スピーカー新セッティングのテストも兼ねての視聴
先日、PC用のスピーカーセッティングを見直したところであるが、早速その真価を確認する意味も込めて、パリ管弦楽団のライブ配信を視聴することにした。
スピーカーの間隔を広げた効果はやはり大きく、以前は中央から団子のような印象だった音色が自然に両側に広がる。おかげでブルックナーのようなスケールの大きな曲の場合にはその雄大さを感じることが出来る。
バリ管弦楽団ライブ配信(2021.3.25フィルハーモニドパリ)
指揮:クラウス・マケラ
ピアノ:キリル・ゲルシュタイン
パリ管弦楽団
ラヴェル 「亡き王女のためのパヴァーヌ」
バルトーク ピアノ協奏曲第3番
ブルックナー 交響曲第9番
最初の曲はタイトルからは、亡くなった王女を追悼する葬送曲のように思われるが、実はそうではなくて、「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」という意味だそうな。実際に早々の重苦しさは皆無で、確かに小さな王女が軽やかに踊るような可愛らしさを感じる美しい曲である。こういう曲になるとパリ管の音色が冴える。
次のバルトークもなかなかに華麗な曲である。ゲルシュタインのピアノソロもなかなかに軽やか。パリ管の鮮やかな音色と相まって妙に爽やかなバルトークである。
最後はブルックナーの未完の交響曲なのだが、マケラはやや遅めのテンポでゆったりとした表現。しかしパリ管にかかるとそれは重厚さなどではなく、華やかな美しさになる。とかく重たくなりがちのブルックナーであるのだが、パリ管にかかると重さの感じられない軽やかさを秘めた曲となっている。かと言っても決して軽薄なわけではない。とにかく美しさが表に出てくるのである。
後の楽章でも基本的に同じスタンス。悪魔的な要素を持つ第二楽章もおどろおどろしさよりはリズミカルな躍動感の方が正面に出てくる。そして第三楽章は煌びやかさも秘めた美しい演奏。
オケの音色自体は分厚いのであるが、それが重厚さという印象にならないのがいかにもパリ管のパリ管たる所以。マケラの指揮はあまり強烈な個性を感じさせるものではなかったが、パリ管の音色を最大限魅力的に引き出すものではあった。
ブルックナーでもここまで変わるんだなという印象。ブロムシュテットのバンベルクなんかとは対照的な演奏である。あちらが重厚に音を重ねてくるとしたら、こちらは軽やかにメロディを奏でる。どっちがブルックナーの正解なのかは好みによるところか。私は結構こういう演奏は好きである。