徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

medici.tvでサロネン指揮パリ管のブルックナー

オミクロンが気になる週末は、我が家でネットライブ三昧

 さてオミクロンの影響で今年もコンサートの参加が危ぶまれる状況になってきた。目下のところは年末年始の休暇期間でコンサートの予定はないが、今月終盤になるとチケットを保有しているコンサートが複数あるので、下手するとまた無駄にしないといけないチケットが出てくる危険が出てきた。まあ普通に考えてこれから一週間ほどでオミクロンが急速に沈静化するなんてことはまずあり得ない(さらに大爆発する可能性はあっても)。いよいよもって嫌な状況になってきた。日本は少し状況が沈静化したとなったら一気に人流が増加して、そうなるとまた感染爆発が再開するという嫌なループを繰り返しているようだ。

 さてこうなってくるといきおい、コンサートのネット視聴の比率が上がらざるを得ない。昨年末に本家のmedici.tvが年間視聴券を7割引のディスカウントしていると言うことで契約したが、アーカイブを見ていたら昨年のサロネン指揮のパリ管のライブがあったので早速視聴することにした。

www.ksagi.work

 

 

サロネン指揮パリ管弦楽団(2021.1.12 フィルハーモニー・ド・パリ)

指揮:エサ=ペッカ・サロネン
チェロ:ゴーティエ・カプソン
パリ管弦楽団

ショスタコーヴィチ チェロ協奏曲第1番変ホ長調
ブルックナー 交響曲第6番

 一曲目のショスタコーヴィチはカプソンのチェロ演奏に尽きるだろう。力強く、それでいて繊細でもあって非常に音色は深い。第一楽章からかなり躍動的に始まる曲であるが、そのままスピード感と情緒を両立しながら曲は進行する。あまり背後のオケが出しゃばってこない曲だけに、チェロソロの音色で勝負が決まるようなところがあるが、カプソンの堂々たる演奏は最後まで十二分に聞かせる内容がある。またバックのオケは鮮やかな演奏でそれをサポートしている。掛け合いの場面の緊迫感などはなかなか。

 さて後半のブルックナーであるが、これはかなり元気というか、明るいというか、ブイブイとぶっ飛ばすブルックナーである。サロネンの指揮は決して極端にアップテンポというようにも感じないのだが(落とすところではストンと落としてくる)、それにも関わらずかなり陽性でかっ飛びな印象を受けるのは、やはりオケの音色がかなり色彩的で煌びやかなためだろう。やはりこの辺りがパリ管である。分厚さよりもキラキラした輝きの方が前面に出てくる。同じ曲を同じテンポで演奏したとしても、ドイツのオケなどならまた全く違った響きになるだろうことは想像に難くない。

 サロネンはこの色彩的なオケを駆使して、実に色鮮やかなブルックナーを描き出す。私はブルックナーについてはあまり得意とは言いがたく、正直なところあまりガチガチな正統派な演奏をされると眠くなることさえあるのだが、このブルックナーには眠気が湧き上がる余地がない。ブルックナーの音楽とはここまで力強く、生命感に満ちているのかと驚く次第。非常にメリハリが強く、ガツンガツンと来る演奏である。そして実に壮大でスケールの大きなフィナーレで曲を締めくくる。

 オケの音色とかカラーというものは確かに存在するものであるが、それを明確に感じる演奏である。一言で表現するなら「実にパリ管らしい」ということに尽きる。そこにサロネンのキビキビした指揮が組み合わさることによって非常に明快なブルックナーが出来上がった。ガチガチのブルックナーフリークはこの演奏について異端と感じるか、ありと感じるかは私には分からないが、私としては非常に魅力的で面白い演奏と感じたのは事実。場内も相当に盛り上がっていたようだから、少なくともひどい演奏ではないようである。