徒然草枕

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ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団でパーヴォの「ライン」を

北国オケライブ配信連チャンの次はヨーロッパの名門オケ

 北国のオケのハシゴをした後は、昨晩に生配信をされたというパーヴォ指揮のロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団のライブの録画を視聴することにする。なお聴くのにはログインの必要があるが、無料で登録が出来るのでメールアドレスとパスワードを登録するだけである。英語力には極めて不自由している私でも、Chrome翻訳のおかげで問題なく登録できたので、英語慣れしている方なら何の問題も無いだろう。

www.concertgebouworkest.nl

 

ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団ライブ配信(2021.4.16収録)

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:ヴィキングル・オラフソン

モーツァルト ピアノ協奏曲第24番
シューマン 交響曲第3番「ライン」

 ヴィキングル・オラフソンはアイスランド生まれのピアニストで、いわゆる「クラシック界に新たな風を吹き込むぞ」というタイプの尖った若手の一人であるようである。

 その辺りは今回の演奏にも滲んでおり、どちらか言えば軽妙さを正面に出す伝統的なモーツァルト演奏ではなく、初っ端からメロメロのメロドラマ仕立てである。元々開始早々からモーツァルトには珍しくやや哀感を帯びた雰囲気のあるこの曲を、弱音でタップリと哀愁を湛えた演奏を行う。その後もいわゆるモーツァルトらしい軽妙さは全くなく、どちらかと言えばやや重めの演奏である。

 さらにいわゆる細かいテンポ揺らしなどの細工も非常に多い。特にゆったりとメロディを謳わせる第2楽章でこの傾向が顕著。かなり雄弁な弾き語りで、悪趣味寸前の実に多くを語る演奏だ。快速な軽妙さが前面に出るのが通常の最終楽章でもかなりエレガントでニュアンスに富んだ演奏であり、若さの溢れた表現意欲に満ちた演奏である。パーヴォの伴奏も彼の若さを背後から手堅くサポートしたという印象。ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団のしっとりとした音色と高い技術力もそれに貢献している。

 非常に表現意欲に満ちたピアニストであり、この後に演奏されたアンコール(恥ずかしながら私には曲名は分からない)も実に感情のこもった訴えかけてくるような趣深い演奏であった。

 

 さて後半のラインであるが、拍手が鳴り止むか鳴り止まないかというタイミングでいきなり始まるのは相変わらずのパーヴォ流。初っ端から前進力に富んでグイグイと行くというパーヴォの毎度の演奏である。元々の曲がかなりロマンティックな曲である上に、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団の音色も元よりニュアンスに富んだものなので、そこに必要以上に着色はしないという一種淡々とした印象を受ける演奏はパーヴォらしいところではある。パーヴォもN響のような元よりあっさりとした演奏になりがちなオケとはそこは変えてくるんだろう。

 第二楽章、第三楽章となるとゆったり目のテンポで謳わせるのであるが、かなり抑えた表現になっているのでいささか表情に乏しいものに感じられた節がある。最終楽章になると曲想もあってもっと活力が出るのだが、パーヴォのクレバーでクールな演奏が祟ってやや印象が薄くなった感も否めない。

 パーヴォの演奏は決して無表情なわけではないのであるが、特に近年はクレバーさが前面に出ることが多くなったので、私のようなやや下品な趣味の男にはいささかクールさが過ぎるように感じられることがあるのであるが、今回もそういう感をやや受けた。特に前半のヴィキングル・オラフソンが表情過多気味だっただけに、その落差の影響もあるか。