本来はこの週末は山響は大阪と東京で遠征公演だったはずなのだが、それが今回の騒ぎで飛んでしまったことから、カーテンコールで無観客公演を生ライブ配信することになったとのこと。私はそれを視聴した。
山響ライブ第2弾(20.6.21やまぎん県民ホールより無観客ライブ配信)
[指揮]阪 哲朗・村川千秋
[ピアノ]三輪 郁
・村川千秋編:山形県民謡「最上川舟唄」
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15
・ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」Op.68
広めのステージにソーシャルディスタンスを意識してやや広めの間隔を開けての楽団員配置。もっとも今までの他のオケの配置に比べるとやや間隔は狭め。編成の小さい山響ということもあって全員が問題なくステージ上に乗っている。
最初は村川千秋氏による情緒タップリの最上川舟唄。和風のメロディが思いの外オケの音色とマッチする。実に情感に溢れる演奏である。
ベートーベンのピアノ協奏曲第1番は三輪のピアノは非常に粒立つの良いエレガントな演奏。過剰な表現はない流麗で美しいものであるが、それにも関わらず何やら心の琴線に触れるようなところがある。それに合わせて山響もなかなかに端正な演奏をする。そもそもベートーヴェンでも初期の曲であるから、過度な表現はないはずの曲なのだが、第二楽章などはややメランコリックに聞こえるところがある。この美しさは絶品。そして最終楽章はモーツァルト的(ただしのモーツァルトよりは感情が深い)な軽妙で動きの速い曲想。三輪のピアノはここを軽快に弾きこなすが、バックの山響については所々ややゴチャゴチャして聞こえる部分もあり。ただし情緒はタップリありの演奏。
休憩後は田園。阪氏らしい抑制が効いているが爽やかな演奏。山響の音色もあって第一楽章、第二楽章などは眼前に田園風景が広がるような感がある。第三楽章についてはいささか品の良い村祭りという印象か。その後は怒濤の嵐だが、表現自体には過剰なものはない。そこから晴れ間の見える最終楽章への盛り上がりが見事。山響は金管に古楽器を用いているので、その出しゃばらない音色がバランス良い抑えめの表現につながっている。本来のベートーヴェンってこうだったんだよなと思わせるところがある。私にとっては退屈に聞こえがちのこの曲を、これだけ魅力的に表現できたのは見事。
今回は新装なったやまぎん県民ホールからの中継だったようであるが、実に見事なホールで響きもなかなか良いようである。今後、山響がここを本拠として活動するとなると、これからに大いに期待したいところ。私としてもいずれはこのホールで是非とも山響のライブを聴いてみたいところである。