徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

東京の美術館から山田和樹指揮の日フィル、さらには「スターウォーズ」と丸一日駆けずり回る

 翌朝は8時半頃に起床すると着替えて外出。今日は日フィルのライブに行く予定だが、その前に美術館を回ろうと思っている。最初は久しぶりに訪問する美術館。

「勝川春章と肉筆美人画」 出光美術館で3/27まで

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 役者絵の浮世絵などで知られ、北斎などの多くの弟子もいた勝川春章は、晩年には肉筆による多くの精緻な美人画を残している。その春章の肉筆美人画を浮世絵の流れの中で概観する展覧会。

 春章の肉筆画は古典を下敷きにしつつも、その中で独自の表現や世界の確立を目指したものであり、当初は個性の薄い感があったのだが、

 

朝食は出汁茶漬け

 出光美術館を後にすると次はサントリー美術館を目指す。日比谷から六本木に移動。ここからミッドタウンに向かうのだが、その前に遅めの朝食兼早めの昼食というところで「えん」「漬けマグロの茶漬け(800円)」を頂く。朝食には最適のメニュー。

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六本木地下の「えん」

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漬けマグロ茶漬け

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熱い出汁をかけて頂く

 腹が膨れたところでミッドタウンまで歩いていく。

 

「没後100年 宮川香山」 サントリー美術館で4/17まで

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 明治時代を代表する陶芸家である宮川香山の作品を集めた展覧会。

 彼のもっとも知られる作品は高浮彫と言われる精密な彫刻を陶器の表面に施した作品であるが、今にも動き出しそうなそのリアルさには唖然とさせられるものがある。しかもいわゆる彫刻でならこのレベルのリアルな作品を見ることはあるが、彼の場合はそれを陶器で行っているということ。陶器は焼成が入るために歪んで割れることがよくあるはずなのだが、どうやってその問題を解決したのかが私には想像できない。

 彼は非常に研究熱心で、釉薬の類いについても細かい研究を重ねていたという。その研究成果が反映して、高浮彫以外の普通の陶器作品でもうっとりするような鮮やかな色彩が多々見られる。

 とにかく「超絶技巧」と呼ぶにふさわしい作品であり、その技術力にはひたすら圧倒されるばかりであった。

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まさに超絶技巧

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唸らずにはいられない

 これはなかなか堪能した。香山の超越技術には唖然である。とにかく昔の職人にはとんでもない者がいる。

 

お茶で一服

 展覧会を堪能したところでお茶にしたくなった。「加賀麩不室屋」生麩のぜんざいを頂く。もっちりした生麩が最高。至福の一時である。

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サントリー美術館内の加賀麩不室屋

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生麩のぜんざいが実に美味い

 お茶を済ませたところでもう一カ所だけ美術館に立ち寄ることにする。地下鉄で渋谷に移動すると、安藤忠雄のせいで滅茶苦茶になった地下通路を抜けて駅東のバス停へ。それにしてもここの通路は何回通ってもわけが分からない。東急の駅の中はさらにとんでもないことになっているのだから、さすがにどんな建物でも使い物にならない大馬鹿建築にしてしまう安藤忠雄の破壊力は侮れない。

 

「ゆかいな若冲・めでたい大観」 山種美術館で3/6まで

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 表題には若冲と大観が掲げられているが、実際にはその両者にこだわらず松竹梅や七福神などのおめでたい題材を扱った日本画の展覧会である。

 若冲の作品については表題の「ゆかいな」という言葉がそのままで、やたらに奇想を誇示する作品ではなくのびやかで楽しげな作品が展示されている。細かいことはゴチャゴチャ言わずに楽しむが正解なんだろう。

 

昼食はラーメン

 これで展覧会の予定の方は終了。今日のコンサートは渋谷のオーチャードホール。なおコンサート終了後には映画を見るつもりでもうチケットは手配している。時間的にコンサート後に夕食を摂っている暇がないので、遅めの昼食券夕食第一部として「横浜家系ラーメン道玄家」「つけめん」を頂く。

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渋谷のラーメン屋

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つけ麺を頂く

 軽く腹を満たしたところでオーチャードホールに入場する。オーチャードホールはかなり大きなホールである。ただその大きさが災いして明らかに音響が悪い。天井は高すぎるし、ステージの奥が深すぎるのもコンサートホールとしては致命的。ステージ内での残響ががまともに来ないところにステージ背後から時間差の残響が来るので、音色全体が濁る上にとにかく「音が飛んでこない」という印象が強いホールだ。これはNHKホールとはまた違ったタイプでの最悪ホールである。

 

山田和樹 マーラー・ツィクルス <第2期 深化>第5回

指揮:山田和樹[日本フィル正指揮者]
ヴィオラ:赤坂智子
日本フィルハーモニー交響楽団

武満徹:ア・ストリング・アラウンド・オータム
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

 山田和樹のマーラー・ツィクルスの第5弾。図らずしも2日続けてのマーラーの5番になってしまった。

 昨日のチョン・ミョンフンの演奏は強弱のメリハリが強い演奏であったが、山田の指揮はテンポのメリハリをつけており、とにかく全体のテンポをドッシリと落としながら、フォルテッシモに合わせてテンポも上げてくるというタイプの大時代的な演奏である。

 ただどうしても昨日の東京フィルと比べると日フィルの演奏に甘さがあるし、山田の指揮もギリギリまで緊張感を保てないところがあり、全体としてはどことなくぬるさを感じる。悪い演奏とまでいう気はないが、どことなく精彩を欠く印象の弱いものであったことは否定できない。

 なお一曲目の武満は明らかに私の好みではなく退屈な曲。メロディに所々美しさは感じるのだが、曲自体に盛り上がりがない。

 

 コンサートを終えると映画館に急ぐ。地下鉄を乗り継いで六本木ヒルズを目指すが、現地に到着してから映画館の位置が分からずにウロウロする羽目に。それでも何とか上映開始に間に合った。

 

「スターウォーズ/フォースの覚醒」 TOHOシネマ六本木ヒルズにて

 相変わらずの冒険活劇で、さすがに見せ所はよく分かっていると感じる。それにしても最後には惑星一つ吹っ飛ばすのはこのシリーズのお約束なのか? なお今回は新世代へのストーリー引継という要素が強いので、新キャラに加えてかつてのキャラも登場するのだが、さすがにハン・ソロ爺さんや、すっかりオバサンになっているレイアなどがもの悲しい。ルークも最後にチョロッと出るが、これもほとんど第一作のオビワン・ケノービ。これはスクリーンのこっち側にも年をとったことを嫌でも痛感させることになっており、50のオッサンには少々ツラい。

 今回の悪役はハン・ソロとレイアの息子。誘惑に弱いスカイウォーカー家のご多分に漏れず、彼もフォースの暗黒面に魅入られてしまったという次第。この息子が完全武闘派の親父の血を引いていると思えないような、いかにも神経質そうな芸術家タイプの優男でしかもヒステリー持ち。万年厨二病のダースベイダーよりもさらに軟弱なタイプであるので、悪の総帥という迫力は皆無。

 ルークは彼を自分の後継に育てていたようだが、彼が暗黒面に落ちてしまったことですべてがご破算になってしまい、失意と責任感の呵責から行方をくらましたとか。しかしこのルークが行方をくらましたせいで宇宙を巻き込む大騒動になっているのだから、スカイウォーカーの血筋というのはつくづくお騒がせである。よくよく考えると、スターウォーズというのは宇宙全体が迷惑なスカイウォーカー家に振り回されるだけの話のような気もしてきた。そもそもの不幸の始まりはクワイガン・ジンがアナキン坊やに目を付けてスカウトしたことだったということか。なお今回のヒロインは最後まで素性が明かされなかったが、あれだけ強力なフォースを持っているということはルークの娘辺りか。

 文句なく面白い映画ではあるのだが、そろそろワンパターン化も見えてきている。そういう点では、主人公の一人が敵の裏切り者というのはなかなか斬新なパターン。全く無個性の白マスク軍団が実は個性ある人間であるという観点は新しい。もっとも村人を殺すことに抵抗を感じて脱走した彼が、かつての同僚を撃つことに何のためらいも見せてなかったのは少々「?」だったが。

 

 ところで今回初めて3D映画というものをみたが、正直なところ無用の長物に感じられた。特にSFの場合は作り物の映像だけに立体感が不自然な場合が多く、看板絵の背景の前でこれまた看板に書いたキャラが突っ立っているように見えるシーンもあり、これだとむしろ逆効果ではないかと感じた次第。3D映像については登場当初から「次に映像が向かうべき方向はこれではない」と感じているのだが、その想いが強くなっただけ。

 

夕食はヒルズの地下で高級トンカツ

 映画を見終わるとホテルに戻る前に夕食を摂ることにする。ヒルズの地下の飲食店街に行き、今朝朝食を摂った「えん」の斜め向かいにある「豚組食堂」に入店。ここはブランド豚なども扱う高級トンカツ店のようだ。名前を忘れたが静岡のブランド豚のロースがあったのでそれを頂く。なかなかに脂身のうまい良いカツであるが、これで2900円はさすがにかなり高い。

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豚組食堂

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トンカツの定食

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確かに良い肉だが

 夕食を終えるとホテルに戻って入浴後に就寝。今日は朝から夜まで出ずっぱりでかなり疲れた。