徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

ブロムシュテット指揮のベルリンフィルをデジタルコンサートで

緊急事態宣言解除と言われても・・・

 さて無理矢理にコロナ沈静化に向かったということにされ、オリンピック実施のために東京その他の緊急事態宣言は無理矢理に解除となった。これともと共に大阪でもコンサートの開催が行われることになるだろうが、果たして行って良いものであろうかという判断が悩ましいところである。私も高危険群に属し、実際に感染したら多分一発であろうことを考えると頭が痛い。もっとも頑なに生に固執しないといけないほど良い人生を送ってはいないので、正直なところ転生して無双でウハウハな来世が存在するのなら、こんな何かの罰ゲームのような日常からおさらばしても良いが(笑)。

 例によってこの週末もお籠もりを余儀なくされているわけであるが、今回は先週に実施されたブロムシュテット指揮によるコンサートの模様をベルリンフィルデジタルコンサートホールで視聴することにした。

 ブロムシュテットも90才を越え、現役最高齢クラスとなっているのであるが、未だにカクシャクとして現役続行中、どころか精力的に活動しており、その構成のしっかりとした音楽にも定評がある。さらに何がすごいと言っても、未だに立ったままで指揮をすること。もっと若くても椅子に座って指揮するベテラン指揮者も多いというのに。カクシャクとしたブロムシュテットの姿は本ビデオでも見ることが出来るが、颯爽と指揮をするブロムシュテットの姿は実に格好が良い。まさに高齢者の星というか、憧れの存在である。もはや存在そのものがレジェンドと言って良かろう。

 


ベルリンフィルデジタルコンサートホール(2021.6.12)

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

シベリウス 交響曲第4番
ブラームス 交響曲第3番

 一曲目のシベリウスはブロムシュテット指揮では以前にエーテボリ交響楽団の演奏で聴いたことがあるが、北欧的ないかにも幽玄な音色を出すエーテボリと異なり、もっと鮮やかで豪華な音色を出すベルリンフィルでは自ずと演奏の印象も変わってくると言うものである。北欧の霧の向こうから音楽が聞こえてくるエーテボリと違い、ベルリンフィルの場合はもっと生々しく迫ってくるものがある。

 ここで繰り広げられるブロムシュテットの音楽であるが、例によってしっかりとした構成による安定感のある音楽と言うだけでなく、非常に若々しい力に満ち満ちていることに驚かされる。シベリウスの混沌とした音楽の中から、湧き上がるような生命感というのを表現する。全く御年93のブロム爺のどこにこれだけの生命力が潜んでいるのやら、つくづく底の知れない人物である。

 二曲目のブラームスも基本的には同じスタンス。殊更に煽ったりなどの外連とは無縁なのであるが、ドッシリと構えながらもその音楽には弛緩がなく非常にしっかりとしたものである。その一方で美しさも持っており、第3楽章の有名なメロディなどは殊更にメロドラマに仕立てることもないにも関わらず深く心を打つ。そのまま緊張感と美しさを孕みつつ穏やかなフィナーレへ。安定感と躍動感が共存しているという老巨匠ならではのマジックに圧倒されたのである。


 それにしてもベルリンフィルではもう観客を入れての演奏が行われているようだが、演奏が終了して緊張感が段々と緩和し、老巨匠が完全に腕を下に降ろすまで息を呑んで鎮まっているベルリンの観客は流石としか言いようがない。日本ではなぜか我先に拍手を始めたり、いきなり汚い声で叫びを上げる輩がいて興醒めするところであるが、こういうところはそれこそ「民度の高さ」とでも言うのか。なお場内は老巨匠の熱演にスタオペまで出る大盛況で、ブロムシュテットの一般参賀もあり。それも頷ける中身の濃い演奏であった。