徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

ムジカエテルナ初来日ツアー

 世間ではバレンタインデーなる行事があるらしいが、ひたすら硬派路線を突っ走る私の日常にはそんな浮かれた行事は全く無縁(泣)。今日も変わらず日常を粛々と送るのみ。

 今週末は東京への遠征。目的はチョン・ミョンフン指揮の東京フィルのコンサート。チョン・ミョンフンのマーラーは以前に聴いて感心したし、東京フィルはチョン・ミョンフン指揮の時は演奏レベルがワングレードアップするので期待するところ。

 東京フィルのコンサートは金曜日を確保している。日曜日の回もあるのだが、どうせなら音響最悪のオーチャードでなく、サントリーで聴きたいと考えた次第。このために金曜日は休暇を取ることにした。また木曜日には大阪でムジカエテルナのコンサートもあるので、これから続けて移動しようと考えた次第。

 

 木曜日の仕事を終えると大阪に直行する。まずはホテルに立ち寄って荷物を預ける。今回の宿泊ホテルはクライトンホテル新大阪。昔、朝から伊丹空港で移動する時などにはよく前泊に利用したホテルだ。大浴場があり朝食がしっかりしているのが特徴。ただ、その後に大阪宿泊の頻度が高くなりすぎ、そのたびにこんな高級ホテル(あくまで私基準)にばかり泊まっていると財政が破綻するので、段々と宿泊ホテルのランクが下がってかなり足が遠のいてしまったホテル。しかし今回は、明日の朝に新幹線で東京に移動するので新大阪に近いホテルが良いのと、じゃらんのポイントが結構貯まっていたことから久しぶりの高級ホテル宿泊である。

 ホテルにチェックイン手続きを済ませると、バレンタインデーということでチョコレートのオマケが・・・。って頭から追い払っていた鬱陶しい行事を思い出させるんじゃない! もうバレンタインとクリスマスはオワコンということで良いのでは・・・。

 ホテルに荷物を置くと直ちに外出してフェスティバルホールへ向かう。ここのホテルは地下鉄西中島南方直近なので、大阪へのアクセスは良い。

 

夕食はミンガスのカツカレー

 この日の夕食だが、最近は夕食を考えるのが面倒くさくなっている。そこで梅田から西梅田に乗り換える途中で前を通りかかった「ミンガス」で久しぶりにカツカレーを。これが正しい大阪ファーストフードである(実際にカレーが出てくるのはマクドよりも早い)。

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ミンガスのカツカレー

 ファーストフードを腹に入れるとフェスティバルホールへ。ステージでまだリハーサルが行われているのか、私が到着した時はまだロビーまでしか入場できない状態。かなり大勢の客がロビーにあふれかえっている。しばらくして入場が始まるが、館内はほぼ満席に近い状態。東京では売り切れの公演もあったらしいが、かなりの人気である。

 

テオドール・クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ 初来日ツアー

指揮/テオドール・クルレンツィス

管弦楽/ムジカエテルナ

ヴァイオリン/パトリツィア・コパチンスカヤ

チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」

 かなり独特の演奏。東京公演では賛否両論で侃々諤々となっていたらしいが、それも非常に頷ける。

 まずコパチンスカヤのヴァイオリンであるが、これはほとんど軽業師といって良いもの。小さい体をフルに使ってのかなりの熱演である。ただしその演奏はかなり個性的というか無手勝流。テンポ強弱すべてが非常に変化の激しい演奏。特にテンポに関してはほとんどすべてが変拍子と言える。ソリストがこの演奏ではバックのオケは崩壊しそうなものだが、そこは相方のクルレンツィスがほとんどコパチンスカヤと対面のような状態でテンポを取っている。またオケメンも指揮者を注視していてかなりの集中力のある演奏。一種のツーカーの関係があって成立しているようである。ただそれでもところどころソリストとオケがズレる局面も。コンサートというよりは、女軽業師とサーカスの団長といった雰囲気。

 後半の悲愴はチェロ以外は立ち上がっての演奏。演奏自体はかなりの熱量を帯びているし、強弱変化などがかなり激しいこってりとした演奏。クルレンツィスの指揮はかなり変則的なので、オケメンの指揮者への注意の払い方がかなり高く、その辺りが通常とは異なるタイプの緊張感を帯びている。

 総じて言えるのはかなり「変則的」な演奏であると言うこと。テンポ変化の激しさも、通常の演奏とは異なる強弱の取り方もかなり独特である。特にコパチンスカヤの自在の演奏は独特の魅力もあり、麻薬のような中毒性のあるものに思われる。実際にコンツェルトの第一楽章が終わった途端に場内にざわめきが起こったし(ここで拍手が出てしまうことはよく経験しているが、場内がざわめいたのは初めて)、演奏終了後の拍手も爆発的なものがあった。ただこれは諸刃の剣。熱狂させるものを持つのと同時に、異端・下品・悪趣味と嫌悪感を持たせる可能性も高い。東京公演では賛否両論が沸いたようだが、それは私にも納得できる。なお私のスタンスだが、やはり「面白くはあるが、いささか悪趣味に過ぎる」というところである。

 「悲愴」についても同様。クルレンツィスの演奏自体がコパチンスカヤと同様にかなり変則的であるので、所々でとんでもない魅力ある演奏が飛び出すと思えば、「おいおいそれは違うだろう」という部分もあったりで変化が激しい。ただ総じて感じたのは、部分部分で煽りすぎるせいで全体の流れがいささか悪くなっていたということ。私としては全体を音楽としてスムーズに流した上で感動を呼ぶような演奏が理想である。そういう意味では、単に「熱気を帯びた演奏」と言っても以前のポリャンスキーのものとは質が違いすぎる。表現意欲は感じるのだが、細部の細工に陥って全体を通しての設計が甘いというか。私としては興味あるのは、10年後にクルレンツィスが異端の天才として世間に認知されているか、それとも単なる色物で終わってしまうかである。当然ながら前者となることを期待する。

 

 賛否両論があるだろうが、明らかに密度の濃いコンサートではあった。おかげで少々疲れた。帰途で夜食にパンを買い求めてからホテルに戻る。本当はラーメンでも一杯食べたいところだが、現在の体調を考えてそれは止めておく。

 ホテルに戻るとまずは入浴である。そもそも今回はそのためにこのホテルを選んだとも言える。新今宮界隈のホテルだと、残念ながらこの時間では入浴の出来ないところが多い。やはり仕事とコンサートの連チャンの後は風呂でゆったりとくつろぎたいというのが日本人の心情というもの。大浴場で手足を伸ばしてゆったりと癒やされる。

 風呂上がりにはマッサージチェアで体をほぐす(これが無料であるのがここの良いところ)。体があちこち痛くなっているのでこれはありがたい。

 部屋に戻るとマッタリとテレビを見ながらクールダウン。眠気がこみ上げてきたところで明日に備えて就寝する。