ることしか出来なかったのであるが、一句一句じっくり追いかけていけばそれなりに面白そうではある。

 一方の牡丹靖佳の方は現代絵画とのことであるが、展示作は絵本原画が多く、独得の感性を感じさせる作品が多い。静かであるが怪しげで幻想的な世界が展開している。見た目はむしろほのぼのしているのだが、なぜかその後に一種のグロテスクが垣間見えることもあるという印象深さのある作品群である。

 地下展示室には大作「兎月夜」が展示されているが、これがまた鮮やかでインパクトの強い、現実と虚構が入り交じったような独特な世界。なぜかこちらに突き刺さってくるような作品である。

この美術館内にはかつての商家も展示されている

 西宮から伊丹への移動が渋滞などで予想よりも時間がかかってしまい、次の制限時間が迫ってきていてやや駆け足に近い見学になってきたのが計算違いだった。どちらも結構こちらの心に突き刺さってくるような作品が多く、もう少しじっくりと見学する必要があったなとやや反省である。

 

 

 とりあえずそろそろ時間が気になるのでホールに急ぐことにする。しかし懸念した通りに夕方にさしかかってきて道路は混雑し始め、阪神高速池田線も名神との交差である豊中ICから先は大渋滞。数キロの区間をトロトロ走行を余儀なくされることに。

 何とか渋滞をくぐり抜けて大阪に戻ってくる。今日はこれから大阪フィルのメンコンの最終回である。駐車場に車を置くとまずは夕食へ。昼食にかなりガッツリ食ったから、夕食は軽めにそばか。と言うわけでおきまりの「福島やまがそば」に出向いて「親子丼のセット(900円)」を頂く。

毎度のやまがそば

毎度の親子丼セット

 

 

 夕食を終えると開場時刻が近いのでホールへ。

小雨の中をホールへ

 ホールに入るとまたも堕落の象徴である喫茶に直行。ただコーヒーは先程飲んでいるのでこれ以上飲んだら胃が荒れそうなので、今回はオレンジジュースにしておく。しばし時間をつぶしてから座席に向かうが、今日はかなり入っている。ザッと見ても9割以上の入りである。

コーヒー連荘はキツいのでオレンジジュース

 

 

メンデルスゾーン・チクルスⅣ~メンデルスゾーンへの旅~

合唱用のひな壇もスタンバっている

[指揮]尾高忠明
[ソプラノ]盛田麻央、隠岐彩夏
[テノール]吉田浩之
[合唱]大阪フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]大阪フィルハーモニー交響楽団

メンデルスゾーン:
序曲「ルイ・ブラス」op.95
交響曲 第2番 変ロ長調 op.52「讃歌」

 一曲目はメンデルスゾーンのかなり華々しい曲。尾高の演奏はやや早めのテンポでグイグイと行くロマンティックなもの。大フィル金管陣が結構の冴え。

 本公演ではこのルイ・ブラス終了後に休憩なので、開演後10分ぐらいで20分の休憩が入るというやや変則構成となる。流石に通常の休憩よりもそのままホール内に留まる人数が多い。再開5分前ぐらいから合唱団がゾロゾロと入場を開始して、それが揃った頃にオケメンが入場、間もなく再開となる。

 本日のメインはメンデルスゾーンの異色の交響曲。演奏機会は多いとは言えないが、最近になって注目されつつある曲である。第一部はオケだけで単編の交響曲のような曲があり、第二部が合唱陣が加わっての壮大な讃歌となる。第一部で登場した主題が第二部にも繰り返し登場することによって曲全体のまとまりを作っているという構造。

 煌びやかで華やかな曲調はいかにもメンデルスゾーンらしいところ。尾高は例によってのロマンティック会社路線なので音楽自体がなかなかに盛上がる。大フィルの演奏もまとまりが良い。

 第二部になると合唱が大活躍。華々しい旋律で神を讃える歌である。まあ歌の内容自体は定型的な讃歌なので面白味はないが、教会音楽的でありながらロマンティック要素も十分に含んでいるメンデルスゾーンの旋律は美しい。もっとも曲の内容的に影の部分が少ないので音楽としてメリハリが薄い感はなきにしもあらず。

 大フィル合唱団はかなり頑張っていると思うし、ソリスト陣も安定感は相当にある。第二部では裏に回ったオケがそれを支えるという様子。劇的な盛り上げなどもピタリと決まっていてマズマズの演奏。そしてラストはお約束の壮大なアーメンである。

 メンデルスゾーンの中では珍しい曲になるこの曲で、尾高のメンチクも締めである。まさにその一大プロジェクト完結に対する讃歌という趣のなかなかに荘厳さを感じさせる演奏であった。以前にこの曲を聴いたときにはいささか冗長な感を受けたが、今回はそのような退屈をする局面もなく純粋に音楽に浸ることが出来た。その辺りはなかなかのものであった。

 演奏終了後は場内もなかなかの盛り上がり。大フィルの名演に対して観客が満場の拍手で応えるという展開となった。今回の演奏は私にも満足のいくものであった。

 これで2023年度のメンチクは終了、なお2024年度はモーツァルトとブルックナーとのこと。モーツァルトは39,40,41で、ブルックナーは0,1,2らしい。しかしモーツァルトの3曲は尾高が就任した頃の定期演奏会で聴いてあまり面白いという印象はなかったし、ブルックナーはあまり得意でない上に初期交響曲(しかも所詮は習作と言われているヌルテ込み)というのは私にはいささかしんどい。今年はいよいよ予算も切迫していることであり、今年度の企画はパスかなというところである。

 

 

この遠征の前日の記事

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読響大阪公演で山田和樹指揮によるフランクの交響曲

再び大阪へ

 先週末に大阪に遠征した直後だが、再び大阪に向かうことになる。ちょうど読響の大阪公演と大フィルのメンチクのラストが立て続けで行われるので、大阪一泊遠征と相成った。ただ正直なところまだ疲労が体に残っている。

 先の遠征ではJRを利用したが、今回の遠征では車で大阪まで行くことにする。これは明日の予定の関係である。疲労している状態での長距離ドライブは少々しんどいが、幸いにして今日は阪神高速の渋滞がそれほどでないので、そちらから来る心理的疲労は少ない。

予定よりやや早めに大阪到着

 大阪には18時前に到着するので車を置くとまずは夕食に。フェスティバルゲート地下を物色するが、「キッチンジロー」だけでなく「インディアンカレー」にまで行列が出来ている状況。読響はいつも観客が多いのでかなり大勢が押しかけているようだ。そこで一回りして、まだ辛うじて席が空いていた「而今」に入店する。

キッチンジローにもインディアンカレーにも行列

 

 

 食券を購入していると「ラーメンですか?」と聞かれるので、ラーメン屋が奇妙なことを聞いてくるなと思ったら、どうやらここも居酒屋を始めたようだ。この界隈はオフィス街なのでアフターファイブは飲み屋需要ばかりのようだ。先にPRONTOが夕方から居酒屋を始めたが、ここもそれに倣ったか。確かに以前の夜は結構ガラガラだったことが多いが、今日は結構客が入っている。

よく見れば居酒屋の暖簾がかかっている

 私が注文したのは「特製アサリ塩そばの麺増量(1080円+100円)」。例によって毎度の工夫のないメニューだが致し方ない。例によって普通に美味い。CPを除いて考えたらマズマズ。

いつものアサリ塩そば

 夕食を終えると18時を回ったのでホールに入場することにする。ホール内はかなり観客が多い。やはり読響大人気である。もっとも今日の指揮者は山田和樹とのことで、私はどうも彼とは相性が悪いのでそれが気がかり。本公演は山田和樹が読響の首席客演を退任する記念公演らしい。

本日の出し物

 

 

読響第37回大阪定期演奏会

16型の大型編成

指揮:山田和樹
ヴァイオリン:シモーネ・ラムスマ

R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」 作品20
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26
フランク:交響曲 ニ短調

 一曲目はR.シュトラウスだが、やけに喧しいのが気になるところ。山田の指揮は以前より音量の大きい時はテンポを上げて、音量が下がるとテンポが下がるという大時代的なところがあるのだが、そのせいもあって冒頭からかなり捲りまくりである。いささか音楽に落ち着きがない。これだけ捲るとさすがの読響も演奏の崩壊はしないが、いささかガチャガチャした演奏となる。

 その一方でテンポが落ちるとやはり弛緩するところがある。結局はかなり落ち着きのない印象の演奏に終始した感がある。

 協奏曲はブルッフ。ソリストのラムスマはかなり大柄の女性。正装した山田と連れ立って歩いたら、母親に連れられて入学式に向かう一年生みたいで何となく笑えてしまう。

 ラムスマの演奏は体格の立派さだけでなく、演奏自体も堂々たる力強さである。音色はかなり力強く、それでいて情緒もたたえている。ただバックのオケがパワーがありすぎるのか、そのソロヴァイオリンを抑えて前に出ようとしすぎるきらいがある。この辺りのバランスの制御は山田の役割のはずなんだが、何となくブンチャカと勝手にやらせているような雰囲気がある。おかげでやや情緒薄めのブルッフになってしまった。

 後半はフランクの交響曲。重々しさと軽妙さが入り混じる交響曲なんだが、重々しい部分は何となく軽く、軽妙な部分がやけに足取り重く聞こえるためにいささかメリハリに欠ける印象を受ける。特に第二楽章などは木管陣がかなり良い音を出しているにもかかわらず、演奏全体としてそれをあまり活かせていないきらいがあり、やはりどことなく音楽が弛緩してしまう。そのまま最後まで今一つピリッとしない印象であった。

 演奏終了後には今期で首席客演指揮者を退任する山田に対して花束が渡されるというセレモニーもあり。場内はまずまずの盛り上がりであるが、先の井上道義ファイナルには及ぶべくもなくというところか。私自身も結局は山田和樹とは最後まで相性の悪さを感じずにはいられなかったのである。

 

 

 コンサートを終えると車を回収してホテルに向かう。宿泊地は例によって新今宮。今日は車で来ているので、サンプラザANNEXではなく、ビジネスホテルみかどに宿泊。風呂・トイレ共用の新今宮で中の上クラスのホテルである。

ビジネスホテルみかど

 となりの建物が新館であり、私が宿泊するのはそっち。両館は内部でつながっている。

隣が新館

 部屋は毎度のようなシンプルなもの。ただし机がきちんとあるので作業はしやすい。

シンプルな洋室

 この日はとりあえず夜食を買い求めるために近くのファミマに繰り出すと、後は大浴場に入浴してからゆっくりと過ごすことに。やはり疲労がかなり溜まっているので早めに就寝することにする。

 

 

本遠征の翌日の記事

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遠征最終日はシェレンベルガー指揮PACオケによる運命

朝から身体がグダグダでホテルでゴロゴロするだけに

 翌朝は8時に目覚ましで起床したが、グッタリして起き上がる気力がない。調べてみると何だかんだで昨日は1万9千歩ほど歩いている。完全に限界突破で全身疲労が半端ないし、膝はガタガタ、足が痛いと思ったら足裏にまめが出来ている。限界突破したらレベルが上がってステイタスが上昇するファンタジー世界とは違い、リアル世界ではこの年では限界突破は確実に体を破壊し、ステイタスの大幅な低下を招く。

 今日の予定のメインは15時からのPACの公演だが、10時にチェックアウト後の予定を立てていないわけではなかった。しかしこの時点でそれは不可能と判断、フロントに行くと500円を支払って昼までレイトチェックアウトの申し込みをする。この状況では多分10時にチェックアウトしても体力が限界になって、どこかのネカフェに転がり込むのがオチ。どうせゴロゴロするならこの方が安上がりである。

 しばし部屋でゴロゴロしていたが、着替えする気力さえ湧かない状態なので、とりあえず活動エネルギーを作るためにシャワーで体を温めに行く。そしてようやく動けるようになったところで朝食に出かけることにする。

 頭にあった喫茶は、最近になってGoogleでの評価が上がっているとかで、大勢の客が押しかけていて満席。店としてはありがたいだろうが、こちらとしては困ったものだ。仕方ないので別の喫茶店へ。立ち寄ったのは「ラ・ミア・カーサ」モーニングのaセット(440円)を注文。

新今宮の「ラ・ミア・カーサ」

 なお店名の意味が分からなかったのだが、後でネットで調べてみたら同店名のイタリアンレストランが結構多い。どうやら"La mia casa"でイタリア語で我が家という意味らしい。確かに朝からくつろいでいる常連らしい年配客も多い店である。

玉子サンドと珈琲のモーニング

 玉子タップリのサンドイッチが美味い。コーヒーは私の好みよりはやや酸味が強いが悪くはない。ようやく朝の燃料補給を終える。

 再びホテルに戻ってくると部屋でゴロリ。もう今日は無理をしないことにする。チェックアウトの13時前までベッドの上でゴロゴロして過ごす。若い頃は無理をすれば体が鍛えられたが、この年で無理をすると鍛えられる前に確実にぶっ壊れるだけである。老人はいたわるべしというのが身に染みて分かる。

 

 

昼食は阪急梅田地下で

 13時前にチェックアウトすると兵庫芸文を目指すが、途中で阪急地下で昼食を摂っていくことにする。地下飲食街はどこも大行列なので、行列の短かった「帝塚山 季」に入店する。

阪急梅田地下の「帝塚山 季」

 この店は本来は喫茶のようだが食事メニューもある。注文したのは「生湯葉丼と稲庭うどんの定食(1485円)」。生湯葉丼という超健康メニューは不健康街道驀進中の私にはどうだろうかという疑問もあったが、食べてみるとあっさり具合が思いの外良い。さらにさっぱりした稲庭うどんも美味い。この遠征では肉食付いていたからちょうど中和に良いか。

生湯葉と稲庭うどんの定食

 食事を終えると阪急で西宮北口へ。ちょうど開場直前のホールに到着する。時間が来るとゾロゾロと入場となる。

本日の出し物

 

 

PACオケ 第148回定期演奏会

結構大編成

指揮・オーボエ:ハンスイェルク・シェレンベルガー
ハープ:マルギット=アナ・シュース
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲(オーボエとハープ版)
ベートーヴェン:交響曲 第5番「運命」

 一曲目はモーツァルトのフルートとハープのための曲をシェレンベルガー登板でオーボエ版に変更したという代物。フルートと違ってオーボエはややシニカルな感じの響きがあるので少し雰囲気が変わる。純粋に美しい音楽としてなら、フルートとハープの組み合わせの方がしっくりくると考えられるが、オーボエになったことで少しひねった感じの印象の曲になる。

 ソリスト2人の演奏には文句はないのだが、協奏曲というには2つの楽器の性質上、意外とソリストが音楽の前面に出張ってこない感がある。まあバックのPACオケが若いオケであるためか、元気すぎて小編成にも関わらずやや前面に出張りたがるという印象もないではなかったが。

 後半は超有名曲。最近はピリオド解釈なども増えているが、シェレンベルガーはオーソドックスなモダンアプローチ。大編成のオケでブイブイガンガンと攻めてくる。もっともその音色自体は結構シンプルであって古典的な端正さも感じられる。オケの演奏も実にまとまりが良く、整然とした印象があった。

 モダンアプローチらしく、クライマックスではエネルギー全開での大盛り上げ。結構やんやな盛り上がりとなったのである。

満足感のありそうなシェレンベルガー

 以上の二曲だけだとプログラム的にやや短いところなのだが、この後にシェレンベルガーが再登場して「小澤征爾の死を悼む」という類いの言葉(だと思うが、私の語学力では詳細不明)があってアンコールはコリオラン序曲であった。これがなかなかに熱の入った演奏であって再度の盛り上がり。

シェレンベルガーから一言あってコリオランに

 こうして大盛況の中でコンサートは終了と相成った。

大盛り上がりで終演となった

 

 

この遠征の前日の記事

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モネ展、古代メキシコ展などを見てから、大阪フィルの井上道義ファイナルの大熱演に触れる

朝食は近くの喫茶店で

 翌朝は8時に起床。とりあえず着替えると朝食のために朝の町に繰り出す。この界隈は昔ながらの早朝から営業している喫茶店が多いのが特徴の一つ。既に営業していた「ロミ」に立ち寄ることにする。

喫茶店「ロミ」

 ここは喫茶店と言いながらも食事メニューもあるようである。モーニングメニューに「朝ご飯定食(500円)」なるものも含まれている。私は「玉子サンドのモーニング(400円)」を注文する。

珈琲と卵サンド

 意外にボリュームのあるモーニングである。サンドが卵焼きなのがうれしい。これで400円というのは驚異だが、さすがに昨今の物価高騰が影響したようで、店内には3月から価格を上げるという張り紙がでている。どこもここもアホノミクスのせいでとんでもないことになっている。

 

 

 朝食を終えるとホテルに戻る前にドン・キホーテに立ち寄ってバスタオルを入手しておくことにする。私はドンキは24時間営業だと思っていたのだが、どうやら朝9時から翌朝5時までとのことで、営業開始まで5分ほどある。入り口前には既にスタンバイ状態のアジア人らしき面々が。ちなみに隣のパチンコ屋にも開店待ちの連中がいるが、一様に目に生気がない廃人のような表情をしている。競馬の場外馬券売り場などで見かけるタイプの連中だ。なお大阪をこういう連中だけの町にするのが、カジノ利権最優先の維新の理想のようである。

ドンキとパチンコ屋が同居

 バスタオルを購入してホテルに戻ると、それを持って早速朝風呂に。本当は真新しいタオルは大抵汚れ防止に撥水処理をしているので一度洗濯してからの方が良いんだが、この際は贅沢を言っていられない。風呂で体をほぐすが、昨晩に湯の中で結構徹底的にほぐしたのが幸いしたのか、目下のところは体に特に異常はない。もっとも「忘れた頃に症状が出る」のがジジイの特性だから油断ならんが。

 さて今日の予定であるが、メインは15時からフェスティバルホールでの大フィル定期演奏会。今回は井上道義のファイナルである。ただその前に周辺の美術館に立ち寄るので、今日は肥後橋周辺をウロウロすることになる。

中之島美術館へ

 まずは中之島美術館からである。ここではモネ展が開催されており、先程の大阪の女性画家達展の半券持参で100円引きになる。と言っても入場料2400円とかなり高い展覧会である。なお会場は大混雑で驚く。そう言えば日本で混雑する展覧会のお約束は「エジプト、浮世絵、印象派」だった。最近はコロナの影響でしばらく大規模展覧会がなくなっていたのですっかりボケていた。

エレベーターからこの混雑

 

 

「モネ 連作の情景展」中之島美術館で5/6まで

会場入口

 国内外から70点以上ものモネの絵画を集めた久々に大規模な展覧会である。かなりのキラーコンテンツと言えるだけに場内は人で一杯。おかげで美術品鑑賞のコンディションとしてはかなり悪い。

 最初はモネが印象派を確立する以前の初期の作品から始まる。もう既にこの頃から後の絵画の特徴は現れているが、まだ光が煌めくところまでは行っていない。そうなるとアカデミズム派の連中から「未完成の絵画」と酷評された荒さが目立つことになる。決して雑に描いている絵ではないが、アカデミズム系の絵と比べるといかにも簡素な絵画に見える。

 それが光の揺らめきを捕らえる印象派へと進化する。モネは光を捕らえるためにかなり実験的な作品にも挑んだので、同じ構図の絵画を量産している。同じ場所での光の移ろいを記録したわけだが、中にはほとんど違いの分からないような作品も存在する。この辺りが表題ともなっている連作の情景である。

ウォータールー橋、曇り

ウォータールー橋、ロンドン、夕暮れ

ウォータールー橋、ロンドン、日没

 光の状態が様々なので、いかにも印象派という煌めく絵画もあれば、どんよりした重い色調の絵画もある。まあ一般受けするのは間違いなく前者であると思われるが、その手の作品は意外に日本の美術館の所蔵品が多い。こうして見ると、日本の美術館は結構モネの傑作を押さえているなと妙なところに感心する。

 

 

 最晩年は有名な睡蓮の池の連作になるが、延々と睡蓮ばかり展示する展覧会が多い中で、本展は意外とそれ以外の作品の比率が高いということを感じる。まあモネを把握するのに非常に適した展覧会であるという感想である。モネを堪能するには十二分。もっとも私の場合は今までに何度かモネ展の類いは見学しているので、同じような絵画ばかりなのはいささか食傷気味になるのは本音。また国内出展作の場合は「見覚えがある」という作品が多数。これは致し方ないところ。

睡蓮、柳の反影(北九州市立美術館所蔵)

睡蓮の池

睡蓮の池(石橋財団所蔵)

睡蓮(群馬県立近代美術館所蔵)

芍薬

 

 

 会場では物販の方も力が入っていたようであるが、何と行列が階下まで続いている状態で、果たして購入までどれだけ待たされるやらというところ。これだとネット通販でもやった方が良いような気もするが。なお私はグッズには興味がないのでスルー。

物販コーナーはこの様子

 本展は一部作品が撮影可であったが、それはラスト部分(睡蓮の会場)に固まっており、その会場では大撮影大会。こんな時にはサッと撮ってさっさと退くのがマナーだが、なぜかモタモタとしている者もいる。画角がどうとか言うようなものでもないし、ピントや絞りはスマホにお任せのはずなのに。ちなみに以前には写真でなくて動画を撮影している意味不明の輩に出くわしたこともある。なお一つだけ要注意は印象派の絵画はピントをスマホにお任せしていたら、たまにピンぼけになることがある。一応は撮影後に確認しといた方が良いだろう(絵の前から退いてから)。


 モネ展の見学を終えると次は隣の美術館に立ち寄ることにする。元々現代アート系の催しが多いことから、ここも長いこと来ていない気がする。

隣が国立国際美術館

 

 

「古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン」国立国際美術館で5/6まで

美術館入口

 太古よりメキシコ地域で興隆してきた文明の産品を紹介する展覧会。まずは歴史的には一番古いメキシコ中部の山岳地帯で栄えたテオティワカンについての産物を紹介する。

 時代的には一番古い年代の当たるからか、かなり素朴でシンプルな物が多い。しかしその割には意外に凝っている。また動物の描写などは正確であるし、絵画には中南米に特有の力強いタッチがこの頃から既に現れていて、いわゆるプリミティブアートとしても興味深い。

テオティワカンのモザイク立像

造形が秀逸な鳥形土器

これは香炉らしい

羽毛の蛇ピラミッドの地下トンネルで見つかった品々

 もっともこの地域の文明を語る上で避けて通れない暗黒面である生け贄文化を象徴する品も展示されている。これこそがこの地域の文化が「未開な野蛮なもの」と排除される大義名分にされたものでもある(もっともそれを行ったヨーロッパはさらに野蛮な略奪と虐殺を行ったのだか)。

生贄の肩に刺さっていた儀式用の翡翠の錐

 

 

 次はマヤ文明に関する事物。様々な点でより洗練されたような出土品が多い。

支配者層の土偶

吹き矢を使う狩人の土器

貴婦人の土偶

 また天文学が進化していたマヤらしく、天文に関する出土品も。

金星周期と太陽暦を表す石彫

 

 

 マヤは広範囲に及ぶ都市国家の連合体のようなものであるようである。その中でも勢力を誇ったパレンケに関する展示が多数。先のテオティワカンと類似している部分も多い。

パカル王の頭像(複製)

香炉台

 なお近年に発掘された翡翠のマスクを付けた王妃の墓の様子が再現されている。この地域ではやはり翡翠は身分の高さを示すものであったようだ。

発掘された王妃の墓

翡翠のマスクを付けている

 

 

 次が年代的には一番新しいアステカにまつわる事物。いきなり目につくのがガッチャマンの像(笑)。鷲の戦士らしいが、やっぱり「大鷲の健」?

ガッチャマン 鷲の戦士の像

 神殿から出土の神をかたどった壺などが展示されているが、やはり造形の妙がすごい。

雨神トラロク神の壺

プルケ(発酵酒)神パテカトル像

 以上、正直なところメキシコの文明に関する知識も大してなく、興味はさらにないという私であったが、実際に見学をしてみるとどうしてどうして非常に面白かった。先程の人の背中ばかりを見ることになる「モネ展」よりは充実していたかもしれない。

 

 

昼食は近くの定食屋で

 メキシコ展を堪能し終えた時には既にお昼時を完全に過ぎていた。とりあえず次の移動の前に昼食を摂りたい。この辺りで思いつく店と言うことで「ちいやん食堂」に立ち寄って「一日定食」を頂く。今日のおかずは鯖の竜田揚げ。

ちいやん食堂

 例によって何かと野菜が多くて栄養バランスの良い内容。この年になってくるとこういうメニューが一番ホッとする。

野菜豊富な一日定食

 昼食を終えるとホールに向かうが、その前に今日の最後の美術館に立ち寄る。

 

 

「刀と拵の美」中之島香雪美術館で3/17まで

中之島香雪美術館に立ち寄る

 同館が所蔵する刀剣コレクションを展示した展覧会。日本刀とは単なる殺人兵器を越えた美術品的美しさを持っているという難解な代物である。日本刀を眺めていると「こんなものに斬りつけられたら洒落にならん」と思いつつも、その美しさに魅せられるという相矛盾する感情を抱かされる。

山城吉家作の太刀

備前正恒作の太刀

和泉守藤原兼定作の刀

 なお会場には刀の種類に関する説明があり。平安後期から室町初期までは馬上で使用することを想定した太刀と呼ばれる70~80センチの刀を刃を下にして腰から吊すというのが主流だったらしい。しかし室町中期からは徒歩での集団戦が増えたことから、刀(打刀)と呼ばれる60センチぐらいのものを刃を上にして帯に指すというのが主流になったとか。なお脇差しは長さ30センチぐらいの補助刀(相手を組み伏せたときに首を取るのに使ったと聞いたことがある)で、短刀はそれ以下の短い刀で護身用などに使われる平作りのものが多いという。

長船修理亮盛光の脇指

相州国光の短刀

 

 

 拵なども工芸品の極みである。このような装飾を施すというのがまた日本刀の特有のところではある。

金梨子地菊三蝶紋蒔絵糸巻太刀拵

木地呂雲文蒔絵刀拵

鍔も展示されている

このようなタイプも

 以前は刀剣乱舞の影響とかで、刀剣展の類いは妙に場違いなミーハーな雰囲気の女性が多数押しかけるなんてこともあったが、そのブームも落ち着いたのか、静かにゆっくりと刀剣を鑑賞するというタイプの観客が多かったようである。もっともやはり刀剣の類いは私にはややマニアックに過ぎる感はある。

 

 

 これで美術館の予定は完全終了である。既に開場時刻を過ぎているのでホールに入場する。開演までは例によっての堕落の象徴のホール内喫茶での一服。アイスコーヒーを頂きながらの毎度のような原稿執筆だが、以前にも言ったようにここの喫茶は座席がないのがツラい。もう既に1万歩を越えている私の足腰はガタガタである。

アイスコーヒーを頂きながらしばし時間つぶし

 開演時間が近づいたところで座席に着く。場内は大入りでほぼ満席の状態。チケットもほとんど捌けていると聞いた。今回が井上の大阪フィルファイナルと言うことで観客の方も気合いが入っている模様。恐らく長距離遠征組もいるだろう。

本日の出し物

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第575回定期演奏会

かなりの大編成用の用意がある

指揮/井上道義
バス/アレクセイ・ティホミーロフ
合唱/オルフェイ・ドレンガー

J.シュトラウス2世:ポルカ「クラップフェンの森で」
ショスタコーヴィチ:ステージ・オーケストラのための組曲(ジャズ組曲第2番)抜粋
          交響曲第13番「バビ・ヤール」

 後半に特大級の重たい曲が来ることに備えてか、前半はかなり軽妙なプログラム。最初はいささかおふざけもあるポルカ。カッコウがあちこちで鳴きまくる趣向で楽しませてくれる。大阪フィルも軽いノリの演奏。

 二曲目は今日のメインとのつながりでショスタコだが、これが完全に予想外の雰囲気の曲。私は初めての曲なんだが「ショスタコってこんな俗な曲も書いてたのか」と驚いた次第。1曲目なんてオリンピックマーチみたいだし、2曲目以降はキャバレーでの生演奏を連想させるような艶めかしさと色気のある曲。大阪フィルと井上がそれを茶目っ気タップリの演奏。

 休憩後の後半はメインであるバビ・ヤールである。とにかく初っ端から驚くのは合唱とソリストの上手さ。力強い男声合唱は圧巻であるし、よく通るティホミーロフの歌唱がすごい。

 朗読詩のようなところのある曲なので、ステージ上に訳詞を字幕で出していたのは正解。恥ずかしながら私は初めてこの曲の意味を知った。第1楽章はユダヤ人のホロコーストを批判している多分に政治的な内容だが、第2楽章以降はソ連の日常生活の一コマを連想させる内容で、第2楽章などはショスタコのかなり風刺が効いている。

 ロシアものを得意としてきた井上として、現在のロシアのウクライナ侵攻、さらにはかつてホロコーストを体験したユダヤ人が現在ガザでホロコーストを実行する側になっているという社会情勢には思うところもあるだろう。第1楽章の叩きつける激情と鎮魂が入り交じったような凄まじい曲調は、ティホミーロフと合唱陣の能力の高さも相まって凄まじい演奏になった。大阪フィルもそれに負けてはいけないのでかなりの気合いの入った演奏。

 ややシニカルな第2楽章を経て、最後は「私の立身出世は立身出世をしないこと」というやや厭世的な響きも持った最終楽章へと流れていく。ティホミーロフの歌唱の凄さもあって最後まで圧倒されたところがある(この曲はソリストの表現力が低ければ、間違いなくお経になる)。

 終演後の場内の拍手はすごいものがあった。井上は何度もステージと往復して拍手を浴びることに。また合唱団とソリストに送られた歓声もすごいものであった。しかも通常ならゾロゾロと会場を後にする観客がいるものだが、この時点で会場を去る観客は数人。しかもその歓声は楽団員が引き上げても終わらない。驚いたことに観客の半分以上が会場に残って拍手を続けている。この状況に井上がコンマスの崔とティホミーロフを引き連れて再登場、場内は興奮の坩堝となって大盛り上がりとなったのである。ここまでの熱狂はフェスティバルホールでは近年目にしたことがない。それだけ今回の演奏がいかに名演であったかということをも示している。

 

 

夕食は新世界でビフカツ

 大興奮の会場を後にすると新今宮まで戻ってくる。さてとりあえず夕食であるが、新世界に繰り出すことにする。新世界はアジア人を中心に大混雑。私はその大混雑を避けるように裏通りに。私が向かったのは久しぶりの「グリル梵」

裏通りの「グリル梵」

 大混雑の表通りと違っていつもこの界隈は静かである。未だに「知る人ぞ知る」という店なんだろう。客が少なくて閉店されても困るが、ガイド本片手に観光客がゾロゾロ行列を作るようになっても、こっちとしては困るところである。私の来店時にはまだ客は一人。入店して席に着くと注文するのはいつものように「ビーフカツ(2420円)」である。

関西の正しいビフカツ

 例によっての「正しい関西のカツ」の姿である。揚げ方もミディアムの見事なもの。久しぶりに堪能したのであった。

ミディアムの火の通りが見事

 

 

 夕食を終えるとホテルに戻る前に夜食の購入をしておくことにする。ローソンに立ち寄ったがどうにも今ひとつであることから、ホテルを通り過ぎて南海新今宮の東にある庶民の味方の安売りスーパー「玉出」を覗くことにする。結局は桜餅(3個入で200円ちょっと)を購入する。

庶民の味方スーパー玉出

本日のおやつ

 さらにホテルに戻る途中で、大阪名物551の肉まんを購入する(改札は「ちょっと551まで行きたいので」と通してもらった)。これも久しぶりである。部屋に戻ってから頂いたが、いかにも懐かしい肉まんである。

南海新今宮駅改札内の551

大阪名物551の肉まん

 部屋に戻ると「さて今日の原稿の仕上げを」と思ったが、あまりに疲労が溜まっていてベッドに倒れたまましばし動くことが出来なくなった。途中で流石に風呂はしんどいのでシャワーを浴びたがそれが限界。この日は何も出来ることなくそのまま寝てしまった。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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久石譲指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏会に出向く

週末コンサートに繰り出す

 さて週末三連休であるが、私はコンサートの連荘に出向くことにした。まずは金曜夜の日本センチュリーの定期演奏会である。

 今回は以前から考えていたようにJRを使用することにした。今まではコロナを警戒して車で移動していたが、これはとにかく何かと金がかかる上にとにかく大阪に到着してからの動きを取りにくい。おかげで昨今の貧困化に拍車がかかっていた。と言うわけで、主に経済的理由によりJRを使用しての移動と相成った。

 とは言うものの、やはりまだ厳戒態勢ではある。マスクは手放せないし、ゲホゲホ言っている奴がいたら自然と遠ざかる。実際のところ、バイオテロリストはどこに潜んでいるか分からない。

 大阪駅に到着。夕食を摂るために数年ぶりにエキマルシェを訪れる。さて今日立ち寄ろうと思っていた店は決まっているのだが、果たしてコロナ禍を生き残ることが出来ただろうか・・・などと思いながら訪ねた店は健在であった。今回立ち寄ったのは「牛たん利久」。仙台牛たんのチェーン店である。私は「タンシチュー定食(税込1595円)」を注文する。

エキマルシェの「利久」

 数年ぶりのタンシチューはなかなか美味い。それどころか、元々はあまり好きではない塩っぱいテールスープまで美味しく感じる。うーん、牛肉に飢えていたかも。そう言えば最近は困窮のせいで鶏肉か豚肉ばっかりだったような・・・。

牛タンサラダに

タンシチューの定食が

 

 

 夕食を堪能するとホールへの移動。通常なら歩いて行くのだが、今回はキャリーケースを引きずっているし、日本センチュリーが定期公演の時に運行している送迎バスを利用することにする。非会員も100円払えば乗車可能である。ただ乗り場はホテルの送迎バスなんかも頻繁に到着する場所なので、どこで待てばよいのかは初めての私には分からない。とりあえず行列の最後尾に「これは何の行列ですか」と聞き回る羽目に。

 送迎バスはすぐに到着する。使用しているのはMKの観光バスの模様。多数並んでいた客を乗せると出発。大阪駅周辺は一通地獄なのでかなり大回りする上に、乗客が高齢者ばかりのせいかやけにバスはゆっくりと慎重な運転をするので予想以上に時間を要する。結局は20分ほどかかって開場直後のホールに到着する。

バスが到着

 開場待ちの客が一段落ついたホールに入場。この公演は電子チケットなんだが、なぜかその電子チケットがうまく反応しないというドタバタが。これが開場待ちの大行列が出来ている時だったら顰蹙ものだった。何度かページの再起動なんかをした後にようやくチケットが反応、なんとか入場できる。それにしても何だかんだ言ってもやっぱり紙チケット最強のようで。今回のようなスマホが反応しないという事態や、サーバダウン、回線障害などトラブルの種はいくらでも想像できる。そういう時はどうするんだろう。もっとも後でチケットの紙ゴミがでないと言うことで、確かにエコではあるが。なお私はチケットの半券を記念に取っておくというようなことはしない。というか元々はそういうことをするタチ(なんせオタなんで)だったんだが、流石にきりがないので断捨離である。昔はプログラムも残していたのだが、最近はこれも断捨離している。

 ホールに入場すると重たいキャリーと上着はクロークに預けて、喫茶でアイスコーヒーで一服。老化とともに体力が落ちて堕落した私は、最近はこれが定番になってしまった。フェスティバルホールの喫茶と違い、シンフォニーホールの喫茶は椅子席があるので、席さえ確保できたら原稿の執筆にちょうど良い。なお今日は久石の公演とのことでチケット完売で入場客が多いので、喫茶はほどなく満席になる。今回の公演のチケットを私が購入したのは発売されてからかなり経ってからだったのだが、その時点で空席は多く、今回のプログラムは久石の曲がないからチケットの動きが鈍いのかと思っていたが、最終的には完売とのことだから、やはり久石人気は未だ衰えずか。

毎度のようにアイスコーヒーで時間をつぶす

 開演10分前ぐらいで座席に向かう。私が購入したのは最安席なので3階の後列である。予算を考えずに良い席をザクザク確保できるだけの軍資金が欲しいところである。

 

 

日本センチュリー交響楽団 第279回定期演奏会

今日のセンチュリーは増量14型

[指揮]久石 譲
[管弦楽]日本センチュリー交響楽団

ドビュッシー:小組曲
ドビュッシー:交響詩「海」
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」

 さて一曲目は私の知らない曲。ドビュッシーとのことだが、どうも彼らしくない。どうやら若い頃の曲のようである。普通に非常に分かりやすい曲で、それを久石指揮の日本センチュリーはかなり煌びやかな音色で艶っぽい演奏をする。オケは10型の二管編成で本来のセンチュリーのコアメンバー構成のようなので、そのためか非常にまとまりが良い。

 正直なところこの曲を久石が演奏するとジブリに聞こえてくる。もし私が曲名を知らずにコンサートに臨んだら、指揮は久石だし何かジブリの曲だろうと思ったのではないかと考える。非常に馴染みやすい曲であり、普通に綺麗で楽しめる曲。これには驚いた。

 二曲目はまさにドビュッシーが彼のスタイルを確立した代表曲であり、正直なところ私にはあまり得意ではない曲である。今度はエキストラを加えての14型の三管編成に拡大されている。それでパワーでグイグイ行くのかと思ったら、そうはせずに出力は8割程度に抑えてあくまで煌びやかで小洒落た演奏をするのがいつもの久石流。確かに久石の演奏はフランス系の音楽には合っているようで、今回のプログラム編成も理解できるところ。私はこの曲は大抵眠気を誘われるのであるが、今回は煌びやかな音色を追いかけていたら眠気が湧くこともなかった。

 休憩後の後半が「展覧会の絵」。フランスもので来ているのになぜここでムソルグスキーなのだと思ったら、ラヴェル編曲という方に力点を置いているようである。実際に久石の演奏もムソルグスキーのアクのある旋律よりも、オケの魔術師ラヴェルによるキラキラとしたオーケストレーションの方に焦点を当てた演奏である。いろいろな楽器が代わる代わる様々な音色を出してくるというオケのデモンストレーションか何かのような演奏。

 まずまずの名演だと思う。場内も結構な盛り上がり。アンコールはどこかで聞いたことのあるようなないような曲。ジブリかとも思ったが該当する曲がないし、どことなく雰囲気が違う。後で確認したらラヴェルだった模様。

 

 

新今宮でかつての定宿に宿泊

 コンサートを終えると新今宮のホテルに向かう。今回宿泊するのはホテルサンプラザ2ANNEX。ホテル中央オアシスが高級ホテルだとすると、ホテルみかどは中の上、今回のサンプラザが中の中ぐらいである。風呂トイレ共同で宿泊料金はみかどよりも安い。コロナ以前にはよく利用したホテルだが、コロナ以降は駐車場がないことから敬遠していた。今回は移動をJRにしたことで数年ぶりの利用である。

隣のジパングと内部でつながっている

フロントではpepper君がお出迎え

 部屋はベッドとテレビと冷蔵庫のシンプルな構造。ただ以前からこの部屋の難点はデスク部分が狭い上に高さが高いので、仕事環境を構築しても立って作業をすることになってしまうと言うこと。今日は1万2千歩ほどを歩いていて、足が時々攣りそうになるような状態なのでこれはキツい。

ベッドのみのシンプルな部屋は新今宮標準仕様

テレビと冷蔵庫は装備

 

 

 とりあえず入浴しようと思うが、ここで重要なことを忘れていた。安ホテルでのあるあるなんだが、このホテルで支給されるアメニティにはバスタオルが含まれていないことを忘れていた。そう言えば昔はこのホテルに宿泊する時はバスタオルを持参していたんだったっけ。何年も前なのですっかり忘れていた。こうなると体を支給されたタオルで拭くしかないが、なんせ体表面積が広いので完全に体が乾く前にタオルがビショビショである。そこは開き直って、とりあえず浴槽で手足をしっかりとほぐしておく。足は攣りかけている上に、手は重い荷物を引っ張って歩き回ったせいで変な凝り方をしている。気をつけないと明日にダメージが残りそうだ。なおこのホテルは隣のジパングと一体営業(実際にフロントは接続している)なので男性浴場がジパングの大浴場で、ANNEXの大浴場は女性浴場となっている。

 入浴を済ませるとしばしテレビを見てからベッドでゴロリ。立って文章入力はキツいので、結局はベッドに転がりながらpomeraで文章入力になる。そう言えば以前もこのホテルでの作業はこうやってたっけ。段々と昔のことを思い出してきた。

仕事環境は構築したが、さすがに立っての入力はキツイ

 結局はこの日はある程度疲れてきたところで就寝することとなった。

 

 

この遠征の翌日の記事

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岡山フィルのコンサートのために備前市に出向く

岡山フィルの備前公演に出向く

 昨日はNHK交響楽団のコンサートに出向いたが、今日はもっとローカルなコンサートに出向くことにする。岡山フィルの備前公演である。岡山フィルは以前から時々聴きに行っているが、今回は三ツ橋敬子指揮で備前市民センターでモーツァルトプログラムを演奏するという。別に三ツ橋にはそんなに興味はないが、岡山フィルは元々小編成の曲にむいているオケではという気があったのと、モーツァルトの小短調こと交響曲第25番を演奏するとのことで興味を持った次第。

 会場の備前市市民文化センターへは山陽道の備前ICから降りて少し走るとすぐに到着する。体感的にも岡山よりは随分近い(何より悪名高い岡山ダンジョンを抜ける必要がない)。現地到着は開演の1時間前ぐらいだが、文化センターの駐車場は既に満車の状況である。ただし近くに大きな無料駐車場があるので車を止める場所には困らない。

 私はこの辺りには来たことはないが、辺りを見渡しただけで明らかに格好の山城用の独立峰が南にそびえる。私がこの地域の領主なら絶対にあそこに山城を築くなと考えたが、調べてみるとそこにはかつて富田松山城という山城があった模様。やはりいつの時代でも考えることも同じだし、私も各地の山城を回ってる内に、段々と思考が戦国領主的になってきたか。ちなみに私ならこの山上にお籠もり用の堅固な山城を築き、平時用には北方の小高い丘の上に館を建てるところである。

この山上に富田松山城が

北のこの丘の上には館を置きたい

 

 

 開場は15分からとのことだが、私がホールに到着したのは開場まで10分ほどある時刻。そこで入場前に建物内を少し散策。となりのロビーには場所柄備前焼の簡単な展示が。そもそも実用陶器から発している備前はとにかく渋い。また備前焼定番の大壺も展示されている。

備前市市民センター

内部には備前焼が展示

備前といえば大壺

 その内に開場時刻となったのでホールに入場する。ホールは典型的な一昔前の市民文化会館ホール仕様。客席は一階のみで全790席。収容人数からしてやや奥行きが深い。たつの市の総合文化会館を思い出す構造である。ただしあっちよりは圧倒的に古い。なお設備の古さから来るコンサートホールとしての致命的な弱点として、空調の音がかなりうるさいという問題を抱えている。耐震性はキチンと確保されているのだろうか? これはいずれ建て替えの必要がありそうだが、備前市にそこまでの財源があるかである。

ホールの奥行きは深い

 ステージ上にはこじんまりとしたオケの用意がされている。

オケは小編成である

 

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団 備前特別公演

本日の演目

指揮/三ツ橋敬子
フルート/畠山奏子(岡山フィル首席フルート奏者)
管弦楽/岡山フィルハーモニック管弦楽団

モーツァルト/ディヴェルティメント K.136
モーツァルト/フルート協奏曲第1番 K.313
モーツァルト/交響曲第25番 K.183

 岡山フィルは8-6-4-3-2型の小編成。そのためか通常よりまとまりの良い演奏を行っている。三ツ橋の指揮は軽快なもので、オーソドックスにやや速めのテンポでサクサクと進める印象。まさにディヴェルティメントそのものである。

 フルート協奏曲はソリストの畠山の音色に若干の濁りがあることが気になる。何となく綺麗に吹き抜けてこずにつかえたような感じがする。トータルとしての演奏はモーツァルトらしく軽妙で美しくてマズマズだったのだが、そこだけがちょっと引っかかったところ。

 休憩後はモーツァルトの小短調。「アマデウス」のテーマとして有名になった音楽であるが、三ツ橋のアプローチはややクール。例によってのややアップ目のテンポで、過剰な煽りなどは行わず、オーソドックスに淡々としたところのある演奏である。

 終始岡山フィルの演奏はまとまりが良く、やはりこのオケの本領はこういうところではと思わされたのである。

 

 

島成園ら女性画家の絵画を堪能してから、N響コンサートでソヒエフの興味深い「英雄」を

N響コンサートのために大阪へ

 この週末はN響のコンサートのために大阪まで出向くことにした。それにしてもN響のコンサートの情報はいつも唐突に伝わってくるのだが、今回もそうだった。やっぱりN響のチケットは何かコネでもないと入手しにくいのか?

 コンサートは土曜日だが、開演は16時と通常よりは若干遅いN響タイム。この日はとりあえず昼前に大阪に向かうことにする。交通費の節約のために今回はJRを使用して大阪まで。大阪には昼過ぎに到着する。

 まずは昼食を。ゴタゴタ考えるのも面倒くさいので阪神梅田西口の「ミンガス」「ロースカツカレー(860円)」を頂く。特別に美味しいカレーというわけでもないが、私には懐かしい味ではある。酸っぱい白菜のピクルスが口直しに良い。

阪神梅田西口の「ミンガス」

ロースカツカレー

 腹を満たすと肥後橋まで移動する。N響のコンサートの前に立ち寄っておきたい場所がある。それは大阪中之島美術館。ここで開催中の展覧会も今回の遠征の目的である。

中之島キューブこと中之島美術館へ

 

 

「女性画家たちの大阪」大阪中之島美術館で2/25まで

記念写真スポットはやはりあります

 やはり大阪画壇を代表する女性画家となると、島成園である。島成園は京都画壇の上村松園、東京画壇の池田蕉園らと共に「三都三園」と呼ばれ評判となった。その島成園の作品群が第一部となる。伝統的な浮世絵の流れを汲む美人画家から、大正期に時代の影響を受けた作品まで登場する。島成園が一躍有名となったのが女の情念を滲ませた「無題」。さらにもろに大正デカダンスの時代の影響を受けた「伽羅の薫」辺りが話題となった。この時期は甲斐庄楠音や岡本神草などの怪しげな絵画が登場し、北野恒富などもまさに黒恒富が登場していた時期である。ただ成園自身の創作活動は、この頃に銀行員の男性と結婚したこともあり、家庭と創作の板挟みの中で創作活動はやや低迷していくのである。

 第二部は島成園に加えて、彼女から刺激を受けた女性画家、岡本更園、木谷千種、松本華羊の四人の特集となる。彼女たちは「女四人の会」での展覧会を実施、未だ男尊女卑の気風の強い中で彼女たち「生意気な女性たち」は反発も受けたようだが、それでも展覧会はかなり話題となったという。本展ではその展覧会に出展した作品も展示されている。それぞれ個性があるが、岡本更園の作品は島成園と似たところがあるのを感じた。なお木谷千種は後に画塾を開いて多くの女性画家を育てている。

女四人の会の面々、左から岡本更園、木谷千種、島成園、松本華羊

 第三部に登場するのが南画の世界での女性画家たち。南画はいかにも男性の絵画のイメージが私には強かったのでいささか意外だったが、実はむしろ美人画などよりはこの世界の方が昔から女性画家は多かったのだという。もっともかなり形が決まっている絵画であるので、個々人の個性はやや薄い感がある。

 第四部は大阪の風俗などを描いた生田花朝の世界。やまと絵の流れを汲むと思われる柔らかいタッチで祭りの風景や寺院の風景など大阪の風俗を描いた好ましい絵画である。

 

 

 第五部がその後の女性画家たちであり、ここのセクションが撮影可。時代が変わってまさに百家争鳴のごとくに登場する女性画家たちだが、島成園に学んだという女性画家から、木島千種の画塾出身者と北野恒富の画塾出身者がやはり中心となっている。

 秋田成香、伊藤成錦、平山成翠、金澤成峰、三笠成雅、高橋成薇らは皆、島成園に習った画家たちである(だから雅号が成○ばかりなんだろうが)。

秋田成香「ある夜」

伊藤成錦「扇売り」

平山成翠「童女」

金澤成峰「哀しみ」

三笠成雅「王朝美人」

高橋成薇「秋立つ」

 

 

 一方、木島千種の門下からは菅野千豊、西口喜代子、三露千萩、石田千春ら。

菅野千豊「舞妓」

西口喜代子「淀殿」

三露千萩「編み物」

石田千春「めんない」

 

 

 北野恒富門下では雪月花星と呼ばれた星加雪乃、別役月乃、橋本花乃、四夷星乃ら。

星加雪乃「美人」

別役月乃

橋本花乃「七夕」

四夷星乃「少女」

 

 

 後は一時土田麦僊門下で20代後半で早逝したという鳥居道枝の独得の絵が印象に残った。

鳥居道枝「燈芯」

岩絵具で洋画的表現に挑んだという実験作「少女像」

 しかし結局は島成園に尽きるように思われる。

島成園「自画像」

 

 

 展覧会の見学を終えると駅に向かう。なお中之島美術館の隣の国際美術館では近々「古代メキシコ」展が、中之島美術館では「モネ」展が開催の予定。なおモネ展には今回のチケットを持参すると割引がある模様。これらの展覧会もいずれ訪問する予定である。

国際美術館の次の出し物

中之島美術館はこれ

 肥後橋駅まで移動すると、NHK大阪ホールへと地下鉄で移動する。既にホール手前には行列が。開場時刻になるとゾロゾロとエスカレーターで上がって入場ということになる。私の席は一階席のやや右寄りである。

NHK大阪ホール

エスカレーターをゾロゾロ

入場

 

 

NHK交響楽団演奏会大阪公演

本日の出し物

指揮:トゥガン・ソヒエフ
ヴァイオリン:郷古 廉(N響ゲスト・コンサートマスター)
ヴィオラ:村上淳一郎(N響首席ヴィオラ奏者)

モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K. 364
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

 一曲目の協奏交響曲はとにかく郷古のノリノリの演奏が目立つ。郷古が前に出ようとするから、それに合わせて村上の方もそれにタイマンを張るにはかなり気合いの入った演奏をせざるを得ない状況になる。結果として極めてノリの良い陽性な、いかにもモーツァルトらしい爽やかな演奏になったという印象。

 二人の息のあったアンコールも披露されて大盛り上がりになったところで休憩、休憩後はソヒエフによる「英雄」である。

 ソヒエフは先のウィーンフィル来日公演でも見せたが、とにかくドラマチックな演奏をする指揮者である。あの時には見事にウィーンフィルをコントロールしていたが、今回もN響を見事にコントロールして、かなりメリハリの効いたドラマチックな音楽を展開した。それがまたこの曲のイメージを一新するような演奏である。非常に生命感に満ちた演奏なのであるが、それが故に今までの英雄の戦いや人生を描いたというイメージの第一楽章とは違い、ここに浮かび上がる英雄像はもっとシニカルでユーモラスでさえある。意外に「堂々たる英雄」というよりは、むしろ時流に乗っかって半分運で英雄になってしまった人物なんではないかという妄想が浮かぶのである。

 そしてさらに驚いたのが第二楽章の葬送行進曲。これが全く葬送でない。音楽が完全に重苦しい葬送曲でなく、もっとゆったりとした英雄が自身のこれまでを振り返るかのような印象である。まあすべてが思い通りに行ったわけではないが、それでもマズマズだったか。時折「こうすれば良かった」という感情が沸き上がったりするが、まあそれても概ねなるようになったのではないか・・・という感じである。

 音楽は軽妙な第三楽章を経て、堂々のフィナーレへ・・・なのであるが、音楽があまりに活き活きしていて堂々のというよりも、飄々としたという少々すっとぼけた印象さえ受ける。最後の最後になって、実はこれまで描かれたのは「英雄の一生」ではなくて「ほら吹き男爵の生涯」だったのではという印象さえ受けたのである。

 さすがにかつて白鳥の湖を映画音楽のように演奏したソヒエフらしく、今回もなかなかに個性的で壮大なドラマを展開してくれた。これだけカッチリと統制の取れたN響というのもあまり記憶にないし、演奏は極めてダイナミック、今回のような新しい英雄像も非常に興味深かった。なお私の表現の拙さのせいで、私は今回の演奏に非常にネガティブな印象を持っているのではないかと誤解される向きもあるかもしれないが、実は私は非常に楽しんでおり、「流石にソヒエフ」と感心したということを最後に記しておく。

本公演ではカーテンコールでの撮影可

ソヒエフも満足げである

 

 

「不染鉄展」と大和郡山城と奈良フィルのハシゴをする

まずは奈良の美術館へ

 翌日は目覚ましをセットした7時半の直前に自動的に起床する。これを一人で使うのは申し訳ないよなと感じるぐらいの広いベッドで爆睡したのであるが、年のせいかそれだけでは疲労は完全には回復せず、朝から体が重い。そこでとりあえずシャワーで体を温めることにする。

 ようやく体が動くようになったところで朝食。このホテルは現在改装中でレストランが使えず朝食がないので、朝食は昨日に近くのスーパーで買い求めた4割引にぎり寿司になる。

この日の朝食は寿司

 朝食を終えるととりあえず朝風呂である。正直なところ、遠征で何が楽しみかというと大抵はこれになる。温泉旅館なんかで美味しい朝食を食べてから朝風呂でマッタリなんていうのは至福の時なのだが、貧困化著しい私にはもうそんなことは一生涯無理かもしれない。

 入浴後は原稿作成と一昨日の記事のアップ。その辺りを済ませたところでそろそろ荷物をまとめてチェックアウトすることにする。と言ってもスーパーホテルはチェックアウト手続きはなく、ドアに「チェックアウトしました」の札を貼り付けてホテルから出るだけである。とにかくこの辺りは徹底して省力化しているホテルである。

 さて今日の予定は大和郡山での奈良フィルのコンサートだが、その前に県立美術館に立ち寄るつもり。というか、奈良に来た主題はむしろこっちの方で、奈良フィルがついでの付け足しである。車の方は13時までホテルの駐車場に置いておけるので、その間にバスで美術館に向かうことにする。奈良の中心部は車がある方が動きにくい。

 駅前から東大寺方面行きのバスで県庁前へ。目的の美術館はここからすぐ。それにしてもこの美術館を訪問するのはかなり久しぶりである。

 

 

「漂泊の画家 不染鉄」奈良県立美術館で3/10まで

久しぶりの奈良県立美術館

 放浪の画家とも言われる不染鉄の回顧展である。不染鉄は僧侶の息子として生まれ、若い頃に「自由に生きることが出来る」という考えから画家を目指したと言うが、それに行き詰まったのか突然に伊豆大島に渡って漁師になったりなど、かなり唐突な行動をしている。その後、京都市立絵画専門学校に入学して再び画家を目指しての訓練を始める。その頃には上村松篁などと交友があったという。その後、大戦下の画業が圧迫される時代を経て、戦後には奈良に中学校の理事長として招かれるなどをして、晩年は画壇を離れて悠々自適の生活を送ったという(この頃の話を聞いていると、どこか仙人じみた感覚がある)。

代表作の「山海図絵」

 彼の作品を見たときに、圧倒されるのはその描写の克明さである。ただし、その克明な描写はいわゆる写実とは異なり、心の中にある風景を配したと思われる幻想性を帯びた絵画になる。彼自身は古典的絵画に学んだとのことであるが、ある意味で非常に絵巻的絵画であることを感じさせる。

 精神の自由性を強く感じさせる作風であるが、その中には漁師生活を送っていた伊豆の風景がかなり原風景として焼き付いているようである。さらにそこに当時は長閑な寒村の風情のあった奈良の風景も結びついて、どことなく懐かしくも幻想的な風景を形成している。

 かなり独得のインパクトの強い絵画であるが、いわゆる今時のアートのようなインパクトだけで中身がない作品と異なり、非常に深い精神性を感じさせるのが最大の特徴でもある。何かその静けさの中に強烈に引き付けられる独得の魅力を持った作品である。

 不染鉄については、何かの機会に彼の作品を目にしたときに、その強烈なインパクトに魅せられてその名が記憶に残っていたので、この際だからとわざわざ奈良まで出向いてきたというのが実際のところである。確かにそれだけの価値を感じさせる非常に濃い展覧会であった。

 

 

お昼は葛メニュー

 展覧会の見学を終えるとJR奈良までバスで戻ってくる。そろそろ昼時であるが、立ち寄る店は決めている。かなりしばらくぶりの「天極堂」に入店。葛を使った「極パフェ」を頂く。

奈良駅ビル内の「天極堂」

 このパフェは葛入りのソフトやアイスがシッカリしていて融けにくいのもポイントだが、中に入っているのが、寒天でなくてくず餅なのがポイントが高い。実に美味いパフェである。

極みパフェ

中のこれが実は葛餅

 

 

 パフェを堪能してしばしマッタリしたところで、面倒なので昼食も済ませることにする。「吉野葛うどんセット」を注文する。吉野葛の入った出汁が麺によくからむ上に熱々。猫舌の私は少し冷ましてからでない食べられないぐらい。出汁が麺によくからむので、かなりあっさりした出汁にも関わらず、それでも食べられるという一品になっている。

続けて昼食の「吉野葛うどんセット」

 うどんを食べ終わるとデザートはできたてのくず餅。プルプルでたまらない。一度これを食べると、そこらのくず餅を名乗っている代物は、似ても似つかない偽者と分かる。

熱々の葛餅がデザートとしてついている

 本物の葛を使用していますとのアピールのため、レジ横には葛根を置いてある。こうしてみると本当に根っこである。ジャガイモなどに比べると得られるデンプン量などが少ないことから、最近は一般的にくず粉やわらび粉として売られているものも、大抵はジャガイモデンプンが原料の紛い物ばかりになっている。こういう本物は貴重である。

これが本物の葛根だとのこと

 

 

大和郡山城の見学をする

 昼食を堪能したところで、駐車場に移動すると車に乗り込んで大和郡山に移動である。奈良から大和郡山はすぐそこ。渋滞がなければ10分ちょっとと言うところか。目的地であるホールは大和郡山城の旧三の丸にある。駐車場に車を入れた時点で開演まで2時間程度ある。この間に隣の大和郡山城を見学することにする。

やまと郡山城ホール

 大和郡山城は大分前に1度訪問したことがあるが、その時は内部があちこち工事中で天守台などは登れなかった上に、時間の制約があったのでかなり駆け足の見学になった記憶がある・・・と思ったら、当時の記録をひっくり返したら、どうやらトランクを引きずりながらの見学だったらしい。そりゃどう考えてもまともな見学なんて出来ていないはずである。そこで改めて見学することにする。

大和郡山城縄張図

(出典:余湖くんのお城のページ)

 ホールのすぐ向かいにある大きな石組みは、かつての桜御門跡とのこと。これは絵図などから見ると三の丸の入口の門だったようである。

桜御門跡の巨大な石組み

 現在は三の丸の西端を近鉄の線路が走っている状況にあり、その向こうに広大な堀があって二の丸が見えている。とりあえずは近鉄沿いに南下、鉄御門のところまで移動する。

すぐ脇を近鉄が走り、その向こうは広大な堀を経て二の丸

線路の向こうに堀と二の丸を見ながら南下

 

 

 鉄御門は三の丸から二の丸に入る門であり、現在は近鉄の線路になってしまっているところが元来は堀で、橋を渡って門にたどり着くことになっている。名前からすると恐らく鉄板貼りの巨大な門だったのではと推測される。

鉄御門の踏切、かつてはここは堀を渡る橋だった

北側には広大な堀

鉄御門跡

 ここで道が折れていて先に進むと二の丸と本丸の間の巨大な堀が正面に見える。

鉄御門跡を抜けた先が二の丸で、本丸周囲の広大な堀に当たる

 

 

 そこから西に進むと竹林橋があり、柳澤神社となっているのが本丸。今ではここは土橋になっているが、往時には木の橋でいざという時には落とすようになっていたのではと推測する。

本丸南の竹林橋

 柳澤神社となっている本丸には続百名城の石碑がある。この神社の場所にはかつては本丸御殿があったのだろう。

本丸には続百名城の石碑がある

柳澤神社

本丸東の堀と極楽橋

 

 

 神社の奥が天守台である。ここに往時は五層の天守が建っていたとされる。天下人の秀吉の弟である秀長が治めにくいとされた奈良の地を治めるために築いた堅城だけに、やはり立派な天守で辺りにその力を見せつけていたのだろうと推測する。

天守台は整備されている

 以前の訪問時にはこの天守の上には上がれなかったのだが、今は工事が完了していて上がることが出来る。ここから見渡すと城の全域の構造が良く分かる。本丸の周囲をグルリと二の丸が取り囲む構造となっている。

天守から東の風景

 西の方の曲輪はかつての訪問時には学校が建っていたと思うのだが、今は公園に整備されているようである。ただ城址公園として整備するなら、贅沢を言えば復元武家屋敷の一軒ぐらいは欲しいところである。

天守から望む西側の風景

公園整備されている

本丸北側

 

 

 本丸の見学を終えると木製の極楽橋を渡って二の丸へ。この橋は比較的最近にかけられたものと思われ、かつての私の訪問時にはなかったのではなかったと記憶している。

極楽橋

 二の丸には柳沢文庫があるが、残念ながら現在は展示の入れ替えのために休館中とのこと。

柳澤文庫は休館中

 ここから北に降りていくと追っ手門のところに出る。立派な櫓門であり、ここがこの城の建造物としては一番の見所。

立派な櫓門の追っ手門

三の丸からも見えていた隅櫓

 

 

 それを抜けると右手に見える風情のある建物が城址会館。明治時代に奈良県庁の向かいに図書館として建築された建物の一部を昭和になって移築したらしい。文化センターとして使用されていたが、最近になって三の丸に文化ホールが新築された(私が今日、コンサートに来たところである)ので、現在はお役御免になっている模様。内部の見学が可能なので入ってみたが、出土した瓦が展示されていた。

城址会館

ここからは本丸はこんな具合に見える

城址会館に展示されていた出土瓦

 

 

 後は二の丸の北側をふらりと西の方まで回ってみる。この辺りは付近の住民の格好の散歩コースとなっているようで、散歩中の中高年を結構見かける。

本丸北側の曲輪

その西の曲輪、完全に公園化している

 これで大和郡山城の見学は終了。さすがに天下人の弟が整備しただけあって、かなり立派な城であった。続百名城への選定も整備の起爆剤になっている模様だし、地元としてはこれで観光開発が出来れば万々歳だろう。私はここのところ完全に欠乏していたお城成分を久しぶりにふんだんに吸収出来てお腹いっぱいである(笑)。

 

 

ホールへ移動

 大和郡山城の見学を終えるとホールに戻ってきて、開場までしばし待つことになる。しかしロビーのベンチは既に大量の老人に占拠されているし、喫茶も満席とのことなので、駐車場に行って車の中で時間をつぶすことにする。

ホールロビー

本日の催し物

 開場時刻が来ると大ホールに入場。大ホールは1000人ほど入れる規模のものと聞いていたが、一階席の奥行きがやけに短い印象を受ける。どうやらステージ拡張のために、一階席の前部の座席を6列ほどもつぶしているようである。元々のステージが結構狭いホールの模様。その辺りは音楽専用ホールでなくて多目的ホールである所以か。

一階席がやけに狭く感じる

 奈良フィルは一応は日本オーケストラ連盟準会員のプロオケである。とは言うものの、その認知度は近畿内でもかなり低く、マニアでさえプロオケとして認識していない者が少なくない。また今回在阪4オケ+京都市響+PACオケの近畿6オケに拡張された4オケ企画でも明らかにその存在が無視されてしまっている。

 このオケを私が以前に聞いたのは2016年とかなり昔で、その時は奈良県文化会館での公演だったが、ホールの音が飛ばない音響特性にもかなり阻害されて、今ひとつ冴えない演奏という印象が残っている。今回はどうであろうか。

 

 

奈良フィル ニューイヤーコンサート2024

奈良フィルは8-7-5-4-3編成

指揮 :    粟辻 聡
ナビゲーター :    喜多野 美宇子
ソプラノ :    大原 末子
テノール :    坂東 達也
合唱 :    奈良フィルハーモニー混声合唱団

[第1部]シュトラウスファミリーのポルカ特集!
トリッチトラッチポルカ アンネンポルカ
鍛冶屋のポルカ 観光列車 ピッツィカートポルカ
狩のポルカ クラップフェンの森で 雷鳴と稲妻

[第2部]オーケストラと歌のハーモニー
美しく青きドナウ/J.シュトラウス2世
フィンランディア/J.シベリウス
オペラ「椿姫」/G.ヴェルディより ”第一幕前奏曲”
”花から花へ〜ああ、そは彼のひとか”
”燃える心を〜ああ、自責の念が!” ”乾杯の歌”

 

 新年コンサートらしく、前半はシュトラウスファミリーによるポルカ集から始まる。奈良フィルは8-7-5-4-3編成という小型なオケであるが、小型が幸いしてかなかかなにまとまりの良い演奏をしている。ただこのような小型オケの場合はパワー不足が気になるところ。以前に聞いた奈良県文化会館での公演の時には、無駄に大きい上に音響効果が劣悪なホールのせいで、かなり非力さが際立つ結果となってしまっていたのだが、ここの場合はホール容積がちょうどオケとマッチしており、良い具合にホールが鳴っていた。

 以前に聞いたときには弦楽陣のまとまりに難を感じたのだが、今回聞いた限りでは確かに奏者の技倆にバラツキがあるのは感じるが、まとまり自体にはそう悪さを感じなかった。元気にガンガン行くタイプの曲調ばかりなのも幸いしていたか。

 一方、粟辻の指揮ぶりはかなり独得。感情を身体で表現というか、かなりクネクネとした下手をすればお笑い寸前の動作。まあ今回のようなお祭りの場合はそれでも良いが。

 後半の第2部は、コーラスとソリストを加えての歌メニューになるが、やはり気になるのは奈良フィルハーモニー混声合唱団があまりに素人丸出しであること。男声陣は人数が極端に少ない上に平均年齢がかなり高くパワー不足が否めないし、女声陣はバラバラでまとまりがなくいわゆるママさんコーラス状態。正直なところ極めて精彩を欠く歌唱に終始した。

 ソリストの大原と坂東は流石に安定感はある。ただ大原はやや線が細いタイプのソプラノで椿姫にはいささか押しが足りない。一方当初出演予定の藤岡晃紀のインフルエンザで急遽の代演となった坂東は、代演を思わせない安定感のある歌唱でなかなか聞かせた。

 寸劇的なやりとりも含んだ楽しいコンサートは、最後はお約束のアンコールのラデツキー行進曲で幕を下ろした。なかなか盛上がったコンサートであった。


 終演すると駐車場まで走って車に飛び乗る(ここの駐車場は収容台数がそこそこあるのに、出場ゲートは一箇所でしかも出場時にゲートで精算だから、大混雑が必至)。そのまま長駆して帰宅となったのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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遠征2日目は若冲の動植綵絵を堪能してから、沖澤/京都市響のフランスもの

今日は京都へ明日は奈良へ

 翌朝は7時半に目覚ましが鳴るが、夜は爆睡していたはずなのに体が重くて動かない。どうやら私の認識以上に体に疲労が溜まっている模様。結局はグダグダしながら意を決して体を起こすまでに30分以上もかかってしまった。

 起床すると昨日購入しておいた朝食を摂る。今回は前回の反省(朝からカツ丼やパスタは重過ぎる)を踏まえてうどんにしている。まあこのぐらいが最も朝食には適切なようだ。

朝食は昨晩買い求めたきつねうどん

 朝食を終えると大急ぎで仕事道具をキャリーに詰め込むとチェックアウトする。今日は京都まで長駆する予定。目的は14時半から京都コンサートホールで開演する京都市響の定期演奏会だが、その前に美術館訪問の予定がある。朝に予定通りに起きられなかったことでスケジュールが後ろにずれているので、慌てて車を出すことにする。

 京都までは阪神高速と名神を経て1時間ほど。ただ京都市内に入ってからが渋滞で動きにくい。とりあえず最初の目的地は嵐山の福田美術館。近くの駐車場は観光用の割高なものばかりなので、少し離れたまともな価格の駐車場に車を置いてからしばし歩く。

 嵐山界隈はいつも大混雑だが、流石に今は厳しい京都の冬のせいか、いつもよりは若干人は少なめ。と言うものの、インバウンド中心にかなりの人混みである。

まあ渡月橋がこの状態ってのは、いつもよりは人が少ないが

 

 

「進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち」福田美術館で4/7まで

福田美術館

 京都画壇を代表する日本画の大家・竹内栖鳳とその弟子たちの作品を集めた展覧会。

 栖鳳と言えばまず思い浮かぶのは「獣の栖鳳」。まさにそれにふさわしい獅子や虎の絵も展示されている。なかなかに力強い絵であり、この迫力は流石に栖鳳。

竹内栖鳳「金獅図」

竹内栖鳳が阪神タイガース優勝を記念して描いた(嘘)「猛虎」

 一方で雀を描いた愛らしい作品も。

竹内栖鳳「野雀」

 川合玉堂、横山大観との競作も展示されている。本作では玉堂が雪、大観が月、栖鳳が花を担当しているが、この担当が異なるバージョンも存在するとか。

川合玉堂、横山大観、竹内栖鳳「雪月花」

 

 

 さらに栖鳳の師匠である幸野楳嶺の渾身の作品も登場する。

幸野楳嶺「蓮華之図」

 弟子筋では西山翠嶂に西村五雲、さらに上村松園なども展示されている。各人の特徴の出た絵画である。

西山翠嶂 「槿花」

西村五雲「高原之鷲」

上村松園「しぐれ」

 

 

 さらに伊藤小坡、村上華岳、土田麦僊など。小坡及び華岳はいかにも作品であるが、麦僊の「ヴェトイユ風景」は日本画の岩絵具でセザンヌ的な印象派っぽい作品を描いているという点で、彼のチャレンジを思わせて面白い。

伊藤小坡「雪の朝」

村上華岳「雲中散華」

土田麦僊「ヴェトイユ風景」

 また入江波光に小野竹喬など蒼々たるメンバーの作品が揃う。

入江波光「臨海の村」

小野竹喬「河口近く」

 結構見ごたえのある内容であった。流石に京都画壇の血脈は侮れない。

 

 さて日本画を堪能してからホールに行く前にもう一カ所立ち寄る予定。これは私としては初訪問の美術館。まあ美術館と言っても相国寺の宝物展示館のようなものである。相国寺の山門にたどり着くと車で構内へ。案内に沿って走ると駐車場があるので、そこに車を置いて美術館へ向かう。

 

 

 

「若冲と応挙」承天閣美術館で1/28まで

相国寺内の承天閣美術館

 相国寺が所蔵する伊藤若冲と円山応挙の作品を展示。

展覧会の看板

 第一展示室はいきなり若冲の動植綵絵全点が展示されていて圧倒される。そう言えばこの作品はそもそも相国寺に寄贈された作品だった。例のNHKのBLドラマ「ライジング若冲」で有名にもなったハートが飛び交う鳳凰像なども展示されている。鳥の絵がメインであるのだが、左も右も一番端に魚介類の絵があるのが興味深いところ。こちらも鳥と同様に観察に基づいて描いていると思われる。かなり精密描写が光る。

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 第二展示室には若冲による水墨画の障壁画が展示されている。先ほどの精密絵画と違い、こちらは墨の滲みなどを生かして結構勢いを持って描かれているのが特徴。なおこちらでは若冲の鳥以外での得意分野、青物問屋店主の経歴から来る野菜の描写の上手さが光る作品もある。

 この展示室の奥には応挙の水墨作品もある。若冲の水墨画勢いで描いているのに対し、徹底的精密描写なのがさすがに応挙。また応挙の絢爛豪華な牡丹孔雀図なども展示されていて見応え十二分。なお子犬を描いた「狗子図(別名モフ図)」なども展示されている。


 これもかなり見応えのある展示であった。特に動植綵絵は私は東京で見たもの以来。ただあの時はとにかく人混みがすごかったので、絵の上半分しかよく見えない状態だった。今回はそれを堪能できたのが一番の収穫。

 

 

昼食は洋食を

 これで美術館の予定は終了なのでホール近くに確保している駐車場まで車を走らせる。車を置いた時には開場の30分前ぐらい。まだ時間的余裕があるので、とりあえず昼食を摂っておくことにする。「東洋亭」は当然のように無理(待ち客多すぎ)。「進々堂」が待ち客がいない状態だったのでそこに入店する。

 注文したのはビーフシチューのセット。まあ可もなく不可もなくというところか。少なくとも前回に立ち寄ったフォルクスよりは数段美味い。またここはパンが食べ放題なのが良い(と言っても、今はそんなにガツガツ食える体調ではないが)。

サラダに

ビーフシチュー

 昼食を終えるとホールに入場することにする。私が確保したのは3階正面の席。ここから見渡したところ、ホール内は9割ぐらいは入っている模様。まずまずの入りである。

久しぶりの京都コンサートホール

 

 

京都市交響楽団第685回定期演奏会

3階正面の席を確保

沖澤 のどか(常任指揮者)
吉野 直子(ハープ)

オネゲル:交響曲 第5番 「三つのレ」
タイユフェール:ハープと管弦楽のための小協奏曲
イベール:寄港地
ラヴェル:ボレロ

 京都市交響楽団の首席指揮者に就任した沖澤のどか指揮による公演。今回はフランス系の小品が集められており、なかなかに洒落た演奏をする沖澤にはむいている選曲というように思われる。

 一曲目のオネゲルはいささか重たい曲である。当時のオネゲルは健康状態に不安を抱えており、それが反映されたのかもしれない。沖澤のアプローチはその重さを反映しつつも、過度には重たくならないようなバランス。また京都市響の響きも基本的には陽性であるので、どことなくアンバランスな感もなきにしもあらず。

 二曲目はオケを小編成に変更してのハープのための協奏曲。吉野のハープは非常に華麗で美しくあり、この曲の曲調とも合致している。

 休憩後のイベールはパーカーションフル動員の華麗な曲。公演開始時にステージ上に大量に並んでいた多彩なパーカッションはほぼ全てこの曲のために用意されていたらしい。こういう煌びやかで華麗な曲は、まさに沖澤の真骨頂という感を受ける。京都市響の音色にも一際華麗さが加わる。

最初からステージに配されていたパーカッション群はこの曲のため

 そしてそのノリのままにラストは京都市響ソリスト陣の個人技が光るボレロ。ラヴェルの達人技のオーケストレーションを支える各楽器の華麗な音色が曲を盛り上げ、そのまま興奮のクライマックスへ。

 いささか軽めで派手目なプログラムは沖澤にあった選曲のように思われる。もっとももっと違ったパターンも聞きたい気もするのであるが。

 

 

この日は奈良の高級ホテルで宿泊する

 コンサートを終えるとホテルに向かうことにする。明日は奈良に予定があるので、今日の宿泊は奈良にしている。宿泊ホテルはスーパーホテル奈良駅前。天然温泉付きでスーパーホテルの中ではランクの高いホテルであり、私からしたら高級ホテルになる。ここのところはインバウンドの影響で宿泊費が高騰して、私には手の出ないホテルになっていたが、現在はレストランが工事中とのことで、自慢のLOHAS朝食が出せないせいか、週末にも関わらずまあまあな価格になっていたことで選択。

 ホテルの駐車場まで車を走らせるとチェックイン。部屋はデラックスなシングルだったようで、なかなか広い部屋である。昨日の新今宮基準のホテルとは雲泥の差である。

高級ホテルの広いシングルルーム

窓からは奈良駅前の風景が

 

 

三条通に夕食に繰り出す

 部屋に荷物を置くととりあえずまずは夕食に。ここの駅には「やよい軒」とかしかないので、三条通方面に繰り出す。しかしどこか当てがあるわけでなし、プラプラしたものの面倒くさくなってきたので、三条通の入り口近くにあった「やまと庵」に入店する。

繁華街の三条通をうろつくが、意外に店がない

やまと庵は私の出る頃には待ち客が増えていた

 待ち客がいたので10分ぐらい待たされる。内部はロールカーテンで仕切った個室のような構造になっている。とりあえず飲み物に梅サイダーを注文。さっぱりしていてなかなかである。

つきだしに

梅サイダー

 

 

 一応は地場産品推奨の緑提灯の店であるが、流石に居酒屋定番の刺身盛りは地場ではなかろう(笑)。と言うわけで、料理の方はまずは「和牛の薄切りレアステーキ」「やまと豚の角煮」を注文する。レアステーキの方はさっぱりしていてなかなか。角煮の方は肉が柔らかい。

和牛ステーキ

豚の角煮

 これだけだとやや不足なので「大エビフライ」を追加。まあ悪くはないが、あまりインパクトのあるものでもない。

大エビフライ

 締めは「おにぎりの天ぷらだし入り」。これはもう少し味にインパクトが欲しいところ。

これはもう一味欲しかった

 以上で締めて4444円(なんて価格だ?)。まあその程度は覚悟はしていたが、CPとしてはあまり良くはないか。味は悪くはないんだが、印象に残るものでもなかったというのが本音である。

 

 

 夕食を終えるとホテルに戻って入浴。地下から汲み上げたナトリウム・カリウム塩化物泉とのことで、嘗めてみるとわずかに苦味が感じられる。快適な湯で凝り固まった体をほぐした上で、体を温めておく。

 入浴後は部屋に戻ると仕事環境構築。こちらのホテルは昨日と違って広々としたデスクがあるので、快適に作業スペースが確保できる。この辺りは高級ホテルとエコノミーホテルのどうしようもない差である。

余裕のあるデスクスペースに快適な仕事環境構築

 しばし原稿作成作業を行っていたが、昨日からの疲労は如何ともしがたく、この日は昨日よりも早めに就寝する。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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大阪フィル定期演奏会は尾高のノリノリのブルックナー

大阪フィルのコンサートへ

 さてこの週末であるが、二泊三日のコンサート三昧の予定。まずは初日の金曜夜は、尾高忠明指揮の大フィルの定期演奏会。金曜の仕事を早めに終えると車で大阪に向かう。例によって西宮手前で渋滞に捕まるが、まあこの辺りは毎度の通り。大体読み通りの時間に大阪に到着したので、予約済みの駐車場に車を入れる。

まだ18時前だが、辺りには闇が立ち込めている

 まだ18時になっていないというのに、既に辺りには闇が立ちこめている。とりあえず開場までに夕食を摂りたいが、肥後橋界隈まで繰り出す気にもなれない(それにそれだけの時間もない)ので、結局はフェスティバルゲート地下の「爾今」あさり塩そばの大盛り(980円)を頂くことに。

フェスティバルゲート地下の「而今」

アサリ塩そばの大盛

 なんかこのあっさりしたラーメンもかなり食べ慣れてきた感がある。我ながら毎度のように工夫がない。もう少し食事内容に執着すべきか。

 夕食を終えると18時を回ったのでホールへ。そして今、この原稿を執筆しつつ時間をつぶしている(笑)。

 開演直前に入場。今日は比較的地味プロにも関わらず入りはかなり多い。一階席から見渡す限りではほぼ満席に近い入りになっていた模様。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第574回定期演奏会

オケは16編成の大きなもの

指揮/尾高忠明

曲目/武満徹:オーケストラのための「波の盆」
   ブルックナー:交響曲 第6番 イ長調

 一曲目の武満は、彼がドラマのために作曲した曲とのことで、そのためか普通に聴ける曲。なかなか旋律の美しさなどが際立っていて、概ねメロディラインも明確で奇怪なところはない。演奏は打楽器が持ち替え持ち替えで結構大変そうであったのが印象に残る。大阪フィルの演奏は総じて非常に明快でキレのある演奏である。

 さて二曲目はブルックナーの大作であるが、決して演奏機会が多いという曲ではない。第5番でかなり精緻な設計のマニアックな交響曲を作曲したブルックナーだが、その力作がどうも評判がイマイチと言うことで、それならともっと肩の力を抜いて作曲した曲などとも言われる。

 尾高の演奏は冒頭からブルックナーのズッシリ重苦しいイメージに反して、ブイブイと吠えまくるというところ。4管に増量した金管群が、最後列からかなりすさまじくも華々しいファンファーレを鳴らす。はて、ブルックナーってこんなだったっけ? という疑問は少々湧くものの、意外に血沸き肉躍る演奏である。

 アダージョでも今日の大フィルは各楽器陣の音色の鮮やかさが非常に光る。重苦しく憂鬱なアダージョでなく、キラキラと輝かしいアダージョである。

 第3楽章で音楽が爆発して、そのままフィナーレまでという一気呵成な印象のある演奏であった。とにかく溌剌としたブルックナーという奇妙な印象を受けた。やや変化球の演奏のようにも思われたが、そもそもブルックナーがあまり得意でない私には、むしろこういう演奏の方が向く。

 

 

新今宮の定宿で宿泊

 コンサートを終えると直ちに車を回収、今日の宿泊ホテルに向かう。今日のホテルは新今宮のホテルみかど。私の定宿の一つである。30分程度でホテルに到着してチェックイン。今回の部屋は元々二階建てベッドだった部屋タイプである。

ホテルみかど(奥が新館)

 とりあえず荷物を部屋に置いてから、近くのファミマまで出向くと今日の夜食と明日の朝食を購入する。

今回の部屋は二階建てベッドをシングルに改装したもの

 部屋に戻ってくるといつものように仕事環境を構築して原稿書き。23時なったところで大浴場の男時間になるので入浴に出向く。やはり風呂は手足を伸ばして温まれるものに限る。体をしっかりとほぐして部屋に戻ってくると、明日に備えて就寝の準備となる。

毎度の仕事環境だが、デスクが小さいので狭苦しい

 

 

 

この遠征の翌日の雉

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ハーバーランドをプラプラしてから、神戸フィルのニューイヤーコンサートへ

やや寝不足気味になってしまった

 昨晩にあまりに早く寝付いてしまったせいで、夜中の4時に中途覚醒してしまう。すぐに眠れなかったのでしばし時間をつぶしていたら、何だかんだで6時頃まで目が覚めている状態。それからウトウトして目覚ましがかかったのが7時半。身体が重くて起きられない。

 目覚め最悪の状態でとりあえず朝食へ。朝食はバイキング。可もなく不可もなくといったところなのだが、どうも出来合感が強すぎる。ここはもう少し朝食が魅力的ならもっと利用したくもなるのだが。

可もなく不可もなくのバイキング朝食

 朝食を終えるととりあえず朝風呂へ。しかしやはり身体がしんどくてどうにもならない。結局は入浴後に再びベッドに転がって、チェックアウト時刻の11時前までウツラウツラ。目覚ましで叩き起こされると慌てて荷物をまとめてチェックアウトする。

 

 

ハーバーランドを散策することに

 さて今日の予定であるが、神戸文化ホールで神戸フィルのコンサートが14時から。文化ホールまではここからだと車で10分もかからない。だからむしろこれからしばらく時間をつぶす必要がある。幸いにして駐車場は今日の夕方までのチケットをもらっているので、まだ余裕がある。とりあえずキャリーを車に移してから昼食を取る店の物色も兼ねてモザイク方面に散策する。

 この界隈はいかにも若い女性などをターゲットに整備しましたという雰囲気の漂うところ。こういう雰囲気は私にはアウェイの極致である。

謎の正月飾り

 プラプラしている内にモザイクまでたどり着く。ここまで来ると港の風景が見られる場所になる。こういうところは夜に彼女でも連れてきたらムードタップリなんだろうが、オッサン一人で来るようなところでもない。結局は私とは一番遠い世界のようで、周りに張り巡らされているリア充結界のせいでMPが削がれる。

神戸港の風景

帆船が停泊中

 

 

 結局はモザイクまで行ったものの、どうにも高そうな店ばかりだし、立ち寄るべきところもないし(オッサンがアンパンマンミュージアムに行っても仕方ないし)、散歩しただけで引き返してくることになる。その内に面倒になって途中の「にしむら珈琲店」に入店してお茶することにする。モンブランパフェを頂く。

にしむら珈琲店に立ち寄る

モンブランパフェ

 パフェを突っつきながらマッタリしていたら、その内に正午。もう面倒臭いし、あまりがっつりと食べる気も起こらないしで、このままここでランチセットを注文することにする。

結局はそのままランチに突入

 結局は何だかんだで喫茶店で時間をつぶしてしまった・・・。実に不毛である。しかもこの喫茶店、特に美味いというわけでもない(特に珈琲が(笑))。場所柄価格は一流なんだが(しめて本日の支払2600円)。

 

 

 昼食を終えたところで駐車場に移動して車でホールまで移動することにする。向こうでは車はホール向かいの地下駐車場へ。この距離だったら、わざわざこっちの駐車料金を払わなくても、ホールまで歩いて行っても良かったと気がついたのは地下駐車場に車を置いてからであった。

神戸文化ホール

 私がホールに到着したのは開場前の13時頃。その時点で既に待ち客はいたが、それが10分も経てばかなりの人数に増加する。結局は階段が待ち客で一杯になってしまったせいか、13時半の会場予定よりもやや早めの13時20分頃に開場となる。

私の到着した13時頃はこんな状態

それが10分ちょっとでこの状態に

 入場するとまずまずの席を確保するが、その後も観客は時間を追って次々と増えていく。最終的に文化ホール1階席の半分以上は埋まっているか。まずまずの入りである。

 

 

神戸フィル ニューイヤーコンサート2024

神戸文化ホールは久しぶり

指揮:朝比奈知足

チャイコフスキー 交響曲第6番より
シューベルト 交響曲第7番「未完成」より
エルガー 「エニグマ」より「ニムロッド」
ベック 「アナと雪の女王」メドレー
A.L.ウェーバー 「オペラ座の怪人」セレクション
LISA 「鬼滅の刃」より「紅蓮華」


ヨーゼフ・シュラトウス ポルカ「短いことづて」
            ワルツ「我が人生は愛とよろこび」
            ポルカ「女心」
レハール ワルツ「メリー・ウィドー・ワルツ」
ヨハン・シュトラウスII ポルカ・フランセーズ「ビッテ シェーン」
            ポルカ「恋と踊りに熱中」
            ワルツ「美しく青きドナウ」
アンコール
ヨハン・シュトラウス ラデツキー行進曲

 

 前半は新年らしいポピュラー名曲集で、最初はクラシック名曲の抜粋だが、その後は果ては鬼滅の刃までというバリエーション。そして後半はお約束のウィンナワルツ集である。

 神戸フィルは10-8-6-6-5という小編成であるが、パワー不足感はあまりない。もっともバランスとしてどうしても管楽器上位になる傾向はある。

 そもそも神戸フィル自体の位置づけが、アマチュア以上プロ未満というところがあるから、演奏もそういうものになる。明らかにそこらのアマチュアオケよりはレベルが高いのであるが、一流プロと比較すると各セクションの細かい技倆などではどうしても劣る部分はある。実際に最初のクラシック名曲抜粋などになると、管楽器が細かいところでしでかしたりなんてやや残念なこともあった。

 とは言うものの、総じて演奏にはアマオケとしては安定感はあり、ポピュラー名曲などは溌剌していてなかなか良かったと言える。

 後半は軽快なワルツを並べ、最後はドナウを美しく演奏して終了、そしてアンコールはラデツキーで盛り上げるというお約束パターンで綺麗にまとめた。

 場内もそれなりに盛上がったし、観客もアマオケの有料コンサートにしては多い。これはこのオケが市民に受け入れられていることを示していると思われるが、確かにそれに十分なだけのパフォーマンスは披露していたと感じる。

 

 

佐渡/PACオケのマーラーの九番を聞いてから万葉倶楽部で宿泊

再び兵庫芸文へ

 この週末はPACオケの新春第一弾コンサートに西宮に出向く。今週月曜日のプラハ交響楽団に次いで、この週二度目の兵庫芸文ということになる。内容はここのところ新春恒例となっている佐渡裕によるマーラー。実は昨年度はチケットは購入していたにも関わらず、コロナの問題と私の体調の問題で見送ったということがある。今回はようやくというところ。なお昨年度は7番で今年は9番だが、創立30年の記念イヤーになる来年は、8番(佐渡にとっても初めてとか)をやるとのことである。

 昼前に家を出ると西宮まで、当初は考えていた予定もあったが、途中でひどい渋滞に出くわしたことで予定は吹っ飛ぶこととなる。ただし西宮に直行すると今度は到着がやや早め。仕方ないので昼食を摂る店の物色も兼ねて西宮ガーデンズを覗く。

 しかし状況は先の月曜日とほとんど変わらず。どこも異常な混雑の上に10人以上待ちがゴロゴロ。そんな長時間ここで待っているだけの時間的余裕はない。結局は諦めることに。相変わらず使い物にならないショッピングモールだ。

 ホールの駐車場に車を入れてしまうと駅の北側までプラプラ、結局はこの日の昼食はケンタという情けない結果に。それにしてもケンタのサンドも価格は上がり、大きさは小さくなり、味は落ちた。これもアホノミクスの副作用か。

 とりあえずの昼食を終えるとホールへ入場。それにしても相変わらず佐渡裕は大人気のようで、この三日間の公演も全日程完売御礼の模様。実際に明らかに入場する観客の人数が多い。訓練オケではあるが、入場料を安くした上で名物指揮者を持ってくることで集客を図る。そういう点ではPACオケの営業戦略は成功しているように思われる。

佐渡裕は大人気の模様

 

 

第147回定期演奏会

1階左の遠くというあまり良くない席しか取れなかった

指揮・芸術監督:佐渡 裕
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

マーラー:交響曲 第9番

 マーラーの完成作としては最後の交響曲である。オケは助っ人を加えての16型巨大編成。なおヴィオラソリストに見慣れた顔がと思えば、関西フィルの中島悦子氏であった。それ以外にも訓練オケらしく、要所要所に名だたるトッププレイヤーを配しているようである。

 さて演奏の方であるが、冒頭からネットリしっとりとなかなかに良い音を出している。そこで佐渡もそのオケの特性を活かしてゆったりとしたスケールの大きい演奏を試みているように思われる。

 のだが、それにも関わらずいささか音楽が冗長に感じられるところがある。美しさはあるのだがどうにも緊張感に欠ける節があるので、音楽が実際以上に長く感じられるのである。端的言えばゆるくて眠い演奏。実際に周囲を見渡すと完全に爆睡状態に陥っていた観客が少なからず見受けられた。

 第三楽章はやや激しさを増す曲調になるのだが、ここでオケの音色は冴えるのであるが、佐渡の音楽自体は相変わらず今一つピリッとしない感がある。結局は一番の美しさを極める最終楽章もその調子。特にラストの消え入るような終幕などは、「まだかいな」というぐらいに長く感じられ、正直なところ退屈してしまったというところがある。

 佐渡の演奏に関しては、今までは概ね可もなく不可もなく、これという強い特徴もなくという印象を受けていたのであるが、今回に関しては何かピリッとしないという印象を強く受けた。これがラトル/ロンドン響などの時は、この長大な交響曲が最後まで「長い」と感じさせることなく高密度の音で押し切られてしまったのであるが、残念ながらそこまでの濃い中身がなかったというのが現実。オケの演奏自体はまずまず良い音を出していたので、なんか最後までかみ合わなくて残念と言うのが本音である。

カーテンコール時のみ撮影可

かなりの大編成

 と言うわけで、今回の内容に関しては私としては、わざわざ遠征してきたのにややネガティブである。なおこれは佐渡とは全く関係ないところで気になったのは、前からよく指摘されるこのホールの観客マナーの悪さ。今回は満席だったこともあり、後ろの方で演奏中にずっと咳をしている者(コロナだったらバイオ兵器だし、そもそもこんな状況でコンサート会場にやってくること自体が根本的におかしい)、ずっと荷物をガサガサとしている者、ウトウトするのは仕方ないが鼾をかく者など、かなりひどい有様であった。

 

 

久しぶりに万葉倶楽部で宿泊

 コンサートを終えると車を回収して今日の宿に向かう。明日は神戸フィルのニューイヤーコンサートに行く予定なので、今日は神戸に宿泊することにしている。宿泊するのは万葉倶楽部。どうせだから温泉で骨休めしたいとの考え。西宮からは30分もかからない。

 契約駐車場に車を置くと万葉倶楽部の方へ。しかし所詮はスパ銭のレストランなんかはそれなりだし、チェックインの前に夕食を済ませておいたほうが良いことに気付く。万葉倶楽部のビルの地下にフードコートがあったはずだが、そこは確かほぼ瀕死の状態。さてどうしたことかと思って見渡すと、南のビルにつながる連絡橋がある。そう言えばこの先はハーバーランドになるはず。飲食店ぐらいあるだろうとそちらに出向く。

立ち寄ったのはumie4階のフードコート

 結局この日の夕食はumieの4階のフードコートの「神座」でラーメンを食べる。こちらのフードコートは向こうの地下フードコートと違って結構にぎわっている。さてラーメンの方だが、ラーメン自体は悪くはないが、場所柄かCPは激烈に悪い。

チャーシューメンのセット(1730円)

 

 

 夕食を終えるとチェックインする。部屋は例によって半個室のグランドキャビン。部屋に鍵をかけられないのが最大の難点だが、それができるようになったら旅館法に引っかかってくるので、規制が厳しくなって料金が高くなってしまうのだろう。

ゲートをくぐって

廊下沿いに個室が

グランドキャビン内部

 部屋に荷物を片付けると、同じフロアにある大浴場で入浴。これが非常に快適。内風呂で体を温めておいてから、炭酸泉で体を芯から温める。心身に相当に疲労が溜まっているので体がガチガチである。しっかりとほぐしておく。

 入浴を終えるとレストランに寄ってあんみつで一服。それにしてもここのレストランも、例のアホノミクスのせいで軒並みメニューの価格が高騰している。政治家がバカだったら庶民が苦労する。

 部屋に戻ってくると毎度の仕事環境を構築するが、テレビの前なのでいささか狭苦しい。しばし原稿入力作業を行っていたが、かなりどうしようもないレベルの眠気がこみ上げてきたので、10時過ぎには寝てしまう。

仕事環境は構築したものの、疲労でさして作業は出来ず

 

 

新春コンサート第一弾はプラハ交響楽団の「新世界」

新年最初のコンサートはプラハ交響楽団

 さて長かった年末年始連休も本日が最終日と言うことで、かなりドヨーンとしたブルーな気持ちを引きずっているところである。で、今日はその気持ちを引きずったまま西宮まで遠征することにする。目的は兵庫芸文で開催されるプラハ交響楽団の新年コンサート。例年この時期ぐらいに開催される「コスト的にお得なコンサート」である。

 開演が14時とやや早めであることから、午前中には家を出て阪神高速を突っ走る。高速はまだ世間的には仕事始めになっていないところが多いことからか、いつもよりはかなり車両数が少なく、毎回必ず渋滞の発生する京橋周辺までスムーズに走り抜けることが出来る。おかげで昼頃には西宮に到着する。

 さて昼食を考える必要がある。まだホールの駐車場に車を入れるのは早すぎることから、西宮ガーデンズに車を置いてレストラン街を散策。しかしどこの店も大行列、10組以上はどこも待ち客がいる状態。さらに私が目を付けていた店は閉店(私が良いと思った店に限ってこれが多い)という羽目で、どこにも入店する気が起こらない。結局は30分ほどレストラン街を散策しただけで出る羽目になってしまう。

 仕方ないのでホールに向かって地下駐車場に車を置くと、ホール周辺を徒歩で店を探してウロウロ。しかしそもそもこの界隈は店自体はあまり多くない上に、肝心の私自身が何を食べたいという食欲が全く起こらない。確かに今日はやや遅めにカッチリ目の朝食を摂ってはきたが、どうもそれだけではないようだ。意欲の低下というやつである。例年この時期には冬ウツの症状が出てきたりするが、それがさらに諸般の環境のせい(公私共にかなり状況が悪化して精神的に追い詰められつつある)で悪化していて、バイタル及びメンタルの双方が落ちている状態なので、根本的な生命力自体が極度に低下している感じである。現在の状況を一言で言えば「自ら死のうとは思わない。しかし死が向こうから迫ってきた時、積極的に逃げようという気も起こらない」という状況である。

 

 

ホールは4階の天井桟敷

 結局はホールの周辺を一回りウォーキングしたような状態で戻ってきてしまう。仕方ないのでホール隣接の喫茶室に入ってアイスコーヒーを飲みながら、この原稿を打ちつつ時間をつぶすことに。かなり不毛ではある。

結局はこのアイスコーヒーを飲んだだけで昼食は抜き

 開場時刻を過ぎたところでホール入りする。今や「コスト的にお得なコンサート」と言ってもアホノミクスによる狂乱円安のせいで、私が買える妥当な価格のチケットはC席ぐらいと言うことで、今回は4階のまさに天井桟敷である。延々と階段を登る必要がある(一応はエレベーターもあるが)。途中の3階には空中庭園があるのがこのホールの特徴。

ホール3階の空中庭園、向かいが小ホール

 4階席はとんでもなく高い位置にある。それでも見切れでないのはホールの設計の良さと言うべきか。4階席はほぼ満席の印象だが、上から見下ろす下層階席には空席も目立つ。これも政府の施策で意図的に貧困化させられた庶民の光景である。高価なチケットを買う金などはすべて竹中平蔵らに中抜きされたということだろう。その内に安席さえ庶民に手が届かなくなり、外来オケの来日もなくなるという時代の到来か。

4階席はかなりの高度がある

 

 

プラハ交響楽団「新世界」

 

一応は見切れ席ではない

指揮:トマーシュ・ブラウネル
チェロ:岡本侑也

ドヴォルザーク:「伝説」op.59より 第3曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第9番<新世界より>
アンコール曲
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第10番、第15番

 

 チェコはチェコフィルを頂点に多くのオケが存在するが、その1つがこのプラハ交響楽団。一曲目は私の知らない曲なので、演奏内容に云々はしにくいが、言えることはやはりアンサンブルの精度という点ではチェコフィルなどとは比較にならない。どうしてもややガチャガチャするところがある。演奏自体の印象はかなり元気な演奏というもの。やや早めのテンポでブイブイと演奏している。

 ブラウネルの指揮についてはかなり特徴が薄いというのが特徴である。指揮もオーソドックスにテンポを取るのが中心に思われ、特別にオケに指示を飛ばしているという様子が見受けられないように思われる。

 オケを14型から12型に縮小してのチェロ協奏曲も同じ調子で、結構早めにサクサクと進んでしまいそうになるので、そこに味やら情緒やらを加えるのが岡本の仕事。彼のチェロ自体は情緒を込めて謳ってくるので、バックのオケをそっち方向に引っ張る役割を果たしている。

 

 

 メインはこのオケにとっても十八番だろうと思われる新世界。この曲になるとチェコのオケはどこでも新世界ブーストがかかって、アンサンブルの精度が1ランク上昇するという加護が得られることになっている。このオケもその通りで、殊更にブラウネルが何かを指示しているようにもうかがえないにも関わらず、第一楽章などはメリハリがついて切れ味も鋭く、さらに謳うべきは謳わせるという極めて印象深い演奏をする。

 ただ第二楽章になると、どうも本来のこのオケの特性であるサクサクと進めたがるという傾向が現れる。もう少しネットリと謳わせれば良いのではというところで、サクサクと音楽が先に進んでしまう印象で、どうにも淡泊である。

 その一方で逆に第三楽章でところどころテンポを落として謳わせていたのに驚いた。これはテンポを取っているブラウネルの指示だろうか? 正直なところ私にはいささか極端気味に感じられた。

 そして最終楽章。予想通りではあるが、オケはいきなりノリノリでバリバリに格好良く演奏してくる(実はギリギリ危ない場面もあったのだが)。そして最後まで終始一貫でノリノリの演奏でクライマックスまでというところ。ブラウネルはノリノリのオケの邪魔をしないようにという大人しめの印象の指揮。

 結構な盛り上がりにアンコールは二曲。予想通りにスラブ舞曲である。10番はお約束と言えるが、15番は若干珍しいか。もうこの曲になるとオケが完全にノリノリで、ブラウネルも「どうぞご自由に」という雰囲気。要は終始ノリが良くてややせっかち気味のオケに、印象の薄い大人しめの指揮者の組み合わせという感覚を受けたのである。


 なお新年早々に能登が地震で大変なことになっているが、西宮のホールの4階席もチェロ協奏曲のクライマックス手前で微妙な揺れが感じられた。恐らく能登で今でも続いている余震の一環だろうと思われる。早い終息を願いたいところ。