徒然草枕

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パリ室内管弦楽団とロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団の個性的な演奏を聴く

 お籠もりを余儀なくされる週末は例によってネット配信で音楽を楽しむぐらいしか仕方ない。今回は新たにラインナップに加わったパリ管のHPで公開されているライブを試聴することにした。

 

パリ管弦楽団ライブ(2021.1.30)

live.philharmoniedeparis.fr

指揮、ピアノ:ラルス・フォークト

シューマン ピアノ協奏曲イ短調
      交響曲第2番

 一曲目はフォークトの弾き振りによるウルトラセブン。この曲はメロメロのメロドラマにする演奏も少なくないのだが、フォークトの演奏は淡々とした軽快なものである。かといって情緒が薄いというわけでない。かなり独特なリズムによる個性の極めて強い演奏である。いわゆる単純なメロドラマではない独自のリズム表現に基づいての演奏。細かいテンポ変動も多く、一言で言うとまるでジャズのようなところのある演奏。

 一筋縄でいかないのは指揮に専念しての交響曲第2番でも同じ。ピアノ演奏ほどの露骨な揺らしは減るものの、それでもかなり振幅のある演奏である。この曲特有の生命感はかなりあるのであるが、どことなくシニカルな響きに聞こえるのはいかなることだろうか。全体的にアップテンポ気味でかっ飛ばすので、あれよあれよと言う内にこちらは翻弄されているという印象を受ける。そしてノリノリのままラストになだれ込んでしまった。

 全体的に変動の激しいメリハリの強い演奏なのであるが、とにかくクセが強いの一言に尽きる。好き嫌いの明確に分かれそうな演奏である。私的にはちょっと胃もたれがしたという印象。


 なかなかにアクの強い演奏であった。次はロイヤルコンセルトヘボウのライブ配信を聴くことにする。指揮者は何やらコロナ以降に急に名前をよく聞くようになったフィンランドの新鋭クラウス・マケラ。

 

ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団ライブ配信(2021.5.14)

www.concertgebouworkest.nl

指揮:クラウス・マケラ

メシアン 「忘れられた捧げ物」
ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

 1曲目のメシアンの曲は初期作品になるという。そのためか技法的にはあまり尖ったところがなく、普通に普通の曲として聞ける。なかなかに美しい部分などもあり、メシアンと言えばトゥランガリラのわけの分からないイメージしかない私にとっては、なかなかに意外な感を受ける。

 後半はショスタコーヴィチの交響曲だが、マケラの演奏はやや落とし目のテンポでゆったりと進めるので、第1楽章などはヒステリックな部分が影を潜めて、いかにも混沌とした曲に聞こえる。第2楽章以降も似たようなもので、ひたすら混沌の中から時折美しい音楽が浮上してきたりする独特な解釈。私のこの曲に対するイメージとやや異なる。

 私はショスタコーヴィチの交響曲には狂乱の要素が強いと感じていたので、どうもその辺りが今ひとつピンとこなかった感がある。これはこれて意欲的な解釈なのであろうが。

 

 と言うわけで、今回のライブ配信は共に私自身の好みとはややズレる個性の強いものであったので、今ひとつしっくりこなかったというところか。まあ若手の新鋭指揮者などを中心に、様々な解釈が登場するのはこの世界を活性化する意味で興味深くはあるが。