徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

クラシック音楽館「日本のオーケストラ特集2」

 NHKが地方オケの特集の第2弾を放送したのだが、なんやかんやで忙しくて、結局は見たのが一週間後になってしまった。ちょっと間が抜けているが、先週のクラシック音楽館について。

 

 第二部の最初に登場するのは北陸の雄・アンサンブル金沢。2009年1月7日に石川県立音楽堂コンサートホールで開催された井上道義指揮のベートーヴェンの「エグモント序曲」を放送している。

 永らく関係を築いていた両者であるが、この時は10年以上前ということで、井上道義も大病を患う前であろう。かなりエネルギッシュな指揮を行っている。アンサンブル金沢も小編成オケらしくまとまりが良くてなかなかに切れ味の鋭い演奏。音色的にやや硬質な印象を受ける。私がこのオケを聞いた時もなかなかにまとまりの良いオケという印象を受けたのを思い出す。もっとも私が聞いた時にはもっと音色に柔らかさがあった印象。これは井上の指揮のノリと曲調が影響しているのか。

 

 次に登場するのが我らが日本センチュリー。これも永らく関係を築いていた飯森範親の指揮で、2015年9月25日にいずみホールで開催されたハイドンマラソンの第一回からの放送。曲はハイドンの交響曲第77番である。

 飯森については私は彼のマーラーについては面白いと感じたことがないのだが、ハイドンやモーツァルトになると意外に面白い。下手すると起伏のない音楽になりかねない古典的な曲に対して、飯森独自のメリハリをつけてくるのが、ピリリとしたアクセントになって退屈しない演奏となる。また飯森がハイドンマラソンを始めた目的として、基本的なアンサンブル力の強化を言っていたのだが、実際にセンチュリーがなかなかのまとまったアンサンブルを聴かせている。

 もっとも現在経営的にかなり危険水位に達しているオケだけに、ここは生き残れるかどうかが一番の課題。どの指揮者も「すべてのオケが生き残れるように」ということを何度も繰り返しているが、その時にはこのオケのことが頭の中にあると言われている。頑張ってもらいたいところ。

 

 三番手は九州の雄・九州交響楽団。九州地区唯一のフルオケと言うことで地元にも思い入れの深い人が多いらしく、ファンが自らボランティアでスタッフに加わっているという。今回放送されたのは音楽監督を務める小泉和裕が指揮した2014年9月24日にアクロス福岡シンフォニーホールでの公演。曲目はブルックナーの交響曲第一番から第三楽章。

 ほんの5年ほど前の演奏であるが、それだけでも小泉の姿が今よりもかなり若く見えるのが一番の驚き。ここ数年で小泉は急速に頭が白くなったようである。頭が白くなると共に演奏が老け込んだと言う訳でもないだろうが、最近の小泉の演奏の印象よりもかなり演奏自体も若々しくて躍動感がある。いささか荒っぽいぐらいの九州交響楽団の持ち味との相乗効果だろうか。かなりダイナミックな演奏であり、良くも悪くも福岡のイメージに合致している。このオケについては、やはり昨年のポリャンスキーとのチャイコの名演が記憶に残るところ。かなり指揮者の影響を受けやすいオケでもあるようだ。

 

 四番手が関西の雄・我らが京都市交響楽団が登場。長年ペアを組んで、現在は芸術顧問にも就任している広上淳一の指揮による2014年3月14日の京都コンサートホールでのマーラーの交響曲第一番から第4楽章。

 京都市交響楽団はまさに広上の楽器として高度に洗練されたオケであるが、もう既にこの頃からそのことはハッキリと現れている。とにかく広上の粘っこい指揮に対して、オケが完璧に応えているという関係性の明快さがよく分かる。広上の指揮はややテンポも抑えめのとにかくネットリネットリとした濃いものであるが、それが漲る緊張感の元で繰り広げられているのは流石。これが指揮者とオケの意思疎通がうまく行っていなかったら、間違いなく弛緩した演奏になってしまっていただろう。広上のタコ踊りもまさに絶好調であるが、そこから広上が目指すところの意図を的確に汲み取っているのは実に見事。なかなかに印象的な演奏である。

 私が広上と京響の演奏を聴くようになったのはこの公演よりも後であるが、この演奏を聴いていると最近の広上はあれでもこの頃よりは淡泊になっているんだろうかという気がする。とにかくコッテリコッテリした演奏が印象に残る。

 

 最後は関東ローカルオケの群馬交響楽団。市民オケから始まった同オケを急激にレベルアップに結びつけた高関健との組み合わせによる2003年5月23日のすみだトリフォニーホールで開催されたヴェルディの歌劇「ファルスタッフ」のコンサート形式での公演からの抜粋を放送している。

 群響がオペラのバックをするというのは非常に珍しい印象を受けるし、高関がオペラを振るのも初めて聴いた。ヴェルディ晩年の喜劇だけに、音楽はどちらかと言えば軽快なもののようであるようだが、完全に歌が前面でオケはあくまでバックという構成になっているので、群馬交響楽団の演奏についてはよく分からない部分がある。

 私が以前に群馬交響楽団の演奏を聴いた時の印象では、技術的にはまだ課題はあるものの、なかなかの熱量を持ったオケという印象であった。同オケはまだ一度しか聴いたことがないので、いずれもう一度、新装なった高崎芸術劇場で聴いてみたいと思っている。

 

 N響の定期演奏会が完全に停止している状態なので、地方オケのアーカイブを引っ張り出してきたようだが、なかなかに興味深かった。よくもNHKはこれだけの素材を有していたものである。今回登場しなかったオケは放送素材を有していないということか。関西の雄である大フィルが無視されたことなどは、関西人としては悲しいところ。また名古屋のセントラル愛知などもスワロフスキーとの組み合わせで印象的な演奏を残していたりする。

 とにかく今は各地のオケにとって苦難の時であるので、何とか無事にこの危機を乗り越えて生き延びて欲しい。文化の灯というのは一度絶えてしまうと、復活はなかなか困難なことであるので。

 で、次回(本日放送)はようやく再開なったN響の定期演奏会の放送になるようだが、コロナ対応の超閑散編成。いつものN響とは随分異なる演奏となることだろう。これは後日改めて視聴したい。