徒然草枕

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7年遅れのアニメ評「翠星のガルガンティア」

翠星のガルガンティア 2013年作品

 2013年というやや昔の作品のようだが、BS11で放送されていたので見ておりました。宇宙の果てでの人類と異生命体との戦闘が繰り広げられる中、レド少尉は戦闘中のワープに巻き込まれて宇宙の果ての地球に飛ばされてしまう。戦闘しか知らない少年が、海ばかりになった地球上のガルガンティアと呼ばれる船上で、ノホホンとした地球の人々にふれあう中で徐々に変化して人間的に成長していくという過程がなかなかに魅力的に描かれていた作品。最近の作品はこの「主人公の成長」という要素が皆無なものが増えてきているので、その辺りにやや「古めかしさ」を感じつつも、私のようなオールド世代は「やっぱりこの要素がないと見ていて面白くないよな」と毎度頷いておりました。

 またもう一人の重要なキャラクターが人間ではなく、主人公レドの愛機であるチェインバー搭載のAI。これが「パイロット支援啓発インターフェイス」とのことなんだが、いかにも機械機械で感情がないはずなんだが、なぜかその背後に感情的なものを感じさせる。謂わばミスタースポック的な存在。時には極めて冷徹にレドに対してアドバイスという名の指示をする場合があるのだが、それがレドの成長を促すことになっているのは支援啓発インターフェイスなる所以なんだろう。その「彼」もガルガンティアの連中に「ブリキ野郎」などと呼ばれつつも接触しているうちに明らかに「成長」している。

 そして彼らを中心としてストーリーは展開。最初はガルガンティア上でのノホホンとした生活、そこで繰り広げられるレドとチェインバーのトンチンカンな騒動なんかが描かれていたが、終盤に怒濤のようにこの世界のハードな設定が展開。自分達が殲滅するべき敵として考えていたヒディアーズが、実は同じ人類の人工進化の結果だったと知って動揺し、戦闘の意味から自身の存在の意義さえ失って迷走しかけるレド。彼に対して「独自の判断」に基づいて「それでも人間として戦うしかない」と告げるチェインバーは、この時点で既に単なる機械の域を超えている。

 

 そうして最終回。自身を「神」と称して暴走する、レドの元上司クーゲルの乗機であるストライカーに挑むレドとチェインバー。しかしストライカーの戦闘力は圧倒的。それに対してレドは命がけの、チェインバーとの直接接続によって立ち向かう。この星には自分達はいるべきではないんだと、命を捨てての相打ち覚悟だったレドの元に飛んでくるヒロイン・エイミー。彼女の「帰ってきて」の言葉に自分には居場所があったんだと気付くレド。

 

 そしてその心に気付いたかのようなチェインバーの台詞。
「最終意思確認。レド少尉は自らの死を要望するか。」
 つまりはこれ以上戦っていたら命を落とすが、本当にそれで良いのかと告げている。

 

 それに対してレドのつぶやき
「俺は、死に方は分かっても生き方は分からない。そんな俺のために生き方を一緒に探してくれる人がいた。もう一度会いたかった。もっと声を聞きたかった。」
 まさに心の底から振り絞るようなレドの本音。

 

 これに対してチェインバー
「レド少尉の心理適正は兵士の条件を満たしていない。よって現時点を以て貴官の軍籍を剥奪する。」
「おい、チェインバー!」と動揺するレドに対して
「非戦闘員のコクピット搭乗は許可できない。即刻、当機より退去せよ。」とコクピットを機体から切り離すチェインバー。

 

 昔からのお約束である「ここは俺に任せてお前は生きろ」という黄金パターンである。王道中の王道展開と感じながらも思わず涙腺が緩みかける。

 

「そんな・・・お前は」
「この海と空の全てがあなたに可能性をもたらすだろう。生存せよ。探求せよ。その命に最大の成果を期待する。」
もう完璧な最後の台詞です。まさに「お前と出会えて良かったぜ。お前だけでも幸せになれよ」という王道台詞。もうこの時点で私は不覚にも涙が出ました。

 

 そこに敵機であるストライカーが
「支援啓発システムにパイロットを拒絶する権限はない」といかにも機械的な警告。
それに対してチェインバー
「彼に支援は必要ない。もはや啓発の余地はない。後はその前途を阻む障害を排除して私の任務は完了する。」決然たる台詞。

ストライカー
「機体ナンバーK6821。貴官は対人支援回路としての第一原則すら放棄した。貴官の暴走は明白である直ちに初期化・再起動せよ。これは最後通告である。」
いかにも機械的な警告に対するチェインバー
「貴官の最後通告に返信する。くたばれブリキ野郎。
ストライカーに突撃して共に自爆するチェインバー。

 

 ここで私完全に涙腺崩壊しました。50越えたオッサンがアニメ見てボロ泣きです。くさい、古い、王道、そう思いながらもだからこそ胸を打たれてしまった。

 とにかく最近(と言うには少々古いか)のアニメには珍しく、「人物」をよく描けている作品でした。登場人物全てが説得力と存在感があり、またそれぞれの成長も描かれている。久しぶりにマジで感動してしまいました。今から7年前にこんな名作があったとは知らなかった。ただ多分、今時のアニメからはいささかズレた古風な作品だと思います。まあだからこそオッサンの感性を直撃したんでしょうけど。ちなみに私がアニメでガン泣きしたのは30年近く前のセラムンの最終回(-1)話以来です(笑)。

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