徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

青天を衝け 第28話「篤大夫と八百万の神」

栄一、丸め込まれる

 新政府から突然に召喚を食らった栄一は「なんで幕臣の俺が新政府なんかに仕えないといけないんだ!!」と拒否。しかし静岡藩を通して拒絶すると徳川家が新政府に楯突いていると取られかねないことから、栄一が「それなら自ら出向いて自分の口で断ってくる」と意気揚々と東京に乗り込みます。

ムック本が販売されています

 減らず口なら誰にも負けないと思っていた栄一だが、そこに登場したのが先週登場したド下品な大隈重信。これまたこいつが口が達者、新政府は人材不足だから協力して欲しいと栄一に切り出すが、栄一が「薩長はそんな後のことも考えずに幕府をつぶしたのか」とぶち切れると、「そんなものは俺は知らん」とのらりくらり。しかし現実は「後のことなんて考えてなかったんです」。長州の連中の大半は根っからのテロリストで、結局は幕府憎しでぶっ潰すことしか考えておらず、その後に日本をどう運営するかなんて考えている奴はほとんどいませんでした。だから実際には幕臣憎しだけで有為の人材も結構処分してしまいました(小栗とか)。しかしいざ新政府が成立すると、にっちもさっちも行かなくなって慌てて幕臣にまで声をかけているという状況。慶喜にしたら「薩長の連中で日本の運営なんて出来るわけがないから大政奉還したのに、まさかその先のことを全く考えないほど連中はバカだったとは・・・」ってのが本音でしょう。頭の良い人の限界は、世の中には残念ながらかなり馬鹿な連中もいて、しかも何かの間違いでその馬鹿が権力を握ってしまうことがあるということを理解していないことです。

 で、大隈は新政府の無茶については「俺は知らん」で、とにかくこのままだと早晩日本がひっくり返るけどそれでも良いのかと栄一に話を持ちかける。そして口説きのポイントが「新しい日本を作りたくないか」。これについてはそもそも実は幕府に不満を持っていた栄一の心をくすぐることになる。そして「八百万の神のように全国から人材を集めるしかない」と言われてついには完全に丸め込まれてしまう。さすがに大隈は口八丁です。栄一は途中からまんまと大隈のペースに嵌められてしまう。まあそもそも栄一も倒幕から幕臣になったり、攘夷から開国に変わったりなど実は信念があるようでない男ですから(根っこは商売人)。

 

 

そしてようやく「渋沢栄一復活」

 何だかんだで栄一一家は東京引っ越しになってしまいました。杉浦と抱き合いながら男の友情を誓ったりなんて奇妙なシーンもありましたが、この渋沢はやけに男にもてるんですが、本当は希代の女たらしなんです。しかしそういう辺りはさすがに大河では触れないでしょう。ここでの渋沢は妻子を大事にする男という歴史の大捏造をやってますので。隠し子が数十人で正確な数さえ分からないなんてことになりそうな雰囲気は微塵もない。

 栄一は最後に慶喜の元に挨拶に行きますが、慶喜は「お前は中央で活躍したいだろ」と例によって「非常に理解のある上司」で一貫してます。徳川のために静岡に引き籠もっているよりも、新政府の中枢で腕を振るった方が栄一のためにもなるという配慮ですが、普通は殿様が一家臣にここまで配慮しませんね。意外と慶喜も、何かあったら「なんであんなことしたんですか」と詰め寄ってくる栄一が意外とウザかったのかも(笑)。もう既に慶喜は「趣味に明け暮れて生きる」というその後の人生のあり方を言っておりましたが、実際に記録にも残っているように、この後の慶喜はマイペースで生きていくことになります。

 で、幕臣であることを捨てて、新政府に仕えることにした栄一は武士になった時にもらった「篤大夫」という名を捨てて「栄一」を名乗ることにします。こうして無事に「渋沢栄一復活」。いやー、篤大夫なんてダサい名前いつまで引っ張るんだと思ってましたが(と言うこともあって、私のこのコーナーは篤大夫って名をガン無視してましたが)、ようやくですか。一方の成一郞の方は、武士の誇り云々以前に「喜作」なんて農民丸出しの名前は使わないんでしょうね。

 そして大蔵省に乗り込んだ・・・はずの栄一がいきなりしでかしてます。大蔵省と間違えて、岩倉具視や大久保利通の前で新政府のダメっぷりにいきなり悪態つきまくってしまうというやらかし。社長を前にして「この会社の経営陣がなってないから、こんな会社は早晩倒産する」とぶちかましたようなものです。もっとも新政府のダメっぷりは客観的に見てもその通りですから、実際にはいくら岩倉が「失礼な」とぶち切れたところで、「じゃあ新政府のしっかりしたところをあげてくれ」と言われたらそれまでですが。そこらの会社だと一発でクビですが、大隈が無理やり押し込んだんだからクビにはできんでしょう。もっとも栄一は銀行作った後で、やっぱり役人は自分には合わんとさっさと辞めてしまいますが。

 

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work