徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

「大哺乳類展」「ルート・ブリュック」in 東京&デュトワ指揮大阪フィル in 大阪

 今日は8時頃に起床すると、昨晩に買い込んでおいたパンを朝食に摂り、テレビを見ながらしばしグダグダしつつ移動の準備をする。

 テレビをつけたら「ロシアと戦争」の丸山議員のグダグダを放送中。とことん議員としての適正のない男である。ロシアと戦争発言については全力で擁護している輩もごく一部にいたが、「国後島で女買いたい」という行動についてはどう擁護するんだろうか? 恋愛の自由とでも言い出すか? その挙げ句に「俺には不逮捕特権が!」と喚いていたとか。なるほど国会議員の身分に固執するはずである。不適切行為の数々をもみ消すために国会議員になっていたのか。とにかく彼については、行くべき場所は国会ではなくて病院だろう。そもそもの人格的にあれなのは間違いないが、それがアルコールで完全に露呈してしまうのは明らかにアルコール依存症の症状。こんな奴が国会議員なんてしてたら危なっかしくて仕方ない。同様の不適切議員を多数抱えている与党は譴責で済ますつもりのようだが、こんな輩は辞職勧告するしかないだろう。それで開き直ったら、除名してもよいケースだと考える。

 チェックアウト時刻が10時だからその前にチェックアウトする。今日の予定としては19時から大阪のフェスティバルホールの大フィルのコンサートを聴きに行くこと。それを考えると昼過ぎには新幹線で大阪に戻る必要がある。とは言っても今から大阪直行だと早すぎて大阪に着いてからすることがない。

 東京での予定としては東京ステーションギャラリーに立ち寄る予定はあるが、それだとどれだけかかってもせいぜい1時間程度。何かないかなと考えた時に思い出したのは、東京科学博物館で開催中の「哺乳類展」。今更わざわざ行くまでもないかと昨日はパスしたのだが、これに立ち寄ることにする。

 科学博物館に到着すると幼稚園(それとも小学校低学年?)や中学校の団体が押しかけている。学校の遠足先としては最適か。確かに子供の頃からこういう場所で科学する心を養うのは今後の日本のことを考えると重要。

 

「大哺乳類展2」国立科学博物館で6/16まで

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 哺乳類の進化の歴史について3つの観点から注目している。一つ目は歩き方。哺乳類はその環境などに合わせて足の形にもいろいろあり、さらに歩き方は速度に合わせて諸々。その辺りを動物の骨格標本と合わせて解説。地上最速のスプリンターであるチーターの走りのメカニズムを映像で紹介していたのは面白かった。

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地上最速のスプリンターであるチーター

 二つ目は「歯」。動物ごとに食事のための歯に求められる特性は違う。肉食動物は肉を切り裂くための牙が必要で、奥の臼歯まで尖っている。これに対して草書動物は草をかみつぶすために平たい歯が発達している。また昆虫食の動物は獲物を逃さずにかみ砕くために、上下でピッタリと組み合わさった歯を持っているなど。動物ごとの顎や歯の違いを骨格標本で紹介。

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ヒゲ鯨の餌の捕り方

 三つ目は「繁殖戦略」。雄が雌にアピールするための角などの身体特徴。イッカクの牙が展示してあったのが興味深い。これは歯らしいが、そのまま槍になりそうな雰囲気だった。また同時に赤ん坊の生存戦略についても紹介しており、アザラシなどは生育環境に合わせて体の色が保護色に進化しているとのこと(砂地で出産するアザラシは黒っぽく、氷の上で出産するアザラシは白くなる。

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イッカクの骨格標本

 分かっていることと言えば分かっていることであったのだが、こうやって標本などと合わせて展示されると理解しやすいし納得しやすい。子供にとってかなり有用なのは間違いないが、大人が見てもそれなりに楽しめる展示となっていた。

 正直なところ想像以上に面白かった。概してここの展示は毎回そうである。来るまでは「わざわざ見に行くまでもないかな・・・」と感じるのだが、実際に見に来てみると思いの外面白かったというのが常。やはり私が理系の人間というのも影響しているか。

 

 この時点で11時頃。昼食を東京駅周辺で摂るつもりだったがこれと言って思いつく店もない。昼食は弁当ででも済ますことにして、新幹線の予約を早めておく。その作業を終えると最後の目的地へ。

 

「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」東京ステーションギャラリーで6/16まで

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 フィンランドのアーティストであるルート・ブリュックの作品を紹介。50年に渡ってアラビア製陶所の専属アーティストとして活躍した彼女は多くの幅広い作品を残しているが、それらを紹介。

 初期の作品は色彩豊かな釉薬を用いた煌びやかな作品であるが、その独特の形態は奇妙な面白さを持っている。また絵画的作品についてはシャガールを思わせるような感性を感じることが出来る。

 晩年にはタイルを用いた巨大作品に作風が劇的に変化したようで、これらの作品は多分に抽象芸術的であり、また初期作品ではあれだけ色彩に拘っているように見られた彼女が、色彩を捨ててモノトーンの世界で主に形態によっての表現を行うというように作品に直接のつながりが見えないぐらいの変貌を遂げているのが面白い。どういう過程での心境の変化があったのかが興味深いところだが、残念ながら本展ではそこまでは理解できなかった。

 当初は撮影可だったらしいが、シャッター音がうるさいとの苦情が出たらしく、後半部分が撮影不可になっていたのでどう作風が変化したのを具体的に示すことが出来ないので、そこは自分で見てもらいたいところ。

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初期の代表的作品「ライオンに化けたロバ」

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この作品など非常にシャガール的

 これで東京での予定は終了なのでこのまま新幹線で移動することにする。昼食として貝尽くしの弁当を購入してから新大阪行きの新幹線に飛び乗る。

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この日の昼食

 昼食も終えてウトウトしていたら、掛川を過ぎた辺りで地震で停電とかで7分ほど新幹線が停車する。直に送電が再会して動き出したから良かったが、たった数分でも新幹線車内の気温がグングンと上がるのが感じられた。これは数時間も閉じ込められたら地獄だろう。全く何が起こるやら分かったものでない。

 

大阪に舞い戻ると夕食は新世界で

 最終的に新幹線は5分遅れぐらいで新大阪に到着する。少々疲れたのでとりあえずホテルに直行して荷物を置くと同時少し休憩することに。宿泊地は例によって新今宮である。ホテルに入ると風呂で汗を流そうかと考えるが、暑さにやられた体にその気力は湧いてこない。結局はそのままグッタリとベッドに倒れ込むことに。

  1時間ちょっと休憩の後に夕食とコンサートのために出かけるとする。夕食はあっさりとうどんにでもしておきたいということで、立ち寄ったのは「つけ鴨うどん鴨錦」「つけ鴨うどん」の並(2玉)を注文。うどんは3タイプ選べるが普通で。麺を締めるために冷うどんを注文する。

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新世界の鴨錦

 ここの鴨出汁には鴨のバラが大量に入っている。それにしても鴨の出汁とは実に偉大である。うどん自体はそう特別なものではないのだが、この出汁によって見事な味となっている。

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つけ鴨うどん

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出汁には鴨肉がドッチャリと入っている

 夕食を軽く終えたところでコンサートに出向くことにする。セクハラ問題でN響を外されているデュトワの公演とのことでか場内は満席。チケットは完売した模様。関東方面からも多数遠征客がいるようである。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第528回定期演奏会

指揮/シャルル・デュトワ
合唱/大阪フィルハーモニー合唱団

曲目/ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」作品9
   ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
   ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

 最初からのけぞった。いつもの大阪フィルの音と違う。音色の透明度が高い上に実にシャープ。弦楽陣など今まで聞いたことがないような艶がある。大フィルは指揮者が代わるとまるで別のオケのように音色がガラッと変わるという特徴があるのだが、デュトワが振ったことでフランスのオケになったらしい。ラヴェルの色彩的な音色を見事にオケで展開した。

 前半でもかなりお腹いっぱいという印象だったのだが、後半の幻想交響曲がまた凄い。とにかくデュトワがオケ全体を引き締めるのが伝わってくる。かなり詳細にオケに指示を飛ばしており、大フィルの音色が弦を始めとして管までいつもと違った鮮やかな音色で演奏する。いつもなら締まりのないボワーッとした音色を出しがちな金管もピリッとし、低弦などはダイナミックにグイグイ来るので大迫力となる。後半も決して空虚なお祭り騒ぎとなることなく、多彩で華麗でなりながらもピリリと引き締まった演奏で、場内が呆気にとられるような高密度な内容であった。

 終演後の場内の盛り上がりはすごいものがあった。大フィルの定期公演でここまで盛り上がるのはかなり珍しいことである。さすがにデュトワはただ者ではない。やはり単なるエロ親父ではなかったということである。望むべくは、今後も大フィルと何らかの関係を続けてもらえないかということ。どうも今まで指揮者に今ひとつ恵まれなかった感のある大フィルだが、もしデュトワにしばし鍛えられれば日本有数のオケにまで進化することも可能だろう。


 当初から期待値は高かったのだが、それをさらに上回る演奏が飛び出した。こうして聴いてみると「大フィルもやればできるじゃないか」と言いたくなる。今までに時々登場するどうしようもない締まりのない演奏は一体何だったんだろうか。とにかく指揮者にかなり影響を受けやすいオケのようなので、とにかく優れた指揮者に指導してもらいたいところ。デュトワを首席客演指揮者ぐらいに出来ないのだろうか。関西でも地力はあるオケだけに、一年に数回デュトワに振ってもらうだけで全然変わりそうな気がする。

 なお6月にある大フィルの「サロメ」の公演が、尾高の病気によって指揮者がデュトワに変更になっている(本来なら考えられないようなグレードアップ代演だが)。これもかなり期待できそうな気がしてきた。今回の名演を受けてこっちのチケットも急に動き出しそうな予感がする。

 凄いコンサートの余韻で少し頭がボーッとしながらホテルに戻ったのである。体は疲れているが精神はかなり充実している。