徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

ゲルギエフ指揮ミュンヘンフィルのコンサートをネット配信で聞く

ヨーロッパのコロナの状況の悪化ぶりが分かる

 Twitter情報から、藤田真央がピアノでゲルギエフが指揮したコンサートの無料ライブ配信が12/20のAM3時まで行われているとの情報が入ったので、慌てて聞きに行くことにした。プログラムはベートーベンのピアノ協奏曲第4番とブラームスの交響曲第1番。どうやら今後も別プログラムを配信するつもりのようである。

www.mphil.de

 いつの演奏かというのが定かではないのだが、どうやら無人のホールで収録したもののよう。ドイツではコロナの感染拡大の悪化を受けてベルリンフィルデジタルコンサートホールも再び無観客配信に戻ってしまった模様であるが、恐らくミュンヘンフィルもなかなかまともにコンサートをするという状況にないようである。何やら世間の状況が今年の4月頃の状態に逆戻りしつつあるのを感じる。

 かく言う日本も特に大阪、東京などでの感染爆発の状況はひどいものがあり、コンサートの開催については先頃国により基準が緩和されたものの、果たしてこれからどうなるかは極めて不透明。また開催されたとしても行くかどうかはまた難しい判断がある。

 実は私も来週水曜日の読響の第九のチケットを所持しているのであるが、果たしてこの状況で大阪を訪問してフェスティバルホールへ行くのが大丈夫かについては甚だ疑問がある(読響の公演は特に人気が高くてホール内の密集度が高いし)。私ももう既に若くはない上に持病ありなので余裕で高危険群である。そういうことを考慮して、実は既に先週開催された関西フィルの第九は出かけることを断念している。大阪の感染状況が後3日で急激に改善する可能性はまずないし(もしそんなことが起これば、今度はとうとうデータ捏造が始まったかと疑う必要がある)、それらを考えると今回は残念ながらパスせざるを得ないだろう。正直なところまだ迷っているが、やはり第九に命は賭けられないか。

 

ミュンヘンフィルライブ配信

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
福田真央(ピアノ)

ベートーベン ピアノ協奏曲第4番
ブラームス 交響曲第1番

 福田のピアノは流石に若さに溢れるというか、とにかくロマンティックで甘い。元々第5番と違って甘美なところのある第4番であるが、特に第1楽章などはメロメロの甘さがある。総じてゆったりと徹底的に甘美に謳わせる演奏である。

 ゲルギエフ指揮のミュンヘンフィルもその福田の演奏に合わせてややゆっくり目の演奏を行っている。もっともオケの音色自体はややクールで福田のようなメロドラマというのとはやや趣が違う。むしろそれが全体としてのバランスを良くしているか。

 後半のブラームスはいきなりかなりドッシリとした導入部から始まる。この決して急かない演奏はいわゆるゲルギエフ節か。ドッシリと構えはするものの、決して過度に統制はせずに結構豪快に鳴らさせるところもいわゆるゲルギー節。緊張感が前面に出ずにむしろ音色の美しさの方が前面に出てくる。太いが重くはない演奏である。下手したら「ヌルい」演奏になりかねなくはあるのだが、ギリギリその一歩手前というところか。もっとも私個人としてはこの曲はもっと緊張感がビリビリと漲るような演奏が好みではある。

 第2楽章以降も基本的に同スタンス。とにかく音色の美しさが正面に出てくる。第2楽章など実に楽園的である。第3楽章も似た雰囲気。そして最終楽章はやや重めに始まるのだが、やはり決して完全に重くはならないというのは第1楽章と同様である。そしてベートーベンの第九と似ていることがよく指摘されるメインフレーズの登場であるが、あまりに美しく柔らかく奏でられるので余計に第九のように聞こえる。そのままドッシリと最後までというところか。

 まあ総じて言えるのは「炸裂するゲルギー節」というところか。これが好き嫌いの分かれるところではあるのだが。