徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

クラシック音楽館「日本のオーケストラ特集」

 昨日録画しておいたのを今日になって鑑賞。コロナの影響でN響が永らくまともにコンサートを出来ない状態になっているから、アーカイブの中から地方のオケについての録画を引っ張り出してきた模様。今、各地で地方オケが模索しながら活動再開しているところなので、それに対する応援というニュアンスもあるのだろう。

 

 最初に登場したのは札響。放送されたのは2014年11月14日Kitaraでのエリシュカ指揮によるブラームスの交響曲2番から第4楽章。相も変わらず荒っぽいと言っても良いレベルの元気のある札響サウンド。いささか暴走気味ではあるのだが、これがエリシュカに率いられると感動的な名演になる。エリシュカは惜しくも昨年亡くなったが、その最終ライブである2017年のシェエラザードは恐らく私には生涯忘れることの出来ない伝説の名演。その前年に聞いたチャイコの5番もこれまた熱い名演だった。オケと指揮者の関係がこれだけの演奏を引っ張り出すんだと感心したケースである。

 次に登場するのは東海の覇王・名古屋フィル。放送されたのは2008年7月4日愛知芸術劇場コンサートホールでのティエリー・フィッシャー指揮によるベルリオーズの幻想交響曲から第2,4,5楽章。私はティエリー・フィッシャーについては今まで聴いたことがないが、名古屋フィルについては何度か聞いている。名古屋フィルについての正直な感想は「悪くはないのだが、何かもう一味欲しい」というもの。本演奏でもその感はある。フィッシャーの指揮も今回聞いた限りでは何やら仕掛けはあるのだが、どういう方向を目指しているのかが今ひとつピンとこなかった。なお録音状態があまり良くないのか、やたらにティンパニの音が全体に被ってきて演奏がすごく不明瞭だったのも印象を悪くしている。

 3番目に登場するのが我らが関西フィル。やはり関西フィルとなったら震災の話とデュメイの話が絶対に出てくる。特にデュメイの存在が音楽面で与えた影響は大きく、デュメイが音楽監督に就任後の関西フィルは弦楽陣を中心に飛躍的に実力を高めてきたとの評もある。今回放送されたのは2008年10月8日にザ・シンフォニーホールで演奏されたラヴェルのチガーヌ。デュメイのヴァイオリン独奏で指揮は飯守泰次郎。超絶技術を披露しているデュメイの演奏がメインで、残念ながらオケの方は添え物程度(笑)。ただデュメイは単にヴァイオリンの技倆だけでなく、指揮者としても独特の音楽性を示しており、クセは強いもののかなり魅力のある演奏を行い、実際に関西フィルとの組み合わせでの名演も多い。私がライブで聞いた中で記憶に残っているのは2018年のサン=サーンスの交響曲第3番だが、それ以外で印象的だったのは、彼がドボルザークを演奏したらチェコのドボルザークと言うよりも、ブラームスの愛弟子のドボルザークというイメージの演奏になること。

 

 4番目に登場したのは中国の雄・広島交響楽団。この楽団と関わりの深い秋山和慶の演奏を紹介している。2010年5月14日広島文化交流会館でのシベリウス交響曲第2番から第3,4楽章を放送している。広島交響楽団自体は技両面ではまだまだ課題も少なくないオケであるが、秋山がここまで鍛えてきたという経緯がある。今は下野に引き継がれて今後どういう進化を遂げるかが興味深いところ。秋山とオケとの信頼関係が滲むような安定感のある演奏である。

 最後は仙台フィルと山形交響楽団。東日本大震災後、被災地のオケとして様々な活動を行ってきた仙台フィルであるが、それに飯森範親率いる山形交響楽団が加わって、震災復興の思いをこめて2012年7月20日東京エレクトロンホール宮城にてマーラー交響曲第2番「復活」を演奏したコンサートから第5楽章を。なおこの演奏の録音だけが他と比べて各段に音質が良いのだが、恐らく震災絡みの特番か何かの一環でNHKがかなり気合いを入れて録音したのだろう。実際にステージ上にも何本かそれようのマイクを立ててあるのも確認できる。飯森範親はかなり感情で振るタイプなので、格別な思いが籠もっているのはこっちにもビンビン伝わってくる。自分でも「かなり遅いテンポ」と言っていたが、確かにテンポはかなり遅い。ただし指揮者とオケが思いを共有化しているのだろう、緊張感が途切れることがなくその空気もビンビンと伝わってくる。これは恐らく現場で全曲を聴いた観客は相当感動したのではないかと思われる。

 次回も地方オケの特集をするようで、今回扱われなかった九州交響楽団、アンサンブル金沢、群馬交響楽団に我らが日本センチュリー交響楽団と京都市交響楽団が登場するようだ。扱われなかった神奈川フィルは東京のオケ扱いなんだろうか? これでオケ連正会員の地方オケではずされているのは神奈川フィルの他はセントラル愛知、大フィル、大阪交響楽団、PACオケとすべて地方都市(大半が在阪)のオケ。だけどPACなんてそもそもNHKが放送素材を持ってなさそう。