徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

奇想の系譜展&ル・コルビュジェ展&両陛下と文化交流&東寺展

 知人から新日フィルの「復活」のチケットをもらったので、この週末は急遽東京に飛ぶことにした。ちょうど展覧会の方も行きたいものがいくつかあるのでそれも併せて見学することにした。

 金曜日の仕事を午前中に終えると神戸空港へ急ぐ。今回は文字通り「飛ぶ」つもり。これも交通費の節約である。神戸空港に到着すると、あまり時間がないこともあって昼食ははまぐりうどんをかき込む。

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はまぐりうどん

 昼食を終えると搭乗カウンターへ。東京までスカイマークで飛ぶことになる。毎度の事ながらここの飛行機は乗る度に「これが人生最後かも」という考えが過ぎって仕方ない。今回も途中で何度かガタガタと気持ち悪い揺れなどもあって、その度に先の考えが頭を過ぎるが幸いにして東京には定刻よりも早く無事に到着する。

 飛行機を降りると京急とJRを乗り継いで上野まで移動。これから上野地区美術館巡りである。今日金曜日でナイター開館があるのでそれを当て込んでいる。コインロッカーにキャリーを放り込んで身軽になると上野へ・・・なんだが、やけに人が多い。何があったんだと思っていたら桜か・・・。私は花見なんてしない人なので桜のことは眼中になかった。何やら出店が出たりしてドンチャン騒ぎになっている。

 それを横目に見ながらまず向かうのは東京都美術館。ここで開催中の「奇想の系譜展」の後期を見に行くつもり。現在5時なのでこれから仕事を終えたサラリーマンなどが増えてくる可能性がある。そこで一番宣伝されていて知名度の高い展覧会から立ち寄ることにする。


「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」東京都美術館で4/7まで

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 細かい展示替えがなされているが、私的には一番の目玉は曾我蕭白の「群仙図屏風」。何てグロテスクで、何て悪趣味。そして何て素晴らしくて、何てインパクトのある作品。以前に「日曜美術館」で、そもそも奇想の画家に注目したのはこの作品のインパクトの凄さに刺激を受けたためとの話題があったが、それもさりなんという作品。実際に私もこの作品に接してから、関連して長沢芦雪伊藤若冲歌川国芳、さらには河鍋暁斎というように展開していったのだから。久しぶりの再会であるが、何度見てもそのインパクトは色褪せない。

 今回はほとんど「群仙図屏風」を見るために来たみたいなもの。十分に堪能したので美術館を後にする。東京都美術館の次は隣の国立西洋美術館へ。


ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」国立西洋美術館で5/19まで

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 建築界の巨匠で、この美術館の建物の設計も行ったル・コルビュジェの活動を振り返る展覧会。

 ル・コルビュジェことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(本名)は画家のアメデ・オザファンと出会ったことで、ピュリズムの活動を開始する。ピュリズムとは工業時代に対応して、日常生活におけるごく普通の品を題材にした絵画を組み立てたものだという。この時期のジャンヌレはオザファンから習って絵画の制作を行っているのだが、そこには既に事物の幾何学的形態に対する鋭い感覚が覗える。

 ところでピュリズムはそもそもはキュビズムに対するアンチテーゼとして発生したらしいのだが、彼らの絵画はいずれも形態に対する執着が強く、私のような素人から見るとキュビズムの絵画に非常に類似して見えるのが実に皮肉である。違いとしては立体を多方向から捉えようとしたキュビズムにある多視点性がないところぐらいか。そのためか結局はジャンヌレの絵画も最終的にはキュビズムの方向に向かうことになったらしい。

 その後、オザファンとの軋轢からの決別など諸々あったようだが、ジャンヌレはル・コルビュジェを名乗って本業の建築の方に力点を移していくことになる。それからの彼の作品が今日でもよく知られている独創性の高い一連の建築群である。

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ル・コルビュジェの建築デザイン

 ル・コルビュジェの建築の背景に潜む思想的なものが覗える興味深い展覧会であった。何となく彼の独特の形態の建物の理由が理解できたような気がする。

 

 もう結構時間が遅くなってきた。しかしまだ最後に立ち寄らないといけない場所が。東京国立博物館で皇室絡みの文化財の展示があるとのことなので、それを見学しておきたい。会場は本館の特別展示室。そう言えばかなり昔にここにダヴィンチの「受胎告知」を見に来た記憶がある。


「両陛下と文化交流-日本美を伝える」東京国立博物館で4/29まで

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 宮内庁が管理している皇室ゆかりの美術品を展示。目玉は天皇陛下即位の儀式に際して東山魁夷高山辰雄が製作した「悠紀・主基地方風俗歌屛風」。私の訪問時は東山魁夷の「悠紀地方風俗歌屛風」が展示されていたが、見慣れた東山調の作品に祝典用ということでお目出度さを5割増しぐらいした絢爛豪華な作品である。

 これ以外にも岩佐又兵衛による「小栗判官絵巻」などの名品もあり。またさすがだったのは工芸品類で、洗練された品のよいデザインの中に高度な技術が詰まった品々が逸品であった。

 

 さらに平成館で開催中の東寺展も覗きに行くつもりなんだが、軽い昼食を摂っただけで歩き回りすぎたせいか、そろそろガス欠でかなりしんどくなってきた。そこで展覧会に入る前に、館内の鶴屋吉信の出店で和菓子やあんトースト(ここは名古屋か?)を摂って一服することにする。あんこの甘さが心地よい。さすがにここの小豆は最上である。

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お茶と和菓子

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あんトースト

 ようやく少し復活したところで展覧会の方に入場することにする。

「国宝東寺-空海と仏教曼荼羅東京国立博物館で6/2まで

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 東寺は弘法大師空海嵯峨天皇から賜った寺院であり、空海が唐で学んできた真言密教の根本道場であった。そのために東寺には真言密教の奥義に纏わる名宝などが所蔵されており、本展ではそれらを展示。

 真言密教とはインドにおいて古来よりのヒンズー教に押されがちであった仏教が、勢力拡大のためにヒンズーの神々なども取り入れて受け入れやすくした仏教だとのことである。そのために、いわゆる一般的なありがたい仏様でなく、かなり異形のおどろおどろしい神様の像が多い。また象に乗った仏などかなりインドらしい仏であり、より仏教のオリジナルの形態に近いことを感じさせる。

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帝釈天騎象像

 この辺りが造形として非常に興味深いことにつながる。穏やかでありがたい仏様と違い、悪を力で撲滅するかのような荒々しく力強い神像には彫刻的になかなかに心惹かれる。やはり私は仏像もマッチョ系の方が好みのようだ。

 正直なところ、東寺は京都の寺だし場合によってはパスしても良いかと考えていたのだが、予想以上に面白かった。この展覧会は当たりだ。

 

 さてもう7時をとっくに回ったが、これで今日の展覧会の予定は終了。この界隈で夕食を摂ってからホテルに向かうことにしたい。さて今日の夕食だが、今はここ最近にしては珍しいぐらい腹が減っている。最近は空腹を自覚したことがほとんどなかったのでこれはかなり珍しい。で、急に食いたくなってきたのがウナギ。そこでこの近くにある「伊豆栄」に向かうことにする。

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伊豆栄

 花見客でも来ているのか店内は大混雑でしばし待たされる。結局入店までは20分ぐらいか。うな重の竹」を注文する。

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江戸前の鰻重

 ここのウナギは江戸前なので蒸してある柔らかいものであるのは当然だが、タレの方もかなりあっさりした風味である。うなぎの白焼きも好む私としてはこれもありだが、関西人としてはもう少し甘みが欲しい気もしなくもない。気分次第でチョイスするのが正解か。

 うなぎを堪能すると上野駅でキャリーを回収して南千住に向かう。今回の宿泊ホテルは例によってのホテルNEO東京。ただ下手をすると今回が最後の宿泊かも。4月からは改装のために休館との案内が出ているのだが、どうもその後の予定は未定らしい。下手すると改装という名の閉館かも。とにかく私の東京遠征はここに対する依存度が高かったので、今後を考えると頭の痛いところ。

 ホテル戻るとグッタリと疲れが出るので、何とか入浴を済ませるとそのまま就寝するのであった。