広島でのイベントのライブ配信
Twitter情報から広響の第九の公演が配信されているとの話が入ってきたので、早速それを見に行くことにした。公開期間は1週間とのこと。
なおこれは毎年広響が行っているイベント的なもので、広島サンプラザホールに市民合唱団を加えて1000人以上の合唱団で第九を歌うというもので、広響が演奏をしているようである。ちょうど関西の大阪城ホールで行われる1万人の第九と似た主旨のようである。広島ではこのイベントを30年以上行っているらしい。
もっとも今年はこの状況で、広島もコロナで警戒警報が出ている最中、さすがに千人以上をホールに押し込んで合唱というわけにも行かなかったので、合唱団を大幅に絞り込んで(40人ほど)、皆さんはライブ配信を聴きながら合唱してくださいということらしい。
無観客のガランとした一種異様な雰囲気のあるホール内での演奏。正直なところこの環境ではオケもかなりやりにくいだろうということは感じられる。
サタケ第九ひろしまオンライン演奏会2020
指揮:下野竜也
広島交響楽団
ベートーヴェン 交響曲第九番
下野の指揮はややテンポ良くグイグイと前進力の強いもの。やはりイベント的性格が強いことも考えてか、過度に濃い解釈を加えていないような雰囲気がある。
音楽はテンポ良く進んでいくのであるが、やはりこの特異な環境での演奏はオケとしてもやりにくさはあるだろう。どうも広響のアンサンブルには残念ながら雑さが垣間見られる。特にやや早めに進行する第一楽章なんかでは、演奏が団子になってしまってグチャグチャする場面も多々。広響は元々元気はあるが、それが有り余ってやや雑さのあるオケではあるのだが、その悪しき部分がやや出たような印象を受ける。
第二楽章、第三楽章と過度には溺れず結構淡々と音楽は進む。オケの演奏自体は第一楽章よりはまとまりが良くなってきている。
第四楽章であるが、かなり広い上にデッドなホールの特性もあってソリストはやや遠め、またさすがに40人編成の合唱団では拡大編成の広響と音量的バランスが取れない。多分音声さんはかなり必死で頑張っているだろうと推測できるのだが、それでもどうしても合唱が背後に引いてしまってオケにかき消されるのはどうしようもない。また合唱団もこの状態では回りと合わせるのも大変だろう(素人だったら音程さえ取れない可能性が高い)。ソロ歌手の集まりという印象で合唱団としてのまとまりにどうしても欠ける。
コロナに負けず例年のイベントを何が何でも実行したその意気や良しであるが、やっぱりソーシャルディスタンスを守っての第九の演奏というのはかなり困難であるということも痛感させられたのである。
そしてコンサートの最後は蛍の光でいかにも年末感満載で閉じられたのである。なんか除夜の鐘が聞こえてくるような気がした(笑)。
しかしこうして見ていると、やっぱり最早第九は日本の年末行事の一つなんだなということを感じさせられる。その第九がまさかこんな展開で危機に瀕するとは予想もしてなかった。