徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

久しぶり岡山で「雪舟と玉堂展」鑑賞後に岡山フィルの定期演奏会へ

久しぶりに岡山に出向くことにする

 昨日はシン・エヴァを見に映画館に行ったところだが、今日は美術展とコンサートのために岡山まで遠征である。昼前から高速を突っ走ることになる。

 岡山まではそう遠くないが、例によって岡山市街は車の多さと運転マナーの悪さで壮絶に運転しにくい。とにかく岡山にはローカル運転ルールが多いが、その際たるものはウインカーを使わないである。これについては「岡山県人はケチなのでウインカーの球が消耗するのを嫌う」との揶揄や、「岡山で車を買うとウインカーはディーラーオプションになっている」という都市伝説まである。

 岡山の走りにくさは運転マナーの問題だけでなく、右左折車線のわかりにくさなどにも起因している。とにかく道を知らないよそ者ドライバーは途中で車線変更なんかの必要があるのだが、そうなった時に「ウインカーを出して車線変更しようとする車はブロックする」という岡山ドライバーの習性で苦しめられることになるのである。

 岡山市街を抜けると今日の最初の目的地に到着する。まずは県立美術館で開催されている展覧会を見学。最終日ということもあってかかなり観客は多い。

 

「雪舟と玉堂-ふたりの里帰り」岡山県立美術館で3/14で終了

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岡山県立美術館

 日本画の大家であり独自の水墨画で知られる雪舟と、同じく日本画の大家である玉堂・・・と言っても単に玉堂だと該当が二人いるが、これは浦上玉堂の方である。直接的に両者に関わりがあるわけではないが、共に岡山出身の画家と言うことで括ったようである。

 雪舟に関しては初期の頃の作品から紹介している。最初の頃は雪舟の特徴とされるあのシャープな描線が見られない典型的な水墨画表現を多用しており、朝鮮や中国の絵画に学んでいたようである。雪舟が独自の展開を始めるのは帰国して山口で活躍しだしてから。あの独特のゴツゴツした印象の岩や木の表現が始まる。

 本展の目玉は毛利博物館が所蔵する国宝の四季山水図巻。延々と繰り広げられる風景を絵巻に記した超大作であるが、岩山や建物の表現などにいかにも雪舟らしさが見られる逸品である。

 一方の玉堂はというと雪舟とは全く異なる画風で、かなり柔らかめの線で風景を伸び伸びと描いている。玉堂は七弦琴の演奏家として知られており、玉堂的には絵画でなくこちらが本職という認識だったという。しかし彼の絵画が単なる素人の手習いレベルでないのは明らかである。しかも最初は他の文人画家(池大雅など)の影響が見られていたのが、段々と独自の境地を開拓している。

 併せて彼の息子の春琴と秋琴の作品も展示されているのだが、春琴は父に倣ったような山水画だけでなく、精緻な花鳥画なども描いているのが興味深いところ。山水画と花鳥画で同じ画家と思えないほどタッチが違うところが、それぞれ学んだ先が違うんだろうと感じさせる。秋琴については琴の演奏の方が本業だったようだが、やはり絵画の方も父と同様に素人の手習いのレベルではない。

 

とりあえず商店街で昼食を取ることに

 美術館の見学を終えると車をタイムズ駐車場に移して昼食のために商店街を散策する。

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岡山の商店街を散策

 商店街の人通りはまずまずあると言うところか。昼食を取るための店を探して南下したところ、「うどん およべ」なる店を見つけたので入店。地下のジャズのかかるカフェのような洒落た空間でうどんを食べるという変わった店である。「鴨汁つけうどん(冷)」を注文。

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昼食はこの店にする

 ここは2玉まで無料で増量できるそうなので、1.5玉を頼んだのだが、出て来たうどんを見た時に「2玉にしとけば良かった」と思った。ボリュームはそうあるわけではない。

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ボリュームはそうあるわけでない

 ただ鴨汁にはそれなりに鴨肉も入っているし、うどんも讃岐系の腰のあるもので悪くない。これで900円というのは安くはないが決してボッタクリでもない。まあ今後も使っても良いかという印象。

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鴨肉はそれなりに入っている

 

岡山シンフォニーホールの3階席は登るのがしんどい

 遅めの昼食を終えると岡山シンフォニーホールへと向かう。今回は私はチケット代をケチったので座席は3階の天井桟敷。ステージに対する見通しは良いのだが、ここは上階までエスカレータもエレベータもないという今時のバリアフリーに真っ向から対立する挑戦的建築なので、3階まで登るのに難儀する(情けないことに途中で息切れした)。

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岡山シンフォニーホール

 3階席はガラガラだった。チケットぴあでチケットを購入したときには席を選ぶ余地があまりなかったのだが・・・。ここはチケット販売方法を少し考えた方が良さそう。地元民が地元のチケット売り場で購入することしか基本的に考えていない様子がある。岡山フィルは近畿圏までファン層を拡大する狙いはないのか?

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3階席からステージへの見通しは良いが

 岡山フィルは10-8-6-6-4の10型編成。ホールの容積に比べるといささかオケのサイズが小さめという感は否定できない。

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団 第67回定期演奏会

指揮/熊倉 優
ヴァイオリン/竹澤恭子

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
ベートーヴェン/交響曲 第3番「英雄」

 「魔弾の射手」については、どうも今ひとつ締まりのない演奏である。冒頭からホルンがかなり危なげだったが、それだけでなく弦楽陣のまとまりが今ひとつ悪い。また熊倉の指揮も今ひとつ統制が緩く、メリハリがパシッとつかない。そのせいで全体がどことなくグシャグシャと聞こえ、何となく最後まで盛り上がりに欠ける演奏となった。

 ブルッフは竹澤のヴァイオリンは音色が美しく、力強さもありなかなかの演奏。オケの方もその演奏に引っ張られる形でまとまった。もっとも管楽器の危なっかしさは相変わらずである。しかしソリストの頑張りでそれは破綻にはなっていない。

 最後の「英雄」はオケが今までで一番冴えた音色を聞かせた。テンポ良く進む第一楽章は弦のまとまりも良く管にも不安定さはあっても大きな破綻はない。ただ第二楽章以降は少々弛緩したのは否定できない。何やらメリハリのないままダラダラと続いた印象の葬送行進曲は聴いていていささかしんどい。そのせいで立ち上がりは悪くなかったのに、終わってみたら今ひとつパッとしない演奏となってしまった。

 最大の問題はオケの技倆よりもむしろ指揮の熊倉に今ひとつ演奏の意図が見えなかったことか。指揮ぶりなどには若い溌剌さが現れているのだが、そこから出てくる音には今ひとつ若い躍動感が感じられずに無難に徹した印象。何となくオケとの練り込みも十分でなかったのではというように感じられたのであるが。