徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

映画館をハシゴしてMETと宮崎駿の「君たちはどう生きるか」

METライブビューイングの前に鉄オタ視察

 この夜は早朝覚醒などもあったが、二度寝で目覚ましを設定していた8時手前まで意地で就寝。若干頭の重さはあるが、まあまあの目覚め。

 昨日に買い込んでいたミートスパを朝食として摂ると、朝風呂で体を温める。なかなか快適。これがあってのこのホテルよ。

 さて今日の予定だが、今日はコンサートでなくて映画館のはしごになる。まずはMETライブビューイングの今シーズンのラスト。モーツァルトの「魔笛」の新演出が上映される。「魔笛」に関しては今まで何度か見ているのでもう良いかとの気持ちもあったが、新演出とのことなので演出でどれだけ作品が変わるかを見るために出向くことにした。

 上映は11時10分からなんだが、ホテルをやや早めに出ることにする。少し立ち寄ろうと考えたから。関空特急はるかなどは今まで新大阪から貨物線を使用して、大阪駅をパスするルートで運航されていたのだが、これらが停車できる地下ホームがJR大阪北にできたという。そこでそれを見に行ってやろうという鉄オタ的興味。

 環状線ホームの西端に下に降りるエスカレーターがついている。そう言えばこの部分はかなり以前からずっと工事中だったのを思い出す。

ホーム西端に降り口がある

 

 

 それを降りると1階の連絡通路がある。場所的に桜橋口のさらに西に連絡通路が出来たということになる。

一階へ降りる

一階連絡通路

 ここに西出口もあるが、さらに北に進むと下りのエスカレーターがある。

西出口

通路北端に下りエスカレーター

 これが結構深く潜ることになるが、すぐに登りエスカレーターへ。どうやら大阪駅北側の道路を潜っているらしい。

結構降りる

降りるとまたすぐに上がることに

 

 

 道路北側に出ると、ここに北出口と地下ホームへの下りエスカレータがある。とりあえず地下ホームに降りてみると、関空特急側はホームドアがあり、久宝寺方面行き普通列車乗り場にはホームドアがない構造になっている。

登り切った先が地下ホームへのエスカレーターと地下出口

エスカレーターで降りた地下ホーム

関空特急と久宝寺方面行き列車が通る模様

はるか側にはホームドア

 地下出口にはニュースなどで話題になっていた顔認証改札がある。ただしこれって意味があるんだろうか? 当然のように私は事前登録なんてしていないので利用不可。そもそもこの改札口を利用するもの自体がほとんどいない。

地下出口

これが噂の顔認証改札機か

 

 

 北出口から出ると、左手に当たる北側はまだ工事中なのかシャッターが降りている。右手すぐにある階段から地上に上がってみると思いがけないところに出てくる。いずれはこの辺りにも商業施設ができるんだろうが、現在はまだ工事中ばかりのエリア内に孤立した状態。である。

左手は行き止まり

右手に登り口が

階段を上がるとここに出る

大阪駅側から見ると何もない

 今回の地下ホーム建設は、大阪の貨物駅跡の再開発に連動した工事なのだろう。これで関空から大阪キタに直行できることになるが、再開発でさらなる集客力アップを目指すキタの振興策だろう。ただキタへの一極集中化振興策でもあり、今でも地盤沈下気味のミナミのさらなる地盤沈下につながる気もする。

 

 

 これで大阪駅の視察は終了したので大阪ステーションシティシネマに向かうことにする。ただあまりに早く出過ぎたようである。結局は劇場で1時間ほどつぶす必要に迫られることに。しかも昔は座れる椅子があったはずなんだが、混雑するためか完全に撤去されていて立ちんぼ。上映開始前に疲れる羽目に。

大阪ステーションシティシネマで1時間待つ羽目に

 ようやく上映時間だが、ゾロゾロと大勢が入っていくことに驚く。100席ぐらいある劇場が8割以上ぐらい入っている様子。モーツァルト人気か、三連休の日曜だからか、大阪ステーションシティシネマの場所柄か。いつもガラガラのキノシネマ神戸国際とはかなりの違いである。もっともキノシネマでも前回の「ドン・ジョヴァンニ」は今までの作品に比べて入りが多かった(と言っても20人ぐらいだが)から、やはりモーツァルト人気はあるんだろう。そう言えばここの劇場では先週、ロイヤルオペラハウスの「フィガロの結婚」の上映もあったはずなんだが、それはどのぐらい入ったんだろう?

 

 

METライブビューイング モーツァルト「魔笛」

指揮:ナタリー・シュトゥッツマン
演出:サイモン・マクバーニー
出演:エリン・モーリー、ローレンス・ブラウンリー、トーマス・オーリマンス、キャスリン・ルイック、スティーヴン・ミリング

 モーツァルトの有名な人気の大衆向けオペラであるが、今回の上映では新演出になっているのが特徴である。マクバーニーによる演出は現代翻案的なものだが、単純に時代を変えているだけでなく、オケまでが舞台と一体になった演出になっており、さらには出演者がオケピから場内までを走り回るという賑やかな演出である。

 とにかく演出の斬新さが目立つ。METオケのフルート主席にタミーノから魔笛が渡されたりなど、オケまで演技に巻き込んでいる。またパパゲーノのオーリマンスが客席にまで入り込んだのは、事前からの仕込みなのかそれともアドリブなのかと首をかしげてしまったり。とにかく斬新というか、非常に楽しい演出である。ノリとしては子供の頃にステージで見た記憶のある児童向けの演劇に近いものがある。

 もっともこの斬新な演出は、出演者が走り回ることになるので歌手たちの負担は半端ない。それだけにそこのところは実力者を配している。なおタミーノが黒人というのは、今どきのポリコレを意識したわけでもないと思うがかなり斬新。もっとも起用されたブラウンリーは非常に透明な美しい声であり、パミーナが一目で惹かれてしまう美男子タミーノのイメージにふさわしいものである(見た目が腹の出た中年のオッサンというのはご愛敬だが)。モーリーは悩める美少女パミーナを好演しているし、オーリマンスによる狂言回しのパパゲーノはまさに神出鬼没の縦横無尽である。

 ザラストロのミリングが渋い存在感を示していたが、やはり特筆すべきは夜の女王のルイックだろう。演出でオドロオドロシさが増している本作の夜の女王を圧倒的な存在感で演じきった。また有名なアクロバチックな歌唱も激しい演技をしながら難なくこなしており、カーテンコールでは全員がスタンディングオベーションであり、主役陣に勝るのではないかというほどの大喝采を浴びていたが、それも納得である。なおこの夜の女王、通常はザラストロの力で駆逐されてそれっきりというのが普通だが、本演出ではザラストロによって救済されて、パミーナとタミーノの結婚に立ち会っているのはなかなか斬新。

 モーツァルトの大衆向けオペラということから、そもそもかなり楽しい仕掛けを用意していたのではという考えからの演出というが、確かにこうして見せられると納得させられるものがある。まああの世のモーツァルトが見ても「オイオイ、それはない」という反応はしないだろうと私も思う。

 

 

君たちはどう生きるか

 上映が終わると直ちに劇場を後にして移動する。次はイオンシネマシアタス心斎橋で「君たちはどう生きるか」を見ることにする。もっとも単にこの映画を見るだけなら、そのまま大阪ステーションシティシネマで続けて見たら楽なんだが、わざわざイオンシネマに移動するのは、イオンのミリオンカード特典でイオンシネマの映画は1000円で鑑賞できるから。もっとも移動時間が40分ほどなので結構ドタバタした移動になるが、まあ地下鉄で3駅なのでそう時間はかからない。

 心斎橋パルコの12階に劇場はある。シネコン形式だが、1つ1つのシアターは定員70人程度で決して大きくはない都市型シアターである。

 なお本作は「事前に先入観を持たずに作品を鑑賞してほしい」という意図から、積極的な宣伝を行わず、作品の内容に関する情報は驚くほど出ていない(タイトルはかつて話題になった書物からとったらしいが、宮崎駿作品の常でそれが原作ではないという情報ぐらい)。それどころかパンフレットも上映期間が終了してから発売という徹底ぶり。そういうわけなので、私はこの作品の詳細レポートを「白鷺館アニメ棟」の方に掲載するが、どうしてもその内容はネタバレを含むことにならざるをえないので、製作者の意思を尊重して事前に先入観を持たないために、そちらに目を通すのは自身が作品を見られてからにしていただきたいところである。

anime.ksagi.work

 なおあまりに宣伝がないものだから、私でさえこの作品のことを知ったのはほんの4、5日前で、慌ててスケジュールの見直しをしてチケットの手配をしたのである。通常はこんなやり方をしたら劇場がガラガラになる危険があるのだが、この劇場の案内を見る限り、今日の最終上映まですべて満席になっている。この辺りはさすがに宮崎駿のネームバリューか。私は早めにチケットを手配してたのだが、そうでないと危なかった。

既に今日の上映回は全て満席

 

 

久しぶりに新世界で串カツ

 映画を終えるとホテルに戻ることにする。夕食をここで摂ることも頭をよぎったが、確か以前に来た時(確か「ガラスの孤城」を見にここに来たことがある)に、上の飲食店は高いところばかりだった記憶があるので、さっさとホームグランドの新今宮に戻ってしまう。

 さて夕食だが、最初は「らいらいけん」を考えたのだが、日曜は休業のようである。そう言えば今日は土曜でなくて日曜だった・・・。「南自由軒」は昨日行っているし、新世界まで足を延ばすことにする。

 例によって「八重勝」と「てんぐ」の前は大行列である。最近は「大興寿司」にまで行列ができるようになっているから、じゃんじゃん横丁の混雑が半端でない。そこを何とか通り抜けると、たまたま「串カツだるまジャンジャン店」に行列がなかったことから入店することにする。なおこれは完全にタイミングのものであり、私の入店後にはすぐに行列が出来ていた。

「てんぐ」の行列と「大興寿司」の行列がぶつかって酷いことに

 入ってしまったものの、最近は胃の調子が良くないことからあまり串カツでガッツリという気になりにくいのも本音。とりあえずコーラーを頼んでからメニューとにらめっこ。それにしても以前よりも明らかに価格が上がっている。しかもフードロス対策を大義名分にして、キャベツまで有料化されている。こんなところまでアホノミクスの悪影響が・・・。とりあえず10本ほど頼む。

適当に10本ほどつまむ

 まあ味は相変わらずで、揚げ油が意外にあっさりしているから、10本程度だったら胸がむかつくということはない。もっとも価格が上がっただけでなく、明らかに小さくなったと感じられる串もあり、何となく暗澹たる気持ちになる。この程度で支払いは2000円ちかくなので、もはや串カツも庶民には遠いぜいたくなものになりつつある。正直なところ、同じ2000円程度を払うなら、「グリル梵」のビーフカツの方が満足感は高いかな。

 

 

 串カツ10本だと本音として腹が中途半端なので、久しぶりに隣のうどん屋「松屋」「かけうどん(170円)」を頂いていくことにする。私の来店時には外国人らが待っていたが、立ち食いうどんで回転が早いのですぐに空きが出る。あまり腰のしっかりしていないなんてことないうどんだが、これこそが大阪うどんでもある。そして最大のポイントはこれで170円という驚異のCPの高さである。やはり本来の大阪グルメというのはCPの高さがあってこそである。なお観光客に人気はきつねうどんの模様。

隣の松屋はいつも人気

CP最強の「ザ・大阪のうどん」

 夕食を終えると、コンビニに立ち寄って夜食とライフライン(ミネラル麦茶)、明日の朝食を購入して戻ってくる。

 

 

大河は相変わらずのようで・・・

 ホテルに戻るとまずは冷房をガンガン回して体から熱気を抜いてから入浴。風呂上がりにテレビを付けたら大河をやっていたので久しぶりに少し見てみたが・・・相変わらずあまりに酷すぎて絶句。どうも家康が本能寺の変を起こしそうな勢いである。しかも理由は「妻子の恨み」。前回、あり得ない築山殿の最期を描いて、歴史ファンから総スカンを食らったと聞いているが、どうもひたすらファンタジー大河の道を驀進しているようである。私はこの作品は、あまりにあり得ないホームドラマな内容と、Vサインして「ラブ&ピース」って言いそうな酷すぎる一向宗の描写に呆れて落ちたんだが、そもそもその前から「出来ることなら歴史を捏造したい」という意志は明確に見えていた(本多忠勝をいきなり死んだことにしようとしたり)。確かに結果が分かっている歴史物は事実を無視したくなるのは分からないではないが、それをやりたいなら最初から大河なんて手がけるなと言いたいところ。ファンタジー大河の馬鹿ップリも極まれりである。

 マヌケ大河で思い切り脱力してしまったが、まだ就寝するには早いので、今日の原稿に取りかかる。そしてこの夜はふけていくのである。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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どうする家康 第6話「続・瀬名奪還作戦」

新装半蔵軍団が任務に臨む

 さて、前回は歴史には存在しない(残っていない)瀬名の奪還作戦を描いておりましたが、今回は一応歴史に残っている方の瀬名の奪還作戦です。前回に散々の失敗をした山師・本多正信と服部半蔵は、汚名返上を期して次の作戦を出してきます。上ノ郷城を攻略して、城主の鵜殿長照と息子2人を生け捕りにして人質交換の交渉をしようという計略。鵜殿氏は今川家の親戚衆で今川家への忠誠も篤いので、それでなくても配下の離反が続いている氏真としては見捨てるわけにも行かないだろうとの話。

     
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 なお服部半蔵ボロの軍団は前回の作戦失敗でメンバーがほぼ全滅してしまったので、強制的に代替わりになって女忍者からガキまで加わった寄せ集め感が半端ないですが、実際はこの後の実際の作戦実行の場面になったら、むしろ精鋭になったような印象があって、どうも描き方が「?」だったりします。なおさすがにいかにも急造な半蔵軍団に100%作戦を託すのは心許ないと思ったのか、正信は保険としていかにも忍者忍者した甲賀忍者も雇っていました。結局はこの連中、後で大して活躍した様子もなかったので登場の意味はないのですが、あえてこんな連中を出したのは歴史の辻褄合わせです。と言うのも、上ノ郷城攻略では「甲賀忍者が活躍した」と記録に残っていますが、服部半蔵の配下だったら伊賀忍者になってしまうので。もっと早くから半蔵を活躍させたいというシナリオ上の都合で辻褄合わせをしたということでしょう。この作品、どうも歴史捏造をしたがる傾向はありますが、あからさまに記録に残っている事実まで無視するということはしたくないようです。

 

 

上ノ郷城攻略戦は苦戦

 こうして家康の上ノ郷城攻略は始まるが、昼の部の攻撃はいきなりしゃしゃり出てきた家康のオカン(於大の方)が「攻略は我が夫にお任せを。その代わりに攻略した上ノ郷城を頂戴。」ときたせいで、いかにも頼りなげな久松長家が大将として出陣。そして上ノ郷城攻略が開始される。しかしこの上ノ郷城、どう見ても第1話で登場した大高城と全く同じ城なんだよな・・・ちなみに刈谷城もそうでしたね。まあわざわざ城が変わる度にセットを作り替えるわけにもいかないのは分かるんだが、もうちょっと工夫がないものかと思うが・・・。ちなみにここで久松長家が唐突に登場するのは、史実では実際にこの後にこの城に彼が入ったからだろう。この辺りも辻褄はしっかりと合わせてくる。

 しかし上ノ郷城攻略戦昼の部は大高城・・・じゃなかった、上ノ郷城の堅固な地形に阻まれて大苦戦。その挙げ句に影に隠れて様子を覗っていた久松長家が鵜殿長照直々の攻撃で撃たれそうになって、いかにも弱そうな長家は「今日はこのぐらいにしといたるわ」と撤退という池乃めだか状態。家康は「なにやってんの」とイライラで爪をかむ(これは実際に家康のくせだったのが有名)が義理の父ちゃんだけにあまり強くは言えませんってところ。

 一方、ブチ切れ気味の氏真は「鵜殿を救うぞ、裏切り者の元康の目の前で人質の首を刎ねてやる」と瀬名達を引き連れて出陣してきます。以前には散々家康からの援軍要請を無視した挙げ句にとうとう離反されてしまったので、さすがにここで忠臣・鵜殿長照(回りが家康に寝返る中で孤軍奮闘状態)まで見捨てたら今川家臣団が持たないというところ。今川本隊は吉田城(豊橋市の豊川沿いの堅固な城郭)までやって来る

 

 

夜襲で半蔵軍団が大活躍して人質交換に

 今川本隊まで到着したら上ノ郷城攻略は絶望的な家康は夜襲に賭けることに。ここでようやく新装ボロの軍団が大活躍、敵の見廻り兵を倒して成り代わって潜入すると、回りでは死体に紛れて潜行していた連中が続々と活動開始、「おっ、忍者みたいだ(笑)」と驚くところではあります。そして彼らが火を付けた混乱に乗じてホンダムやチャラい榊原康政らが乱入。包囲された鵜殿長照は自刃してしまうので、それなら代わりに息子たちをと走る半蔵達、しかし捕らえられると考えて海に身を投げる鵜殿兄弟・・・ってダメじゃんと思っていたら、実は捕まえてましたっていう謎の演出。何なんだろうな・・・以前にも「本多忠勝討ち死に!」なんていう無駄な演出があったが。こういう見事にツボを外した演出は意味不明だ。

 で、いよいよ人質奪還交渉だが、命を張る気なんてさらさらない本多正信は逃げて、やる気満々の石川数正が出張ることに。しかしかなりぶち切れている氏真は「2対5の人質交換なんてできるか!首を刎ねてお前の首と一緒に送りつけてやる!」とかなりのヒステリー。うーん、氏真ってまあ戦国大名としての器量はなかったと言われているが、それにしても立派な親父と比べるとあまりにひどい描き方だな。

 

 

関口夫妻が見せ場を作って瀬名は無事に家康の元に

 瀬名危うしというところで立ち上がるのが、前回に散々馬鹿ップリをさらしてしまった母の巴。自分と旦那は処罰を受けるのに残るから瀬名達は返してくれと嘆願。そこで「あなたは私がお守りをしていた子供の頃からそのように感情を抑えきれずに喚き散らすから家臣が付いてこないんだ」とかつて面倒をみてやった恩をチラリと見せながら説得、旦那の方も「前途有望な鵜飼兄弟を救ってやってください、今川を建て直してください」とあくまで今川家への忠臣アピールをしながら「義元様なら交渉に応じたでしょう」という氏真にとって一番痛いコンプレックスを突くという策士ぶり。今までいささか頼りない様子だった瀬名の両親がここで最後の見せ場を作って、氏真はグラッと来てしまって交渉成立という展開。

 それにしても氏真「元康にはどれだけ目をかけていたか」と片思いの未練タラタラだし、「皆がワシを裏切る」と数正の前で今川の現状暴露しちまってるんだが・・・。それに冷静に考えたら、氏真が瀬名を斬ってもなんの得にもならんし、鵜殿を見捨てたとなったら今川家臣団はガタガタになるのが必至だから、ここで交渉に応じないという結論はあり得ないんだが。

 無事に交渉成立で家康の元に戻ってきた瀬名。しかし瀬名は巴から「おなごは大切なものを守るために命を懸けるんです。あなたが命を懸けないければならない時が、いずれ必ず来ます。」との言葉を受けている。母が娘のためを思った感動的な言葉なんだが、これが歴史を知っていたら、後に家康が無情にも息子の信康を切り捨てた時に、瀬名を縛る呪いの言葉になりそうだなという予感がプンプンするところではある。

 にしてもここのところ松潤の出番が全くないのであるが・・・。どうも真面目な話をする時には松潤が邪魔になっている雰囲気が。

 

 

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どうする家康 第5話「瀬名奪還作戦」

山師正信と服部半蔵ボロの軍団

 さて今回は大胆な歴史捏造を開始。いかにも胡散臭い本多正信が登場して、服部半蔵影の軍団を率いて瀬名姫奪還作戦を・・・。とは言うものの、この本多正信がいかに怪しさ全開の上に、服部半蔵はいかにも自信なさげ、さらにその軍団も千葉真一率いる影の軍団とは雲泥の差のボロの軍団です。こりゃ作戦成功は覚束ないのでは・・・という雰囲気が最初からプンプンですが、まあそりゃ歴史の事実としては失敗するのは確定しています。でないと石川数正の人質奪還交渉がなくなっちまいますから。

     
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 と言うわけで、もう結果は分かってるので、今回は「どのようにして失敗するのか」が結局は主眼になるのですが、氏真の命を受けて鵜殿長照が妹の田鶴をスパイに送り込んでいるのがあからさまだったので「ああ、ここから多分作戦が露顕するんだろうな」というのが想像つきます。そう思っていたら案の定田鶴が瀬名に対して「お悩みがあるなら何でもご相談ください」と水を向けているので、視聴者としては「言うなよ、言うなよ」と思うところですが、ここでは瀬名は言わない。まあこの番組はここで瀬名がペラペラと秘密を喋るようなアホには設定していないのでしょう。

 

 

作戦失敗でようやく歴史の本筋に戻ることになる模様

 しかし歴史捏造した作戦は当然の宿命として失敗。ボロの軍団は待ち伏せしていた鵜殿軍勢に包囲されてボロボロ。半蔵は本多正信と共に這々の体で逃げ延びざるを得ないという状況になってしまって、見事に作戦失敗です。さてこうなると秘密を漏らしたバカは誰かという話になるのですが、それは案の定と言うか、どうも最初から今ひとつ作戦の気乗りしていなかった風のあった瀬名の母の巴でしたというオチ。私は巴が自ら垂れ込むという可能性まで考えていましたが、さすがにそれだと夫と娘を見捨てた形になってしまうのであまりに無茶かと思ってましたが、この母がホイホイと田鶴に作戦を明かしてしまったアホでしたというオチになってました。

 で、作戦失敗でスゴスゴと引き揚げてきた本多正信ですが、ここから次は上ノ郷城の鵜殿長照と息子たちを生け捕りにするという歴史に従った作戦を提案してきました。これでようやく人質交換で瀬名と息子たちを奪還という話に次回以降なりそうです。もっとも瀬名の父の関口氏純は切腹させられますし、恐らく母の巴も道連れでしょう。瀬名は父母と涙の別れをした後に家康と涙の再会という展開になるんでしょうか。もっとも史実を見ると最初から政略結婚だった家康は、どうもこの時点で既に瀬名に対して情はなかった節があるんですが。

 

 

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どうする家康 第4話「清洲でどうする!」

白兎家康はビビリながら清洲のクレイジー信長の元へ

 さて、織田に付くと決めたものの未だに信長が恐くて仕方ないらしい家康。いきなり部下連中に「一応対等な同盟なんだから舐められてはいけない」とばかりに面接のリハーサルを受けさせられているという意味不明シーンから。相変わらず初っ端から家康のへたれっぷりを強調する展開になっている。

     
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 で、一行が目指したのはCGバリバリの無意味に巨大な清洲城。恐らくお登りさんの三河一行が精神的に気圧されていることを象徴する意図があるのかと思うが、どう見てもあれだと日本の城ではなくて、中国の紫禁城とかの雰囲気。もしくは京の大内裏。時代考証大丈夫か? 信長時代の清洲城があんなに巨大な上に防御施設が皆無な構造しているとは思えんのだが。

 相変わらずのヤンキー度全開の信長の前で家康は少々ビビリ気味。それでもどうにかこうにか同盟締結という話になって一安心。宿舎に案内するのはパシリ感半端ない木下藤吉郎。まあ秀吉ってお調子者というところはあるが、さすがに描き方が軽すぎ。まあ今のうちから「腹の底で何を考えているか分からない」という底意地の悪さのようなものは臭わせてはいるが。

 

 

ヤンキーお市と接近遭遇

 とりあえず一息ついてヤレヤレの家康だが、いきなり信長から相撲に呼び出される。かつてボコボコにいじめられた悪夢がフラッシュバックしている模様。まあそれに相撲といっても、今の大相撲のようなのどかなものではなく、蹴りもパンチもなんでもありの実質ヤンキーの喧嘩。この作品の信長の描き方ってとことんヤンキーで一貫している。その挙げ句に信長に続いて戦うことになったのが謎の相手で、これが実はお市だったというとんでも展開。この作品のお市は深窓のお嬢様ではなくて、もろにヤンキーです。織田家ってヤンキーしかいないのか? どちらか言えばこのキャラクターは、お市ではなくて帰蝶の方が一般にシックリくるような気がするが。

 さらに信長が家康とお市を結婚させようとするという大胆すぎる歴史改変。「自分には既に妻子がいるから」と断ろうとする家康だが、信長に押しきられた挙げ句に今川を滅ぼすことを命じられるということに。この作品の家康は主人公アゲの一環で明らかに愛妻家に描写されてるんだが、現実はもともと瀬名との結婚は政略結婚だった上に、明らかに織田に付いた時点で完全に見捨ててます。だからこの作品のように信長からお市との結婚を持ち掛けられたらホイホイと乗った可能性大。そういう事実がなかったってことは、まずこういう提案はなかったろう。

 

 

残された瀬名は今川ゲス真のせいでとんでもないことに・・・

 一方見捨てられた瀬名はと言えば、ややヒステリックな氏真に関口一族の助命を条件に夜伽を命じられるというとんでも展開。そう言えば第1話で氏真が瀬名を側室にすることを義元に願い出るという「?」イベントがあったが、それが一応の伏線か。要するに氏真が裏切り者である家康の妻子を殺さずにいた理由を、氏真の横恋慕というゲスい理由にした訳か。まあ分かりやすい理由ではあるが、これもあんまりって感じだな。恐らく現実は氏真の計算だと思う。見せしめとして家康の妻子を処刑するのは簡単だが、それをすると家康を完全に織田方に追いやることになるし、その後の交渉カードもなくなることになる。だからあくまで交渉カードとして置いておいたと考えるのが妥当だろう。だから実際にその後に石川数正が乗り込んで捕虜交換が成立するんだが・・・って思ってたら、次回予告によるとどうも本多正信が服部半蔵けしかけての奪還作戦やるっていうこれまた大胆な歴改変をする模様。もっともこれが成功したら数正の活躍がなくなってしまうわけだが・・・。

 それにしても義元はかなり立派な描かれ方をしていたが、馬鹿ボン氏真については単純な馬鹿ボンではなくて猟奇的な描き方になっている。何か家康に対する思いも「可愛さ余って憎さ百倍」って雰囲気があり、夜伽にやってきた瀬名を押し倒して血文字で「たすけて」メールを書かせるという変態っぷりを発揮。このゲス真の仕打ちにさすがの家康も動揺してお市との縁談を断る決意を。しかしそれは事情を察したお市の方が気を回して向こうから断ってくれると。そして分かるのは、お市が昔家康に命を助けられていて、その時から家康に惚れていたという究極の主人公アゲ・・・。何か大胆っていうか、滅茶苦茶って言うか。で、信長がお市を家康と結婚させようとしていたのも、単に政略だけでなくお市の気持ちを知っていた上でという、良く分からんがこの信長、ツンデレ属性も持っていそうである。

 まあ主人公アゲのための歴史改変は大河ドラマの常とは言いつつも、かなり豪快に歴史改変してきたな。特に瀬名こと築山殿との関係は、明らかに政略結婚だったから実質的にはこの時点で夫婦関係は終わっていたに等しく、人質交換で奪還した後も築山殿とは別居状態って話もあり、その挙げ句に最後は殺してしまうんだが、その辺りをどう描くのやら。今回の話で瀬名の気持ちが段々と家康から離れていく伏線は張っているような気はしたが、主人公アゲの一環で家康の方はあくまで愛妻家描写だから、そのあたりのギャップをどう片付けるつもりやら。

 

 

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どうする家康 第3話「三河平定戦」

三河平定さえままならぬヘタレ家康

 何やら「ヘタレ家康」驀進中です。氏真から「三河から織田を撃退したら駿府に戻ってこい」との書状をもらって「よっしゃ!ワシは氏真様の側近として頑張るぞ!」と張り切る家康。鳥居の爺さんがセコセコとへそくりを貯めていたらしく、軍資金も兵器も十分、意気揚々と織田方に付いている伯父の水野信元の刈谷城攻略にかかる。

     
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 士気の高い三河勢は、前々回に登場した大高城と全く同じ城としか思えない刈谷城に、ホンダムが陣頭に立って怒濤の攻撃、よし勝てるぞと思ったところで背後から織田の援軍。挟み撃ちになった家康はパニクりながら「退け、退け」と大騒ぎだが、結局は次のシーンでは惨敗になってしまっているという情けない状況。それにしてもこの大河。合戦の一番大変なところは完全に省略する省エネ大河だな。セットの使い回しももう少しやりようがあるだろうに。ちなみに水野と再戦して再度敗れて死屍累々のシーンも、明らかに前回で三河勢が出張ってきていた水野から銃撃を受けたのと全く同じセット。何かショボいよな・・・。

 その挙げ句に、第一回刈谷城攻略戦でホンダム討ち死になんていうあり得ないネタを入れるし。死んだかと思ったホンダムは生きてました・・・って当たり前だろ。このネタがまた何の意味も持っていないというのが呆れる次第。こういうネタを入れるなら、ホンダムが死んだと聞いて動揺して自分のせいだと自身を責める家康とかいうシーンでも入らないと何の意味もないのに、「本多忠勝討ち死に」「エッ?!」「実は生きてました」で終わりって・・・。全く脚本と演出の意図が理解できない。

 

 

織田に付くべきと回りからけしかけられるも、ひたすら心は駿府にある家康

 そして連戦連敗の負けっぷりのひどさに、三河家中からも「いつまで経っても援軍送って来れない今川を見限って、織田に付くべき」というごもっともな意見が持ち上がってくるんだが、主体性もなければ本音では「侍稼業が嫌じゃった」のヘタレ家康は駿府に帰って妻子に会うことしか頭にない。

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やっぱり今回の大河のOPはこれの方がピッタリ

 その挙げ句に今川義元再登場というあり得ない展開まで。最初から「三河なんて何の思いもないし、自分は駿府が良いんだ」というのが本作の家康の一貫した姿勢ですが、それにしてもこりゃあまりにあまりだな。実際には家康とていくらか悩みはあったろうが、ここは自分の意志で自立ぐらいは決めたはずなんだが、本作のバニーちゃんこと白兎家康は、どうやら信長が心底恐ろしい模様。あっちのクレイジー信長は明らかに白兎ちゃんに惚れてるみたいなのに。

 

 

最後は家臣にまで見限られているヘタレ家康

 結局は水野が連れてきたオカンには「君主たる者、妻子ぐらいは捨てろ」とハッパかけられてぶち切れるし、何だかんだで重臣の酒井忠次と石川数正にまで「だって今川って、今まで散々重税を取り立てたくせに、未だに援軍さえ送ってこないじゃん。どうしても駿府に帰るってんなら、もう俺たちをぶった切ってから帰って」と迫られて万事休す。ヘタレ家康は、家臣にまで見限られかねない状況になって「嫌じゃあ」と言いながらも今川方の吉良義昭を攻めて織田方に付きます宣言。こりゃわざわざ家康に協力するために岡崎にまで出向いた挙げ句に、惨敗で自分達も被害を受けた吉良義昭の方が気の毒だな。「なぜだ」になるのも当然。

 で、家康が戻ってくる日をルンルン気分で待っていた駿府の現代っ子の築山殿は命さえ危ない状況に。既に三河の家臣衆の妻子は処刑された模様。彼女の父親だけはこういう事態が起こりうることを推測していたようではあったのだが。

 何か運命に翻弄され過ぎているだけの家康が、さすがにここまで来ると画期的と言うよりはあまりにヘタレすぎて見るに耐えん。どこかの段階で覚醒するんだろうか? だけどこのままだと大坂夏の陣でも「なに? 真田が突っ込んできた?! どうすんじゃ、とにかくワシは逃げるぞ!!」になりそうな気配が・・・。

 

 

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どうする家康 第2話「兎と狼」

何やら怪しい関係の信長と家康

 突っ走っている現代劇「徳川家康」ですが、相も変わらずあり得ない事実を次々と捏造してきます。やはり作品的には岡田准一の顔見せが必要と、わざわざ家康の元に現れる織田信長。家康は織田家での人質時代にいじめっ子信長に散々いたぶられて、骨の髄まで信長の怖さが身に染みついている模様。それにしても信長はいろいろな描き方をされますが、今回の信長はヤンキー度が一番高い。親父のライダー1号に刀をぬいて立ち向かうというこれまたあり得ないことをやってくれます。この信長が何やら家康に歪んだ愛情を持っている模様で、かなり歪な形ではありますが、今流行のBLを少し匂わせている。最近のNHKってこういう要素は不可欠なんでしょうか? そう言えば歴代最低視聴率と言われて平清盛でも、平氏の頭領と源氏の頭領がBL的展開をしていた前半は意外と好調でした。あのドラマが視聴率低下していったのはそういうのがなくなって以降。特に後半に清盛が暗黒変して、バニーちゃんこと兎丸あたりまで粛正された頃から視聴率はボロボロになったとか。

     
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 ちなみにNHKでBLといったら外せないのが、一昨年の正月ドラマの「ライジング若冲」。若冲の若き日を描くドラマと聞いていたら、中身はもろにBLそのものでした(笑)。おかげて私のブログにも「若冲 BL」のキーワード検索で来る人が続出で、危うく私のブログがBLブログに分類され掛かったというオチが・・・ん、これ以上触れていたらまたそっちに分類されかねないから、この話はこの程度にしておきますか。

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切腹を考える家康・・・しかし誰も止めない(笑)

 さてとりあえず信長はデモンストレーションだけしてから去り(そういう行動自体があり得ないんだが)、家康は這々の体で岡崎に逃げ帰る・・・と思っていたら、当の家康は「お前らの妻子は岡崎にいるかもしらんが、ワシの妻子は駿府だから、駿府に帰る」などと我が儘を言っております。その挙げ句に「岡崎なんかよりも駿府の方がずっと良い」という家臣達が思わず肩を落としてしまうような本音を。さすが本作の家康はトコトンへたれです。史実では、岡崎の城代が逃げ出したのをこれ幸いと、さっさと岡崎城を乗っ取ったはずなんですが・・・。

 しかし岡崎まで行ったところで、同門の裏切り者が出て、とにかく信じようと言った家康はまんまと欺かれて家臣は負傷を追って這々の体でお寺に立て籠もり。なかなか情けない状況ですが、ここのお寺の住職が里見浩太朗ですから、何かこの住職一人で数百人程度の軍勢なら叩っ切りそうな迫力があるのですが・・・。こんなちょい役にここまでの大御所使えるなんてのはさすがに腐ってもNHK。これで後は家康が「家康です」と北大路欣也にバトンタッチしたら、1万ぐらいの軍勢でも一掃しそうだが。

 史実では岡崎に戻ってきたものの将来の展望がなくなった家康は、先祖の墓の前で切腹しようとするのだが、そこを住職に説得されて翻意することになってる。しかし歴史的事実はドンドンとドラマのために捏造するのが本作。何とここに現れたのが、主君に対してため口で話すというあり得ないホンダム。挙げ句の果てが「介錯してやる」と来たもんだ。何やら石川数正も遠くから様子を覗っているだけで止めようとしないし。いやー数正、あんた家康を裏切るのはまだ数十年早いんと違うか・・・。

 

 

やけくそになって開き直った家康だが

 で、切腹しようとしていた家康だが、介錯してやるとまで言われたらかえって決意が鈍った模様。どう見ても葛藤の中身が「いや、ここは死なないと立場なさそうだけど、これをぐさっと腹に刺したら痛そうだな・・・」って雰囲気がある。さすがに「へたれ家康」。やっぱりこの作品のOPテーマって山本正之の方がピッタリだわ。

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やっぱり今回の大河のOPはこれの方がピッタリ

 結局は死ぬ気になって開き直って、ハッタリで裏切り者共を圧倒して岡崎城入りした家康。家臣連中は「おっ、殿がついに覚醒した」と感動していた模様で、あの単純バカのホンダムなんかも「うん、こいつを主君として付いていっても良いかも」なんてことを考えたのが滲んでいる。それどころかお寺で居候していた榊原康政まで付いていきそうです。後に徳川四天王に挙げられるのが彼ですが、出自は低い身分ということになってます。城に入った家康は、この岡崎を拠点にして三河をまとめるぞと家臣の意気を上げていたが、その裏で例によって「どうしよう」になっているというお約束。

 と言うわけで相も変わらず「軽い現代劇」ってことは否定できないところだが、まあ今のNHKにかつての重厚な大河を求めるのは到底不可能だろう。同じ軽さでも、まだ三谷幸喜に比べるとまともな方ではというのが私の評価。

 

 

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どうする家康 第1話「どうする桶狭間」

いかにも今日的な「英雄でない家康」

 今年の大河ドラマは家康とのことだが、とにかく今まで散々取り上げられた題材だけに、同じような描き方ではさすがに通用しないと切り口を変えてきたようです。タイトルから覗えるように、どうやら今回の家康は押し寄せる状況の中で翻弄されて「どうする」を突きつけられて四苦八苦する若者の姿として描く模様。まあ第1話を見ている限りでは「どうする家康」というよりは「へたれ家康」って方がピッタリのようですが。

     
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 なおどうも最近の大河OPはパッとしないのが多いですが、今回のは極めつけですね。1回聞いても何も頭に残らない。正直なところ山もサビも何もない音楽です。実は今回の内容を見ていて、私の頭の中に流れていた曲は一曲ですね。山本正之の「戦国武将のララバイ」。「ホントはのんほい」って感じだからな。実際「侍稼業が嫌じゃった」というのはもろに実感があるし。聞けば聞くほどピッタリだ。

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今回の大河のOPはこれの方がピッタリ

 

 

今川義元が良く描かれたのって今回が初めてでは?

 桶狭間って、確かに家康は敵中孤立で危機一髪に陥ってるんですよね。最前線の大高城に兵糧を輸送する任務に成功して、そこで一服しながら義元本隊の到着を待っていたらまさかの義元討ち死に。全軍総崩れになる中で岡崎城まで這々の体で撤退。もはやこれまでと切腹まで考えたが、止められて思い直すという。

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 その辺りは以前に歴史番組のネタにもなってます

 それにしても今回はチョイ登場しただけの義元がかなり良い描き方をされていた。息子の氏真にしても、ありがちのバカ息子という描き方ではなかったようだ。もっとも家康はこれから氏真と対立することになるので、その辺りは若干微妙な描き方にはなっていたようだが。なお家康は幼少期から過酷な人質生活を送ったとされているが、それは後に家康が大英雄になってからの脚色がかなりあり、実際には今回義元が「我が息子」と言っていたように、将来氏真を支える有力な側近として育成するつもりでいたから、人質と言いつつも客分扱いで、立派な家庭教師(義元の参謀だった太原雪斎)もついて英才教育を施されている。と言うわけで実のところは家康は今川氏に対してはそれほど悪感情を抱いていた様子はなく、実際には何だかんだで氏真の面倒を最後まで見て、氏真は家康の客分的な立場でそれなりに人生を謳歌しているのである(彼は大名の地位を離れて文化人として生涯を終えたが、ある意味でそれは彼の本分である)。

 この辺りは本作ではかなり意識していて、ナレーションが「それは辛く苦しい人質生活を送っておりました」の直後に、家康が脳天気にキャッホーと現れるところに全て象徴させている。この辺りは今回で一番「上手い」と思った演出かな。一応「今までの定説や伝説をぶち壊す」という意志を感じられた。とにかく家康ってなんだかんだいいながらも駿府でそんなにひどい苦労したり虐げられたわけでもない。だから駿府に対してはむしろ「懐かしい」という感情を持っていたのは分かる。そうでないと晩年に今川氏の駿府城を拡張して駿府に移ったりなどはしない。

 

 

方向性は分かるんだが、今風過ぎて軽すぎるのはどうか

 なんかそういうところも表現していたのは確か。三河に戻った時、回りの連中は「殿がお戻りになられた」と大喜びだが、当の家康は「何だ? この田舎くさくて貧乏くさいのは」と戸惑っている様子をもろに出していたが、まさにそれが本音だったのではと思える。伝記の類いだと「家康はこの時に、苦労しながらも将来を見据えて必死で耐えていた家臣達の姿を見て、自分が三河の君主として自立する覚悟を決めた」というようなことになっているが、本音は本作のように「重すぎる荷物を背負わされてもな・・・」ってところだったのでは。実際のところ家康は回りから担がれてNo1にならざるを得なかったけど、彼の本来の性格から見たら優秀な主君の元で家臣として忠勤に励むの方が向いていたし、本人もその方が良かったのではという気もする。

 で、今回のドラマであるが、家康を非英雄の観点から描いたのは今日的。もう既にまともな時代劇を撮るだけの技術がなくなったNHKは完全に開き直ったか、あからさまな現代劇として撮っているというのはここのところの流れ。気になったのは一番最初の登場の時の家康は完全な子供の時だが、それを松潤でそのまんまやってしまったので、さすがに人形持って「ブーン」だと、頭の可哀想な奴に見えてしまって・・・。伝説の暗黒大河「江ちゃん10才」を思い出してしまった。幸いにしてお馬鹿家康が数分で終わったのは救いであったが。

 まあ今回見た限りでは、かつての重厚な大河に比べると比較するのもアホらしいぐらい劣化しているということは完全肯定の上で、一応ギリギリ「あり」かなというところ。流石に本当にギリギリだから、あまりにファンタジーしすぎるとその一線を越える可能性あり。今回もホンダム登場の下りなんて「そんなアホな」ってエピソードだったから。

 

 

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「青天を衝け」総括と「鎌倉殿の13人」

 新大河が始まりましたが、それについてのコメントを書く前に、まずは昨年の「青天を衝け」の総括から。

 

 

主人公アゲが無理矢理過ぎて見ていてしんどくなった

 「青天を衝け」については年末になってから完全にここで触れなくなりましたが、それは見るのをやめたのでなく、単にコメント書くのが面倒臭くなったからです。というのも、自分的に作品に興味が失せてきたのと、色々な面(主に本業の件だが)が年末進行で多忙になってきたところで、この作品見るのも録画したのを後でというパターンになってきて、二週間遅れとかの寝ぼけた時期にコメント出してもな・・・なんて思っている内に面倒臭くなってきました(まあ、私の大河に対するコメントを期待して待ってる人なんていないだろうし)。

 もっとも見てはいたものの、ドラマ自体からかなり心が離れたのも事実です。そもそも大河に付き物の強引な主人公アゲに辟易してましたが、決定的にドン引きしたのは千代の死に纏わる感動的な悲劇。もう見ていて「ああ、これって何も知らずにドラマを純粋に見ている人は「栄一さん可哀想」って涙流して感動してるだろうな」と思った途端に気持ちがスーッと引きました。実際はというと渋沢栄一はあちこちで女を作って隠し子の数は把握できないほどという外道です。ドラマでは、妻を亡くして落ち込んでいる栄一を心配した回りが後妻を斡旋したというような描き方をしてましたが、実際は妻が亡くなると妻妾同居で愛人がいたにも関わらず後妻をさっさと迎えたという男です。また途中で愛人のおくにについて「新しい人生を歩むために渋沢家を出ることになった」なんて誤魔化してましたが、実際は知人に押し付けたというのが事実。多分妻がお千代の時は、お千代が心が広い(というよりも気が弱かったのだろう)ために妻妾同居をしてましたが、後妻の兼子は没落したとはいえ大商人の娘でプライドが高かった(そのことはドラマでもチラッと描いてますが)ために、流石に妻妾同居という外道な状態は継続できなくなったのだろうということが想像できる。

 

 

 息子が家を出た経緯にしても、ドラマでは「偉大な父親の後を継ぐというプレッシャーに耐えかねた」というような描き方でしたが、実際のところは、まず彼が父親の遊び人的部分を濃厚に引いていたということもありますが、口では立派なことを常に唱えているが実生活がそれとズレまくっていた父親に対する反発というのがあったのは間違いないです。なんかその辺りを綺麗に丸めてホームドラマにしてしまっていた辺りは「嘘くさ」と感じてしまった次第。

 また渋沢栄一を正義の人として描くために、岩崎弥太郎が悪の権化のような扱いになってしまったが、実際は両人は「全く同類」で、この二人が対立したのは同族嫌悪のようなところがある。岩崎弥太郎が大隈重信と癒着した悪徳商人のようにされていたが、実際ところは渋沢栄一も政府と結びついた政商であって立場は変わらない。

 なお渋沢栄一が貧民救済に政府の支援を求めた時に「貧困は自己責任だ」「貧民救済などしたら怠惰になって働かなくなる」なんて意見を出して反対していた連中がいたが、「こいつら日本維新の会か?」ってツッコミ入れながら見ていたら、確かによくよく考えたらこいつらはそもそも維新政府だったというのは自分で笑ってしまったが。これが制作者からの暗喩だったら立派なものだが、まあそこまでは考えてはいないとは思う。もっとも渋沢栄一が晩年にアメリカを訪問する下りで、列車の中で給仕の金髪のお姉ちゃんに対して、なぜか栄一が一瞬「獲物を狩る獣の目」になっていたのだが、なんとくなく制作スタッフの中にも思うところがある者がいるのではという気はした。

 というわけで、とにかく渋沢栄一を無理矢理に立派な人と描くための無茶ぶりが目につきだして、見ていてしんどくなったというのが本音です。

 

 

三谷幸喜の限界がいきなり濃厚に現れた新大河

 さて話変わって新大河の「鎌倉殿の13人」ですが・・・三谷幸喜と聞いたときに感じていた嫌な予感がことごとく的中したというのが本音です。

 まず基本的に時代劇になっていないのは言うまでもないこと。「そっちか!」なんてツッコミなんて時代劇ではあり得ないが、まあこれは三谷幸喜の作風から予測は付いたことなので驚きはしない。元々NHKも三谷幸喜を起用した時点でまともな時代劇を作るつもりなんてないのは分かる(その割には重厚なOPが浮きまくってるんだが)。

 しかし基本的に「変わった連中のドタバタドラマしか描けない」という三谷幸喜の限界がもろにドラマ全体に現れた結果、馬鹿にしか見えない北条時政、主体性もなくオロオロしているだけの北条義時、真面目に物事を考えているとは思えない源頼朝、いきなり頼朝を誘惑しようと露骨に接近を図る現代娘の北条政子と、時代劇以前に登場人物が歴史を無視しての現代コメディの配置になってしまっており、いわゆる「カツラを被った吉本新喜劇」と言った趣。こういうのが好きな者もいるだろうが、本来の大河ドラマファンからは間違いなく顰蹙ものだろう。

 そしてなぜ起用したか分からない長澤まさみの極めて聞き取りにくいナレーションに、話題作りで起用したと思われるガッキーの棒演技。長澤まさみについては「作りすぎた」結果としてボソボソ喋りになってしまって滑舌の悪さが際立ってしまっているし、ガッキーの方は時代劇を半端に意識したのか、棒っぷりに拍車がかかってしまっている印象。

 元々三谷幸喜は大河ドラマ向きではないのだが、それをわざわざ起用したというのは「真田丸」はNHK的には成功作と考えているんだろうなということ。私にしたら、真田幸村というネタだけで視聴率を確実に取れる切り札を持ってきてあの程度のものしか作れなかった(私は内容のあまりにひどさに10話になる前に落ちた)のは大失敗と見ているのだが、その辺りの認識のズレがあるようだ。

 というわけで私の評価は「かなりひどいものを予想はしていたが、その予想さえをも下回ってきた」というもの。「麒麟がくる」で久しぶりに大河ドラマに戻ってきたのだが、この内容だと最短で次回には落ちそう。

 

 

青天を衝け 第34話「栄一と伝説の商人」

栄一とラスボス岩崎弥太郎

 相変わらずドタバタの明治政府。大久保がナレ死したせいで大隈に責任がやってきて、例によって異常に器量の小さい大隈はドタバタ。大隈と癒着している岩崎弥太郎だけはウハウハという状況に陥っている。

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 一方の栄一は「東京商工会議所」を設置。財界の連絡機関のようなものです。その一方で孤児院の方にも力を入れているようですが、こちらにはお千代が関与する模様。それにしても栄一は女関係でお千代に心労をかけてるのに、何だかんだでお千代に負担かけすぎです。そのせいか、お千代は若くして亡くなってしまいます。その後に栄一が後妻にしたのが途中でチョロッと出てきた大島優子・・・でなくて伊藤兼子です。栄一は既に妻妾同居の愛人がいたくせに、別に後妻を連れてくるというわけで、このド外道ぶりには身内からも結構非難はあったとか。

 そうこうしている内に岩崎弥太郎の方から栄一に接触を図ってくる。栄一は財界の大者である弥太郎を仲間に引き入れようと宴席に出向いていくが、「ガッポンガッポン」と呪文のように唱える栄一と、要は俺様一番で儲かれば良いんだという弥太郎では意見が合わずにケンカ別れ。まあ思想の違いという奴です。どうも民主主義的思想の強い栄一と、えげつないまでの儲け主義の弥太郎は理念が違いすぎて栄一がぶち切れたという描き方ですが、これについては多分に主人公アゲが入っているので、栄一を美化しすぎというところもあるでしょう。実際のところは、お互いにあまりにド外道ぶりが共通していて(弥太郎も女癖が悪かったことは伝説として残っている)、それが反発したって辺りが本当だったかも。とにかくここれで二人は完全に決別して、その後も何かと対立することが多くなるようです。

 

 

不平等条約改正ももしかして栄一の手柄にされるの?

 というわけで今回の肝は「ラスボス岩崎弥太郎に対して正面から宣戦布告」ってところでしょう。それと「ド外道栄一の将来の嫁登場」ということで、そろそろお千代に死亡フラグが立ってきてます。

 で、次回に向けては日本の課題となっている不平等条約改正に向けて、来日する元大統領を派手に接待して日本の先進国ぶりをアピールしましょう作戦・・・なんかしょうもないな。実際はこの後さらに、鹿鳴館やら何やらのドタバタ喜劇があって、条約改正はかなり先になります。なんせ日本はまだ憲法もなければ議会も開設されていないという未開国なので、欧米列強からはまだまともに相手にされてません。この後、陸奥宗光や小村寿太郎の活躍となるのですが、彼らは栄一とは直接絡んでませんからまたナレ条約改正なんだろうな。で、栄一の活躍が条約改正に結びついたような強引な主人公アゲをするというところか。

 

 

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青天を衝け 第33話「論語と算盤」

銀行生き残りのためにあっさりと小野組を見捨てる栄一

 前回、渋沢のテーマの内のソロバンの方が登場しましたので、今回は論語が登場です。まあ経済も理念が必要という話で。そう言えば論語って男女関係に節度が必要というような類いの事は言ってなかったよな、多分。

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 岩崎弥太郎と「従順でない商人にはお灸をすえる」という類いの密談でウハウハしていた大隈ですが、渋沢に怒鳴り込まれると「ワシの一存で決めたことではない」と逃げ回る。相変わらず滅茶苦茶器量の小さい大隈である。で、栄一は小野組の資産が政府に巻き上げられる前に国立銀行が差し押さえてしまう。小野組を切り捨てて銀行を助ける冷血栄一。

 しかしそうやって生き延びさせた銀行を、今度は三井が乗っ取ろうとしてくる。それなら「国に裁定してもらおう」と言い出す栄一。どうやら裏で大隈で圧力かけまくったんだろうが、結局は三井は退けられて栄一が自ら頭取となって経営を差配することに。銀行の黒幕からもろに陣頭に立つことになったようですが、実際のところ栄一の立場がそう大きく変わったようにも見えん。

 

 

そして死亡フラグ立ちまくりの大久保

 その頃、大久保は五代と碁を打ちながら「あんたは弱みを見せないから味方が少ないんだ」と諭される。どうやら五代は大久保に死亡フラグを立てに来たようである。そうしている内に蚕卵紙の大暴落の問題が。外国商人が示し合わせて買い渋りをすることによって価格暴落に持ち込んだらしい。まあよくある方法です。これに対して打つ手を持たない政府は「渋沢にでも頼むしかない」という結論になるが、「もうあいつには絶対に頭を下げたくない」とへそを曲げて逃げたす大隈に、大久保は自ら交渉に当たるしかないと腹を括る。

 そして大久保に呼び出されて敵意を隠し切れていない栄一に対して、大久保は「自分は経済のことは全く分からんから国のために味方になって欲しい」と懇願する。五代の助言に従って自らの弱みをさらけ出したということです。これを見ている視聴者は「ああ、とうとう大久保の死亡フラグが完成したな」と感じるシーン。もっと完璧に死亡フラグを完成させるつもりなら、ここで大久保に「ワシは今の一連の騒動が終息したら、政府から引退して故郷で妻と静かに暮らそうとでも考えている」とでも言わせれば完璧でしたが、さすがにそこまで歴史捏造は出来ないでしょう(笑)。

 

 

そして10年越しの横濱焼き討ちに明治の元勲の相次ぐ軽い死

 これを受けて栄一が実行したのが横濱焼き討ち(笑)。市場でだぶついている蚕卵紙を政府の金で買い占めて燃やしてしまえという乱暴な方法。しかし実際に、この頃はヨーロッパではカイコガ伝染病で壊滅しており、日本からの蚕卵紙がこなくなったら向かうの絹織物が壊滅する状況でしたから、我慢比べになったら勝算があるという読みは栄一にはあってのことでしょう。10年越しの横濱焼き討ちだと盛り上がっている喜作に惇忠。大々的に横浜でキャンプファイヤーを行って、その様は新聞で報道、これは間違いなくヨーロッパの商人に強烈なインパクトを与えたはず。そしてそのキャンプファイヤーを眺めながら先立っていった同志や兄弟達に思いを馳せる喜作。

 この後はなかなかにして怒濤の展開。まずは西郷がナレ死どころか、ナレさえない「活字死」。西南戦争については栄一は「馬鹿らしい」の一言。確かに戦費を無駄遣いしただけで、日本としては全く得ることのなかった内戦であった。しかし一方で戦争に乗じてウハウハなのが政商・岩崎弥太郎。まあこういう風に戦争ってごく一部には非常に儲かるので、今の日本でも憲法変えてまでやりたがる連中がいるのだが。

 そして「大隈にも大久保にも取り入っているから、これからさらにウハウハ」と思っていた岩崎の元に弟が駆け込んできて「大久保様が不平士族に滅多刺しにされて殺された」という報。というわけで大久保の方は「台詞死」です。明治の重要人物に対して朝倉義景よりも軽い死にしてしまうのは流石に大河。まあナレ維新で済ませたぐらいですからね。主人公に関係なかったらどうでも良いってことです・・・ああ、そう言えばその前に三井の番頭も死んでたっけ。

 

 

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青天を衝け 第32話「栄一、銀行を作る」

栄一、大蔵省を去る

 不満が鬱積しておりましたが、栄一が大蔵省を去ることを決めたと思えば、栄一の前に上司の井上馨の方が先に大隈にぶち切れて辞表を提出してしまいました。後を託されそうになった栄一も「いえ、私も辞めるつもりなんで」とさっさと辞表を提出。結局は二人揃って政府を去りますが、その後に連名で新聞に新政府のダメっぷりを投稿するというおまけ付き。これには下品な大隈重信が怒り心頭。これが後の展開の伏線になるようです。

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 そこにイタリアから喜作が帰国。さっさと役人を辞めてしまった栄一に対して「お前、毎度毎度転身が早すぎ」と半ば呆れている喜作ですが、彼自身も大蔵省を辞めて生糸を扱う商売を手がけるとのこと。どうも尾高の面々はお蚕様から離れられないようです。

 

 

銀行の経営の方に専心する栄一だが

 栄一が大蔵省を辞めたと聞いたら、早速三井の番頭が栄一を取り込みにかかる。しかし栄一は元より三井に入るつもりなどないのでそれを拒絶。すると手のひら返しをして「それでは敵と言うことで」とすごむ番頭。全く海千山千の商売人は侮れない。だけど栄一しては、現時点では三井に入るつもりはないが、正面から敵対するつもりもないはず。そもそも栄一がこれから手がけていく国立銀行は小野組と三井が出資しているわけだし、ここで三井が手を引いたら経営が成り立たないはず・・・というその辺りはどことなく有耶無耶です。

 とりあえず民間人として銀行の経営に邁進している栄一は、西洋式の簿記を取り入れて銀行システムを近代的なものにしようとしています。ただしソロバンは残したと。「論語と算盤」の一方ですから重要でしょう。欧米人は日本人を未開人として馬鹿にしているところがあるので、ソロバンが日本の知恵ということを知らないようであるが、筆算とソロバンが勝負したら最初から結果は明らか。まあ実際に日本人の指導に当たった外国人の中には日本人の識字率の高さと数学力の高さには舌を巻いた者も少なくないという。江戸時代の実用教育のシステムはかなり有効に機能していたらしい。

 で、親父様が既になくなっているので、やはりそろそろということで、今度は母親が亡くなりました。どうも栄一が明らかにタチの悪い病気を発症し始めていることから、そのこととお千代のことを懸念しながらのご臨終です。しかしこの後も栄一は散々なことをお千代にするのは歴史に残っていますが、そう言ったところはNHKとしては深入りは避けるだろうな。

 

 

満を持して大ボス・岩崎弥太郎が登場

 そして海千山千の商売人の中でも極めつけの政商三菱の頭目・岩崎弥太郎が登場。まるで大ボスめいた登場の仕方ですが、実際に最終的には渋沢栄一の一番の仇敵になります。一方の政府の方は江藤新平が佐賀の乱を起こしたり、西郷も政府から離反して西南戦争前夜という状況に帰国した大久保が大隈と陰険会議中。そこに大隈に取り入った岩崎弥太郎の影が。「岩崎が協力してくれるようだから、小野組と三井はつぶしてしまえば」という方向に話が進んでいる模様。そうなると国立銀行も影響必至なので栄一は大わらわですが、実際にこれで小野組はつぶされるようです。

 いよいよ栄一財界人編に突入で、経営者としての活躍がクローズアップされてきましたが、残り話数もそんなにないのでかなりドタバタとした展開となっています。それにしても敵味方の去就が定まらなくてフワフワした感のある新政府の面々に対して、岩崎弥太郎は結果として渋沢栄一の一番の敵となるので、不動の悪役という印象で登場。そのために目下のところ一番存在感があることになっている。もっとも実際には別に岩崎弥太郎が悪党というわけではなく、渋沢栄一とは経営哲学が違っていたこともあり、結果としてはビジネス的に火花を散らすことになるというだけなんですが。しかし大河的に主人公アゲを徹底したら、岩崎弥太郎を落とさざるを得なくなるんだろう。もっとも落としすぎるといろいろと問題が生じるので、それをどの辺りまでにするのかが政治的なさじ加減という奴である。その辺りは今後見えてくるだろう。それにしてもやはり明治ぐらいのネタは現代と近すぎるせいで、そういう政治的配慮が不可欠になるので大変である(長州閥の新政府をあまりに落としすぎても、その長州閥の末裔である大者政治家が文句を言うのが見えてるし)。

 

 

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青天を衝け 第31話「栄一、最後の変身」

栄一は外道な本領発揮、そして見事に転身する成一郞改め喜作

 さて前回の流れで、いきなり妻妾同居なんて外道なことをしてしまう栄一。渋沢栄一の本領発揮ですな。番組では千代が相手を気遣って言い出したことのようにしてますが、実際は無理やり押しきったんでしょう。千代が大きな溜息をつくシーンがありましたが、実際にはこんなもので終わりません。何しろ彼は「無類の女好き」として歴史にも残ってますから、「明治のドンファン?」。ダメだ、これだと最後は女に毒を盛られて殺される。

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 そして成一郞は天下晴れておつとめ終了で娑婆に出て来ました。まあ殊更に何かをしたというわけでなく、多分裏で栄一もいろいろ動いていたでしょうから。やはり同志が目の前で次々と犠牲になっていく様を目の当たりにしてきた成一郞は、いろいろと思うところはあるはずですが、とりあえず気持ちを切り替えて新時代に適応することにしたようです。何だかんだで栄一のコネで大蔵省にまで入ってます。イタリアに留学するとか。まあその方が箔がつくでしょう。ムショ帰りが箔になる世界とは違うので。それにしてもイタリアってのが唐突な印象があったが、イタリアで何を学ぶのかという辺りが少しは気になった。イタリアは手工業的なものが多いから、そういうところだろうか。当時の日本の工業レベルだと、イギリスよりも実はイタリアぐらいのレベルの方が近いはずだから。

 で、成一郞も栄一に倣って、喜作に戻ったようだが。いや、あんたはやっぱり成一郞の方が良いのでは。喜作ではやっぱりどこかの百姓ネームだ。歴史の記録を見ても正式には渋沢成一郞の名の方が残ってるようだし。

 

 

馬鹿兄貴こと尾高惇忠はしっかり経営者になってるし

 一方、成一郞よりも先に時代に対応した馬鹿兄貴こと尾高惇忠は、栄一のコネで富岡製糸場の責任者にしっかりと収まって、キチンと仕事をしております。どうしても異人が絡んだ施設となると良からぬ噂が立つから(当時は異人は人の生肝を食うなんて噂まであったぐらいですから)、自分の娘を動員したようです。富岡製糸場は後の日本の殖産興業の手本となる施設ですので、当時としてはかなりホワイト企業だったようです。もっとも民間の製糸場がバンバンと出てくるようになると、それらは超絶ブラック企業ばっかりで、その結果として「ああ、野麦峠」みたいな滅茶苦茶な女工哀史が起こってしまうのですが。資本主義ってのを何の規制もなく進めるとそうなるという見本で、今でも経団連なんかは労働基準法を廃止させることでそういう世の中にするのを理想にしているようです。で、その路線にもろに乗っているのが「パソナ党」こと維新と。

 それにしてもこの兄貴「攘夷だなんて言っていたが、異人も腹を割って話をしてみたら人間だった」って・・・転向早っ!! まあ大抵は敵対心なんてのは互いを知らないことから起こりますから。実際に対面してみるとこっちも人間、相手も人間です。当然ながら日本人でも外国人でも、良い奴もいるし悪い奴もいるというそれだけのこと。○○人だからまるまる善良と言うことも当然ないし、逆にまるまる悪人なんてこともあるわけがない。まあ当たり前のことにようやく気づきましたか、この馬鹿兄貴。で、この馬鹿兄貴の見事な転向っぷりに、成一郞も影響を受けた模様。

 

 

栄一に退職をフラグを立てまくりつつ、自身の死亡フラグを立てていった西郷

 その頃、栄一は銀行設立のために奔走しているが、はやり三井などの商人は利益にならないと動かない。そこでかなり強権発動したのですが、そのことを三井の番頭にネチネチと「渋沢様も所詮はお役人」と嫌みを言われます。そう言えば自分はお役人のそういう上から来る態度に一番立腹してたんだったと思いだし、一種の自己嫌悪に陥る栄一。新政府のグダグダぶりにも嫌気がさしていたし、いよいよ限界が近づいてます。

 そこに西郷が死亡フラグを立てに現れる。現実には西郷と渋沢がこんなに懇意だったという話は聞いたことがありませんが、まあ大河での主人公アゲとしては普通でしょう。ここで西郷は「自分はもう引き返せないが、お前はまだ引き返せる」という主旨で自身の死亡フラグを立てると共に渋沢の退職フラグも立ててくれます。それにしても博多華丸の西郷、意外なほどにリアリティがあるな。回りの新政府スタッフが妙に表情豊かすぎるところがあるので、その中でこのぶっきらぼうさが、逆に西郷のシラケぶりを現しているようでハマっている。これは起用の妙だな。

 で、西郷に散々フラグを立てられた栄一は、最後の最後に「俺、役人を辞める」宣言です。いよいよ栄一財界人編(別名、栄一女性遍歴編・・・にはしないだろうな、まさか大河ドラマは)が始まることに。それにしても国立銀行がほとんどナレーションだけで設立してしまったな。栄一が全く関与していない明治維新がナレーションだけで終わるのは仕方ないにしても、栄一のかなり大きな業績である銀行設立もこれって、後の話数を考えたら栄一の本来の活躍がバタバタと終わってしまいそう。やっぱり無駄に序盤に尺を食い過ぎたな。

 

 

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青天を衝け 第30話「渋沢栄一の父」

親父さんが亡くなったが、とうとう正体を現し始める栄一

 前回、栄一の親父が何やらおかしなこと始めたから、これはそろそろフラグが立ったかなと思っていたら、案の定でしたね。親父さんが亡くなりましたか。渋沢栄一の父として誇りに思うなんてことを言い残してましたが、いやいや、確かにあんたの息子さんは偉い人ですよ。そして案の定ど偉いこともしてました。

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 実は今回の話の一番のポイントが、とうとう栄一が本性を出すってところでしょうか。無類の女たらしといわれている渋沢栄一が本領を発揮しました。この番組では歴史捏造して栄一を愛妻家のように描いていましたから、どうにも唐突な印象があります。しかしくにを最初に見た時から栄一が「獲物を狩る目」になってましたからね。今回のサブタイトルは「栄一、ムラムラする」の方がピッタリ。

 

 

栄一の女性関係はどこまで描くのやら

 で、早速その夜に部屋に引き込んでしまっている。なんとまあ手の早いこと。まあ渋沢栄一ってこういう男なんですが、どうにも今までのこのドラマでの描き方と落差が激しいので、かなり戸惑う節は多いんじゃないかな。NHKとしてはあまり触れたくないのが本音でしょうが、この後で彼女を東京に連れてきて、結局は妻妾同居なんてことまでやっちゃいますから、渋沢栄一を描く以上避けて通るわけにも行かないでしょう。ちなみに後に千代は若死にして、その後で後妻にまた別の女性を連れてくるから、最低限でも栄一を取り巻く女性としてそれだけは登場させる必要があるでしょう。ちなみに現実には愛人と隠し子の数は二桁のようだが、詳細は不明とのことです。

 ところで今回のくにを演じている女性も、決して不細工ではないのにそもそも現代的な顔立ちの人ですから、ああいう格好をすると眉毛だけ目立って非常に不細工に見える。おかげで栄一があっと目を奪われるのがどうもピンとこない。千代にしても綺麗とはとても見えないし。おかげで栄一がブス専に見えてしまう。前から朝ドラなどで「美人をブスく使う」と言われることのあったNHKだが、このドラマは特に極端だな。まあ今時日本髪が似合う若手女優なんてのがいないのかもしれないが。

 

 

ブラック職場に耐え、チャッチャと廃藩置県を済ませる

 そして仕事の方は何かドタバタと廃藩置県を済ませてしまいました。井上馨の無茶ぶりに対して不眠不休の作業で対応するブラック職場物語ですが、精一杯前向きに描いております。しかしこんなことやっていたら、その内に精神がぶっ壊れる・・・そうか、ぶっ壊れて性欲に走ったって展開か?

 呆気なく廃藩置県が終わってしまいましたが、その後に出てきた画面分割の演出がどうにも安っぽくて感心しないな。今時風を出したつもりなんだろうか。タブレット持って出て来た家康といい、どことなく若者に媚びようとしてはずしているという感が強いんだな。NHKは前からそうなんだが、若者を意識すると急に内容がお馬鹿になって軽薄になるんだな。恐らくNHKが抱いている若者像というのがそういうものなんだろう。

 

 

しかし「異常に器量の小さい」大久保利通に睨まれる

 どうにかこうにか廃藩置県を実現させて出世した栄一ですが、前々から栄一のことをこころよく思っていない異常に器量の小さい大久保利通にものの見事に睨まれて、改正掛は解散させられることに。それにしても見事なほどに栄一以外の人物は超小者として描くのがこの作品だ。特に敵対する人物はボロクソ。尊皇攘夷の志士の連中はほとんどキ印ばかりだったし、新政府の面々もアホ揃いという描き方。主人公アゲは大河には付きものだが、この作品は主人公を上げるだけでなくて回りを落とすんだな。特に大久保利通は最初に登場した時から、脚本家が何か恨みがあるんだろうかというほどひどい描き方してるな。

 新政府は相変わらず中はガタガタです。西郷は愛想を尽かしかけているようだし。栄一も愛想を尽かしかけているが、まだ銀行作っていないのでしばらくは大蔵省勤めが続きます。この後の展開は西郷がとうとう挙兵して敗北、さらには大久保がテロで倒れるってとこか。そして栄一は五代から誘われていたように民間に立場を移す。もっとも五代も三井も、栄一にはどちらかといえば敵の立場になるはずだが。

 

 

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青天を衝け 第29話「栄一、改正する」

栄一が改正掛で暴れ回る

 今回は完全に「栄一、吠えまくる」です。強引に改正掛を結成させた栄一は音頭を取って日本の諸制度を構築するために奔走しております。密かに郵政の父・前島密なんかも登場してましたが、彼って一番最後の瞬間を見届ける場にはいなかったのか。それは知らなかった。それでよくまあ名前が残ったものだ。

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 もっとも栄一は幕臣の上に農民の出ということで白い目で見る輩もいた模様。しかし「仕事が出来る」というところを見せつけて無理やりに納得させてしまった。口八丁手八丁の栄一の真価の見せ所です。そもそも静岡でも「商人なんかと一緒に仕事が出来るか」といっていた幕臣連中を無理やりにコンパニーに関与させてしまった男ですから、こういうのは慣れているということのようだ。しかし静岡からも結構人材引き抜いたようなんだが、コンパニーの方は大丈夫なのか?

 そしてさらにはあの馬鹿兄貴も呼び寄せたか。あの馬鹿兄貴、社会変革をやらせたら使えない奴だったが、養蚕をやり出したら意外に有能だったという。要するに根っからの百姓か? 養蚕の専門家ということでフランスからの技師と面会させていたようだが、結局は彼はその後、富岡製糸工場の所長になるんですよね。

 

 

栄一の前に立ちはだかる陰険大久保利通(しかしどうせすぐ死ぬ)

 しかし改正掛で暴れまくっている栄一を苦々しく眺めていたののが大久保利通。新政府の中心人物ですが、バリバリの薩摩原理主義者ですから。渋沢が農民の出ということは、大久保自身も農民とレベルの変わらない下級武士の出身なので大して差はないのですが、やっぱり元幕臣に好き勝手されるのは気に入らないんでしょう。それにいきなり「このままだと新政府は倒れる」とそのものズバリの一番痛いところを突かれたし。どうも本格的に栄一に対して嫌がらせをしてくる模様。にしても、このドラマは栄一の前に立ちはだかる奴は、とことん陰険で器が小さく描くな。この大久保も新政府の功労者とは思えないほどの器量の小ささだ。

 とは言うものの、実際には大久保は栄一なんかに構っている余裕はないでしょう。この頃は西郷が薩摩に戻って不穏な情勢になってましたから。岩倉具視までが「このままだったら建武の新政の二の舞になりかねない」って言ってましたが、実際に新政府は全く回らず、世の中に不平士族が満ち満ちているわけですから、西郷が彼等を率いて上京してくるなんてことになれば、まさに建武の新政のごとく新政府は倒れて、西郷幕府の成立なんてことさえ可能性はないわけではなかったですから。もっとも西郷にはそんな気は微塵もなかったでしょうが。

 結局はこの後は新政府と西郷の戦争になります。そして盟友・西郷を殺してしまう大久保ですが、その後に彼自身もテロで倒れることになります。とにかく新政府はドタバタしてます。栄一は「銀行をどうする」と騒いでましたが、結局は銀行を作った時点で、愛想を尽かして新政府からは離脱して民間で活躍することになるはず。

 

 

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青天を衝け 第28話「篤大夫と八百万の神」

栄一、丸め込まれる

 新政府から突然に召喚を食らった栄一は「なんで幕臣の俺が新政府なんかに仕えないといけないんだ!!」と拒否。しかし静岡藩を通して拒絶すると徳川家が新政府に楯突いていると取られかねないことから、栄一が「それなら自ら出向いて自分の口で断ってくる」と意気揚々と東京に乗り込みます。

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 減らず口なら誰にも負けないと思っていた栄一だが、そこに登場したのが先週登場したド下品な大隈重信。これまたこいつが口が達者、新政府は人材不足だから協力して欲しいと栄一に切り出すが、栄一が「薩長はそんな後のことも考えずに幕府をつぶしたのか」とぶち切れると、「そんなものは俺は知らん」とのらりくらり。しかし現実は「後のことなんて考えてなかったんです」。長州の連中の大半は根っからのテロリストで、結局は幕府憎しでぶっ潰すことしか考えておらず、その後に日本をどう運営するかなんて考えている奴はほとんどいませんでした。だから実際には幕臣憎しだけで有為の人材も結構処分してしまいました(小栗とか)。しかしいざ新政府が成立すると、にっちもさっちも行かなくなって慌てて幕臣にまで声をかけているという状況。慶喜にしたら「薩長の連中で日本の運営なんて出来るわけがないから大政奉還したのに、まさかその先のことを全く考えないほど連中はバカだったとは・・・」ってのが本音でしょう。頭の良い人の限界は、世の中には残念ながらかなり馬鹿な連中もいて、しかも何かの間違いでその馬鹿が権力を握ってしまうことがあるということを理解していないことです。

 で、大隈は新政府の無茶については「俺は知らん」で、とにかくこのままだと早晩日本がひっくり返るけどそれでも良いのかと栄一に話を持ちかける。そして口説きのポイントが「新しい日本を作りたくないか」。これについてはそもそも実は幕府に不満を持っていた栄一の心をくすぐることになる。そして「八百万の神のように全国から人材を集めるしかない」と言われてついには完全に丸め込まれてしまう。さすがに大隈は口八丁です。栄一は途中からまんまと大隈のペースに嵌められてしまう。まあそもそも栄一も倒幕から幕臣になったり、攘夷から開国に変わったりなど実は信念があるようでない男ですから(根っこは商売人)。

 

 

そしてようやく「渋沢栄一復活」

 何だかんだで栄一一家は東京引っ越しになってしまいました。杉浦と抱き合いながら男の友情を誓ったりなんて奇妙なシーンもありましたが、この渋沢はやけに男にもてるんですが、本当は希代の女たらしなんです。しかしそういう辺りはさすがに大河では触れないでしょう。ここでの渋沢は妻子を大事にする男という歴史の大捏造をやってますので。隠し子が数十人で正確な数さえ分からないなんてことになりそうな雰囲気は微塵もない。

 栄一は最後に慶喜の元に挨拶に行きますが、慶喜は「お前は中央で活躍したいだろ」と例によって「非常に理解のある上司」で一貫してます。徳川のために静岡に引き籠もっているよりも、新政府の中枢で腕を振るった方が栄一のためにもなるという配慮ですが、普通は殿様が一家臣にここまで配慮しませんね。意外と慶喜も、何かあったら「なんであんなことしたんですか」と詰め寄ってくる栄一が意外とウザかったのかも(笑)。もう既に慶喜は「趣味に明け暮れて生きる」というその後の人生のあり方を言っておりましたが、実際に記録にも残っているように、この後の慶喜はマイペースで生きていくことになります。

 で、幕臣であることを捨てて、新政府に仕えることにした栄一は武士になった時にもらった「篤大夫」という名を捨てて「栄一」を名乗ることにします。こうして無事に「渋沢栄一復活」。いやー、篤大夫なんてダサい名前いつまで引っ張るんだと思ってましたが(と言うこともあって、私のこのコーナーは篤大夫って名をガン無視してましたが)、ようやくですか。一方の成一郞の方は、武士の誇り云々以前に「喜作」なんて農民丸出しの名前は使わないんでしょうね。

 そして大蔵省に乗り込んだ・・・はずの栄一がいきなりしでかしてます。大蔵省と間違えて、岩倉具視や大久保利通の前で新政府のダメっぷりにいきなり悪態つきまくってしまうというやらかし。社長を前にして「この会社の経営陣がなってないから、こんな会社は早晩倒産する」とぶちかましたようなものです。もっとも新政府のダメっぷりは客観的に見てもその通りですから、実際にはいくら岩倉が「失礼な」とぶち切れたところで、「じゃあ新政府のしっかりしたところをあげてくれ」と言われたらそれまでですが。そこらの会社だと一発でクビですが、大隈が無理やり押し込んだんだからクビにはできんでしょう。もっとも栄一は銀行作った後で、やっぱり役人は自分には合わんとさっさと辞めてしまいますが。

 

 

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