徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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2021年度クラシックライブベスト

 さて年末恒例企画の年間ベストライブだが、本年も昨年同様にコロナの影響直撃で私自身がほとんどライブに行けていない状態。そんな数少ないライブの中ではやはり実力的にウィーンフィルがぶっちぎりであって、まともなチョイスなどそもそもやりようがない。というわけで今年は「印象に残ったライブ」ということで選びます。

リッカルド・ムーティ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

 まあ本年度はとにかくまずこれを挙げないわけにはいかないだろう。昨年度に続いてコロナ禍の中を押しての来日実現がまず驚きである。演奏についてはやはり技術力が抜群なのは相変わらずだが、メインプログラムの演奏自体は昨年度のゲルギエフの時ほどにインパクトが強烈なものではなかった。ただ伏兵だったのがアンコールの「運命の力」。これが心臓を鷲掴みにされるような名演で、この序曲だけでオペラ一編を見たかのような中身の濃さであることには圧倒された。やはりムーティはオペラ指揮者であるし、ウィーンフィルも歌劇場オケであることを痛感させられたのである。

エリアフ・インバル指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 今年の年初を飾った名演がこれ。インバルだけに名演確実とコロナ禍の中を危険を冒して大阪まで出向いたのだが、それだけの価値を感じさせられた。初っ端の古典交響曲からキレッキレの演奏であったが、それが後半のショスタコの10番でさらに炸裂。とかく分かりにくい面白くないとなりがちなこの曲に対して、最後まで興味をつながされる見事な演奏であった。また爆音でありながらも浮つかない大阪フィルの演奏も実に見事であった。

カーチュン・ウォン指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 タバシュニクの来日不可で急遽起用されたのがシンガポールの新鋭・カーチュン・ウォンだったのだが、代役と言うことを感じさせない早くも巨匠の風格さえ漂っている堂々たる演奏。実に色彩的な鮮やかな音色は見事であり、煌びやかな展覧会の絵は流石といったところ。大阪フィルからこのような音色を引き出すカーチュン・ウォンはやはりただ者ではないと感じさせられた内容。

 

 

藤岡幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団

 世界初演の菅野祐悟のチェロ協奏曲が登場だが、宮田大のチェロ演奏が実に深い。菅野祐悟の曲は元々前衛的な尖った音楽ではないが、宮田の演奏だと非常に美しさが増し、まさに心を掴まれる。後半のラフマニノフも藤岡の指揮が実に甘美。また関西フィルの弦楽陣の音色も実に色っぽく、通常は荒々しさだけが目立つこの曲から、いつもと異なる情緒を引きだしてくれた。

ジョン・アクセルロッド指揮 京都市交響楽団

 一年ぶりの京都市響だったのだが、さすがに京都市響は上手いということを再確認させられたコンサート。曲目はかなり変化球であったのだが、極めて明快であるアクセルロッドの指揮は、ガジャルドの世界初演の音楽を実に分かりやすく我々に示してくれた。さらに後半の「英雄の生涯」も、下手をするととかく分かりにくくなりがちのこの曲を、一本の筋の通った物語として我々に示してくれた。実に曲の魅力を引き出すことに長けているという印象の演奏であった。

小林研一郎指揮 読売日本交響楽団

 決してボヘミア的とは思えない、相変わらずのコバケン演歌だったのだが、この曲の持つ泥臭さとコバケンの本質的泥臭さが呼応して。奇妙な次元での共鳴を帯びた独特の世界が展開した。それが日頃はコバケン演歌が決して得意とは言えない私にとっても、妙な心地よさにつながったという異世界体験。


 以上のように数少ないライブの中でも印象に残るライブは数点あった。来年度こそはコロナ禍の沈静と共に日常生活が戻ってくることを願わずにはいられない。

 

 

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