徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

アクリエひめじにオペラ「千姫」を聴きに行く

新作オペラ上演で姫路に

 本日はアクリエひめじオープン記念のオペラ「千姫」のために姫路に繰り出すこととした。昨日の疲れも体に残っているので、今日は欲張って無理をせずに姫路に昼過ぎに到着する予定でゆっくりと家を出る。例によって無駄に車が多いが、姫路には13時頃には到着する。

f:id:ksagi:20211212213842j:plain

オペラのポスター

 まずは昼食を摂りたいが、頭にイメージがあった店は「準備中」。そこで他の店を探すことに。その時に頭に浮かんだのはかなり昔に訪問したことのある「料理番」。Googleマップで場所を探し出すと車を走らせる。

 店は道路から奥まったところにある。駐車場は結構広いのだが、多くの車がいるので混雑ししていて入れにくい。大繁盛しているようで店は満席。フライパンランチ(1280円)を注文しておいてから、車の中で少し待つことになる。入店までは10分ほどかかる。

f:id:ksagi:20211212213913j:plain

奥まったところにある「料理番」

 座席に通されるとすぐにサラダとスープが出てくる。いずれも特徴は大してないが申し分のないところ。

f:id:ksagi:20211212215853j:plain

スープとサラダ

 次にライスとメインが登場。本日のメインはベーコン巻きのハンバーグの模様。味はまずまず。ただこの店の料理は結構若者向けという印象が残っていたのだが、数年ぶりの訪問で私もさらに老いぼれたのか、以前よりもさらにそれを強く感じる。若者がガッツリと食べるには良いのだが、私のように和食が好ましくなってきたような年代にはやや脂っこい感はある(その割には客には高齢者もいたようだから、もっとそういうそういう層向きのメニューもあるのかもしれない)。

f:id:ksagi:20211212215906j:plain

メインは美味いがやや脂っこい

 

 

ホールに到着する

 昼食を終えるとホールへ。ホールに到着した時には開演の1時間前だったが、もう既に駐車場にはかなりの車が止まっており、ホール内も大勢がたむろしている。確かに既に開場はされているが、まだ開演までに1時間ある。以前のウィーンフィルの時も思ったが、姫路市民は行動が早すぎである。

 時間つぶしに喫茶でも立ち寄ろうかと案内に従って一階のホール入口外の喫茶に向かうが、こじんまりした店舗のために表には入場待ちの行列が。ホールのキャパと全く釣り合っていない上に、回りに店舗が何もないところだからこういうことが起こるようだ。いずれ周辺に店舗が進出してきたらいくらか改善するかもしれないが、どうも今のところは望み薄な気がする。

f:id:ksagi:20211212220101j:plain

喫茶の前は大行列

 仕方ないので    とりあえず入場することにする。ここに来るのはウィーンフィル以来だが、昼間だとロビーが明るいのを感じる。上階まで吹き抜けている構造はフェスティバルホールそっくりだが、フェスティバルホールはもっと薄暗い。外光を取り込んでいる点では兵庫芸術文化センターに近い。なおこのホールは一階席が建物の二階にあるせいで紛らわしく、そのために私は自分の席を間違ってしまった。慌てて自分の席に移動するとそこでこの原稿の入力。それにしても結構の入りである。見渡したところほぼ満席だ。

f:id:ksagi:20211212220211j:plain

外光を取り込んだ明るい吹き抜けのロビー

 さて千姫は姫路城に住んでいたことがあり、その時代の話がこの作品のメインになる。いわゆるご当地オペラであり、今回初公演の新作の模様。

 

 

オペラ 千姫

f:id:ksagi:20211212220237j:plain

2階席からの眺め、手前がオケピ

原作:玉岡かおる
脚本:平石耕一
作曲:池辺晋一郎
指揮:田中祐子
演出:岩田達宗
演奏:日本センチュリー交響楽団

千姫    小林沙羅
おちょぼ  古瀬まきを
本多忠刻  矢野勇志
本多忠政  池内 響 他

 大坂城を脱出してから本多忠刻の妻として姫路にやって来るが、忠刻が亡くなって姫路から去ることになるまでの千姫について描く。

 前半は夫秀頼と義母の淀君を失った失意の千姫が、本多忠刻と結婚することになるまでを描く。内容的には生きる希望をなくしてしまっている千姫を、本多忠刻がその愛情で癒やしていく過程を細かく描いており、一種の恋愛もののような雰囲気がある。池辺晋一郎の音楽は大河ドラマ的ではあるが、もう少し前衛的な感がある。音楽は千姫を現すと思われる動機が随所に登場して統一性を持たせるタイプ。ただ前半はストーリー的にも山場が少ない上に、音楽も同じような節回しが多くてやや退屈する感もある。

 ドラマが盛り上がってくるのは後半、千姫が本多忠刻の妻となり姫路にやって来るところからである。本多忠刻の妻として共に生きていく決意をし、子供も産まれてようやく幸福にたどり着いた千姫。しかし周辺に迫る魔の手。世継ぎであった息子の幸千代が、豊臣派かそれとも幕府を快く思っていない公家の陰謀かは定かではないが毒殺されてしまう。失意の底に沈んでしまう千姫だが、母を気遣う娘と彼女を守ろうとする夫の愛情で立ち直る。しかし次は参勤交代の帰還途中の夫が突然の病死(恐らくこれも暗殺だろう)してしまい、彼女は姫路を後にして江戸に戻ることになるというストーリー。

 後半は一転して音楽的に変化があり、特に本多忠刻の死を千姫が聞くシーンなどは音楽的なクライマックスを持ってきており、なかなかに心を揺さぶる。この後の夫の遺志に答えて生きていくことを決意する千姫のアリアなどはなかなかに感動的である。なお後半はご当地オペラらしく、姫路の宣伝ではと思われる部分も多々あるのが微笑ましくはある。

 ただ全体を通して見るとやはりいささか長すぎる気もしないでもない。特に前半部分は千姫の心を繊細に描いているのであるが、小説ならこれで良いのであるが、オペラとなるとあまりに変化がなくて退屈という印象がある。音楽的な聴かせどころも後半に集中しており、前半はもう少し尺を詰めても良いような気がする。

 

 

それにしてもいろいろとホールの問題点も浮上した

 3時から始まったオペラがカーテンコールも含めて終了したのは6時半頃であった。これから帰宅なのだが、実はこれからが大変であった。このホールは数百台が駐車できる大駐車場を完備しているのは良いのだが、駐車料金の事前精算機がたった2台しかないために大行列。するとそれに見切りをつけて出口で精算しようとする者が出てくる。そうなるとたった2つしかない出口ゲートが滞留することになり、駐車場内は出場待ちの大行列が動かない状態に。私も駐車場を出るまでに30分近くを要する羽目になってしまったが、まだまだ車列は後方に長々と続いていた。

 ショッピングセンターなどなら客はバラバラに出入りするので事前精算機の台数はこの程度でも良いかもしれないが、ホールという性質上客は一斉に出場するのに、そのことを全く想定していないおマヌケ設計である。いかにも姫路市らしい仕事の雑さがこんなところに現れている。事前に私が設計図を見ていたら「ホールの駐車場をショッピングセンターの感覚で設計するな」と一喝しているところだ。このホールは音響は悪くはないのだが(特別に良くもないが)、キャパの少なすぎる喫茶、設計がマヌケすぎる駐車場など、様々な点で問題も抱えている。この辺りは発注した側が利用者目線で物事を考えていないことが良く分かる。