徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

デュトワ指揮大フィル「サロメ」&METライブビューイング「カルメル会修道女の対話」&中之島香雪美術館

 この週末は大フィルの「サロメ」を聴きに大阪へ。つい一昨日に大阪日帰りをしたところなので体にいささかダメージが残ってダルい。しかしそれを押しての外出である。

 大阪に到着したのは昼過ぎ。明日も奈良方面に出向く予定なので今日は大阪泊。そこで例によって定宿である新今宮に荷物を置きに行く。

 ホテルに荷物を置くとすぐに外出。今日の公演は15時からだが、それまでに諸々予定がある。だがまず最初にするべきことは昼食である。新世界に出向く。

 新世界地域も大分激しく様変わりしつつある。インバウンド需要を見越しての域外からの大手資本参入が目立つ。マクドが進出したり、スギ薬局が進出したりなどして町の雰囲気が変わりつつある。ただ私がもっとも懸念しているのは星野リゾートが進出するという話。変にハイソぶって町の雰囲気を致命的に破壊する恐れがある。この地にまで一見お洒落っぽくて中身がスッカラカンの店が建ち並ぶというような劣化版キタのような風景になってしまえば、もう大阪も終わりである。しかし巷では「再開発」と言えばそういう町並みが最終ターゲットになっている場合が多いのが気がかりである。表面だけはお洒落だが中身はどうしようもないという町は神戸だけで十分である。

 今日はサロメの後にさらにハシゴもする予定なので、最悪の場合は夕食を摂れない可能性もある。それも見越して昼食はガッツリと食べたい。と言うわけで立ち寄ったのは「グリル梵」「ビーフフィレカツ」にライスをつけて頂く。

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グリル梵

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ビフカツ

 今流行のレアカツと違ってミディアムカツと言うべき火の通り具合が相変わらず絶妙である。ここのビフカツを食べると、いつも「食べた」という満足感が強い。これぞまさしく正統派関西の「カツ」(関西では「カツ」と言えばそれでビフカツの意味である)。

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見事なミディアムカツ

 昼食を終えると肥後橋まで地下鉄で移動。もうすぐ開場時刻であるが、開演までの間にもう一つ用事を済ませる。

「茶席を彩る中国のやきもの」中之島香雪美術館で8/4まで

 所蔵品の村山コレクションの中から茶器類を展示。茶入れ、茶碗に始まって花入れなど一渡りの茶器類を展示。

 正直なところ茶器に造詣が深いとは言えない私であるが、私の好みはどうやら茶入れや茶碗にあるということを感じる。それも絵付けタイプのものではなく、渋い色彩を楽しめる天目茶碗の類いが私の好み。茶入れなどは外観のシルエットが様々にあり、まるで柿のような形態のものなどなかなかに面白かった。また独特の光沢のある油滴天目なども展示されていたが、これの進化形が曜変天目なのだろうかなどと考えた次第。

 なお抹茶の道具だけでなく煎茶の道具も展示されており、こちらには急須なども含まれていた。これはなかなか珍しい。


 私は以前は陶器類は全く分からないし興味もなかったのだが、「へうげもの」のせいで興味も出て、少しは分かるようになってしまった。自分ながらいかにも単純で影響を受けやすい人間だと思う。実際に私は諸々を学ぶ時は漫画がきっかけになることは実に多く、最近でも「鬼灯の冷徹」と「聖☆おにいさん」のせいで天国と地獄にやけに詳しくなってしまった(笑)。これでは「ヒカルの碁」のせいで囲碁部に入部するガキどもを笑えない。最近は「ちはやふる」のせいでカルタ部が出来たりなんてこともあるんだろうか?

 美術館を一回りした頃にはそろそろ時刻なので、向かいのフェスティバルホールに入場する。大きなホールが見渡したところほぼ満席に近い。やはり指揮者がデュトワになったことでチケットの動きも派手になった模様。ああいう事情がなかったら、尾高の代演がデュトワなんていう信じがたいグレードアップはなかったところである。これは喜んで良いのやらどうやら。

大阪国際フェスティバル2019 R.シュトラウス「サロメ」

指揮/シャルル・デュトワ
管弦楽/大阪フィルハーモニー交響楽団

サロメ:リカルダ・メルベート
ヘロデ:福井敬
ヘロディアス:加納悦子
ヨカナーン:友清崇
ナラボート:望月哲也
ヘロディアスの小姓/奴隷:中島郁子
ユダヤ人1:高田正人
ユダヤ人2:菅野敦
ユダヤ人3:児玉和弘
ユダヤ人4:岡本泰寛
ユダヤ人5:畠山茂
ナザレ人1/カッパドキア人:北川辰彦
ナザレ人2:秋谷直之
兵士1:大塚博章
兵士2:斉木健詞

 小娘の無邪気な残酷さと言うべきかそれとも狂気と呼ぶべきかの猟奇作品でもある。これをR.シュトラウスは実に色彩豊かで官能的な音楽をつけたが、よく聴いていると彼の交響詩作品の断片があちこちでチラチラする。オーケストレーションに紛れもないR.シュトラウスの個性が現れている。

 それにしても圧巻だったのが大フィルの演奏。この色彩豊かな音楽をまさに極彩色で展開した。デュトワと大フィルの組み合わせは先の定期演奏会でも凄まじいまでの名演を残したが、本公演においてその威力を発揮、いつもの大フィルとは思えないまでの冴えがあって色気もある音色で聴衆を魅了した。

 また声楽陣もサロメのメルベートを中心に、福井をアクセントとしてなかなかの力演であった。特にヨカナーンの首を前にしての狂気を感じさせるサロメのアリアが強烈。メルベートの見事な歌唱と、それをバックで支える大フィルの熱演で極めて印象的なシーンとなった。


 やっぱりシャルル・デュトワはただのエロ爺ではない。本当に大フィルがこんな音を出せるなんて思いもしなかった。これからもデュトワの演奏を大フィルで年に何回か聴けたら・・・なんてことを望んでしまうが、それよりも先にN響に復帰するだろう。となったら大フィルごときが呼ぶことはもう無理か。

 前回の定期演奏会に続いて今回も関東からの遠征組がいるようで、場内の盛り上がりも凄かった。


 コンサート終了がちょうど17時頃。どうやら次の目的地にハシゴ可能なようなのでなんばに急ぐことにする。目的はMETライブビューイングの2018-2019シーズンラスト作品となる「カルメル会修道女の対話」が上演されるのでそれを見に行く。

 17時半過ぎぐらいに劇場に到着、入場券を買うと上演時間までの間に夕食を摂る店を探す。ここの2階下のレストランフロアをウロウロして「築地食堂源ちゃん」を見つけたので、そこで日替わりの「市場直送丼」を注文する。

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パークス内の源ちゃん

 まあ可もなく不可もなくというところか。具の量に比べるとご飯が少々多すぎた(ご飯は中盛)。もし次に来ることがあれば小盛にしよう。

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刺身の内容は日替わりの模様

 手早く夕食を終えると映画館に戻る。上映は18時半から。

METライブビューイング プーランク「カルメル会修道女の対話」

指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:ジョン・デクスター
出演:イザベル・レナード、カリタ・マッティラ、エイドリアン・ピエチョンカ、エリン・モーリー、カレン・カーギル、ジャン=フランソワ・ラポワント、デイヴィッド・ポルティッヨ

 台詞回しのような歌唱でつないでいく独特の音楽。時には劇的に、しかし概ねは淡々と進められていくその音楽と同様にストーリーはかなり不条理なもの。信仰に身を捧げていたカルメル会の修道女達が、フランス革命の最中に血に飢えた革命政府によって(時代はまさに恐怖政治の時代)、一方的に反革命的と断罪されて処刑されるという物語である。

 ヒロインのブランシュは自身の神経質さから来る恐怖心の強さでこの世に息苦しさを感じ、修道院の生活に安らぎを見出さそうとするのだが、時代の変化の中でそれが許されなくなる。修道院の解散が一方的に革命政府から言い渡された時、修道女達が殉教を決意する中で彼女は怯えて逃げ出す。しかし最後は断頭台に処される修道女達の中に自ら加わって共に処刑されるという展開で、正直なところヒロインの心情が非常につかみにくい。時代背景も不条理であるが、ヒロインの行動もどことなく不条理である。

 この不条理ドラマをイザベル・レナードを中心とするキャストがドラマティックでありながらも淡々と描いたというのが本作。なかなかに見応えはあったが、最後にはとてつもない重苦しさと大きな溜息だけが残った。ラストのギロチンの音が耳について離れない。

 

 かなり衝撃的でハードな作品だった。ラストでは場内から溜息が漏れるのが感じられたぐらい。

 

 上映を終えると南海で直ちにホテルに戻る。今日はかなり疲れた。明日に備えてすぐに就寝する。