今日の14時より、東京交響楽団によるオペラシティでの公演のライブ放送がニコニコ動画であったのでそれを見ることにする。
今回は来日できないノットがリモート録画指揮という極めて斬新な取り組みを実践するとのこと。とにかくいろいろな試みを見せてくれるノットであるが、この日本初ともいう取り組みの結果はどうなるやら。なおここまでしなくても、普通に日本人指揮者でも良いのではという気もしないではないのだが、やはりそこはノットあっての東響なんだろう。
なお中継映像は各所ズームが入るいわゆるテレビ型映像と、固定カメラによる映像の2パターンがあるが、そもそも視点があちこちに切り替わるのが落ち着きなくて嫌いな私は迷わず固定映像を選択。
東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ 第116回
指揮:ジョナサン・ノット(ドヴォルザークに収録映像にて出演)
ブリテン:フランク・ブリッジの主題による変奏曲 op.10(指揮無し)
ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88
一曲目は小編成(弦楽のみで8編成)のオケによる指揮者なしでのブリテンの曲。現代寄りの音楽でありながら、曲想に所々古典のような雰囲気が滲むこともある変わった曲。
指揮者なしでの演奏であるがなかなかに統制が取れていて美しい演奏。弦楽の密度が非常に高い。東響、なかなか良い演奏をするというところである。
後半はノットの指揮によるドボ8だが、これについてはノットはモニター指揮である。当初はリモートによる指揮も考えたそうだが、どうしても時差が発生するために難しく(地球の裏側だと衛星中継でも時差が出る)、結局は録画によるものにしたとのこと。ノットもスイスロマンドでは超斬新配置の第九を指揮したりなどとにかくいろいろとやる男である。
休憩時間の間に指揮台の位置に大型モニタが複数配置されるというかなり珍しい光景。オケの音を聞かずに指揮映像を収録したノットも大変だが、一方的に指揮映像に合わせて演奏するオケも大変である。
で、心配した通り、冒頭はコンマスにも動きがない(ヴァイオリンはやや遅れて入る)せいもあってか、入りがピッタリと合わずにややグチャグチャする局面も。その後もノットのやや快速テンポもあってかかなり危ない局面もチラホラ。録画映像ではノットもテンポ指定ぐらいしか出来ないし、実際の音を聞いて修正指示を飛ばすと言うことが出来ない無理はある。阿吽のアイコンタクトなども取れないこともあり、正直なところ第1楽章前半はオケは指揮に合わせるので精一杯という印象を受けた。演奏に余裕が感じられない。
その後もやはりノットがオケの空気を読むことが出来ない超KY状態であるので、ノットらしいテンポ変動や溜が出るとそこでオケがどうしてもグチャグチャしてしまう。どうしても演奏におっかなびっくりの手探り感が出てしまう。やはり全体を統一する強力な意志の不在というのは大きく、改めて指揮者とは単なる人間メトロノームではないと痛感した次第。ノリで振る部分もあるノットも大変だったろう。
まあ新たらしい試みではあるが、さすがに少々無理はあったかなというところ。ノットらしい特徴は出ていたのであるが、ノット指揮というよりもノット風というような雰囲気になってしまった。それでも演奏崩壊にならなかった東響はさすがである。この辺りはノットの癖のようなものを楽団員がよく理解していることが大きいんだろうか。
それにしてもやっぱりまだニコニコ動画の方がカーテンコールよりも音質が良いし送信の安定性も高いという現実。これはどうにかしないとカーテンコールマズいぞ。