徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

N響のオンデマンド無料配信でソヒエフのシェエラザード

 先月からNHKが無料配信している過去の名演は第4弾となって、リムスキー・コルサコフのシェエラザードとなったのでそれを視聴。ソヒエフは以前にトゥールーズキャピトル国立管を率いての「白鳥の湖」の非常にドラマチックな名演が記憶に残っているところ。果たしてN響からどんなサウンドを引き出すか。

www.nhkso.or.jp

 

NHK交響楽団 第1904回定期公演(2019年1月16日 サントリーホール)

指揮:トゥガン・ソヒエフ

リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」作品35

 初っ端からかなりズッシリとした重量感のある演奏であるが、全体を通してテンポはやや抑えめのゆったりとした演奏である。

 しかしそこに非常にドラマチックな表情を加える。その表情は実に多彩である。ある時は淡々とまるで行進曲のように音楽を進めるかと思えば、一転してネットリと濃厚にフレーズを歌わせたりと曲の場面場面で見せる表情は幾重にも変化する。

 概してこの曲の演奏はリムスキー・コルサコフの煌びやかなオーケストレーションに耳を奪われて、単に派手派手の賑やかではあるが空疎な馬鹿騒ぎになってしまいがちなのであるが、ソヒエフはむしろ単純に賑やかしくなるのを抑え、この曲の風景をドラマチックにありありと表現する。ドッシリと構えて落ち着きがあるが、それでいて妙に色気があり、たまにはユーモアも垣間見えるという情緒の豊かな演奏である。そのことによって、この曲の背景には「千夜一夜物語」というベースがあったのだということを改めて思い出させてくれた。

 ソヒエフのアプローチはこの曲を音楽劇として表現している。この辺りはオペラも振る指揮者という特徴なのだろうか。非常にドラマチックに情景が浮かび上がるような演奏である。それにしてもとかく上手いのだが無味無臭な演奏になりがちで「公務員オケ」と揶揄されるN響から、こんなにも色気に満ちた生命力のある音色を引き出すとは、流石にトゥガン・ソヒエフ、ただ者ではない。


 本公演の表題には「次代のオーケストラ界を担う巨匠ソヒエフの《シェエラザード》」とあったのだが、看板に偽りなしの巨匠としての風格を漂わせつつ、それでいて実に若々しい演奏でもあった。とにかくソヒエフの表現には圧倒されるところであった。