微妙な空気が満ち満ちていた今回
信長の命を受けて京の状況を調べるために潜入する光秀。それにしても彼って毎回こんな任務ばかりなんだが、侍と言うよりも隠密だな。
そこでは木下藤吉郎と再会。藤吉郎は相変わらずの調子良さだが、どうもその裏に油断できない抜け目のなさが漂う曲者。初めて会った時から、光秀の方は藤吉郎に胡散臭さを感じて完全には心を許していない微妙な空気がこの二人の間には流れている。そもそも光秀は最初から武士の出である程度の教養があるが、これに対して藤吉郎は完全な成り上がりなので肌が合わないということもあるが、後の微妙な関係を反映させているんだろう。
そして数年ぶりに再会したお駒との間にも微妙な空気が漂う。それは完全に庶民目線で「戦はいかなる理由があろうとも嫌」というお駒に対して、「大義のためなら少々の犠牲も仕方ない」と支配者目線で考え始めている光秀との考えの違い。最初はかなり庶民に近い目線で見ていた光秀が段々変わりつつあることも匂わせている。この辺りも後の伏線になりそうな気配がある。
そしてとにかく大者と縁がありすぎるお駒は、堺のフィクサー・今井宗久とも縁が。そして光秀を仲介することに。宗久の言っていることは「ぶっちゃけ、商売の保証がされるなら三好でも織田でもどっちでも良い。ついでに京で戦はしないでね。」って話。バーサーカー勝家辺りはともかく、光秀としてもいくさはしなくて良いならしないに越したことがないと考えてはいる。
で、将軍の意見も聞くといった信長だが、ろくに状況も考えずに「そりゃ良い考え」とホイホイ無防備な上洛に賛成する将軍に、本音で「やっぱりこいつは使えねぇ」と考えている信長との間に漂う微妙な空気。脳天気な義昭はそれには全く気づいていないようだが。この次に光秀に信長が「将軍に仕えるのか自分に仕えるのか今決めろ」と迫ったのは「お前、いつまであんなアホに従うつもりなんだ」という意味なんだろう。ここでも微妙な空気が漂っていたが、少なくともこの時点で信長は光秀を使えると考えているので、切る気は毛頭ない。
まあ何だかんだ言いながらも信長は非武装で上洛したようですが、これについては将軍の意向を汲んだという形にしながら、その実は三好が逃げたから戦う必要がなくなったってだけ。もし三好が京で徹底抗戦するつもりだったら、信長は躊躇わずに京を焼きはらったでしょうね。光秀はひとまず安堵ってところだが、既に両者の思惑の微妙なズレのようなものは現れつつあるな。
と言うわけで、今回のキーワードは「微妙な空気」。そういう細かい各人の思惑のズレのようなものがなかなか上手く現されていたと感じた今回。今後、この微妙な空気がドンドンと拡大し、まずは将軍義昭と信長の対立、さらには最終的には本能寺の変にまでつながっていくんだろう。