徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

10年ぶりに山形城を見学してから山形交響楽団のコンサート。宿泊はかみのやま温泉で。

今日は山形まで移動である

 翌朝は7時頃に起床。起き出すと目覚めるために風呂へ。貸切風呂が空いていたのでヒノキ風呂でしっかりと身体を温める。お湯が体に染みいるという感触である。

貸切のヒノキ風呂でゆったりと身体を温める

 風呂からあがってしばしマッタリすると朝食。野菜中心の和定食で、この年になるとこういう朝食が一番落ち着くし食が進む。朝からご飯が美味い。ところで焼き鮭って、夜に出てくると何となく貧相に感じてしまうが、朝に出てくるとこれが滅法美味かったりするのが不思議。

朝は和定食

こういう小鉢の数々が実に美味い

 朝食を終えると再び軽く入浴してから荷物をまとめてチェックアウトする。今日は再び長駆することになる。山形まで舞い戻って山形交響楽団のコンサートに行ってから、今日はかみのやま温泉で宿泊する予定。まずは昼過ぎまでには山形に戻る必要があるのでしばし車で突っ走ることに。身体には少々疲れは残っているが、昨日散々寝たせいか(結局はあの旅館ではほとんど寝ているだけで終わってしまった)具合は悪くはない。

 とりあえず予定通りに昼前には山形に到着。山形美術館のところの駐車場に車を置きにいくが、辺りは何やら渋滞模様。どうやら山形城が桜が満開で花見客が殺到している模様。一応駐車場に車を置くと、まずは山形城の前に山形美術館の見学。

 

 

「描かれたやまがたの四季」山形美術館で5/8まで

山形美術館

 山形には各地の名所があるが、それらを描いた地元画家による作品を展示。山形銀行のコレクションで、同行はそもそも「県内風景画シリーズカレンダー」を40年近く作り続けているらしく、その原画作品などらしい。

 そういうわけなので、単純に観光案内的に楽しい。見ていて「ふーん、こんな観光名所もあるのか」と改めて認識することも。またネタがら尖った現代アートはほぼないので、その点でも見ていて単純に楽しめる。それにやはり同じ風景画でも画家によって個性があることも良く分かる。特に水の表現などは多彩。川の水の透明感を実に巧みに表現している画家もいれば、そういう細かいところにはこだわらずにベッタリと全体を画く画家など十人十色。そういう点の面白さも本展にはある。


 特別展もそれなりに楽しめたのだが、やはりこの美術館の凄みはコレクションの方だろう。地元ゆかりの彫刻家の作品や日本画などもあるが、出色はフランス近代美術作品。吉野石膏コレクションとして有名だが、ルノワールやモネなどの傑作が複数点。ゴッホの初期作品やピカソ、シャガール、キスリングなどの作品も印象に残るが、一番印象が強かったのはピサロの作品。一連の印象派の画家の中では、知名度の点で一段落ちる感のある彼の優れた作品が複数展示されていて「ピサロってなかなか良いじゃん」と見直した次第。

 

 山形美術館の見学を終えると、館内の喫茶でケーキセットでしばしくつろぐ。最近はこういうゆったりとした時間が無くなっていることを痛感する。命の洗濯という奴である。

館内喫茶でゆったりとケーキセットを頂く

窓の外は桜が咲いている

 

 

10年以上ぶりに山形城を見学

 山形美術館での用を済ませたところで数年ぶりに山形城を見学することにする。近くの東大手門から線路と堀を橋で跨いで入城。この辺りは桜も多く咲いているので多くの花見客で賑わっている。中にはその桜をバックに山形新幹線の写真を狙っている撮り鉄の姿も。

東御門前には花見客が殺到

確かにかなり立派な桜が咲いている

これは見事だ

 東大手門はかなり大規模な枡形門である。手前にかなり深い堀があることを考えると、まさに鉄壁の防御である。なお現在大手門櫓が見学可能とのことなので、後で見学することにする。

東大手門

かなり大規模な枡形となっている

 山形城の内部では現在は桜が満開で、桜の甘ったるい匂いが辺りに立ちこめている。その中に立つのはこの城ゆかりの最上義光の騎馬像。

中は桜が満開

そして最上義光像

 

 

復元工事中の本丸を見学

 山形城は最上義光の城であったが、江戸時代に最上氏が改易になるとその後の城主は転々として、弱小大名化することで段々と荒れていったという。さらに明治になると売り出されて山形市が陸軍の駐屯地を誘致したという。その結果、すべての建物が破却されて本丸の堀も埋め立てられることになったとか。その後は運動公園化されて現在の体育館や野球場まである惨状となっているが、近年になって再び史跡公園として復元する方針となって東大手門が再建され、さらには本丸の堀なども復元されたという。

本丸土塁や堀が復元されている

かなり気合いの入った復元

 さらに現在は本丸御殿を平面復元しようという工事中であり、そのための調査も進められているとか。目下のところは本丸の一文字門が復元されているが、その奥はただの工事現場である。また本丸の北側の一部が球場で破壊されている状態なので、いずれはこの球場にも移転頂いて本丸を丸ごと復元してもらいたいところである。

復元された一文字門

 

巨大な枡形にはなっているが

その内部はまるっきり工事現場

石垣の石だろうか

本丸御殿平面復元イメージ

あちこちで発掘工事中

 

 

南大手門を見てから土塁上を回る

 本丸を回った後は南大手門に抜ける。ここは今は完全に道路になっているが、虎口の形態がまだ残っている。またこの周辺の堀はかなり立派であり、山形城の南の玄関の風格がある。

南大手門は車の通路になっている

南大手門を外から

この辺りは堀も立派

 この南大手門のところから二の丸の土塁上に登る。ここは一番桜の木が多いので格好の花見の散策コースになって大勢の観光客が闊歩している。東南の隅に巽櫓の土台も残っている。

南大手門を土塁の上から

土塁上は完全に花見コース

この石はかつての城壁の礎石

巽櫓跡

巽櫓から外を眺めると、やはり防御の拠点

 

 

東大手門櫓を見学

 土塁上を東大手門のところまで戻ってくると、公開中の大手門櫓内を見学。意外と広いという印象である。またここから枡形内を狙い撃ちできる上に、もし門を突破しようとしたら上から攻撃できるような仕掛けも施してある。さすがの鉄壁防御である。なおここに至る石段が石段と呼べないような段差の大きい険しいもので、高齢者などはエッチラオッチラと必死で登っていた。これもやはり門を突破された後に一気に駆け上がれないようにとの細工なんだろうか。

土塁上を東大門に向かう

大手門櫓に登るこの石段が実は意外な難所

東大手門櫓内

立派な木組みだ

枡形内の敵を狙い撃ち

さらに門に取り付いた敵は上から攻撃する

 

 

最上義光展示館に立ち寄る

 かなり久しぶりに山形城を回った後は駐車場に戻ってくる。そろそろ昼時もとうに過ぎているのでどこかで昼食を摂りたいのだが、事前に目をつけていた店はことごとくコロナの影響か閉店中。仕方ないので車を出して移動することにするが、その前に永らく閉館中だった最上義光展示館が開館中とのことなので見学していく。

最上義光展示館

平服の義光像

 入場無料は太っ腹。内部の展示は最上家に纏わる文書の類いや甲冑類。正直なところかなり渋い内容である。正統派の歴史マニアがじっくりと見て回ればなかなかに見応えがあるのだろうが、私のような中途半端なミーハーマニアにはやや地味すぎる内容。時間もないこともあるし、早足でザッと見て回っただけで終わる。

建物前には庭園が

 駐車場から車を出すと昼食を摂る店を探すことにする。なお私が到着した時には駐車場はまだ空きがあってバンバンと次々車がやって来ているところだったが、今になると満車で前では空き待ちの車の列がもう少し動きが遅かったらドツボっていたところだった。

駐車場は満車です

 

 

昼食はラーメン

 昼食を摂る店だが、山形城南の「ラーメン中村屋」に立ち寄ることにする。前の駐車場がほぼ満車で、一番端に無理矢理止めようとしたら車の前をぶつけそうになったので、諦めて他を当たろうかと思ったところでちょうど車が一台出たので、周辺を一回りしてきてもう一度駐車する。人気の店なのか店内にも待ち客がいてしばし待たされることに。なお私が頼んだのは「鯛チャーシュー麺(830円)」

 何やら非常にさっぱりとしたラーメンであるが、鯛出汁ということは無化調だろうか? そこのところは定かではないのだが、あの化調タップリのラーメンに特有の舌に突き刺さるような刺激がなくて、化調で誤魔化すところの強いベースとなる味を鯛出汁で取っているという印象。非常に懐かしい雰囲気のあるラーメンである。サッパリしているがコクが不足しているというわけではなく、なかなかに美味い。なるほど、これは人気店であるのも理解できる。

鯛チャーシュー麺

縮れ麺を使用している

 実際に私が最後で後は売り切りになったようだが、それでも数組が訪れていた。妙にクセになるところのあるラーメンなので地元でも人気なんだろう。私は正直なところ場所で選んだだけ(ここの真っ直ぐ南が山形テルサである)なのだが、この店は正解だった。

 

 

山形テルサへ

 ラーメン屋で待たされたこともあり、食べ終わった時には開場時刻の14時を過ぎていたのでテルサに直行する。1つだけ気になっていたのは山形城周辺の駐車場がことごとく満車だったので、駐車場が塞がっていないかだが、山形城から若干距離があるのが幸いしてか駐車場は十分に空いていた。車を停めるとホールへ。

駐車場側の入口から入場

会場入口

 山形テルサは800人収容のホールとのことでちょうど一昨日に行った日立システムズホールと同規模のホールである。10型編成の山形交響楽団には大きすぎないちょうどの規模のホールと言える。比較的建築が最近であるようで綺麗で、しかもコンサート用に音響設計したようであるので、音響がなかなか良い。確かに山形交響楽団が本拠するのに最適のホールである。

なかなか良いホールだ

二階席あり

 日立システムズホールと違うのは、あちらは一階席のみだったのに対し、こちらは二階席もあること。二階席にも登ってみたが、見通しはよくていわゆる見切れ席はなさそうである。ホールとしてはなかなかよく出来ていると感じる。

二階席からの見通しも問題なし

 

 

山形交響楽団第300回記念定期演奏会

指揮:村川千秋・阪哲朗
ソプラノ:林正子
メゾソプラノ:小林由佳
ソプラノ:石橋栄実

シベリウス 交響詩「フィンランディア」
シベリウス カレリア組曲
R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」

 第300回の記念公演とのことで、指揮は前半のシベリウスが山形交響楽団の創生から携わっているという功労者でもある村川千秋。後半のR.シュトラウスが常任指揮者の阪哲朗という豪華ダブルキャストになっている。

 村川千秋は御年89才とのことであるが、それに比して非常に若々しい。ステージにも颯爽と現れてそのまま指揮をしているし。先の飯守泰次郎80才が足許が覚束なくなっていたのとはかなり差がある。

 そして演奏の内容も若々しい。よくあるいかにも北欧的な曖昧模糊なところがある演奏ではなくて、いささかシャープな演奏である。金管などもかなり鋭く鳴ってくる。しかしそれにも関わらず全体を通じて北欧の空気は壊れない。どうも指揮者の村川にかなり深いところでのシベリウスに対する共感のようなものがあるのを感じられる。また楽団員の村川に対するリスペクトのようなものも音楽から滲んできている。そのような感情のやりとりがあって初めて成立する音のように感じられる。

 結果としてフィンランディアは思わず聞いていて握り拳を作ってしまうぐらいに盛り上がる演奏となったし、カレリア組曲はまさに情感深い音楽となった。久しぶりに心から揺さぶられるシベリウスを聴いたという感じがする。なかなかに深い。ラインハルトではないが「これだから老人は侮れない」。

 休憩後の後半は全く気分を変えて阪による「ばらの騎士」。山形交響楽団にとってこういうオペラの演奏会形式での公演というのは初めての試みとのことで、東北でこの曲が演奏されるということも初めてではとのこと。

 こちらはやはり3人の歌手の圧巻の歌唱に尽きるだろう。前半は林と小林の絡みが、後半は小林と石橋の絡みが実に華麗に音楽を盛り上げる。

 また阪の指揮もノリノリという雰囲気であった。10型編成の山形交響楽団が、その編成の小ささを感じさせない壮大な音楽を奏でたのは、オーケストラの規模にマッチしたホールの音響の効果もさることながら、阪によるスケールの大きな指揮も影響しているだろう。


 なかなかの演奏を堪能した。またやはり本拠のホールの方がオケとの相性も良いようである。とにかく驚いたのは10型編成と感じさせない山形交響楽団のパワー。ホール一杯を音響が包むような迫力があった。以前に大阪で聴いた時には、室内楽的でアンサンブルの良いオケという印象で、どちらかと言えば古楽器オケに近い印象を受けていたのだが、かなりイメージと異なる意外な面を見せてもらった。なかなか興味深い。

 

 

かみのやま温泉へ

 山形交響楽団の演奏を堪能した後は、今日の宿泊先であるかみのやま温泉まで車を飛ばす。かみのやま温泉は上山城の城下町の温泉街である。実は以前に上山城自体は訪問したことがあるのだが、その時はかなり駆け足の見学で、上山城と周辺の武家屋敷を回っただけで、かみのやま温泉には浸かっている暇はなかった次第。そこで今回、長年の宿題を果たそうという思いもある。また実は蔵王温泉での宿泊も考えていたのだが、コンサート終了後に蔵王までの移動だと結構時間がかかることと、何よりも蔵王温泉のホテルは相場が高くて私の予算に合致するホテルを見つけられなかったというのがかみのやま温泉になった理由。

 今日宿泊するのはかみのやま温泉の「ステイインホテル材木栄屋」。昔ながらの温泉旅館を最近になってリニューアルしたようで、シングル客も迎え入れる和風ビジネスホテルと銘打っているので、そのコンセプトはまさに私のようなものにピッタリである。

ステイホテル材木栄屋

 通された部屋は本館2階の和モダンツイン。畳敷きの部屋にベッドが2つ並べてあるという部屋である。和風ビジネスを謳っているだけあってWi-Fiも完備。シャワーブースにトイレありという仕様。至れりつくせりなのだが、デスクがないのだけが私には残念。私はもっとバリバリのビジネスシングルで良いようである。

和モダンツイン

窓の外には桜

早速仕事環境構築

 

 

大浴場でしっかりと入浴する

 何はともあれ大浴場で入浴である。さすがに露天はいささか寒いのでまずは内風呂で身体を温めてから露天へ。露天は頭がシャッキリして長湯ができる。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉とのこと。クセのない素直な湯で肌当たりも柔らかい。この数日の温泉巡りで身体の表面に皮膜でもできてきたのか、どことなく湯を弾くので肌当たりがサッパリとしている。

 露天(と言っても半地下みたいな雰囲気で眺望は皆無である)でゆったりとくつろぎながら、思わず「ああ、いいなぁ」という声が出る。ここ最近は本当にこんなにゆったりとくつろいだことがなかった。まさに命の洗濯である。しかしこれが終わったら、またあの慌ただしく神経を磨り減らす日常に戻るのかと思うと逃げ出したくなる気持ちもある。

 とりあえず思った以上に足にダメージが来ている。ここのところ連日1万歩レベルで歩いているので(今日は山形城周辺ウォークが効いた)足の太股が張っているし、また長時間運転の疲労は地味に腰に来ているので、足腰を中心によくほぐしておく。

 部屋に戻るとしばし原稿作成。昨日は疲労でダウンして全く文章をまとめられなかったが、ようやく少しは仕事ができる状態になってきたようである。とにかく仕上げるべきテキストが膨大にある。何かこれだから私は遊びの時の方が仕事みたいだと言われるんだが・・・。

気がつけば窓の外は夜桜に

 

 

夕食はすき焼き

 そうこうしている内に日が暮れて夕食の時間となったので、レストランに夕食に出向く。かみのやま温泉に夕食を摂る店がないことも考えて夕食付きプランにしてある。夕食はすき焼きである。なおコロナ対策で食堂に机は一列に並べてあり、家族連れも横一列で「家族ゲーム」状態である。

夕食

小鉢類

そしてすき焼き

 なかなかに美味い。ただこれは先日の肘折温泉でもあったが、やはり東北は基本的に味付けが塩っぱい。特にすき焼きの味付けにどうしてもそれが出るので、関西人の私にするとその辺りがやや残念なところ。肉は申し分なく良い肉なんだが。

 夕食を堪能すると部屋に戻ってまた作業。そして合間に再び入浴。そして疲れが出て来たところで就寝する。

 

 

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