徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

福山・岡山遠征その1 「絹谷幸二の世界」@ふくやま美術館&ワコーミュージアム&福山城

 この週末は福山・岡山方面の美術館を訪問することにする。まずは家を午前中に出ると福山まで車を飛ばす。ショパンのピアノ協奏曲をかけながら、山陽道を優雅に走行する。

 福山東ICで高速を降りると福山城方面へ。目的とする美術館は福山城の隣である。駐車場に車を入れると目的の美術館へ。

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ふくやま美術館

 

「絹谷幸二の世界-富士山を中心に-」ふくやま美術館で3/15まで

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 独特としか言いようのない絵画である。絹谷が用いるモチーフは、一つは日本の象徴とも言える富士、二つは幼い頃から慣れ親しんでいたという仏像。これらだけを聞くと普通の絵のような気がするのだが、これが彼の手にかかると強烈な色彩とデフォルメも入った非常にインパクトのある作品となる。

 1部が富士を中心とした絵画のコーナーであるが、中央にまさにそびえ立つ富士の回りに様々な事物を細かく描き込む。ある絵では天使を乗せた龍が飛び回り、ある絵ではスカイツリーがそびえたりと何でもありである。妙にゆるキャラ的な十二支が富士を取り囲む絵などは、お目出度いと言おうか何と言おうか、正直なところ思わず爆笑してしまった。

 2部は仏像をモチーフとしているが、これがまたインパクトの点では富士に負けない。おどろおどろしい背景を背負って屹立する仏像が、存在感があると言おうか、妙にリアルと言おうか、ありがたいと言おうか、おぞましいと言おうか、とにかく強烈な存在感を持ってこっちに迫ってくる。

 とにかくいずれの絵も極彩色の世界でいささか目がチラチラしそうな世界。さらにモチーフはごった煮状態。にもかかわらず、作品全体として妙な統一感があるのは何だろうか。驚きつつ、思わず見入ってしまった。妙な魅力のある作品であるのは認めずにはいられない。


 所蔵品点の方は「影」をテーマにした作品とのことだが、こうなるとまず登場するのは予想通りというか、影そのものを描いた高松次郎の作品。もっとも本当に影がテーマになっているのは高松次郎ともう一点の現代アートぐらいで、後は単に影が差している作品と言うことで、吉田博の版画まで展示してあるというテーマのあるようなどうでも良いような内容。なお隣の部屋では刀剣を展示していたので、今時ならこっち方が興味のある者はいるのでは。

 

100名城の一つ、福山城を見学

 美術館の見学後は久しぶりに福山城を見学してみることにする。福山城は100名城に選ばれている城郭だが、江戸時代の一国一城令後に竣工されており、比較的新しい城ということになる。ここには福山藩の藩庁が置かれており、藩主の居城として建設された城である。かつては瀬戸内海にも通じており、海城という性質を持っていたようであるが、今はJRの駅やら市街地やらに埋もれてしまっていて、かなり旧状から変更されている部分もある。ここはかなり以前に来た記憶があるのだが、実際に見学に行ってみるとほとんど覚えていなかったことに気付く。

 福山城の天守は戦前まで現存したのだが、福山空襲で焼失したという。この時に天守と共に残存する多くの貴重な建造物も焼失したとのこと。戦争という愚行は文化の破壊しかもたらさない。戦争とは人類全体にとって取り返しの付かない損失なのだが、常に権力周辺のごく一部にこれで潤う輩がいるために未だになくならない。

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三の丸から登った虎口

 美術館があるのはかつて三の丸になるという、ここから登っていくと狭い二の丸を経て本丸の門である筋鉄御門が見えてくる。これと隣の伏見櫓が戦火の中残った数少ない現存建築物である。なお筋鉄御門は壁の一部の崩落事故があったとかで立ち入りが禁止されていた。

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筋鉄御門は崩落事故で立ち入り禁止

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どうやらこの部分が崩落したようだ

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筋鉄御門と共に現存の伏見櫓

 

 仕方ないので二の丸をグルリと回り込むことにする。南には御湯殿と月見櫓が復元されている。御湯殿は石垣の上に張りだした構造になっており、防衛戦時には南の石垣をよじ登ろうとする兵に横矢をかけることになるのだろうかと思われる。もっともここまで兵に迫られると、横矢をかける前にこの建物自体が焼き払われそうな気がするが。

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手前が御湯殿に奥が月見櫓

 東側から回り込んで本丸に上がるが、ここはかつては鏡櫓から天守まで多門櫓が続いていたと聞いていることから考えると、ここの入口は後付けか。確かに防御のことを考えると、下から真っ直ぐ登れるのはおかしい。

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天守手前のこの辺りはかつては多門櫓があったとか

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今は下から真っ直ぐ上がれるように改変されている

 

 本丸はそれなりのスペースがあるが、かつてはここに本丸御殿が建っていたはずである。天守は下から見るといささか小ぶりだが、ここまで上がってくるとなかなか絵になる。なお天守は博物館となっているのだが、現在はアスベストの撤去作業中とかで入場禁止。現存天守だったらアスベストなんて使ってないものを・・・。

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福山城天守

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復元された御湯殿

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本丸周辺には櫓台も残っている

 本丸を見学の後は北の搦め手から二の丸に降りてくる。現在は下まで緩斜面になってしまっているが、かつては防御のために段があったはずである(石垣もあったとか)。なお城全体の縄張りから見て天守が北に寄っているため、北側から鉄砲が天守まで届く可能性があったことから、天守の北側面にはかつては鉄板が貼ってあったとのことだが、復元に当たってはそれは省かれたらしい。

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北側は緩斜面になってしまっている

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こちらの面にはかつては鉄板が貼られていた

 

笠岡で昼食を摂る

 福山城の見学を終えると笠岡に移動することにする。ここに目的の美術館があるのだが、その前に昼食のために笠岡グランドホテルに立ち寄る。ここは笠岡地区の地域一番ホテル(と言うか、ここ以外にまともなホテルはない)だが、ここは収蔵する美術品をワコーミュージアムとして一般公開しているという。それを見学がてらここで昼食も摂ろうという考え。

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笠岡グランドホテル

 大分昔にここに来た時には昼食バイキングがあった記憶があるのだが、当時からガラガラで効率が悪かったせいか、今はイタリアンレストランに代わったようである。とりあえずホテル2階のレストラン「Pasta Frolla」に入店してペスカトーレの大盛りにシーザーサラダとコーヒーのセットをつける。

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ホテル2階のPasta Frolla

 シーザーサラダはなかなかに美味い。私好みのサラダである。

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シーザーサラダ

 ペスカトーレについては普通。不味くはないが、特別に美味いと感じるほどでもない。生パスタとのことだが、さほど特徴はないという印象(我が家でパスタをする時も生パスタを使うせいだろうか?)。なおコーヒーについては苦みが立っていて、残念ながら私の好みではない。

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大盛りペスカトーレ

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コーヒーはやや苦みが強い

 

ワコーミュージアムを見学

 昼食を終えるとワコーミュージアムを見学。展示室はこのレストランの隣にある。見学は無料と太っ腹。展示室1には清水比庵の書や文人画、展示室2には日本画など。ここに奥田元宋の逸品があり。また場所柄か平櫛田中の木彫り彫刻も。相変わらずこの人の作品はスゴイ。

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第1展示室

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第2展示室

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平櫛田中の作品がある

 そして展示室3には茶器や陶器の類いが展示されているが、物量的にはここが一番スゴイ。茶器類の中には私も欲しくなりそうなものもあった。

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第3展示室

 3階にある展示室4には児島塊太郎の陶芸作品。緑釉が映える作品である。

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第4展示室

 なおこの美術館1階には市民ギャラリーまであるとのことで、現地の絵画会らしき展示がなされていたが、その中の一人にシャガールの影響が濃厚・・・というよりも模倣と言っても良い作品があってなかなかに笑えた。

 昼食も終えてミュージアムの見学もしたところで、そもそも予定していたここの近くの美術館に立ち寄ることにする。