徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

「アンコール都響」でインバルの大地の歌

またもお籠もり週末である

 この週末も例によってコロナ感染状況が全く好転しない関西においては、お籠もり週末を強制されている状況である。私が行った最後のコンサートが3/14の岡山フィルであるから、これで2ヶ月半のお籠もりを余儀なくされていることになる。まあ元々私はインドア系(と言っても城巡り始めてからはアウトドア系に転じていたが)なので籠もるなら籠もるで過ごしようもあるが、連日飲み会といったパーティーピーポーには既にストレスで錯乱してやけになりかかっている者もいるとか。ワクチンが中途半端に広がった時期がむしろ危ないかもしれない。もっとも日本では一般にワクチン接種が始まるのはかなり先の模様だが。

 さてこういうお籠もりの日は例によってネット配信である。今回は趣向を少し変えてある。ところで音楽の方は何とかライブ配信で凌いでいるが、お籠もりが続いてから美術館と特に山城巡りをしていないのが精神的にキツい。またそのことが覿面に体力低下に結びついており、私の寿命をさらに縮めているのではと気になるところである。かといって無目的に黙々とトレーニングということが出来るタイプの人間でないので(面倒臭いこともあるが、時間が勿体ない)

 ところで私もTOKYOMX2で「アンコール都響」なる番組が放送されているということは以前から知っていた(Twitter情報)。「読響プレアミ」のような番組であるが、読響が1時間枠でカットしまくりなのに対し、こちらの番組はノーカットを売りにしている模様。ただTOKYOMX2とのことで、関西在住の私には無関係と無視していたのだが、どうやらエムキャスによるネット配信で無料で聴くことが出来るらしいということが分かった。そこで今回聴いてみることにした。プログラムはインバル指揮で「大地の歌」である。

mcas.jp

 公演自体は2017年7月の東京芸術劇場での都響スペシャルのものらしい。なお放送は月に1回とのことで、次回は6/5(やけに近いな)の15時から小泉和裕によるベートーベンの交響曲第4番とブラームスの交響曲第3番とのこと。そちらも興味あるところではある。

 

都響スペシャル(2017年7月)

指揮/エリアフ・インバル
コントラルト/アンナ・ラーション
テノール/ダニエル・キルヒ

マーラー:大地の歌

 インバルによるマーラーと言うことで、例によって極端な誇張のない端正なものではあるが、無機質にはならない演奏である。この曲は陰々滅々の曲にもなりがちなのであるが、インバルの演奏はその暗黒面にまでは陥らずに、憂愁を秘めた美しさというレベルにとどめるバランスである。都響の音色はやや色気が不足気味ではあるものの美しさは十二分に持っている。

 テノールのキルヒはやや抑え目に聞こえてしまった。「春に酔える者」なんてもう少し享楽的に行っても良いように思えたのであるが、どことなく抑制気味に聞こえる。ややその辺りが印象が薄く聞こえる。元々この曲はライブで演奏するとどうしてもテノールがオケに負けてしまうというバランスの悪さがあることは知られており、それを考えるとキルヒはかなり健闘していたのは間違いないのだが、それでもやはり強烈な印象は残せていない。

 一方のラーションはまずまずの表現力である。声量があって表現自体に力強さがある。陰々滅々に落ちてはしまわないインバルの表現ともマッチして、特に最終楽章がなかなかに圧巻である。

 正直なところ私はマーラーの交響曲の中でこの曲が苦手である。というのもひたすら長大な最終楽章でどうしても緊張感が切れてしまうため。しかし本演奏は決して焦らないテンポでありながら、緊張感と美しさを最後まで保っていた。これは実に見事。さすがにマーラーでは定評のあるインバルである。虚仮威しのない真っ向勝負である。それに応えた都響も見事と言うべきだろう。