GWの大阪へ出向く
この週末からGWということで民族大移動が起こりそうなところ。こういう時は私は家で静かにしておくに限ると思っていたのだが、関西フィルの定期公演が29日に開催されるとのことなので、出ていかないわけにはいかなくなった次第。ではどうせ出ていくなら大阪で一泊して、大阪や京都方面の未訪問の美術館訪問も併せようと考えた次第。
例によって大阪までは車で移動するが、今回は立ち寄り先が多いので、車を東梅田近郊に一日借りた駐車場に放り込むと、谷町線で移動することにする。今まで地下鉄も避けていたが、とにかく移動先が多いとそのたび駐車料金がバカにならないし、GWには大阪地区は逆に人口が減るのが常なので、昼時の谷町線がそんなに混雑しないだろうとの読み。実際に地下鉄内はガラガラとまでは言わないが、十分に余裕がある状況だった。
生憎の大雨なのでなるべく地下を移動しながら、最初に向かったのは天王寺のハルカス美術館。ここで開催されている「庵野秀明展」を見学しようという考え。行列でもできてたら嫌だなという考えがあったが、幸いにしてそこそこ混雑してはいたがそれほどでも。さすがに庵野秀明だとジブリ程の一般人へのアピールはないか(かつてジブリ展が開催されたときは、エレベーターの前から行列が出来ていた)。
「庵野秀明展」ハルカス美術館で6/19まで
エヴァンゲリオンで一躍一般人にまで名がとどろくことになった庵野秀明の原点からこれからを紹介する展覧会。
庵野はいわゆる特撮オタク少年だったということで、序盤はまるっきり特撮資料展。私には懐かしい作品が多いが、平成生まれの若者には訳が分からない可能性が高い。基本的に庵野と同世代の者なら理解はできるが、そうでない者はかなりオタク以外お呼びでない感じ。
そして特撮オタク少年はついには自ら作品を作成する。8ミリで撮影した伝説の顔出しウルトラマンの映像が登場する。ハンドメイド感満載だが、カメラワークなどにもう既に将来の庵野の特徴が現れているのに注目。また細かいギミックへのこだわりは既にこの頃から現れている。ハッキリ言ってゲテモノなのだが、思いのほか本気でしかも出来も良い。
また自ら絵を描くこともできた庵野はついにアニメーションの制作に乗り出す。ここで登場するのがこれまた伝説のDICONフィルム。あらゆる作品のパロディ満載のショートムービーである。これも細かい書き込みなどに庵野の作風が窺われるし、既にここでいわゆる板野サーカスも実践している。
その後は作画で参加した「風の谷のナウシカ」が登場。確かにあの巨神兵シーンには私は圧倒された記憶があり、庵野のことは全く知らなかったが、あのシーンのクオリティには感心したのを鮮明に覚えている。そして私が作画面では高評価しているが、ストーリー面において「結局何が言いたいのかが全く分からない」と評価の低い「オネアミスの翼」が登場。
さらに伝説となった「トップをねらえ!」ことガンバスターである。私はこの作品には強烈なインパクトを受け、この頃に雨後の筍のように登場していたOVAの中では群を抜いていると感じたものである。そしてこれも庵野の名をメジャーにした「ふしぎの海のナディア」につながる。
そして真打ちがエヴァンゲリオン。私が庵野秀明の名を認識したのはこの作品の時であり、そこで今まで強いインパクトを受けた作品がことごとく彼の手になるものだったことを知った次第である。絵コンテなどの資料が大量に展示されているので、マニアなら興味深いところだろうが、そっち系のマニアではない私にはフーンで終わり。
その後は突然に実写映画に走ったりなどの迷走期がある。エヴァの明らかに途中で逃げ出したと思える結論は当時もかなり叩かれて、庵野も精神的に追い詰められてアニメから遠ざかったのだという(庵野は常に作品のテーマよりも描きたいディテールが先にあって、それのために話を作るから、結局は話自体に結論をつけるのが極めて下手なのが最大の弱点と私は見ている)。
そしてその迷走の果てに特撮オタの原点に回帰したシン・ゴジラが登場、そして途中で放り出したエヴァにようやく30年越しで決着をつけるのである。
最後は今後ということで、例によっての趣味丸出しでシン・ウルトラマンとシン・仮面ライダーのプロモが登場。またもかなりディテールにこだわっているのが良く分かる作品である。
オタク少年が一流のクリエイターへと成長していく過程が良く分かる展覧会であり、なかなかに予想以上に興味深かった。クリエイターになりたい気持ちもありつも、それに十分な才能とそちらに進む勇気もなかった古い少年には、いろいろと考えさせられるところもあった展示でもある。ちなみに物販部門にも力を入れていたようだが、著作権絡みか「庵野秀明展」の文字を極太明朝でいれただけのグッズが大半で、果たしてこれはどうだが。
どうせサクッと眺めて終わりだろうと思ってたのだが、思っていた以上に見応えがあって、1時間以上と私の展覧会鑑賞としては異例の長さを要したことでスケジュールが狂ってきた。関西フィルはザ・シンフォニーホールで2時から開演なので、それを考えると立ち寄れて後1カ所が限度。結局は谷町線で移動して歴史博物館で開催されている展覧会に立ち寄ることに。ハルカスと違って地下で接続しておらず、建物の前で地上を歩く必要があるのが、こんな雨天には恨めしい。
「~浮世絵師たちが描く~ 絶景!滑稽!なにわ百景!」大阪歴史博物館で6/5まで
大阪を題材にした浮世絵を展示して、当時の大阪の風景や人々について観察しようということらしい。
最初に北斎や広重などの超メジャー画家の描いた大阪の風景が登場するが、メジャーどころはそこまで、後は比較的マイナーな画家による大阪の名所絵のようなものが登場。ただ大阪の地理に詳しい者なら興味も持てるんだろうが、大阪について詳しくない私にはフーンで終わり。驚いたのは天保山が一応山と言えるだけの高さがあったことぐらい。
後半はいわゆる「滑稽」シリーズになる。名所を舞台にしての登場人物の珍騒動を描いたシリーズで、いきなり乗馬が放尿を始めて微妙な表情の侍とか、着物の裾を踏んづけてすってんころりんする人物とか、いわゆる漫画である。当時のユーモアのコテコテのセンスが窺える。
最後は名所絵シリーズだが、いわば絵葉書のようなところがある。ここで異常なまでに建物の巨大さをデフォルメする歌川国員の絵がやけに印象に残ったのだが、この極端な表現はやはり幕末という時代が関係しているのだろうか。
展覧会の見学を終えた時には1時前になっていた。慌てて梅田に移動する。考えてみると、ここ数年は車でばかり来ていたせいで大阪駅の地下を歩くのは数年ぶりである。広い通路が出来ていたりなどかなり様変わりしていて面食らう。おかげで道に迷う羽目に。
また昼食は移動がてらにどこかでと思っていたのだが、頭にあった店がことごとく休みだったり閉鎖されていたりで、結局はそのまま開演30分前にザ・シンフォニーホールに到着してしまう。今からこの近辺で30分以内で昼食を終えることができる店に心当たりがないことから、諦めてまずはホールに入場してしまうことにする。
関西フィル第327回定期演奏会
[指揮]下野竜也
ドヴォルザーク:序曲三部作「自然と人生と愛」
「自然の中で」op.91
「謝肉祭」op.92
「オセロ」op.93
ドヴォルザーク:交響曲第6番 ニ長調 op.60
珍曲マニアとも言われる下野らしい一ひねりのあるプログラム。
前半はドヴォルザークの序曲三部作だが、「謝肉祭」以外は演奏頻度は決して高くはない曲である。しかし最初の「自然の中で」はドヴォルザークらしい魅力的な旋律あふれる美しい曲。それを下野は特製の高めの指揮台の上で低身長の全身を駆使しての大きな指揮でキビキビとした音楽を描き出す。
二曲目の「謝肉祭」は明るくて華やかな曲、さらに三曲目の「オセロ」はかなり劇的な要素を含んだ曲である。これらもグイグイとくる印象。下野は関西フィルからかなり元気な音を引き出している。
休憩後はドヴォルザークの第6番。これはこれでドヴォルザークらしさの溢れる興味深い曲なのであるが、やはり作品としての完成度は7番以降に比べると落ちるという感想を抱かざるを得ない。構成に甘いところがあるし、内容的に冗長に感じる部分が少なくない。下野はこの曲をしっかりとメリハリをつけて明確に描いており、関西フィルの演奏も切れの良いものであった。それだけにこの曲のネガティブな印象をかなり払拭するのには貢献しているが、それでもやはりラスト3曲に迫るものとまでは感じられなかったのも事実。
場内はなかなかに盛り上がっていたが、確かに演奏は非常に良かったと感じる。関西フィルのこういう派手さが正面に出た音色というのも珍しい気がしたし。なかなかに興味深いものを聞いたという印象である。
コンサートを終えるとガス欠気味なので、とにかく何かを腹に入れたいと思うが、ここでも頭にあった店はことごとく閉まっている。どうも今日は店に対する運がないようだ。仕方ないのでとりあずモスバーガーで一時的に間に合わせを腹に入れておく。
コンサートも終わったしこのままホテルに向かってもいいんだが、その前にもう一カ所だけ立ち寄りである。次はグランフロント大阪で開催中のバンクシー展を見学して行く。大阪駅周辺は人で溢れかえっている。もう知事自身が「コロナはないことに」と言い出している状況なので、世間は完全に緩みきっている。これはGW後の反動が恐い
「バンクシーって誰?展」グランフロント大阪で6/12まで
彗星のように現れて、一躍有名人となった謎のストリートアーティスト・バンクシー。彼の作品とその精神に迫る展覧会。
バンクシーの作品はその描かれた環境が重要であるだけに、一体どのような展示をするのだろうというのが実は一番の興味だったんだが、「まるで映画のセットのような展覧会」と銘打っているように、彼の作品が描かれた環境そのものを再現しての大規模な展示であった。
イラストレーターとしてのバンクシーの技量はまあ一般レベルだと思うのだが、やはりその風刺精神と神出鬼没の行動力が彼の最大の魅力であろうか。戦争に対する批判や、権力に対する皮肉と取れる作品などを、タイムリーに象徴的な場を選んで制作しており、そのセンスがもっとも魅力的なところである。
バンクシーは日本では最近になって急に注目を集め、一種の社会現象化している。昨シーズン放送されたアニメ「東京24区」なんかは、明らかにバンクシーを彷彿させるようなストリートアーティストを主要キャラの一人に設定していたりなど、その存在感がクローズアップされているところである(もっとも「東京24区」自体は、そのストリートアーティストというキャラの設定さえ十分に活かしきれないグダグダな作品になってしまったが)。ただこれに変な刺激を受けて、芸術性のない単なる落書きをしまくる輩も登場しているのは弊害ではあるが。
新今宮で宿泊する
これで今日の予定は終了である。車を拾いに東梅田に向かう道筋で映画館に立ち寄ってMETのムビチケを購入すると車を回収、宿泊ホテルに向かうことにする。今日は新今宮で宿泊である。
ホテルには30分もかからずに到着する。今日の宿泊ホテルは新今宮での私の定宿ホテル中央オアシスである。個室でトイレ風呂付、風呂がセパレートになっているのが最大の魅力。一泊3000円以下のホテルも存在するこの界隈では高級ホテルに属する。なお最近、星野リゾートがこの界隈に進出して、問題外クラスのホテルを建設したらしく、例によってのマスコミを総動員しての大宣伝がテレビでなされていたが、星野リゾートなど私と無縁の世界なのは言うまでもない。私にとってはやはり新今宮の高級ホテルと言えばホテル中央オアシスである。
車を駐車場に入れてチェックイン。部屋は例によってシンプル極まりない機能性の高い部屋である。
部屋に入ると早速仕事環境の構築。なおここのLAN環境は既にデバイスに入力されているので接続はスムーズに行われる。ただしiPadとの接続はうまくいかず。どうもネットの速度が速くないのがネックになってる模様。(結局は使用者が減ったのかLANの調子が良くなってきた夜に突然につながる。)
ジャンジャン横町に夕食に出かける
環境構築が出来たところで夕食のために外出することにする。向かうは数年ぶりのじゃんじゃん横町。既に人通りは通常モードに戻りつつあり、八重勝やてんぐの前には行列が。私は「だるま」に行くつもりだったが、だるまジャンジャン横町店にも十人以上の行列が。
そこでここよりも大きくて回転の速い動物園前店に行くことにする。私が到着した時には十数人が待っていたが、私の睨んだ通りに次々と捌けていって数分で入店できる。
店内はコロナ対策でアクリル板などがセットされており、二度付け禁止ソースは容器に入った形になっている。これは一つの文化の消滅でもある。まあ以前から衛生面はいろいろと言われていたから時代の流れと考えるしかなかろう。なお最近になって密かに政府が認めたコロナは空気感染するという話だったら、こんなアクリル板は気休めにもならないのだが・・・。まあ目の前で厨房の換気扇がガンガン回っているから、そちらの方を頼りにすることにしよう。
さて何を頼むかだが、セットの類を頼む手もあるが、そんなに好きでないものも含まれているので、やはり個別にアラカルトで注文することにする。メニューを片手にまず元祖串カツ2本、トントロ、トンカツ、鱧、タコ、キス、餅、うずら、アスパラ、ジャガイモ、レンコンの計12本にコーラをつける。
久しぶりの串カツであるが、からっと揚がっていて実に美味い。記憶にあるよりも意外とあっさりしていて軽い。最近は胃腸の調子が良くないので脂っこい串カツは無理かと思っていたのだが、案に反して普通に美味い。
12本を食べきったところでまだいくらか欲しい気もあるが、ここで串カツでの経験を思い出す。串カツはまだいくらか食べられるという状態で打ち切るのが吉。この後に追加したら後で間違いなく胸が悪くなるというのが経験則である。さっさと支払いを済ませることにする。以上で2000円ほど。まずまずのCPであり、これこそが新今宮。
串カツを食べ終わると本当は千成屋のミックスジュースが欲しいところだったが、残念ながら千成屋はコロナの影響か臨時閉店中。ハルカスに出店している千成屋フルーツパーラーは営業中とのことなので、もしかして高級店シフトを狙っているのか?
仕方ないのでファミマに立ち寄ってからホテルに戻る。
部屋に戻ると浴槽に湯を張って入浴。大浴場と違って手足を伸ばしてとはいかないが、洗い場付きの風呂で肩まで浸かれる水深に湯が張れるのが良い。これがユニットバスだと肩まで浸かるのは困難だし、何よりも便器見ながらの入浴は落ち着かん。また部屋風呂だからコンサートなどで帰還が遅い時にも時間を気にせず入浴できるのもメリット。
入浴してサッパリすると夜のお仕事(つまりはこれを書いている)で、この日も暮れていくのである。
遠征2日目(翌日)の記事