徒然草枕

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福山・岡山遠征その2 「菊池芳文」@竹喬美術館&田中美術館&華鴒大塚美術館&矢掛の宿場町見学

 次の美術館は笠岡グランドホテルから車で2分程度の距離にある

「近代花鳥画の名手 菊池芳文」笠岡市立竹喬美術館で3/8まで

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 菊池芳文とは幸野楳嶺門下の日本画家で四条派の流れを汲み、竹内栖鳳、谷口香キョウ、都路華香とともに「楳嶺四天王」の一人と言われた人物であるという。ただ惜しむらくは55歳の若さで夭折してしまったことで、そのために知名度が今ひとつとなってしまったようである。なお彼の門下には清澄な美人画で知られる菊池契月がいる。

 さすがに四条派の流れを汲むだけあって、精緻かつ精密な絵画には驚かされる。圧倒されたのはリエージュ万博出展の川島織物の原図にと芳文が描き起こした孔雀などを描いた原図。細かいところまで極めて精緻に描き上げてあり圧倒された。本展展示作は精緻で美麗な大作が多数であり、菊池芳文という画家の技倆を知るのに十二分な作品が並んでいた。

 これぞ花鳥画というか、正真正銘の花鳥画の逸品に久々に圧倒された。

 

 

 出発前に今日の最低限ラインと想定していた美術館はこれで回り終えたが、まだ昼過ぎで時間に余裕はある。そこでさらにオプショナルツアーに行くことにする。

 笠岡から車で北上すると井原市まで移動する。次はここの田中美術館(「たなかびじゅつかん」でなく、「でんちゅうびじゅつかん」である)を訪問しようというもの。先ほどのワコーミュージアムにも展示があったが、木彫りの名人・平櫛田中の作品を収蔵した美術館である。現在は日本画の収蔵品点を開催しているとのこと。

 40分弱ほどかかって美術館に到着。ここの美術館は黄金の岡倉天心が目印。

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田中美術館

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黄金の岡倉天心像

 

 

「コレクションの全貌PART2 現代日本画の粋」井原市立田中美術館で2/9まで

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田中の弟子による平櫛田中像

 2~3階は平櫛田中の木彫り彫刻を展示。この人の作品はとにかく像に魂が入っている。存在感がまるで違う。国立劇場に設置された「鏡獅子」が作品として特に有名であるが、彼はこれを制作するために、多くの実物大の試作品を作っているだけでなく、衣装の中の人体の把握にモデルとなった六代目尾上菊五郎の裸の像まで制作している。徹底してリアリズムを追究する姿勢が覗える。

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鏡獅子の試作品の一つ

 1階には所蔵の日本画を展示。各人特徴があるが、心惹かれるのは井出康人がインドネシアを題材に描いた作品。美しくていかにも楽園的イメージが展開されている。また「どこかで見たような」絵もあった。福井爽人の作品は何となく高山辰雄調であるし、松本哲男の作品は平山郁夫を連想した。たまたまなのか、影響を受けているのかは定かではない。インパクトの点では面白かったのは小山硬の作品。太い線でリズミカルに描いた描線が特徴となって目を惹く画面となっていた。好き嫌いはともかくとして個性はある。


 田中美術館見学後は、ここから西にしばし走った美術館へと移動。この美術館は井原鉄道の子守唄の里高屋駅のすぐ前にある。

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井原鉄道子守唄の里高屋駅

 

 

「冬の歳時記~華鴒大塚美術館所蔵 近現代日本画にみる~」華鴒大塚美術館で2/2まで

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 所蔵品の中から冬の季節に合わせた日本画を展示。本館が力を入れている金島桂華などから小野竹喬、橋本関雪、児玉希望など様々な作品を展示。

 大作はなくいずれも小品だが、作者の特徴が出ていて面白い。また同じ雪を描くにしても、作者が変わればその表現なども変わる。そのような諸々を考えながら眺めていくとなかなか楽しめる。


 この美術館は枯れ山水の日本庭園があるので、作品鑑賞後に庭園見学。庭園の一角には茶室もしつらえてある。こういうところでゆったりしながら一服というのもいいな。どうも最近とみに茶の湯付いてきているのを感じる。

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日本庭園

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落ち着いた風情の茶室

 

 

矢掛の宿場町を見学する

 以上で今回の美術館の予定は終了である。もう夕方にさしかかってきたが、ここまで来たのだからもう一カ所だけ立ち寄ることにする。車を走らせたのは矢掛町。山陽道の矢掛宿の町並が残っており、当時の本陣・脇本陣なども残っている。かなり以前から町並保存と観光に力を入れている地域である。ただなぜかまだ重伝建にはなっていないという地域である。

 町中の観光用の駐車場に車を置くと徒歩で散策する。しかし残念なことに現地到着が16時を過ぎていたせいか、本陣も脇本陣も閉まっている。店なども閉めているところが多く、どうやら矢掛の夜はかなり早いようだ。

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まちなみ交流館

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とにかく風情のある建物が多い

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これは昭和元年の建造物とか

 矢掛宿は山陽道の要衝として多くの大名が宿泊に使用しており、篤姫もここに宿泊したとの表示がある。さすがに本陣ともなったら、門もそれように格式の高いのを用意してある。ここが当時の5つ星ホテルだったわけである。

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格式の高い旧矢掛本陣石井家

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大名用の立派な門

 

 

 町並は白壁土蔵造り建物が並んでいる。このタイプの建物が庶民にも許されるようになったのは、江戸時代がある程度下ってからのはずだから、それ以降に整備された町並と言うことか。

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白壁の建物が並ぶ町並み

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町並みを活かしての商店も多い

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白壁土蔵造りの建物

 駐車場から西の端まで歩くと戻ってきて、今度は脇本陣のある東の方へ。脇本陣の方も風格のある立派な建物。内部見学は15時までらしいので、もっと早く来るべきだった。

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旧矢掛脇本陣高草家

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ここにも格式高い門が

 本陣も脇本陣も中を見られなかったことが少々心残り。これはまた捲土重来を果たすか。とりあえず今日はこれで引き上げることにする。今日は1日車で走り回って疲れたので、帰路は下手したら眠気がこみ上げかねない状態。そこで眠気覚ましにはやはり水木のアニキの熱血ソング。帰りは車中で「ゼーェェェェット!」と絶叫しながら運転することに(笑)。