コンサートを終えると大至急の移動。地下鉄とJRを乗り継いでイオン桂川へ。ここのイオンシネマで上映されるロイヤルオペラハウスの「ドン・パスクワーレ」を見に行くつもり。桂川は意外に近く、30分強で到着。駅とイオンは接続しているのだが、ここから奥にやたらに深いのが巨大ショッピングモールの常。シネマは一番奥である。内部に入ると見たことがあるような気がするのだが、内部構造が西宮ガーデンズと恐ろしいほど類似点が多い。おかげで初めてでも迷わなくて助かる(笑)。
ロイヤルオペラハウスシネマは特別上映と言うことで料金は3700円(べらぼうに高い!)。とりあえず18時過ぎの上映のチケットを押さえると、館内のフードコートへ夕食のために出向く。面倒くさいので「海鮮寿司 北海素材」で「上海鮮丼」を注文するが、さすがに場所柄、CPの悪さには閉口。
とりあえず夕食を終えると映画館にとんぼ返りである。ここの劇場はなぜか上映直前でないと入場させないので、いささかバタバタした入場となる。なお上映は小型の劇場だったが、入場者数も10名ほどだったのでガラガラ。しかしこの劇場、音が良くない上に屋上駐車場を通る車の音か、ズズズという低周波が時折聞こえてくるのはかなり不快。
ロイヤルオペラ・シネマシーズン ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」
【演出】ダミアーノ・ミキエレット
【指揮】エヴェリーノ・ピド
【出演】ドン・パスクワーレ:ブリン・ターフェル
ノリーナ:オルガ・ペレチャッコ
エルネスト:イオアン・ホテア
マラテスタ:マルクス・ヴェルバ
資産家のドン・パスクワーレは、自身の資産を甥のエルネストに贈与する遺言を作成していたが、彼の進める縁談を断ってノリーナに入れ込むエルネストに腹を立て、自分が結婚してエルネストを家から追い出すと言い始める。そこでエルネストの友人であり、ドン・パスクワーレの主治医でもあるマラテスタが、ノリーナと共に一計を案じる。マラテスタの妹と偽って清楚で大人しい女性に扮して現れるノリーナ。ドン・パスクワーレは気に入って直ちに婚姻するが、婚姻が済んだ途端に彼女は急に気の強い浪費家の女性に変貌し、ドン・パスクワーレの金で家の中のものを一新してしまう。振り回されて困り果てるドン・パスクワーレは・・・というコメディ。
ノリーナ役のオルガ・ペレチャッコはロイヤルオペラ初登場とのことだが、力強い超音波ボイスでまさにはまり役という印象。一方エルネストのイオアン・ホテアはいかにも気弱な青年という印象の美しいテナー。曲者マラテスタを演じるマルクス・ヴェルバはなかなかの実力者だが、やはり一番印象が強いのはドン・パスクワーレのブリン・ターフェルの怪演だろう。いずれも歌唱のレベルの高さは当然としても、なかなかの芸達者なのには驚かされる。本演出はかなり複雑な仕掛けも多いので、演じるには大変さがあるだろうが、難しい歌唱をこなしつつコミカルで激しい演技も行うのには驚かされる。
演出は最近流行りの現代置き換え型のものだが、本作についてはそう違和感も無理もない。時代を現代に置いたことで、昔懐かしいアメリカンホームコメディ(「奥様は魔女」とか)の空気がある。なおドン・パスクワーレをややマザコン的に描いていたのは今風か。ただおかげで、母親との思い出の家を滅茶苦茶にされてしまったドン・パスクワーレがいささか哀れに過ぎて、正直「いくらなんでもやりすぎでは」という気もしてしまう。なお作品の時代背景の違いで仕方ないのだが、さすがに最後にノリーナが「この事件の教訓は、年老いてからの結婚なんて愚かなことはしないこと」と歌った時には場内が一瞬ざわめく場面も。これは「おいおい」というような反応だった。確かに今日の社会でこれを大っぴらに言ったら老人虐待になるだろう。
まあ総じて言うと、新年向きの楽しいドタバタ劇であった。どうしてもドタバタばかりに気が取られがちになってしまうが、ドニゼッティの軽妙で洒落た音楽も実によくできている。
上映を終える洛西口から阪急で烏丸に移動、ホテルに戻るのである。いささかハードな一日だったので疲れた。大浴場でしっかりと疲れを取るのであった。明日はやや早めに行動を開始することになる。