徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

映画「二ノ国」

古典的かつ王道的ファンタジー

 ゲーム世界を元にした作品とのことであるためか、作品自体は今流行の異世界ものである一方、そのストーリーはかなり王道の比較的古くさいタイプの作品。おかげて安心して見ていられる部分はあるが、今時の作品には珍しいぐらい明瞭な伏線を張ってくるおかげで、開始20分でラストまでのストーリーが完全に読めてしまったというところはある。

 作品のテーマ自体は簡単明快で「愛する者を救いたい」という一言に収斂される。ネタバレになるので詳細は伏せるが、その愛する者を救うというところから始まり、自身につながるすべての人間を救うという極めて健全極まりない話となる。今時の作品に多い若者の疎外感とか屈折などといった要素は全くなく、主人公たちは非常に古典的な一直線タイプの少年である。

全く屈折のない今時風でない?主人公たち

 主人公の一人であるハルはスポーツ万能で女子にモテモテ、その上にコトナという彼女がいてラブラブというある種の超リア充。確かにこれだけ恵まれた環境にいたら、阻害感とか屈折とかとは無縁だろう。ただそれに対するもう一人の主人公であるユウも、車いすの障害者という設定にもかかわらず、非常に勇敢かつ積極的で全く影のないキャラクター。普通はこういう設定のキャラは、メインの主人公に対するダークサイド的な立ち位置になりがちなのであるが、こちらも健全極まりない完璧主人公サイドのキャラクターとなっている。

 その純真な少年が愛する者を守るために命がけで突っ走るという、今時珍しいぐらいの清々しいストーリーではある。主人公たちの葛藤も一部ないわけではなかったが、それについては非常にあっさりと解決してしまい、それを深く掘り下げることなくストーリーの動きに任せたというところがある。なお映画の予告ではこの葛藤部分をメインに取り上げていたものが多数なので、本編を見ればそのあまりにもあっさりとした解決には一種の拍子抜け感も否定できないところ。

どうしても目立つ「ご都合主義」

 ストーリー構成が単純であることが幸いして、作品自体に大きな破綻はないしキャラクターについてもまずまずは描けていると言える。もっともあまりに「健全すぎる」キャラクターのせいで内面への斬り込みはほとんどなく、それが作品の浅さと感じられる部分がある。またいかにもゲーム的というか何と言うか、ご都合主義的な展開があるのは確か。ここ一番のピンチに極めて都合良く聖剣が登場するなんて展開はいかにもゲームではありがちであるが、さすがに映画としてそれをやってしまうとあまりにご都合主義なのが気になってしまうところ。予定調和に向けての一本道ストーリーが浮かび上がってしまっている。

ヒロインのキャスティングは致命的

 作画については最近の作品としては平均レベルと言えるだろう。今話題の新海誠作品などと比較してしまうとかなり見劣りするのは否定できないが、かといって落第点になるようなレベルでもない。それよりも気になったのは演技の方。主人公二人についてはまあ合格点と言えるのだが、どうしようもなかったのがヒロイン。棒読みで全く感情が入っておらず、作品中で浮きまくること甚だしい。これについては作品世界をぶち壊してしまうレベルであり、明らかにミスキャストであると断言できる。

 ストーリーの甘さ、強引さなどは多々あり、もう少しキャラクターの感情に斬り込みが欲しいとか、やはり主人公の成長の要素があっても・・・などといいたくなる点は諸々ないわけではないが、映画全体として見れば一応は許容範囲には収まっているまずまずの作品とは言えるだろう。ただヒロインのキャストという一点をおいて完全に致命的となってしまった。これだけはどうにかできなかったのかと疑問を感じる。