今日は大阪までイタリア交響楽団のコンサートを聴きに行くことになった。イタリアと言えばオペラなどでは結構有名だが純粋なオケで有名なところはあまり聞いたことがない。イタリア交響楽団というのもあまりにザックリした名前だが、どうやらこれは興行元が勝手につけたもので、正確には「ボルツァーノ・トレント ・ハイドン管弦楽団」と言うらしい。しかしこれだとどこの国のオケか分からないし、ハイドン管弦楽団がなんでベートーヴェンを演奏するんだとなりかねないから、分かりやすくイタリア交響楽団なんだろう。
このいい加減なネーミングからして何となく地雷臭が漂うところだが、実は私はそもそも当初はこのオケのためにわざわざ大阪まで行くつもりではなく、この日は大阪に行く別件があったのでそのついでに立ち寄るつもりでチケットを購入していたのである。しかし予定が変更となってその別件が消滅してしまった次第。そこでやむなくわざわざこのコンサートのためだけに大阪まで行くことになってしまったというわけ。
とは言っても、地雷を覚悟して出向いたら超絶名演にでくわしたというロシア国立交響楽団のような例もあるから、最初から決めつけてかかるのも愚かな事だろう。果たしてどんな演奏が飛び出すか。
ホール近くの中華料理屋に立ち寄る
仕事を早めに終えてから大阪に移動すると、ザ・シンフォニーホールに向かうが、その前に夕食を取っておく、立ち寄ったのはホール近くの中華料理屋「中華料理みわ亭」。「エビチリ」と「ジャコと高菜の炒飯」を注文。
エビチリはオーソドックスだがなかなか美味い。ただこれで900円はCPがあまり高いとは思えない。
炒飯の方は一転してボリュームがかなりある。味はまずまずだが、やはりジャコと高菜ということで味の基本は塩味。辛すぎるということはないがやや単調な感がある。量が多すぎたこともあって、私は完食できず。
夕食を終えるとホールへ移動する。今日はやはり地雷を警戒して安めの席を確保しているので、2階席の後の方。ホールの入りは4~5割というところか。
イタリア交響楽団
[指揮]チョン・ミン
[ピアノ]イヴァン・クルパン
[管弦楽]イタリア交響楽団
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73「皇帝」
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 op.92
オケは弦が10-7-6-5-3というやや変則的な編成の2管編成である。なお指揮者のチョン・ミンはチョン・ミョンフンの息子らしい。
第1曲目から「そんなに上手いオケではないな」という印象を受ける。アンサンブルがあまいし音色も冴えない。フィガロというのに躍動感も感じられない。
2曲目のコンチェルトになるとさらに迷走する。どことなくためらいがちの演奏なので、斉奏が「ダーン」とならずに「ドヒャーン」となってしまう。さらに悪い事にはオケとソリストの意思疎通がうまくいってない。ソリストのクルパンはタッチ自体にはあまりニュアンスがなくテンポの揺れでニュアンスをつけるタイプのようなのだが、ソリストがテンポを揺らすと必ずオケがズレる。そのためにソリストとオケの双方が疑心暗鬼に探り合うような平板な演奏に終始して緊張感がカケラもない。おかげで退屈極まりない冗長な演奏となってしまった。この名曲のここまで退屈な演奏は初めて聞いた。これでは最早「皇帝」の権威はなく「ド平民」である。
正直なところあまりの悲惨さに休憩時間に帰ってしまおうかとも思ったのだが、どうせ来てしまったのだからと持ち前の貧乏根性で最後まで付き合う事にする。
後半のベートーヴェンの交響曲第7番はソリストという足枷が外れたせいか、ようやくまとまった演奏となる。もっとも演奏にもチョン・ミンの解釈にも特筆するべきものはない。特別に面白味を感じる演奏でもないが退屈とまでは言わない。
しかし驚いたのはアンコールで演奏されたロッシーニの「ブルスキーノ」とメンデルスゾーンの「イタリア」。今までよりアンサンブル精度が2レベルぐらいアップした上に、オケもチョン・ミンもノリノリ。おかげで躍動感あふれる魅力的な演奏となり、しかも今まで全く感じられなかった弦の艶まで出てくる始末。思わず「こっちを正規プログラムにしろよ!」と言いたくなってしまった。
どうにもこうにも奇妙なオケだった。やはりロッシーニと「イタリア」は自家薬籠中の曲と言うことか。前半は一体どうなることかと思ったが、とりあえず何とか最後で辻褄を合わしたか。
コンサートが終わった時には21時を回っていた。明日はまだ仕事がある。急いで帰宅することと相成るのである。