徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

MET「ワルキューレ」&「河鍋暁斎(後期)」at 兵庫県立美術館

 この土曜日はMETライブビューイングの「ワルキューレ」を見に行くついでに、河鍋暁斎の後期展示を見に行くことにした。METの方は12時から三ノ宮の国際松竹なので、兵庫県立美術館は開館時刻の10時に合わせて訪問。ただし入館前にこの日に発売のコンサートのチケットがあるのでiPhoneでその手配を。何とか無事にチケットの確保に成功。それにしてもチケットの発売時刻って大抵10時からなんだが、このぐらいの時刻は美術館の開館時刻だったり、ホテルのチェックアウト時刻だったりしてバタバタしていることが多いから、気をつけないとよく忘れるんだよな・・・。だからiPhoneのスケジューラにボップアップ設定とかしているけど、それも見ないことが結構あるから。

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兵庫県立美術館

 美術館に到着すると何やら人だかりがあるから何だと思えば、隣の「ふしぎの国のアリス展」のチケット行列らしい。なぜか分からないが好評なようだ。

 

「没後130年 河鍋暁斎(後期)」兵庫県立美術館で5/19まで

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 前期と比べると結構作品の入れ替わりがあったという印象。もっとも相変わらず暁斎の縦横無尽の画才には唸らされるのであるが。

 それにしても下絵の細かさには驚く。暁斎の作品には興に任せて一気に描いたような作品もあるが、本格的な作品については大抵は事前に綿密な下絵を制作して構図などの微調整を行っていたという。しかしこの下絵がそれだけで唸ってしまうぐらいの微に入り細に入りを検討している綿密なもの。つくづく、これだけの下絵も用意しながら、それでいてあれだけの数の膨大な作品を製作する彼の異常なまでの筆の速さには唖然とするしかないのである。もし現在の世に存在したら、画家よりは天才的アニメーターになったかもしれないなどと妄想する。暁斎が作画スタッフに加わった機動戦士ガンダムなんかを見てみたい気もする(笑)。

 正統派な技術も完全に身につけ、それでいて風刺の効いたかなりふざけた絵なんかも自在に描く、その精神の自由さと技倆の奥深さにはやはり圧倒されてしまうのみなのである。この暁斎ワールドを堪能できるのも後一週間。訪れて損はしないものと断言する。

 

 

洋食店に立ち寄る

 兵庫県立美術館を後にすると、次はBBプラザ美術館の後期・・・と思っていたのだが、後期が始まるのは14日の火曜からとのことで出直しになる。この時点で10時50分。時間的にちょうど良いので「洋食SAEKI」で昼食を摂っていくことにする。もう7人以上並んでいたら遅くなる危険があるのでやめようかと思っていたら、待ち客はちょうど6人。開店と同時に入店すると、「ミックスフライランチ(1000円)」を注文する。

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ミックスフライランチ(1000円)

 相変わらずCPの良さを感じさせるランチである。この価格で有頭エビのフライというのが値打ちを感じさせる。特別に滅茶苦茶美味いというものはないのだが、いずれも普通に美味い。トータルでCPの良さを感じさせる。

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店を出た時もいつものように行列が出来ている

 少々急ぎ気味に昼食を終えると、阪神で三ノ宮へ移動する。国際松竹はこのシリーズとしては比較的観客が多い。ワーグナーはそんなに人気あるのだろうか? 劇場側もそれは想定済みなのかいつもより大きい劇場を使用している。ただそれは良いのだが、この劇場はやはり音響は悪いな。これから5時間の長丁場である。

 

METライブビューイング ワーグナー「ワルキューレ」

指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:ロベール・ルパージュ
出演:クリスティーン・ガーキー、エヴァ=マリア・ヴェストブルック、スチュアート・スケルトン、グリア・グリムスリー、ギュンター・グロイスベック、ジェイミー・バートン

 この作品は主人公が前半と後半で、ジークムント&ジークリンデからブリュンヒルデ&ヴォータンに代わる。前半のスケルトンのジークムントとヴェストブルックのジークリンデは過不足なく盛り上げていた。オペラ特有の難点としては、大写しになった時にどうしても「若い二人」に見えないことぐらいか。

 圧巻だったのは後半のガーキーのブリュンヒルデ&グリムスリーのヴォータンだろう。かなり劇的なドラマで盛り上がる内容なのだが、二人の絡み合いがなかなか見事な歌唱。堂々たる中に動揺が現れているヴォータンなど、人物が実に良く描けていた。

 本作の鍵となるヴォータンのキャラクターだが、これは演出や演技でかなり印象が変わる。尊大な鼻持ちならないオッサンになったり、厭世的で自暴自棄なじいさんになったりなどいろいろあるが、今回の演出はかなりヴォータンを人間くさく描いていたのが印象に残る。自身の立場上、最愛の娘を切り捨てなければならない苦衷のようなものがヴォータンから滲んでおり、単に怒りにまかせた行動ではなく、その裏にかなり複雑な感情が行き来していると言うのが伝わってきて実に面白かった。また全編を貫くヴォータンの破滅願望的なものも随所に滲んでおり、これが後の作品の伏線となるということもよく理解できた(残念ながらシリーズの以降作の上映予定は少なくとも来年度にはないようだが)。

 なおマシンと呼ばれる板を組み合わせた独特な舞台装置も印象的。これらの板が、時には森になり、時には岩山となり、甚だしきはワルキューレ達が駆る馬にまでなるというのにはなかなかなに驚かされた。 


 これで今日の予定は終了。帰宅するのである。それにしてもやはりワーグナーのオペラは大作過ぎて疲れる。いささか背中が痛いというのが本音。