徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

サンクトペテルブルクフィルハーモニー管弦楽団他

 翌朝は目覚ましをかけていなかったのだが8時過ぎに目が覚める。安ホテルなので例の「ホワイトノイズ発生器」はセットしていたのだが、さすがにこのぐらいの時刻になると、これではカバーできないようなドスンバタンという大きな音があちこちから聞こえてくるようになるのである。

  今日の予定だが、メインはザ・シンフォニーホールで開催されるサンクトペテルブルグフィルの演奏会。元々はテミルカーノフの指揮のはずだったのだが、彼が実兄の急逝によるしショックで体調を崩してしまったらしく、指揮者は副監督のアレクセーエフに急遽変更という次第。日本ではほぼ無名の指揮者だけに「払い戻せ」とブーブー言っている客も少なくないようだが、私はテミルカーノフに対してそこまで思い入れもないのでどちらかと言えば野次馬気分。

 公演は14時からなので、それまでは別のスケジュールを。ホテルから10時頃出かけるとまずは天王寺に移動。とりあえずここの美術館が最初の立ち寄り先。

エッシャー展」あべのハルカス美術館

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 エッシャーと言えばモザイク画やだまし絵の類いばかりが有名だが、それ以外の作品もあり、それらの作品は後の彼の作品にもつながっている。と言うわけで本展ではエッシャーの初期の作品や人物画、風景画なども併せて展示してある。

 ただ彼の風景画などは立体に関する執着が尋常でないことを覗わせていて、結局はすべてあのだまし絵につながってしまうわけなのであるが・・・。


 ハルカス美術館の次は肥後橋まで移動。フェスティバルホールに立ち寄る・・・のではなく、目的は隣の建物の美術館。ただしその前に昼食を先に摂ることにする。フェスティバルゲートの地下で「キッチンジロー」に入店。ランチのセット(ハンバーグ+牡蠣フライ)を頂く。なおここの店はフェスティバルカード会員にはドリンクのサービスがある。

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ランチセット

 箸で食べる洋食という典型的町の洋食屋のスタイル。味付けもいかにも町の洋食屋で私好み。スープならぬ豚汁がついているのも良い。

 昼食を終えると向かいの建物に。ここの美術館の開館記念コレクション展の第4弾である。

「 珠玉の村山コレクション ~愛し、守り、伝えた~ 」Ⅳ ほとけの世界にたゆたう 中之島香雪美術館で12/2まで

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 コレクションの中から仏像・仏画の類いを展示。

 製造国が不明の仏像もあったが、以前に東京国立博物館で見た韓国国宝の半跏思惟像に姿勢も表情もよく似てるなと思ったら、やはり朝鮮製だと思われるとのことだった。この他にも中国の石仏などもあったが、こちらもやはり顔立ちが中国人風。こういうところにもお国柄が出るんだと妙に感心した。

 仏画もあるのでいわゆる地獄図などもあるのだが、浄玻璃鏡や赤銅を飲まされている亡者やら何が起こっているのかがよく分かってしまう自分が何とも。

 

 これで本日の美術館方面の予定は終了。後はホールへ移動だが、まだ開演時間まで余裕があるので途中で「つる家」に立ち寄って抹茶パフェで一息入れてからにする。

 一息入ったところでホールに移動する。今回は急遽の指揮者変更などと言うドタバタがあったせいか、会場の入りは6割というところか。やや寂しいものがある。

サンクトペテルブルグフィルハーモニー交響楽団

[指揮]ニコライ・アレクセーエフ
[ヴァイオリン]庄司紗矢香

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
チャイコフスキー交響曲 第5番 ホ短調 op.64

 庄司のバイオリンはやや線の細さを感じるが、技術が高い上に非常に美しい音色を出すという印象。アレクセーエフはオケがその音色をかき消してしまわないように、神経を使ってバランスを取っていたように思われる。いささか繊細であったが、この曲の曲想と合致した美麗な演奏であった。

 さてアレクセーエフの真価が問われるのがチャイコの5番であるのだが、彼はロシアによくある爆演型の指揮者ではなく、細かいところに気をつけてオケ全体をまとめていくタイプの指揮者であることが感じられた。サンクトペテルブルクフィルは17編成と言った超巨大編成の上にかなりのパワーを秘めたオケであるが、それを決して暴走させずに綺麗な音色でまとめて鳴らさせている。下手なオケだと退屈な演奏になる可能性があるが、このオケぐらいのレベルになるとこういう演奏もあり。力強いと言うよりも非常に美しいチャイコフスキーであった。

 彼は副音楽監督とのことなのだが、日常的にオケに一番接しているのは彼ではないのかというのが感じられた。どことなくオケとツーカーの空気があり、それが演奏の安定感につながっていたように思われる。


 期待していた以上の演奏だったと思う。ただアレクセーエフは終始「テミルカーノフの代役」ということを意識していた節があり、なんとなく自分を抑えていた風が覗える。演奏もどことなくテミルカーノフ風だし、アンコールの時などは「今日の好演は私の功績ではなくてオケがすごいからですよ」とアピールしているようにも覗えた。テミルカーノフが引退するなどして、肩書きから副が取れて彼の時代が来てもっと自分を前に出したら、かなり良い指揮者になるような気がする。私としては、例えばこの前のスヴェトラーノフオケなんかを振らしてみたい。

 コンサートを終えたところで一旦新今宮まで帰ることにする。実はこの後はなんばパークスシネマでMETライブビューイングの「サムソンとデリラ」を見るつもりで既にチケットを手配してある。ただこれの上映が18時半からなので2時間ほどまだ余裕がある。そのうちに夕食を取っておこうという考え。なんば辺りの店は全く知らないし、どうせ高いところばかりだろうしということで、今やホームグラウンドになりつつある新今宮で夕食を摂っておこうというわけである。

 まだ5時前だというのに「八重勝」などはもう長い行列が出ている。私が目指した「だるま」は幸いにして行列がはけた直後。待ち時間なしで入店できる(私が入店した後にはすぐに行列が出来ていた)。入店するとコーラを頼んで、串カツを適当に15本ほど。これで支払いは2500円ほど。これが妥当と考えるのが今の私の金銭感覚なので、これでは梅田やなんばではなかなか食事は出来ない。

 串カツで腹を膨らませるとなんばまで移動する。しかしたどり着いたなんばパークスは独り者のオッサンを寄せ付けない強烈な結界が張られているのを感じる。毒の沼地のような結界の中を体力と精神力を削られながらパークスシネマに向かうことに。

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独身のオッサンを寄せ付けないための結界の数々

 パークシネマに到着したのは入場40分ぐらい前。というわけで、今この原稿をベンチに座って入力している(笑)。私もいよいよ怪しいライター化してきている。

METライブビューイング サン=サーンスサムソンとデリラ

指揮:マーク・エルダー
演出:ダルコ・トレズニヤック
出演:エリーナ・ガランチャロベルト・アラーニャ、ロラン・ナウリ、ディミトリ・ベロセルスキー、イルヒン・アズィゾフ

 サン=サーンスのオペラは初めて聴くのであるが、初っ端から派手派手な音楽には圧倒された。サン=サーンスの音楽は色彩的と言われていることは知っていたが、恥ずかしながら彼の曲は交響曲第3番と動物の謝肉祭ぐらいしか知らないので、このようにオペラの大作を耳にして初めて実感した次第。

 その派手な音楽に乗せて圧巻の歌唱が繰り広げられるのはさすがにMET。サムソンのロベルト・アラーニャは初っ端から力強いテノールでガンガンと来る。デリラの誘惑に悩むシーン、裏切られてどん底に落とされるシーンなど感情表現も豊かで堂に入っている。一方これに絡むデリラのエリーナ・ガランチャも素晴らしい。策略によってサムソンを誘惑しつつ、その中に一片の彼への愛情からの迷いも覗えるという表現が実によく現れていた。

 
 サン=サーンスのオペラがこんなに凄かったとは知らなかった。どうもこの世界も私のまだまだ知らないことが多い。今まで交響作家中心にしか音楽を聴いていなかったから、そのイメージがいろいろな点で覆っていく体験をしている。

 終了が22時過ぎ。さすがにカーテンコールもそこそこに早々と映画館を後にすると、南海で新今宮まで移動。ホテルに戻るとこの日はバタンキューとなってしまったのである。