徒然草枕

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ヤルヴィ指揮のパリ管で幻想交響曲を聴く

 先日パリ管のHPでマティアフ指揮のR.シュトラウスを聞いたが、本日には早速昨日録音されたヤルヴィによる幻想交響曲がアップされているようなのでそれを視聴する。

live.philharmoniedeparis.fr

 

パリ管ライブ配信((2021.1.27 フィラルモニ・ド・パリ)

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:ベアトリーチェ・ラナ

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
ベルリオーズ 幻想交響曲

 ラナのピアノはゴージャスと言うべきだろうか。テクニックを正面に出すタイプと言うよりも派手な演奏。曲調とバックのパリ管のカラーも相まって豪華絢爛な印象の演奏である。かなり好きに弾いているというように聞こえるのであるが、ところどころ指がつかえたかのような妙な溜が出るのが耳障りな時もある。よく聞くと音を弾き飛ばしていたりなど結構雑な印象も受ける。第三楽章などは、後でパーヴォは結構ゆったり構えているのに、ピアノが一人突っ走っている印象がある。

 幻想交響曲については冒頭からややゆっくり目のテンポでの端正な演奏。ただしあまりにクールすぎて、この曲につきまとう狂気のようなものは垣間見えない。続く第二、三楽章もゆっくり目で美しく奏でる。しかしただ単に美しいだけの音楽にも聞こえる。第四楽章は有名な断頭台への行進曲であるが、これも特に屈託のない堂々とした行進曲になっている。そして奇々怪々の最終楽章。冒頭からゆっくりとドッシリ構えた演奏ではあるのだが、そこにおどろおどろしさは全く感じられない。最後の悪霊達の乱痴気騒ぎさえも、統制の取れた大宴会という印象。

 総じて言えるのは妙に「健康的な」幻想交響曲であるということ。パーヴォの解釈は極めてあっさりとしている。この曲は阿片中毒患者の妄想という一種の標題性を持った音楽であり、当然のようにそこには狂気を孕んでいるのであるが、そういう要素をスッパリと切り捨ててまるで絶対音楽であるかのように演奏したという印象であろうか。確かにそこには美しくて明快な音楽が存在するのではあるが、果たしてそれが本当に幻想交響曲であるかと言えばいささか疑問がある。

 クールでクレバーというのがパーヴォの演奏の一つの特徴ではあるが、あまりに冷静すぎるという印象を受けて違和感が強かった。この曲は悪趣味寸前のグロテスクさが出ても良いと思うのだが。