徒然草枕

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アメトークで西成差別、未だに絶えない差別と偏見の愚かさ

 テレビ朝日のバラエティ番組「アメトーク」で西成を露骨に差別する表現があって番組が謝罪したとのこと。正直なところ「またか」というのが本音。まさか朝日放送の番組でなかろうなと思っていたが、テレビ朝日と聞いて納得。東京人にある典型的な大阪に対するステレオタイプの差別意識が象徴的に現れただけのようだ

www.huffingtonpost.jp

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 大阪で活動する度に西成(新今宮)のホテルを定宿としているニシナリアンの私としては、鼻で笑いたくなるような内容である。この地区は確かに東京人の感覚で言うところの「綺麗な町」ではない。しかしリーズナブルな価格で宿泊でき、リーズナブルな価格でまともな飯が食えるなかなか良い地域である。最近ではそれが受けて海外からの観光客が大挙して押し寄せているが、まあ東京的感覚で言えばそのアジア人の多さもまた差別の格好の材料なんだろう。

 なおこの地域が治安最悪で踏み込んだら最後無事に戻ってこれないかのような噂までネット上などではあるようだが、面白おかしい誇張か完全な偏見である。この手の話をしている輩でこの地域を本当に訪れたことのある者はまずいない。今回の番組でもどうやら現地での取材は一切していなかったようだ。私の実際の経験から言えば、この地域よりも一見はお洒落で綺麗な渋谷の方が治安という面では格段に悪い。少なくとも西成でハロウィンにかこつけてトラックをひっくり返すなんて馬鹿な話は聞いたことがないし、大規模な騒動なんかはここ10年以上耳にしたこともない。確かに一見して「それ」と分かる怪しげな人間を見かけることもあるが、そういうタイプの人間は東京でもあちこちにゴロゴロいる。そのタイプの人間に対して自分から好き好んで突っかかっていく奴はまさかいないだろう。

 批判が高まってさすがにまずいと思った番組側は謝罪したようだが、ネット上では謝罪する必要がないとの声もあるとか。ネット民の中にはとにかく自尊心が保てずに他人を何かの理由をつけて見下すことで自尊心を保とうとする輩が以前から一定量いるので、ある意味で想定内の反応でもある(人間、ここまで墜ちると終わりだとも思うが)。貧富の差による差別や学歴などによる差別などは、差別される側の努力や差別する側の怠慢によって覆されることがあるが、生まれた地域や肌の色などによる差別は、差別をする側にすれば努力で覆される恐れがないため一番安心して差別の材料に出来るネタのようだ。昔から愚劣な人間ほどこの手の差別にすがって自らの優位性を主張するものである。

 なお差別や偏見というのは頭の悪い人間ほどよく行うものだとか。と言うのはその方が脳の負荷が少なくなるからだという。例えば「黒人=犯罪者」と決めつけて判断する方が、黒人の中にも白人の中にも良い者もいれば悪い者もいるとその場その場ごとに判断するよりも遙かに脳が楽だからだという。パターンを決めつけることで考えることを回避するのだとか。さらにその中に「自分は奴らよりは上」という快感を含むから、実社会でいろいろと不満のある者ほどそこにドップリはまるらしい。

 それにしても差別意識むき出しもさることながら、まともに取材もせずに番組を作るその手抜きというか雑さには呆れる。どうせバラエティという意識も製作スタッフにあったんだろう。もっともこれはこの番組に限らず、ネット上だけでチョイチョイと調べただけで番組にしてしまう呆れた手抜きっぷりはよくある話。最近はそれだけで記事を書いてしまう新聞まであると聞いた。

 ネット上で氾濫する不正確で嘘に満ちた情報が問題となっているが、メディアまでが最低限の良識を失ってしまってどうするんだろうか。最近のバラエティに多い「いじり」という名の「いじめ」を笑いにする下劣な内容が以前から気になってはいたが、今回のような露骨な差別もその意識の延長のような気もする。強者に対する風刺を笑いにする気概を持てとまで堅苦しいことを言う気もないが、少なくとも誹謗中傷の類いに荷担するような愚行はやめてもらいたいものだ。