つい先日東京から戻ってきたところだが、この週末は大フィルとチェコフィルのコンサートのために大阪に繰り出すこととした。それにしても我ながらハードに動き回りすぎのような気がする。働き方改革が言われる昨今であるが、私の場合遊び方改革をしないと体力が続きそうにない。
いきなりのトラブル
土曜の午前中に家を出るとJRに飛び乗る。しかしここでとんだトラブル。普通列車から新快速に乗り換えるつもりで駅に降りた時に、網棚に上げていたキャリーを置き忘れてしまうと言う大失態。慌てて駅員に相談するが、終点の野洲に到着するまで荷物を回収できないし、回収できても野洲にまで取りに行かないといけないらしい。昔なら列車が長時間停車する駅で駅員が回収してくれたものだが、JRも省力化でそんな対応は出来なくなったのか? あからさまなサービス低下である。それにしてもキャリーの中には今日の宿泊用具一式が入っているので、これを今日中に回収しておかないと宿泊が出来ない。しかし野洲なんて辺境まで行っていると肝心のコンサートに間に合わない。とりあえず荷物の捜索願だけ出して暗澹たる気持ちで大阪に向かおうとしたところで気がつく。私のキャリーが乗っているのは普通列車。新快速で追っかけるとどこかの駅で列車に追いつけるのでは。そこで慌ててダイヤを調べたところ、もうすぐ到着する新快速に乗ると次の新快速停車駅で追いつけそうである。そこで慌てて新快速に飛び乗る。幸いにして私の荷物は網棚の上にまだそのままの状態で存在した。この辺りはさすがに日本である。これが外国ならとっくの昔に誰かに盗まれているだろう。日本もいつまでもキチンと落とし物が戻ってくる国であることを祈りたい。
とりあえず無事にキャリーの回収は出来たが、そのおかげで無駄に時間を浪費してしまった。とりあえず慌てて最初の目的地へと向かう。最初の目的地は大阪への道中の途中にある美術館。
「富野由悠季の世界」兵庫県立美術館で12/22まで
機動戦士ガンダムで知られる富野由悠季の展覧会。と言っても富野由悠季は絵やメカデザインの方ではなくて、作品の演出やらコンセプトの方の人間なので美術展に展示すると言ってもなかなか難しい。本展では富野由悠季が少年時代に憧れていた世界を象徴する書物の類いや、彼がアニメ界に入ってから手がけた作品の絵コンテなどを展示しているが、むしろ展示のメインは彼の作品コンセプトを長々と説明した看板の方のようにも思われる。
かなり理屈っぽい看板を延々と読んでいくという異色の展覧会であるので、勢い見学時間が長くなることになってしまう。ただ私はガンダムシリーズは半分以下しか把握していない(特に最近のガンダムは全く知らない)ので、必ずしもすべての説明が腑に落ちたというわけではない。ただそれでも、かつて見た彼の作品のかなり回りくどい表現なんかの意味が改めて腑に落ちたような気がして興味深かった。彼の作品はとにかく登場人物の葛藤が正面に出るものが多く、子供時代に見た「海のトリトン」なんかはその辺りが面倒くさくて分かりにくい印象につながっていたのだが、今になってみると深い話を描いていたのだと気づく。彼は子供向け作品であっても、真剣に描いていたら通じるという類いのことを言っていたようだが、正直なところ私の経験から言うと、残念ながらお子様には半分ぐらいも通じないというのが現実のように思われる。私自身が子供の頃のことを思い出すと、回りくどい富野作品よりも、マジンガーZなどのような単純な話の方が面白かった記憶がある。実際に小学生レベルの子供に圧倒的に受けるのは、少年ジャンプ的な単純な戦闘ものであり、結局は彼の作品を理解できるのはある程度の年齢に達する必要があるようである(基本的に中学生以上)。
富野由悠季を扱うなんてどんな展覧会になるんだろうと妙な意味で興味津々だったのだが、思いの外面白かったというのが正直な感想。似たような企画として以前に「高畑勲展」があったが、そう言えばあの展覧会も非常に理屈っぽいパネルが多かった。
予定では続けて同館で開催中の「ショパン展」も覗くつもりだったのだが、いきなりのトラブルによる時間浪費と、本展の見学時間が思ったよりも長かったことで時間に余裕がなくなったことから、この展覧会は後日に回すことにして大阪に移動する。
今日のコンサートはフェスティバルホールで開催される大フィルの定期演奏会。肥後橋駅にちょうど開演1時間前ぐらいに到着したので、開演までの間に向かいの美術館を覗いていくことにする。
「交流の軌跡-初期洋風画から輸出漆器まで」中之島香雪美術館で12/8まで
南蛮貿易によって日本に西洋画が入ってきた時、その手法を学んで日本でも西洋画に取り組む画家が登場した。そのような初期洋風風景画などから、江戸時代に入って蘭学と共に入ってくる洋画を見よう見まねで日本の材料で再現しようとした司馬江漢などの作品、さらには海外輸出を睨んで製作された螺鈿装飾の箱などの工芸品を併せて展示した展覧会。
初期洋風風景画などは、西洋の銅版画を元絵にして屏風用の作品を仕立てたりなどをしていたらしい。精緻な銅版画は木版画しかない日本人にとってはかなり衝撃的な技術であったのかもしれない。それを直ちに日本文化の中に取り入れようという貪欲さは、この頃から日本人の特性だったようである。かなり忠実に写し取ろうとした努力の跡が覗える。
司馬江漢の作品は、完全に日本の素材で描いており、描かれているのも日本の風景であるのだが、そこに洋画的な明暗表現や遠近法が取り入れてあり、いわゆる通常の日本画とは全く異なる世界のものとなっている。葛飾北斎が晩年に洋画的な絵を描いてみたり、歌川国芳の作品にも洋画のパロディのような作品があるが、このような作品が登場できた下地はこの辺りにあったのかなどと妙に納得できる。
また工芸品の精緻さには非常に驚かされる。これらの元はやはり銅版画や写真だったという。それを螺鈿や蒔絵で精巧に写し取った職人の技術には呆れるばかり。これぞジャパニーズ匠の世界である。何やらいろいろな意味で日本人の特性を感じられる展覧会であった。
展覧会の見学を終えると、大フィルの開演時間が近づいているので、フェスティバルホールへ飛び込む。結局この日は昼食を摂っていない。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第532回定期演奏会
指揮/尾高忠明
オーボエ/フィリップ・トーンドゥル
ソプラノ/ゲニア・キューマイヤー
R.シュトラウス:13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7
:オーボエ協奏曲 ニ長調
:交響詩「死と変容」作品24
:四つの最後の歌
今回はR.シュトラウスオンリーのプログラム。現在、関西4オケでR.シュトラウスを扱うというプロジェクトが進行中でその一環とのこと。そう言えば関西フィルの来月の定期もR.シュトラウスがプログラムに入っていく。
最初の曲は13人の管楽奏者(1名だけコントラバスである)が奏でる室内楽的な曲。ハーモニーの美しさが目立つところ。
次の曲は8編成のオケでのオーボエ協奏曲。大阪フィルと言うよりも大阪チェンバーフィルである。ここではトーンドゥルのオーボエが素晴らしいの一言。何と美しい音を出すのだろうと感心してしまった。この美しいオーボエを中心に大フィルのアンサンブルがなかなかに聞かせた。
後半はまずは「死と変容」なのだが、これがなかなかに思いの外に力強い演奏。死の運命にあらがう人間の姿というが、まさに全力で刃向かっている印象。以前にはアンサンブル面で難があった大フィルだが、この1年ぐらいでそちらの方は劇的に強化されたのを感じる。
最後は美しいソプラノによる幻想的なリート。夢うつつとなっている内に終わってしまったという印象で、終了後も場内がしばしポカンとしてしまっていた。
R.シュトラウスと言えば、どうしてもツァラトストラのようなブンチャカと喧しい曲のイメージがあるのだが、今回は美しい曲を中心にセレクトしていた。こういうしっとりと聞かせるR.シュトラウスもあるのかと目からウロコ。なかなか貴重な体験だった。
新世界での夕食は久しぶりの串カツ
コンサートを終えると今日の宿泊地である新今宮に向かうが、ホテルに入る前に夕食を摂っておくことにする。久しぶりに串カツでも食おうかと「だるま」に向かうが、たまたま前を通りかかった「てんぐ」が珍しく行列がなかったことから、ここに飛び込んでみることにする。八重勝と共に常に長蛇の列がある店だが、八重勝は入店したことがあるが、こちらは初めてである。
とりあえずどて焼きと串カツを6本ほど注文する。この店は「だるま」などに比べるとメニューの種類が少なく、串カツの種類が10ちょっとぐらいしかない。さらに値段が高めの串が多い。
コーラを飲みながら待っていると、まずどて焼きが出てくるが、甘めの味噌味のこれが抜群に美味い。なるほどこの店の人気の秘密はここにありそうだと納得する。確かにいかにもこの店に慣れているという様子の客はビールを飲みながらどて焼きをガンガン注文していた。
しばらくすると串カツが出てくる。注文したのは、串カツ2本、レンコン、イカ、ホタテ貝、トンカツの6本。ホタテ貝などは結構高い串なのだが、その分大きめでシッカリした内容になっている。確かにいずれもなかなか美味い。もっとも以上で支払いは1580円なので串カツ6本プラスどて焼きでと考えると若干高めではある。私としてはメニュー選択のバリエーションがあるという意味で「だるま」の方が好みに合っているか。
さらにCP最強のうどんを追加する
一応夕食を終えたが、串カツ6本ではいささか腹具合が半端である。そこで久しぶりに「松屋」に立ち寄って「きつねうどん」を腹に入れていくことにする。大阪式の柔らかめのうどんだが、腰の強い讃岐とはまた違って、これはこれで良い。それにしてもこのうどんがたったの230円なんだから、毎度の事ながら驚異のCPの高さである。
新世界での夕食を終えると、コンビニで茶を購入してから今日の宿泊ホテルに向かう。今日のホテルは定宿・ホテルサンプラザ2ANNEX。ホテルにチェックインを済ませると何はともあれ大浴場で汗を流すことにする。
風呂から上がると疲れが一気に出てくる。何だかんだで今日も1万歩を越えていたようで、先程から私のカラータイマーがピコンピコン言っている。結局はその後はベッドの上でひっくり返ったままKindleなどを見ていたが、それもウトウトして顔面に落としてしまう始末(とにかく痛い)。結局はそのまま早めに就寝してしまうのである。