徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

岡山フィルの定期演奏会のついでに周辺の美術館に立ち寄る

 昨日は大阪に出かけたが、今日は岡山に出向くことにした。岡山フィルの定期演奏会と展覧会が目的。昨日は東に今日は西にまさに東奔西走なのだが、一体私も何をやっているのやら。

 JRで岡山に到着すると、まずは路面で移動して美術館へ。ここも結構良く来る美術館である。

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「原田直次郎 西洋画はますます奨励すべし」岡山県立美術館で7/10まで

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 高橋由一に師事した後に渡欧、アカデミーで本格的に西洋画を学んで帰国、洋画排斥の風潮の中で西洋画を極めることの意義を説いて後進の育成などにも励み、日本洋画の確立に貢献した画家である原田直次郎の展覧会。

 彼の作品を見ていると、アカデミズムの技術を完全にマスターした上で、当時流行しつつあった外光派などの影響を見受けられる絵画も描いており、その表現幅の広さと確かな技術を感じさせる。彼のその技術と後に与えた影響の重要さの割には彼自身の知名度が今ひとつなのであるが、それは惜しくも彼が36才という若さで夭折したことが大きく影響しているようだ。しかし彼の弟子に当たる画家には和田英作なども存在しており、彼なくして日本の近代洋画壇の確立はなかったとも言える。

 本展では彼の作品だけでなく、師匠筋、友人筋、弟子筋などの作品が併せて展示されており、当時の画壇の状況をうかがわせる内容になっている。また森鴎外との親交にまつわる展示などもあって多彩ではある。

 彼の作品としては目玉はやはり「騎龍観音」。龍に乗った観音様という極めて日本的な題材を西洋画の手法でリアルに描いた秀作だが、これは当時はいろいろと議論の的となって批判にもさらされたという(その時に擁護の論陣を大々的に張ったのが森鴎外だとのことだ)。しかし今日的な目で見ると、非常に高い技術力と表現力を感じさせる傑作である。なおファンタジー的な要素が見えるので、最近のファンタジー小説の挿絵や扉絵であっても違和感がないようにも思える。

 

 県立美術館を見学した次は隣の美術館を見学。

 

「日本工芸の100年 ペルシアの記憶から現代まで」岡山市立オリエント美術館で6/19まで

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 東京国立近代美術館工芸館所蔵の明治以降の工芸品の名品を展示。

 やはり圧倒されるのは明治期の工芸品。まさに日本の匠の技術力を感じさせる逸品が揃っており、陶芸、彫金、あらゆる分野で思わず唸らせられる作品が多い。この時代の超絶技巧は今見ても色褪せるところはない。

 昭和初期の民芸運動を経て、戦後になると感覚重視のいわゆるアート感覚が工芸の世界の方にも入ってくる。感性としては面白いものを感じたりするのだが、この辺りになると工芸としての意味はあるのかというところに少々疑問を感じたりもする。

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岡山の商店街で昼食

 美術館を回り終えたところで1時を回っていた。コンサートの開演は3時からなのでそれまでに昼食を摂っておく必要がある。ホール周辺の飲食店街をうろついて「Bf109」なるハンバーグ店を見つけたので入店する。「キノコのハンバーグ(970円)」を注文。

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Bf109

 取り立てて特徴はないが、普通に美味しいハンバーグである。なるべくつなぎを使用せずに作っているとの表示があったが、おかげでハンバーグ自体が崩れやすいのがいささか難点ではある。

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キノコのハンバーグ

 ところでここの店名、Bfはビーフだとして109は何だと思っていたら、店名の元らしきものは箸袋に記載してあった。アドバンスド大戦略にハマった人間ならお馴染みのドイツの戦闘機である。しかし何で唐突にこれが?

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どうやら店名はこれ由来

 昼食を終えたが開場までまだ時間があったので、サンマルクカフェで一服してからホールに向かうことにする。うーん、ここの珈琲は星乃よりも落ちるな。

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サンマルクカフェで一服

 一服し終わった頃には2時を回ったのでホールに向かう。椅子はやや安っぽいがホール自体は立派なホールで、音響も京都コンサートホールや西宮よりは良い。場内の入りは6割というところか。ホールの大きさを考えると結構入っている。

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岡山フィルハーモニック管弦楽団第50回定期演奏会

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指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー

【曲目】
ベートーヴェン/交響曲 第1番 ハ長調
マーラー/交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

 非常に頑張っているなという印象の演奏。しかしそれはつまり「頑張っている」というのが見えてしまうレベルということをも意味する。ベートーベンの前半でやけに管がヒステリックに響いて耳障りだったり、マーラーでホルンの斉奏がひっくり返ってしまったり、トロンボーンが突然ヘロッたりなどいういうヒヤヒヤする場面もあったりしたし、タイミングなどには若干の甘さを感じさせられるし、弦楽も今一歩の貧弱さを感じさせるものがあった。そのために精一杯の一杯一杯という感じがあり、シェレンベルガーの意図に完全に従えていたかといえば疑問である場面もいくつかあった。

 というように演奏技術としてはまだこれからというところは多々あるが、だから駄目な音楽になっていたというわけではない。音楽をやっている意図はこちらに伝わってきた。だからこそ演奏後に会場内も割れんばかりの温かい拍手に包まれたのだろう。これからも頑張ってもらいたいところ。

 演奏前にシェレンベルガーから3年間契約を延長して、今後もこのオケの技術の向上に努めるという主旨の発表があった。この時、場内の観客から一斉に拍手があったことから、やはり皆もそれに期待しているのだろう。まだまだ課題も多いであろうが今後に注目したいところである。

 

駅前の巨大イオンモールで時間をつぶす

 コンサートを終えると駅に急いだが、数分遅れで列車に間に合わず、次の列車まで1時間弱あるので最近出来たというイオンモールを見学に行った。

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タマ路面の走る町

 大きいとは聞いていたが、確かに異常に広い。また1~4階に巨大な吹き抜けを作るという高所恐怖症の私にとっては天敵のような作りになっている。おかげで5階のフロアが「板子一枚下が地獄」感が強すぎて、このフロアに行く気がしなかった。

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1~4階が吹き抜け構造

 また5階には空中庭園のようなものがあったりなど、とにかく空間的に贅沢な作りになっている。印象としては「都会人からしたら特に驚くところはないが、地方の人間が見たらかなり驚くだろうな」というもの。また女性が喜びそうな内容になっている。とにかく集客力はかなりありそうであり、これは天満屋がガラガラになるわけである・・・。

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5階の空中庭園

 今まで郊外戦略をとっていたイオンが、今回は交通の要衝である岡山の駅前に進出してきたわけで、これはかなり広い範囲に影響がありそうである。