コンサートが完全に中止の状態。しかも外出がほぼ禁止の状態なので、美術館にも行けず(そもそも閉館中)、山城に出て行くわけにもなかなかいかず(散歩の延長だと言えば行けないこともないかもしれないが)という状況で、やることもなくこのページの更新ネタもなく、ページの方も閑古鳥が鳴いております(笑)。ほとんど夜のニュースで映っていたこの週末の新宿の状況です(以前に新宿並みの読者が来ていたわけでもないが)。
幸いにして私はこれで食っているわけではないし(そもそも食えるだけの収益なんてない)、なんせ最初からテナント料(はてなの年間費用)もページの収益では賄えてないので、営業の前途を悲観していた飲食店とは違って廃業に追い込まれるという心配はありません(笑)。まあこれが本業だったら、30万円の支給を受けるための書類を揃えないといけないところでしょう(笑)。
そんなこんなでここしばらくは家では現在1ヶ月無料期間中のベルリンフィルデジタルコンサートホールを聴いていることが多いです。今回はブロムシュテットのブルックナー交響曲第4番。実はこれの前にパーヴォ・ヤルヴィによる幻想交響曲も聴いたのですが、いかにもパーヴォらしいクレヴァーな演奏ではあるのですが、ベルリオーズ特有ドロドロ渦巻く情念の類いが全く感じられない妙にあっさりとして品の良い演奏だったので、あまり面白いと感じませんでした。そこで続けてブロムシュテットのブルックナーというある種の「定番」を。
ベルリンフィルコンサート(2020.1.18)
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス
モーツァルト ピアノ協奏曲第22番
ブルックナー 交響曲第4番
一曲目はモーツァルトなんだが、もう最初の一音を聞いたところから笑ってしまった。とにかく分厚い。ベルリンフィルと言えば精緻であるがやや派手目な音色のイメージがあるのだがそれが渋い渋い。ベルリンフィルがバンベルク交響楽団みたいな音を出すもんだから思わず笑ってしまった。さすがのベルリンフィルも老巨匠の手にかかれば彼のオケになってしまうのか。
もっともこれがモーツァルト?と思ってしまうぐらいの重厚さなので、これで良いのかなとちょっと心配していたら、それを解決してくれるのがアンスネスのピアノ。軽妙洒脱でこれぞモーツァルト。ドッシリ構えたオケをバックに軽快な音楽を展開してくれました。
そしてブロムシュテットによるブロムシュテットらしさが炸裂するのがブルックナーの4番。もう初っ端からドッシリと構えて、圧倒されるぐらいの重厚さ。単にクソ重いのではなくベルリンフィルの技術に支えられているから、重厚でありながらも躍動感を秘めている。ブルックナーの音楽はゴシック建築なんかにたとえられることもあるが、確かに目の前に重厚極まりない神殿が現れるような印象である。決して焦ることがなく、それでいて緊張感が切れることもなく、最後まで精緻に組み上げた演奏は見事の一言。
演奏終了と共に場内が息を呑んだように静まり、ブロムシュテットがゆっくりと手を降ろして肩を軽く動かした途端に一斉に爆発的な拍手の起こるこの場内の一体感は、単にベルリンのフィルハーモニーホールに来る観客がコンサート慣れしているとか、マナーが良いとかいうだけの話ではなく、ブロムシュテットの音楽に没入していたのだろう。また現役最長老とも言われるブロムシュテットであるが、杖もつかず椅子も使わずで、階段を颯爽と登って立ったままでこの長大な曲を振り切るかくしゃくとしたところは頼もしい限り。コロナ終焉後の来日に期待したい。