徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

お籠もりを余儀なくされる週末はやけくそで北国のオケを楽しむ

この週末もコンサートのキャンセルを余儀なくされることに

 先週京都市響のコンサートをキャンセルしたところであるが、その後も大阪の状況は吉村の無策が祟って悪化の一方。もう既に大阪と東京は市内をゾンビならぬコロナ感染者がウロウロしているバイオハザード状態と考えた方が良さそうである。実は今日は4オケのチケットを確保していたのだが、これではとてもではないが大阪にのこのこと出かけていくというわけにはいかない。というわけで経済的損失と精神的喪失でここの週末は完全うちひしがれている状況。

 こんな時はネットでライブ配信を聴くしかない。というわけで北国のオケ2つのライブを聴くことにした。まずはスウェーデンの名門、エーテボリ交響楽団。

 

エーテボリ交響楽団ライブ配信

www.gso.se

指揮:ヨハネス・グスタフソン

メンデルスゾーン 交響曲第3番

 指揮者のグスタフソンについては私は初めて聞く名であるが、スウェーデン出身で北欧地域を中心に活躍している中堅指揮者のようである。指揮棒を使わずに時折グッと煽るような指揮ぶりが特徴的である。

 この曲はメンデルスゾーンがスコットランド旅行した際に着想して作曲した曲であるが、音楽の風景画家ともいわれるメンデルスゾーンだけあって、北国スコットランドの風景を映すかのような作品である。この曲をスウェーデンのオケとグスタフソンが手がけるとその北国要素があからさまに濃くなる。北国らしい荒涼とした風景の中に情緒が垣間見える演奏となっている。

 グスタフソンの指揮は確実にリズムを刻んでくるかと思えば、時々グッと溜を作ってみたりなど細かい仕掛けが結構ある。特に第一楽章でその仕掛けがあちこちで炸裂して、なかなかに情緒を盛り上げていた。北欧的な柔らかいサウンドを出すエーテボリ響との相互作用もあってなかなかに情感深いメンデルスゾーンである。

 

流石にロシア語は読めません・・・

 さて次はロシアの名門サンクトペテルブルクフィルのライブを聴きたいと思う。どうやらデュトワ指揮の演奏会のビデオが公開されているようである。デュトワは昨年大フィルに登場する予定だったのがコロナでキャンセルになり、今年に再度登場の予定もやはりコロナでキャンセルという非常に悲しいことになっているので、ちょうど良いところ。

 ところでこの楽団のHPでいつも戸惑うのはロシア語の表記。地の文はChromeの翻訳機能で読めるのだが、問題は演奏会の曲名。これがいつもビデオにロシア語で出るだけなので翻訳が出来ない。それもフランス語やドイツ語なら分からないなりにも何となく読めるので類推できるのだが、ロシア語となると英語とは似ても似つかない独自の文字を使用しているので読むことさえ出来ない(Стравинскийでストラヴィンスキーなんて分かるか!)。しかもアルファベットと異なるのでGoogle翻訳にかけようにも文字入力も出来ないということで毎回苦労させられている。

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ロシア語のスクリーンキーボードを出す

 今回は思いつく日本語をロシア語変換して比較するやり方では完全に行き詰まったので、結局はロシア語キーボードをスクリーンキーボードで設定してGoogle翻訳に入力するという手間をかけることに。

www.tokyorus.ac.jp

設定方法はこちらを参考にした

 これで作曲家名などは読むことが出来たが、問題は曲名。「パガニーニの主題による変奏曲」などはすぐに分かったが、問題は一曲目のリムスキー・コルサコフ。タイトルをそのまま入力したら「軽いお祝い」と出てくるが、このタイトルに該当する曲名はない。そこでロシア語検索でタイトル名を入力したところ「聖なる休日」という翻訳に行き当たった。そこでキリスト教の何かの行事に関係ありそうと言うことで、ようやく「ロシアの復活祭」に至ったという次第。何しろ原題にはロシアのロの字もないので「こんなの分かるか!」と叫びたくなった。ちなみに「春の祭典」はタイトルの前半を入れたところで「春」と出たのでそれで推測がついたが、何とタイトルを全部入れたらGoogle先生の翻訳は「聖なる泉」である。なんのこっちゃ。まあこの作品だったら曲を聴いたらタイトルは分かるが。

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お願いGoogle先生!!

 

サンクトペテルブルクフィルライブ配信

www.philharmonia.spb.ru

指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:アレクサンドル・ギンジン

リムスキー・コルサコフ 序曲「ロシアの復活祭」
ラフマニノフ パガニーニの主題による協奏曲
ストラヴィンスキー 「春の祭典」

 1曲目のロシアの復活祭は華々しい曲であるが、単に騒々しいだけにならずにしっかりと美しさまで聴かせるのはさすがにデュトワらしきところ。やはりこのオッサンはただのエロ親父ではない。

 2曲目のラフマニノフはギンジンの硬軟自在のテクニックが光る。ガツンガツンと力強く演奏するかと思えば、一転して雰囲気タップリに奏でてくる。いかついオッサンがタップリとロマンティックに謳ってくるのである。表現の幅がなかなかに広い。

 3曲目の春の祭典はいわずとしれたワイルドで派手な曲である。ただ細かいところまで目が届くデュトワの指揮にかかると、決して単なる空騒ぎにはならない。かなり細かいところまでバランスを考えて鳴らさせているのは良く分かる。元々サンクトペテルブルクフィルはバリバリ鳴らすことしか能がないオケとは違うが、デュトワがさらに相当に細かい制御をかけているようである。こんな曲でも粗にして野だが卑にならずという演奏をしてくれる。センスの良さがキラリと光るのはデュトワらしいところ。


 さすがに単なるエロ親父ではないデュトワである。ちなみに5月の来日が実現していたら大フィルで演奏される予定だったのが「春の祭典」である。是非ともこれをライブで聴きたかったな。指揮者が代わるとまるで別のオケになる大フィルがどのような音色を出すかが興味深かったところ。なお変更になった井上道義によるマーラーの交響曲第7番も非常に興味があるところだが、今の状況だったら5月の定期演奏会に出かけることも難しそうであることがツラい。