徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

2019年度クラシックライブベスト5

 2019年度が終了するに当たって、恒例(?)の私の本年度のベストライブとワーストライブを選定しておくことにした。例によって異論・反論等はあるだろうが、これはあくまで私の趣味と偏見に基づいての私選ということですのでお許し願いたい。また当然のことながら私もすべてのライブを聴いているわけではないので、多分に漏れなどもある。異論・反論などがある方はご自身のベストライブなどをコメントで記載頂ければありがたい。

 

ベストライブ

 まずはベストライブだが、今年は名演目白押しの中から以下のベスト5を選ぶことにした。

第5位
ズービン・メータ指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 なんでベルリンフィルがこんなに下なんだという苦情が出そうだが、私としては「ベルリンフィルならこのぐらいの演奏はして当然」という意識があるから。私の選定は「思いがけない名演」といった類いの方が高評価になる。なお当然のことながらベルリンフィルの演奏は極めてレベルが高く、その技倆には圧倒された。またメータも晩年になって明らかに一段高い境地に至ったようであることを感じさせられる。実際に昨年のバイエルンとの名演なども未だに記憶に新しいところである。

第4位
エリアフ・インバル指揮 ベルリンコンツェルトハウス管弦楽団

 緊張感漲り、圧倒されるようなマーラーの5番が圧巻であった。情感溢れる第一楽章には思わず涙が出そうになったのが記憶に残っている。また難病が報じられて心配されていたアリス=沙羅・オットが、未だに健在であるのが分かったことはうれしいこと。

第3位
ジョナサン・ノット指揮 スイスロマンド管弦楽団

 いささか荒っぽさのようなものもあったが、力強くて躍動感に満ちていたマーラーの6番が極めて印象的。ノットもオケもノリノリなのが客席にまで伝わってきた。この曲ってこんなにすごかったのかと改めて再認識した。

第2位
シャルル・デュトワ指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 セクハラ問題で干されていたデュトワの復帰公演だが、大フィルがいつもの大フィルとは全く違う音を出していたのに驚かされた。弦は引き締まり、金管は鮮やかにと極めて色彩的に描き出した幻想交響曲は強く印象に残る。さらに急遽尾高の代演として臨んだ「サロメ」もこれまた凄かった。何よりも、これ以降大フィルの演奏が一変してしまったことがデュトワがただ者ではないことを示している。

第1位
セミヨン・ビシュコフ指揮 チェコフィルハーモニー管弦楽団

 ポリャンスキーとはまた異なった方向での悲愴の名演が登場した。抜群の集中力の中で極めて劇的で美しく描き出した悲愴には深く心を揺さぶられた。楽章が進むにつれて音楽がクライマックスを迎える全体構成は見事の一言。演奏終了後の出し切ったというよなグッタリしたビシュコフの姿が記憶に焼き付いている。

 

 次点
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮 九州交響楽団

 ポリャンスキーが手兵以外のオケでどのような演奏を披露するかと思っていたが、九響を最大限に鳴らしてきたのには驚いた。やはりポリャンスキーはただ者ではないと実感させるに十二分であった。また緊張感溢れる演奏のみでなく、くるみ割り人形で見せた茶目っ気や、アンコールでのメロドラマなど、この指揮者の表現の幅広さをも感じさせる内容であった。

 

 

ワーストライブ

 名演目白押しの中でも首をかしげるような迷演も登場するもの。そのようなコンサートをリストアップします。

第3位
トーマス・ダウスゴー指揮 BBCスコティッシュ交響楽団

 後半のマーラーの5番は良かったのであるが、問題は前半。特に遥か沖合をモーターボートで突っ走るかのようなフィンガルの洞窟は情緒もクソもない演奏で、思わず途中で帰ろうかと思ったぐらい。

第2位
チョン・ミン指揮 イタリア交響楽団

 これは純粋にオケが下手。アンサンブルはガタガタ、音色も濁りまくりだった。笑ったのはアンコールのロッシーニとメンデルスゾーンの「イタリア」はやけにイキイキとした良い演奏だったこと。なぜこちらを正規プログラムのメインにしなかったかと疑問噴出。

第1位
テオドール・クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ

 ある意味で今年最大の話題の演奏。異常に集中力が高く、曲芸のようにアクロバチックで個性の強すぎる演奏は、好悪が真っ二つに分かれそう。かなり「変則的」な演奏であるために、この演奏に関してはベスト1かワースト1かのいずれかしかあり得ないというところ。私としては、多用しすぎる変拍子や突然の劇的な強弱変化の多くに必然性を感じず、悪趣味に過ぎるという印象。

総評

 今年も多くのコンサートに出かけたが、今年のトピックは二週間ほどの間にウィーンフィル、ベルリンフィル、ロイヤルコンセルトヘボウを梯子した「大散財ウィーク」だろう。いずれの演奏もそれなりに満足度の高いものではあったが、鮮烈な印象を残すという意味ではさらにこれらを越えているコンサートは多数あった。

 それらを考慮した上で、今年はあえてチェコフィルをベスト1に挙げた。ビエロフラーヴェクの没後、どうなるかが注目されたチェコフィルであるが、後任のビシュコフはチェコフィルにまた新たな風を吹き込みそうであることが期待できる。ベスト2はやはり大フィルの演奏を一変させたデュトワを挙げる。この演奏は私も心底驚いたのだが、コンサートに参加した聴衆の中に帰り道で「これが本当に大フィル?」という声があちこちで上がっていたのが記憶に残る。やはりデュトワはただのスケベ親父ではなかったと言うことだろう。この好評のおかげか2020年にもデュトワの客演が決まったようでうれしい限り。ベスト3のノットは荒っぽいが異常なまでのノリの良さに巻き込まれたし、ベスト4のインバルは流石に深い演奏であり、心底感動させられたし、場内もかなり盛り上がっていた。そしてベルリンフィルは5位に登場。技術的レベルの高さは当然としても、メータの指揮も見事であった。

 なお年末にあえて九州まで出向いたポリャンスキー/九州交響楽団などは予想を超える鮮烈な演奏であった。ベスト5に割って入るにはどうかと言うところがあるが、やはり特記せざるを得ない名演ではあったと言うことで次点に加えた。ポリャンスキーは2021年度に新日フィルにも登場する予定だそうなので、是非行ってみたいものである。私としては関西のオケとの組み合わせなども聴いてみたい。

 さてワーストの方だが、ワースト3のBBCは「なんでこんな演奏になるの?」としか言い様のなかった「フィンガルの洞窟」が悪い意味で印象に残ってしまった。メインのマーラーの5番は一転して良かっただけに、指揮者もオケも駄目なわけではないはずなのだが・・・。ワースト2のイタリア交響楽団は文字通り絵に描いたようなダメダメ(笑)。イタリア人にベートーヴェンは無理なのかとまで思ってしまった。そして大問題がワースト1のムジカエテルナ。正直なところ私としては評価に困ったというのが本音。ある意味で異常なまでにレベルの高い演奏とも言えるのだが、一方で異常なまでに悪趣味な演奏とも感じた(笑)。とにかく評価に困った挙げ句、私はあえてワースト1に挙げた。これは異論のある方も多いだろうとは思う。

 ちなみに今回ワースト1に上げたムジカエテルナは、2020年にも再来日して、今度はベートーベンの第九を演奏するらしい。どんな演奏が飛び出すか興味深いところだ。本来ならワースト1のオケに再度行くということは考えにくいが、このオケの場合は事情が少し通常と異なるので聴いてみたいとは思っている。