徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

今年の春アニメについての感想など

 最近はあまりアニメは見てなかったのだが、コロナでのお籠もりの関係もあって、BS11で放送される今年の春アニメ及び再放送作品をいくつか見ている。

 

Re:ゼロから始まる異世界生活2nd season 第31話

     

 1st seasonは随分前に放送された作品のようだが、今回の2nd season放送前に再放送されいたものを数回見たところで予想外に面白かったことから、春頃に過去のアーカイブ(実は以前に放送された時に録画はしていて見ていない状態だった)を一気見したという作品。

 今流行の転生もので、主人公は引きこもりという絵に描いたようなお話。そして彼の得た特殊能力が「死に戻り」というバッドエンドで死んでしまう度に前に戻ってやり直し可という能力。この能力を駆使してどうしようもないバッドエンドから何とかハッピーエンドに持って行くべくあがくという話。この過程で主人公が当初の単なるイチビリなだけでどうしようもない奴(自分自身で自分のことをどうにもならないクズだと言ってる)から、段々と積極的で前向きな行動力ある男に成長していくという、今時珍しい主人公の成長を含んでいる話。最近の話は主人公が転生した途端に無双というパターンが多くて、成長を描く余地がなかったのだが、そういう点では「古い」タイプの作品とも言える。

 主人公のスバル(このネーミングセンスも若干古めに感じる)は「エミリアたん」とヒロインのエミリアにぞっこんなのだが、1st seasonではエミリアよりもレムの登場の方が多かった上に、彼女の存在感が絶大だったので、ヒロインの影が薄く「スバル、本当にエミリアで良いの?」と言いたくなるような状況だったことから、2nd seasonでは多分スバルとエミリアの関係を中心に描くために、早々にレムを眠り姫にしてしまった。まあこの辺りはストーリー展開として理解できるところ。

 なお2nd seasonではスバルが過去を克服するという過程で、スバルの今の不自然な性格や行動様式(とにかく異常にイチビリである)や引きこもりの割には実は意外とスペックは高い(運動神経は良いし、実は馬鹿でもないし、本来の対人スキルは実は引きこもりと思えないほど高い)という辺りの理由が判明するというキャラを深める回を入れているというのも今時珍しい「古い」タイプの描写。こういう数々の「古い」タイプの構成があることが、私のような人間には逆に好ましく見える理由にもなる。

 さて第31話では前話から最初に現れたっきり完全に忘れられていた異常者・エルザの再登場による血みどろ展開。恐らくここの展開でスバルはしばらくはまって四苦八苦することになると思われる(1stでの白鯨討伐に匹敵)。

 

魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ 第7話

     

 タイトルと言い、無双すぎる主人公と言い、どことなく今年に一気見した「魔法科高校の劣等生」と被るところを感じるのだが、作品同士は何の関わりもなさそう。つまりは「今時」のパターンの作品と言うことだろう。

 流行の転生ものといっても、本作は転生したのは無双の魔王様なのでニートが異世界に行くパターンとは全く異なる。とにかく主人公はひたすら無双の一言。時空さえも超越しているところがあり、「後悔と不可能は知らない」と言い切るような超越キャラ。ハッキリ言ってここまで超越していたら完全にストーリーをぶち壊しかねない危険因子だが、目下のところはその無双っぷりを発揮して、あらゆる妨害工作を力でぶち壊していく痛快ストーリーにしている。

 また主人公が魔王様と言っても悪逆非道な男ではなく、そもそも永らく続く戦乱に嫌気がさして自らの一命を賭けて魔界・人間界・精霊界・神界を分ける壁を作って争いに終止符を打ったという男。勇者に対して「魔族にもやさしさはある」と言い切っただけあって、クールな外観や行動に反して、本質はかなり優しい男という男ツンデレキャラ。このキャラ設定はどちらかと言えば腐女子狙いではという気がする。

 キャラクター的には無双の主人公アノスの周辺に、絵に描いたような内気系綾波タイプとツンデレ系アスカタイプのヒロインを配し、さらにはヒロインがストーリー進行と共にさらに増えて言っているといういかにも「今時」。その上に萌えタイプの「お母さん」まで配置するという「一体どんだけぶち込むの?」と言いたくなる設定である。さらにはクール系イケメン剣士まで配しているところから、やはり男女問わずのオタク層をターゲット層に想定している模様。

 第7話は今までいけ好かないキャラだった教師のエミリアが暴走し、アノスにかなり痛烈なお仕置きをされるという展開。主人公が無双すぎてここまでいくと爽快なのは事実。ああいうことが可能なのなら、私もトランプを貧しい黒人に生まれ変わらせたり、安倍を貧困家庭の子弟に生まれ変わらせるなどをやってみたい。当然ながら差別主義者共はもれなく被差別対象に転生である。

 なお本作はあまりに無双すぎる主人公故のストーリー上の制約がいずれツラくなってくる可能性はあり。

 

A.I.C.O.Incarnation 第5話

    

 いわゆる最近多いバイオハザード系に、ヒロインが突然に過酷な状況に放り込まれる「さらば日常」系を加えたという結構ごった煮の作品。当然のようにヒロインとイケメンキャラの恋愛展開も今後あるだろうと予想される。さらに背後には国家レベルの陰謀もチラホラと言うところなので、盛り込みすぎなのが後に破綻につながらないかが心配なところがある。

 現代でもシビアな状況の割にはあまりに脳天気に見えて現実感覚が麻痺しているのではと感じられるヒロインがいささかストーリーから浮いた存在になっているきらいはある。恐らく彼女はこの世界の鍵を握る存在として、今後に大きな人間的成長というのがあるはずなのだが、それを不自然にならないように描ききれるかが話のポイント。彼女のキャラがうまく立たなかったら、理不尽な環境の中でただ単に流れに振り回されただけの形になって締まらない話になる危険性はあり。

 第5話は戦い前の一息という展開で、本来なら各キャラクターを深めていくべき回だが、その割には意外にキャラを掘り下げていなかったのは少々不安要因ではある。後今回の鍵はモコナ(作品のマスコット)登場と言うことか。まさかこいつが後にストーリーのメインに絡むってことないだろうな。もしそうなったらほんとうにモコナだが。

 

デカダンス 第6話

    

 最近は漫画原作かラノベ作品がほとんどを占める新作アニメの中で、珍しいアニメオリジナル作品らしい

 ガドルという奇妙な生命体が跋扈するせいで地上の人類がほとんど滅んでしまい、一部の人類はデカダンスと呼ばれる移動要塞の中に生存するのみで、タンカーと呼ばれる連中がガドルと戦っていた。ヒロインはナツメは幼い時に父をガドルに殺され、自らの右腕も奪われた。タンカーとなってガドルと戦うことを目指していた彼女は、かつて一流の戦士だったカブラギからガドルとの戦い方を学び、一人の戦士を目指す・・・。

 というありがちの近未来冒険ものかと思っていたら、実はもっと複雑な構造の話だということが2話目で明かされる。実は人類は既に自ら自滅しており、残されたサイボーグ連中が娯楽のゲームとして再構築したのがデカダンスの世界という話。つまりヒロイン達の世界は一種のバーチャルリアリティーゲームのようなもの(完全にバーチャルなのではなく、有機体による実体を伴っているものだが)という多重構成世界という仕掛け。「Hello World」なんかにもあった「この世界は本当に現実の世界なのか」というところに疑問を持たせて、一体現実とは?と問いかける典型的な今時作品。閉塞感のある今の世の中に対して「こんなクソゲーのような社会、いっそのことバーチャルだったら」という意識が強くなっている今時の若者を意識してるんだろう(若者でなくても私でも「こんなクソゲーか何かの罰ゲームのような世の中なんてリセットできたら」という気はある)。

 で、カブラギは実はデカダンスの世界を外から見ながら、プレーヤーとしてログインしてバグを取り除くことを管理当局らしきところから命じられている人物。しかしナツメと交流している内に、ついにはその世界自体を否定し始めて、自ら処分されることにというのが第6話。ゲームプログラムを作っていたスタッフが、作品のキャラに入れ込みすぎて「このキャラが殺されるストーリーなんて許せるか!」と勝手にストーリーをぶち壊してしまったという状態。

 単純な近未来冒険ものにしても良かったような気がするのだが、わざわざこんな複雑な設定を入れたことを作品としてどういう意味を持たせるかがこれからのポイントになるだろう。なおこの手のタイプの作品のパターンとして、実はサイボーグ達の世界自体も何らかのバーチャルだったというオチはあり得る。

 

ノー・ガンズ・ライフ 第18話

    

 以前に第12話までが放送されており、今期はその続きというところ。どうやら主人公の乾十三自身がどういう存在であるのかというところが話の焦点になりそう。

 戦争の影響で多くの人間が拡張者(エクステンド)と呼ばれるサイボーグになっている社会を描くというサイバーパンク系作品。一昔前に流行したようなタイプである。主人公の乾十三は巨大なリボルバー型拳銃の頭部を持つ異形のエクステンドだがで、現在はいわゆるなんでも屋をしている男。クールを装っているが、本質的にはかなり浪花節なタイプ。

 まあそういう設定は結構伝統的サイバーパンク作品に載っかっていると感じられる。ストーリーもアクション中心の小気味よいテンポのもの。お約束のように巨大企業の陰謀などが絡んできて、巨大組織に付け狙われるアウトローというパターン。そういう意味で一昔前に流行した極めて伝統的タイプの作品である。作品としては「アップルシード」などあの辺りを連想させるところ。攻殻機動隊などと比較するとネットワーク関係の存在感があまり大きくない。

 第18話はintermission的で本編とは関わりの薄い印象の話だが、それでも乾の過去の片鱗はチラッと漂わせている。乾の過去についての話にベリューレンが絡んできてというのが今後の展開か。

 

再放送作品について

 新作で現在見ているのは大体上記の作品。後は再放送作品で「この素晴らしい世界に祝福を!」と「シドニアの騎士」をやっているのを数回見たら、結構面白かったので、これは過去のアーカイブで一気見。

 「この素晴らしい世界に祝福を!」は典型的な転生ものだが、主人公異常にへっぽこな駄女神が一番の特徴。転生の時に何か一つの特殊能力やアイテムを何でも持っていっていいと言われ「それならあんたが一緒に来て」と言ったという「ああっ女神さまっ」パターンなんだが、美しいメルヘンでもあったあの作品と違い、こっちの女神はベルダンディーなどとは全く違う超ヘッポコのトラブルメーカーだったという話。これに加えて爆裂魔法一発で魔力を使い果たす魔法使いと、超Mなクルセイダーというどうしようもない面々に振り回される主人公。これが今までのパターンだったら主人公は一人だけ普通の奴で可哀想な犠牲者ってのが相場(「天地無用!」バターン)だったが、本作は主人公も大概なゲス男というのが今日的。ただ引きこもりのゲス男にしては対人スキルが結構高いのが少々違和感がある(あれだけ要領の良い男は普通はひきこもりにはならない)。

     

 「シドニアの騎士」の方はかなりクセのある作画と、キャラクターが簡単にポンポン死んでいくかなりドライなストーリー展開に序盤はかなり戸惑ったが、途中から急にラブコメ展開になってしまってドッチラケた。挙げ句の果てが種族を越えたラブコメになってきて、そのドタバタぶりと一方でハードでドライな戦闘の違和感というのが強烈な作品。主人公がいきなり無双ってのはこれまた今日的だが、キャラクター的には未来少年コナンと碇シンジを突き混ぜたような今ひとつ良く分からんキャラ。作品自体はまずまずなのだが、人物設定については最後まで違和感は付きまとった。孤立生活を続けている内に、人類の性格自体がかなりねじくれたと考えないと辻褄が合わん(笑)。