徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

韮山反射炉を見学してから、名古屋に移動して美術館掃討戦

朝食を頂くと名古屋まで長距離ドライブだ

 翌朝は6時半まで爆睡。目が覚めると朝風呂に行く。浴槽の温度設定が高めなので目が覚める。サッと入浴を済ませてあがるが、私の後で入ってきた親子連れが風呂が熱いとギャーギャー悲鳴を上げている。確かに子供には少々酷な温度だと思う。私も昔は熱い風呂は苦手だったが、鳥取などの熱い風呂を何度か体験するうちに慣れてきた・・・というか、ただ単にジジイになって感覚が鈍ってきただけかも。

 朝食はハーフバイキング形式。朝から飯がなかなかにうまい。タップリと腹に詰め込んでおくことにする。

f:id:ksagi:20210903223506j:plain

朝食はハーフバイキング

 さて今日の予定であるが、今日・明日はもう帰り行程になる。今日は基本的には名古屋まで突っ走るだけ、その途中で美術館にいくつか立ち寄るつもりである。

 

世界遺産登録された韮山反射炉を見学する

 ホテルをチェックアウトするといよいよ長距離ドライブだ。ただ高速に乗る前に一カ所立ち寄って置くことにする。ここのすぐ近くに韮山反射炉があり、最近になって「明治日本の産業革命遺産」の一環で世界遺産登録をされたということなのでそれを見学しておく。

 以前はアクセス道路は車のすれ違いもしんどい路地だったようだが、世界遺産登録に合わせて道路も駐車場も整備され、物販施設なども整備された一大観光地になっている。なおここから見るだけなら金がかからないが、近くで見ようと思うと入場料300円がかかる仕組み。保存にも金がかかるだろうし、お布施のつもりで入場する。

f:id:ksagi:20210903223813j:plain

土産物屋が出来ている

f:id:ksagi:20210903223827j:plain

金を払わなくてもこのぐらいは見える

f:id:ksagi:20210903223948j:plain

反射炉を建設した江川英龍

 地元ガイドが説明してくれるが、要は幕末の黒船来航などで外国の脅威に直面した幕府が、お台場に大砲を設置することを決定し、その大砲を鋳造するための鉄を作るのに建設したのがこの炉。良質の鉄を作るための高温を実現できる当時としては最新の炉だが、資料がオランダから輸入した書物ぐらいだったので、非常に苦労したという話。これを担当したのが江川英龍という人物だが、炉の完成の前に病死し、息子の江川英敏が跡を継いで、ようやく3年半越しで完成したとのこと。何しろ当時の日本はレンガさえないような状況だったので、工事は相当の困難と失敗の連続で、職人の執念のようなものが完成させた代物だという。なお同様の炉は萩に残っているし、佐賀にもあったらしいが、実際に稼働したのはここだけらしい。

f:id:ksagi:20210903224137j:plain

韮山反射炉

f:id:ksagi:20210903224228j:plain

反射炉本体手前が空気取り入れ口

f:id:ksagi:20210903224347j:plain

ここから燃料と原料銑鉄を入れる

f:id:ksagi:20210903224407j:plain

曲面の天井で熱が反射して集中する

f:id:ksagi:20210903224249j:plain

融けた鉄はここに出てくる

f:id:ksagi:20210903224502j:plain

こういう大砲を鋳造していた

 

 韮山反射炉を見学した後は名古屋方面に向けて長距離ドライブ。新東名に乗っかると名古屋方面に向けて爆走。新しい道路で規格が高規格だから運転しやすい。途中の静岡SAで昼食にマグロ丼を食べると、土産物を買い求めてから再び疾走。

f:id:ksagi:20210903224530j:plain

昼食は静岡SAでマグロ丼

 極めて順調に豊田東JCTまで到着すると、ここから東海環状道に入って豊田松平ICで降りる。名古屋に到着する前に立ち寄る美術館がある。

 

「デトロイト美術館展」豊田市美術館で6/26まで

f:id:ksagi:20210903224618j:plain

f:id:ksagi:20210903224628j:plain

 デトロイト美術館の所蔵品から52点を展示。展示作はゴッホからモネ、ルノワールなどの有名どころが揃う。

 一渡りの有名どころの画家の典型的な作品が揃っているのだが、その割には強烈な印象に残る作品がなかったというのが正直なところ。また展示の後半になると近代絵画のどうでも良いようなところが増えてくるので興味減退。展示品の年代が全体的に近代寄りであるのが私には相性が悪かった一番の理由か。

 

 相変わらず豊田市は車最優先の都市であり、車がないとどうにもならない構造になっている。だから美術館も丘の上の歩いて行く気にはならない場所に、大きな駐車場完備で建っているという状態。さすがにトヨタ様のお膝元というわけである。今回は気合いの入っている企画展だからか、駐車場はかなり満車に近かった。ただ会場内はそれほど混雑はしていなかったが。

 

 豊田市美術館を後にすると次は刈谷まで走る。マイナーな美術館であるが、なぜかここには何度か来ている。

 

「近代洋画の巨匠 和田英作展」刈谷市美術館で6/5まで

f:id:ksagi:20210903224736j:plain

f:id:ksagi:20210903224746j:plain

f:id:ksagi:20210903224840j:plain

 明治期からの日本洋画界に大きな功績を残した和田英作の展覧会。

 最初は明らかに西洋の物真似的な表現が多いのだが、そこから洋画で日本の情緒を描こうと四苦八苦していたのが作品から覗える。その結果として、落ち着いた渋い独特の洋画に行き着いていて、日本的な題材との親和性が高くなっている。最終的には日本洋画のアカデミズムを確立したのであるが、その功績が大きい。

 全体的に「好ましく」感じられる絵画が多い。日本の画壇自体が試行錯誤の時期だったのだが、それだけに絵画に真剣に取り組んでいる姿勢が作品から滲んできている。保守的な絵画とも言えるのだが、アカデミズムが確立してこその革新などの存在があるのだから、重要性は非常に高い。

 

 「型」があってこそ「型破り」の妙味が出るが、「型」が存在しなければ単なる「形無し」で終わってしまう(現代の芸術の大半はこれだ)。その「型」を作る側に貢献した画家とも言える人物。ただ決して雁字搦めの面白くない作品なのではなく、芸術度も高い。

 

 これで名古屋に入る前に立ち寄る美術館は回り終えたので、ホテルに向かうことにする。今回宿泊するのは以前にも泊まったことのある金山ホテル。ビジネスホテルとしては少々高めなのだが、地の利が良くて大浴場や契約駐車場があることから選んだホテル。

 都市高速の入口を間違えたりなどのてんやわんやはあったが、どうにか予定時刻にホテルに到着。車を預けてチェックインすると直ちに外出する。ここのホテルを取ったのはここに立ち寄るためでもある。

 

「ルノワールの時代 近代ヨーロッパの光と影」名古屋ボストン美術館で8/21まで

f:id:ksagi:20210903224909j:plain


 ルノワールを冠しているが、目玉として「ブージヴァルのダンス」の展示はあるが、展覧会の内容自体は「時代」の方に力点があり、ルノワールが活躍した頃の様々な絵画の潮流を紹介するという内容になっている。

 この時代は都市化が一気に進んだ時代らしいが、そのような都市の風景を描いた作品がある一方、地方に魅せられたり都会に幻滅した画家の田園を描いた作品もある。前者の代表としてはオノレ・ドーミエの風刺画や当時のポスターや風俗画的なものもあり、展示の幅は広い。田園と言えばやはりバルビゾン派に始まるのだが、モダニズムを経てからの田園は、かつての理想化されたものではなくてどこか厭世的な雰囲気の作品が増えていたのが印象的。

 

 久しぶりに「ブージヴァルのダンス」を見た。躍動感のある絵である。「都会のダンス」と「田舎のダンス」を先日、東京の国立新美術館で見てきた直後であるから、これでルノワールのダンス三部作を一気に鑑賞したことになる。こういう生き生きした人物画こそがルノワールの真骨頂だろう。

 

夕食はホテル内のレストランで済ませる

 これで本日の予定は完全終了。スーパーに立ち寄って今日の夜食を買ってからホテルに戻る。夕食については店を探すのも食べに出るのも面倒なので、ホテル内の「旅籠茶家かやかや」で済ませることにする。名古屋飯の盛り合わせのような膳(味噌カツに手羽先、きしめんなど)に鱈の白子をつけて、デザートにわらび餅を注文。腹が減っているのでガッツリと頂く。宿泊者割引があって支払いは2763円だから悪くない。

f:id:ksagi:20210903224951j:plain

夕食の膳

f:id:ksagi:20210903225007j:plain

デザートはわらび餅

 夕食を終えると大浴場で入浴。じっくり疲れを抜くつもりだったのだが、やはり長距離ドライブで疲れ切っているせいで逆に疲れが滲みだしてくる感じになってしまった。部屋に戻るとベッドの上でゴロンと横になってテレビを見ていたが、やはりかなり早めに眠気が来てしまって、気がつくと寝てしまっていた。

次の記事は

www.ksagi.work