徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

岡山の古い町並みを探訪する

最後に残った美術館を訪問する

 翌朝は7時半頃に起床する。今日は広島に残るもう一つの美術館の訪問から始めるつもりだが、開館時間が10時なのでかなり時間に余裕がある。

 8時過ぎに朝食会場のレストランへ。朝食はバイキングだが、このホテルはルートイン系列だが、通常のルートインよりはややメニューが豊富という印象。とりあえず朝からガッツリと燃料補給。

f:id:ksagi:20220104162106j:plain

ルートインよりは品数豊富な朝食

 朝食後にはマッタリしてから朝風呂に繰り出し、9時半過ぎてからチェックアウトする。これから向かうのは広島市現代美術館。広島市街を見下ろす比治山にある美術館。ここを訪れる度に「ここには昔は山城があったのでは?」と思うのだが、完全に公園整備されている今となっては不明。

f:id:ksagi:20220104162222j:plain

長いエスカレーターを登ることになる

f:id:ksagi:20220104162236j:plain

とにかく呆れる長さだ

 美術館には比治山東側のショッピングセンターから比治山スカイウォークという巨大なエレベータで上ることが出来る。このエレベータに乗る度に「やはりここには山城があったように思えるんだがな・・・」と感じるのである。そういう目で見ると、公園内の削平地が曲輪に、美術館が本丸に見えてくる。

f:id:ksagi:20220104162302j:plain

いかにも出丸っぽいし

f:id:ksagi:20220104162314j:plain

こういうところは曲輪っぽい

 

 

「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」広島市現代美術館で3/8まで

f:id:ksagi:20220104162339j:plain

f:id:ksagi:20220104162349j:plain

 台湾の大手電子部品メーカーであるヤゲオ・コーポレーションのCEOのピエール・チェン氏が設立したヤゲオ財団が収集した現代アートコレクションを展示。ヤゲオ財団の現代アートコレクションは世界のトップ10にランクインしているとのこと。

 ・・・であるのだが、やはり現代アートは現代アートであり、これは好みの分かれるところである。ワンパターンのような絵の具を厚塗りでキャンバスにぶちまけた系の絵画は私の好みではないし(例によって「誰でも簡単に描ける」と感じてしまう)、写真加工系の作品は「ありがち」というように見えてしまう。その中で感心したのはリアルな立体造形。そこに芸術的意図を汲み取れるかどうかはともかくとして、作品の技術には単純に面白いと感じた。

 

 

鴨方町屋公園を見学

 美術館の見学を終えたところで広島を後にする。以前なら土産物としてにしき堂のもみじ饅頭を購入したところだが、今回は止めておく。山陽道に乗った頃から雨がぱらつき始めるなど天候が不穏であるが、寒くはあるが雪は降りそうにない。そんな中をとりあえず山陽道を鴨方ICまで突っ走る。帰る前にまだ立ち寄るところがある。

 鴨方ICから降りてすぐのところにかもがた町屋公園なる施設がある。これは旧街道の鴨方往来沿いの町屋を修復保存したものだという。現在では地域の集会場などの用途に利用されているようだ。私の訪問時には落語の講演があるとのことで人が集まり始めていたが、落語には興味のない私は町並みの散策の方に向かう。

f:id:ksagi:20220104162548j:plain

鴨方町屋公園

f:id:ksagi:20220104162600j:plain

これは建物跡か

f:id:ksagi:20220104162610j:plain

蔵のようである

f:id:ksagi:20220104162624j:plain

建物内部を見学

f:id:ksagi:20220104162640j:plain

立派な床の間に

f:id:ksagi:20220104162652j:plain

鴨居の装飾

f:id:ksagi:20220104162706j:plain

襖絵

f:id:ksagi:20220104162715j:plain

天井裏収納

f:id:ksagi:20220104162735j:plain

そして日本庭園

 

 

鴨方の町並みを見学

 鴨方往来は今では完全に普通の住宅地で、住宅も大部分が近代化してしまっているが、道の細さや構造(鍵の手などもある)などに往時の面影をとどめている。また寺社なども多く、鴨神社の参道の石造りの太鼓橋である宮の石橋は「鴨方に過ぎたるものが三つある。拙斎・索我・宮の石橋」と謡われた鴨方三奇の一つとして以前から知られているとか。石組みの橋でなく、反り返った長い石を渡した橋になっているのが特徴。なお三奇の後の二つの拙斎は江戸時代の儒学者・西山拙斎のことで、索我は同じく江戸時代の画家の田中索我のことだとか。要は地元出身の文化人である。

f:id:ksagi:20220104162839j:plain

車で走り抜ける際の道の狭さがかつての街道を思わせる

f:id:ksagi:20220104162908j:plain

鍵の手構造もある

f:id:ksagi:20220104162928j:plain

いかにも宿場町か

f:id:ksagi:20220104163031j:plain

所々に往時の面影がある印象

f:id:ksagi:20220104163054j:plain

たまに昔を思わせる建物があるがほとんどは近代建築

f:id:ksagi:20220104163119j:plain

鴨神社の鳥居

f:id:ksagi:20220104163132j:plain

これが宮の石橋

f:id:ksagi:20220104163143j:plain

横から見るとこうなる

 この地には旧陣屋跡もあるが、今では新興宗教では老舗の黒住教の教会になっており、当時の遺構は石垣と井戸ぐらいとの話だが、いずれも後世の手が加わっているように思われる。また長川寺の裏手の山上に鴨山城跡があるとのことで見学を考えていたのだが、ここに来て天候がさらに不穏で時たま雨がぱらつくことと、思っていた以上に体に疲労が来ていて体が重いことなどから断念して、次の機会の宿題にすることにした。

f:id:ksagi:20220104163243j:plain

陣屋跡

f:id:ksagi:20220104163259j:plain

石垣には明らかに後世の手が加わっている

f:id:ksagi:20220104163327j:plain

この井戸も多分手を加えてある

f:id:ksagi:20220104163400j:plain

なお鴨山城はこの山上の模様

 

 

商家町である玉島を訪問する

 鴨方を後にすると次は玉島を訪問する。玉島はかつて港の商家町として栄えたとのこと。新町には備中松山藩の藩主・板倉候の宿泊所だったという西爽亭があるのでそこを見学。これは藩主の宿泊所だったと言うだけあって立派な建物である。また壁の前になぜか襖を貼ってあるのだが、これは防寒のためではなくて防音のためだとか。つまり藩主屋敷だけに密談などもあるからということらしい。またこの屋敷は幕末にドラマがあったところでもある。戊辰戦争の動乱時、備中松山藩も幕府方として出陣するが鳥羽伏見の戦いで幕府方は敗北、備中松山藩の隊士150余名は帰藩のために玉島港に上陸するものの周囲がすべて反幕府方の中で包囲される。ここで家老の熊田恰が責任を負って切腹、部下と藩の助命を嘆願することで玉島も戦火から免れたそうな。この時に熊田恰が切腹したのがこの屋敷の座敷で、今でも畳の下には血の跡があるとのこと。それぞれに立場があるのだから誰が悪いというものでもないのに、こうして誰かに切腹させて決着をつけるというのがいかにも日本的ではある。

f:id:ksagi:20220104163950j:plain

西爽亭

f:id:ksagi:20220104164008j:plain

玄関を内側から

f:id:ksagi:20220104164057j:plain

藩主の部屋

f:id:ksagi:20220104164113j:plain

欄干

f:id:ksagi:20220104164121j:plain

この釘隠しは一つずつ違うとか

f:id:ksagi:20220104164144j:plain

庭園には茶室もある

 

 

玉島東岸の新町地区を見学

 西爽亭の駐車場に車を置かせてもらうと市街の見学に出る。玉島の町並みは川の東岸の新町地区と西岸の仲買町に分かれている。この玉島地区は干拓地であり、その潮止堤防の南に千石船が入港できる港が開かれたのが玉島港である。干拓地で土壌に塩分が多いことから稲作に向かなかったたため、この地では塩に強い綿花の栽培が行われると共に、貿易の中継地として商業が発展したのだとか。

f:id:ksagi:20220104164249j:plain

現在の玉島港

 新町側はかなりの住宅が近代風になってしまっているが、それでも所々に往時の風情をとどめた建物が現存している。

f:id:ksagi:20220104164334j:plain

往年の面影のある町並み

f:id:ksagi:20220104164430j:plain

この建物はかなり昔風

f:id:ksagi:20220104164449j:plain

蔵造り

f:id:ksagi:20220104164504j:plain

重厚である

f:id:ksagi:20220104164531j:plain

雰囲気がある

 

 

対岸の仲買町も見学

 川を渡った仲買町にはかつての面影を残した蔵造りの住宅が多数残っているが、かつての商業地も今では大半が普通の住宅のようで、老朽化している建物が少なくないことが気に掛かるところである。ここも何らかの手を打たないと、そう遠くない未来には町並み自体が朽ち果ててしまいそうである。

f:id:ksagi:20220104164611j:plain

川沿いに並ぶ住宅

f:id:ksagi:20220104164631j:plain

町並み

f:id:ksagi:20220104164650j:plain

風情はかなりある

f:id:ksagi:20220104164659j:plain

酒屋のようです

f:id:ksagi:20220104164715j:plain

白壁の建物

f:id:ksagi:20220104164726j:plain

明らかに蔵

f:id:ksagi:20220104164739j:plain

白壁の建物が多い

f:id:ksagi:20220104164757j:plain

これも

f:id:ksagi:20220104164840j:plain

手を加えて住んでいる模様

f:id:ksagi:20220104164858j:plain

落ち着いた町並み

 いずこでもよくあるのだが、かつては商業で栄えたものの、その後に没落してしまった地域という印象が強い。町並み保存をどう地域の活性化につなげるか、またそのための財源はどうするか辺りが課題となりそうだ。町並みをうまく生かせば、潜在的観光ポテンシャルは決して低くはないと感じるのだが。

 時々雨がぱらつく悪コンディションだし、昨日多数の美術館を駆け回ったせいか、とにかく今日はやけに疲れた。予定ではこの後さらに下津井に立ち寄ろうと考えていたのだが、それは後日に回すことにしてこのまま帰宅の途につくことにした。

 今回の遠征は広島・岡山地区の美術館を回ると共に、岡山の町並み保存区を回る遠征でもあった。なお鴨山城、下津井などが宿題として残ったが、これは竹喬美術館での菊池契月展後期と絡めて再度の岡山遠征を実行して片付けることにしたい。こういうことも岡山が近県であるから可能なのだが。

 なお今回は美術館を回るだけでなく広島で牡蠣を食いまくろうツアーのニュアンスもあったのだが、その効果は翌日に現れた。朝の目覚めが違う、体の切れが違う、体の底から力が湧いてきて、彼女も出来て、宝くじも当たって・・・とそこまでの御利益はないが、とにかくやはり下手なサプリなんかよりも体には余程良く効くということを再確認した次第。牡蠣パワー恐るべし。

 

 

この遠征の前の記事

www.ksagi.work