徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

関西フィルの定期演奏会で宮田大が菅野祐悟のチェロ協奏曲初演

今度は関西フィルだ

 今月になってからコンサート通いを再開したが、この週末はこれまた久しぶりに関西フィルの定期演奏会に出向くことにした。昨日引き出しをチェックしたら無駄にしたチケットの山が出てきて、それだけで数万円。さすがに気が重くなったところである。今後は再自粛を要求されることにならないことを祈るのみ。

 午前中に家を出たのであるが、例によって高速道路は大渋滞でトロトロ走行を余儀なくされる。以前から土曜の昼前は確かに高速は混雑するものだが、それにしても一気に週末の人出が増えたのか、異常に車の台数が多い。そのせいで通常なら渋滞なんか発生しないところで大渋滞になっている。恐らく自粛疲れした連中が、警報解除で一気に行楽に出かけ始めたんだろう。これがいずれ第六次爆発につながらなければ良いが。

 当初予定では途中で一カ所寄り道をし、ついでにそこの近くのレストランで昼食を摂るつもりだったのだが、渋滞のために時間をかなり浪費してしまい、計画の変更を余儀なくされることに。寄り道をしている余裕がなくなったので昼食だけ摂ることにしたのだが、目的の店は満席で、かなり時間がかかるとのことなので諦めてザ・シンフォニーホールに直行する。

 大阪に到着すると車はアキッパで予約した駐車場へ。開演までは1時間強。ホールまではやや距離がある(近くの駐車場は必然的に価格が高くなる)のでプラプラと散策がてら昼食を摂る店を探すが、これという店はない。一店、事前に目を付けていた店があったのだが、そこを覗くと既に待ち客がいる状態。時間に余裕がないので諦めて、将棋会館の「イレブン」に向かうことにする。そこそこの客はいたが、ここは回転が結構早いので行列が出来ることはまずない。私が注文したのは「エビフライとハンバーグのランチ(900円)」。

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将棋会館のイレブン

 粗挽きのハンバーグと海老フライのセット。海老がやや小ぶりだが、値段を考えると仕方ないところだろう。食べ応えがあるというボリュームではないが、ハンバーグもフライもなかなかに美味くてそこは流石。とりあえず今日の気分は洋食だったのでこれで満足。

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ハンバーグとエビフライのランチ

 昼食を終えるとホールに向かう。ホール前は厳戒態勢なのは相変わらず。これを通常体制に戻せるのはいつのことだろうか。入場時のチェックはともかくとして、クロークも喫茶も営業停止状態なのは不便である。

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ホール前は変わらず厳戒態勢

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第323回定期演奏会

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[指揮]藤岡幸夫
[チェロ]宮田 大
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

菅野祐悟:チェロ協奏曲【世界初演】
ラフマニノフ:交響曲 第2番 ホ短調 op.27

 菅野祐悟のチェロ協奏曲は、先の菅野作品のコンサートの際に、彼の交響曲第2番を聴いた宮田大が希望して藤岡を通して作曲を依頼したという。藤岡のプレトークでも言っていたが、菅野の曲は現代曲と言っても前衛の無調性の騒音とかではなく、普通の調性音楽であって非常に馴染みやすくて聞きやすいものである。

 実に優美な曲という印象であるが、特に宮田大の演奏が見事。とにかく音色が深い。普通に旋律を奏でただけでそれが深い音楽となる。最初にチェロの主旋律が出た時にもうグッとつかまれる。特に日本人にとっては馴染みやすい旋律となっており、その辺りは劇伴を主に手がけている菅野ならではであろう。クライマックスへの盛り上げ方の上手さなどもいかにも映画音楽的。実に馴染みやすい曲ではあるが、決して俗ではない。全体的にメロドラマチックなところはあるが、とにかく美しくてインパクトのある曲である。最後まで宮田のチェロの音に魅了されたというところ。

 20分の休憩の後の後半は、藤岡によるラフマニノフの交響曲第2番。以前よりラフマニノフはピアノ協奏曲第2番の演奏は多いが、最近になってとみに演奏が増えたのがこの交響曲第2番である。

 藤岡はこれを最初から極めて甘美に演奏する。こういう演奏で聴くと、甘々と言われているピアノ協奏曲第2番に通じるものがあることを感じさせられる。また今回は関西フィルの弦楽陣がやけに色っぽい音色を出す。今までこの曲を数回聴いた時には、甘美の印象よりも怒濤の第2楽章などの荒々しい印象の方が強く残っていたので、今回「ああ、この曲ってこんな曲だったんだ」と認識を新たにした次第。こういう演奏で聴くと、あの重苦しい低弦で始まった第1楽章も実は壮大なメロドラマだったんだと感じられたりした。

 今回のコンサートで言えるのはとにかくメロドラマ。菅野祐悟の曲もメロドラマチックだったが、後半のラフマニノフも藤岡の演奏はかなりメロドラマであった。しかしそれは決してありがちな過剰演出ではなく、どちらの曲も藤岡の思い入れがあるのが反映したようである。実に情感タップリの演奏で、関西フィルもまとまったなかなかに良い演奏を繰り広げた。正直なところ、久しぶりに聴いた関西フィルは「あれ?こんなに上手いオケだったっけ?」と感じたのが本音。