徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

九州交響楽団の西宮公演で冴え渡った神尾真由子の超人技

久しぶりの兵庫芸文だ

 今日は一年以上ぶりに西宮の兵庫県立芸術文化センターに出向くことにした。コロナの蔓延後、外来オケは軒並み中止となるし、PACオケのコンサートを危険を冒して聴きに行くという気もしなかったしということで、西宮からは完全に足が遠のいていた。しかし今回、九州交響楽団の演奏会があるとのことで、わざわざ出向く気になった次第。

 九州交響楽団と言えば、2019年末にポリャンスキーが指揮するチャイコフスキーの交響曲第1番を聴きに福岡まで出向いたことがある。技術的に高いとは言い難いが、元気なオケという印象を持っている。今回は指揮は沼尻、ソリストが神尾とのことなので、果たしてどのような演奏を聴かせてくれるだろうか。

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微妙なクリスマス気分の西宮北口で簡易夕食

 火曜日の仕事を早めに終えると車で西宮まで直行する。例によって阪神高速は神戸市内で大渋滞。本当にこの慢性渋滞だけはどうにか出来ないんだろうか。しばし車はトロトロ運転を強いられるが、それでも一応大体想定していた時刻には到着する。車はホールの駐車場に入れて、とりあえず夕食だが、西宮ガーデンの飲食店街に行っている時間はないと思われるので、結局は北口側に回ってケンタでさっさと済ませることに。ケンタの前に行列が出来ていたので「まさかもうクリスマスか?」と警戒したが、幸いにして行列はすぐに捌ける。

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西宮北口の微妙な電飾

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本日の簡易夕食

 簡易夕食を済ませるとホールへ。それにしても久しぶりである。こうして改めてホールを見渡してみると、やっぱり姫路のアクリエはここが一番雰囲気が近い。会場の入りはザッと見たところ4~5割といったところか。

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久しぶりの兵庫芸文

 

 

九州交響楽団 西宮公演

指揮:沼尻竜典
ヴァイオリン:神尾真由子

チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」 op.71aより“小序曲~行進曲”
                  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
                  交響曲第4番 ヘ短調 op.36

 九州交響楽団は以前に聞いた時の印象の通り、確かに元気の良いオケである。しかしそのことはやや緻密さに欠けることにもつながる。弦のアンサンブルにはもう一次元上のものを期待したいし、管についてはいささかデリカシーに欠けてブイブイやり過ぎるところがある。そのために最初のくるみ割り人形はいささか喧しめの演奏。

 ヴァイオリン協奏曲は流石に神尾の圧巻の演奏に尽きる。まさに堂々たる演奏であるが、実に雄弁なヴァイリオンである。この今や通俗名曲にも上げられる曲に対して、細かに様々なニュアンスを加えてくる。協奏曲はオケとソリストの力関係で様々なバランスの演奏になるが、今回はさながら「神尾先生の音楽講座」である。オケと渡り合うと言うよりは堂々と率いており、まさに「かかってこんかい」と言わんばかりの大迫力である。さすがに日本のヴァイオリニストの第一人者の一人としてあげられるだけのことはある。

 一方の沼尻の指揮は、オペラも振る指揮者だけあって、やや大仰気味に盛り上げてくるのがいかにも。なるべくスケールの大きな演奏にして、オケが神尾と渡り合えるようにしている。堂々たる第一楽章に深い第二楽章、そして神尾の圧巻のワザがさえるアクロバチックな最終楽章と音楽は大盛り上がりで終了する。

 会場大爆発だったが、これに応えての神尾のアンコールは、私が九州交響楽団のコンサートを初めて聞いた時にも登場した「魔王」。凄まじいまでのテクニックには会場あんぐりというところ。神尾こそまさにヴァイオリン界の魔王そのものである。

 20分の休憩後の後半は、チャイコフスキーの4番。冒頭から元気な管楽器陣が格好良く決めてくれる。このオケはブイブイ元気に鳴らす分は良いんだが、弱点は本当のピアニッシモが出せないこと。そういう意味では5番や6番でなくて4番を選んだのは正解である。もっとも単にブイブイやっただけではダイナミックレンジの狭い単調な演奏になってしまうので、沼尻はここで曲を大いにうねらせてきた。前半の楽章は徹底的に音楽をうねらせることで変化をつけ、駆け抜けるような第三楽章の後に、ドンチャン騒ぎの最終楽章を持ってきた。明らかに沼尻もノリノリだったが、オケの方も最後までかなりノリの良い演奏であり、場内大盛り上がりであった。

 やっぱり技倆的には今一歩感はあるオケなのであるが、それをノリでぶっ飛ばしたような演奏であった。結果としてはオケのカラーを上手く活かした演奏となった。選曲といい、なかなか考えているようだ。