徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ&「ユニマットコレクション」at 小磯記念美術館

 翌朝は7時半に起床。チェックアウト時刻は9時なので、それまでに今日の戦略を立てたり荷物をまとめたり。チェックアウト後は駅前の立ち食いそば屋できつねうどんを朝食にすると阪神で神戸方面に移動する。

 とりあえずは久しぶりに六甲アイランドの小磯美術館を訪問するつもり。現在、ユニマットコレクションの展示を行っているらしい。ユニマットは以前は東京に美術館を開いてコレクションを公開していたのだが、美術を担当していた役員が亡くなって運営が出来なくなったとして美術館を閉館してしまっている。

 

「ユニマットコレクション フランス近代絵画と珠玉のラリック展」神戸市立小磯記念美術館で11/12まで

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 ユニマットが所蔵するコレクションから、フランス近代絵画等を展示。お馴染みのバルビゾン派から始まって、アカデミズムに印象派を経て、エコール・ド・パリといった流れになっている。

 バルビゾン派はお約束のコローの農民画辺りから、トロワイヨンのなぜか羊の絵などと言ったところで定番どころ。この次にルノワールの秀品が数点。結構定番どころが並ぶ中で、なぜか私の印象に残ったのは素朴派カミーユ・ボンボワの作品。ルソーなどと同様の全く技巧的でない画面にみっちりと描き込んでいるのが強烈なインパクトがある。

 美術担当の役員が亡くなって美術館の運営が出来なくなったというのは、要は「美術好きの役員の個人的趣味で絵画蒐集を行っていたが、その役員が亡くなったら会社としてはそんな金にならないことは出来なくなった」ということだろう。世知辛い世の中である。そうなると気になるのがコレクションの散逸。これはユニマットの今後の経営状況と経営方針次第だろう。なお以前に美術館を訪問した時はシャガールのコレクションが白眉と感じたのだが、今回はシャガールは一点もなかった。ただ単に他に行っているだけか、それとも既に売り払ったのかが気になるところ。所詮は金儲けが目的の企業と、道楽から始まっている文化は本来は水と油である。四半期の決算ばかりを気にする展望なきド短期経営のみが蔓延する昨今では、企業の文化貢献などは単なるかけ声だけになりがちだ。

 

 今回はこの美術館を含めてこの辺りの美術館でスタンプラリーを行っているとのことでラッキーなことに入場料が割引となった。なおこの近くには神戸ゆかりの美術館とファッション美術館があるが、出し物が「萩尾望都原画展」と「アップリケ」では行く気がしない。かと言って香雪や白鶴に行くには足の便が悪いし。結局は今回はここだけにしておく。

 

三ノ宮で昼食を摂ると西宮へ

 三ノ宮に移動すると昼食を摂ることにする。入店したのは「肉のツクモ」「ステーキ丼の大」を注文する。昨日の大阪のサイコロステーキよりは肉が良い。まずまずである。

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ステーキ丼

 昼食を終えると近くの国際松竹に立ち寄って、METのライブビューイングのムビチケを購入しておく。METのオペラ公演が映画館で見れるらしい。オペラはライブが一番だが、さすがに金がないし、そもそもMETになんて逆立ちしても行けないし。貧乏人はこんなところが妥当だろう。

 大体の用事を終えると西宮に阪急で移動する。いつものホールは8割ぐらいの入りというところか。

 

チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ

指揮 ウラディーミル・フェドセーエフ

ボロディン:交響曲 第2番
      だったん人の踊り(歌劇「イーゴリ公」より)
チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」(フェドセーエフ・セレクション)
Ⅰ.花のワルツⅡ.葦笛の踊りⅢ.ロシアの踊りⅣ.終幕の踊りⅤ.アラビアの踊りⅥ.祖父の踊りⅦ.子守歌Ⅷ.情景-深夜〜クリスマスツリー
大序曲「1812年」

 フェドセーエフは実は一般にいわれているような爆演型の指揮者ではない。その演奏は細部にまで気を回して計算された緻密なものである。確かにフォルテッシモはそれなりのパワーでガンガン鳴らすが、彼の真価はその合間の美しい演奏にある。

 今回はその傾向がさらに顕著になったようである。やや抑えめのテンポでゆったりと鳴らしてくる演奏が多かった。ただその演奏で曲の魅力を最大限に引き出している。ボロディンの交響曲2番などは結構雑な作りに感じられるようなところのある曲なのだが、この曲をキッチリカッチリ魅力的に描いてきた。こうして聴くとこの曲がチャイコフスキーのように聞こえてきたりするから驚き。

 後半のチャイコフスキープログラムはまさに真骨頂と言うべき見事な演奏。魅力的なバレエ音楽に、最後は華々しい祝典序曲で盛り上げた。このような派手な曲でも決して無駄な馬鹿騒ぎはしていない。もっとも打楽器陣はかなり大活躍していたのは事実であるが。この辺りはなかなかの爽快感。

 TSOは打楽器の元気親父が有名だが、今回は小太鼓だけでなくタンバリンにトライアングルにと大活躍。最後は鐘を鳴らしまくっていた。相変わらずご健在のようで何より。ただフェドセーエフの方は、老いたというか足下がやや怪しくなっていたのが心配なところ。今回のスロー目のテンポは円熟だけでなく衰えも感じられないではなかったのが気にかかる。今後も是非とも元気に来日願いたいところである。