2日目は京都の美術館を回る
翌朝は7時前に目が覚める。起床するととりあえず体温が下がりきっている体を入浴で温める。体が温まると動けるようになるので、しばし原稿入力。
本来は朝食を取るべきなのだが、昨日に今日の朝食を購入するのを忘れていた。仕方ないので、朝食は思い出した時にすることにして(こういうパターンは大抵は結果的に朝食抜きになるのだが)、チェックアウトする。
今日は京都方面の美術展を見学するつもり。しかし車で行くとなると問題となるのは駐車場だ。今日は京セラ美術館や国立近代美術館のある東山地域を回るつもり。しかしこの辺りは駐車場は少ない上に価格相場が異常に高い。GWとなるとまず空きの駐車場を探すこと自体が絶望的な可能性が高い。
そこで対策としてはパーク&ライドを使用するつもりである。京阪浜大津の駐車場に車を置いて京阪で京都入りすると、パーク&ライド割引で1日駐車券が500円になる。地下鉄も京都駅の周辺は激混みの可能性が高いが、東山以東がそう混雑するとは思いにくい。
という辺りでプランを立てて京都に向かったのだが、GWは京都の手前で早くも牙を剥いてきた。何と京都東ICの出口辺りから大津までの間が渋滞とのことで、そこでしばし車が動かなくなる。私が予想していたよりも多くの観光客が京都に殺到している模様である。結局は浜大津へは予定よりも30分以上遅れて到着する。
浜大津駅の公共駐車場に車を置くと、東山までの京阪の切符を購入して、パーク&ライドの1日駐車券をゲット。そのまま京阪で東山に直行する。
東山界隈も異常に人が多い。おかげで私が昼食(というかそもそもまだ朝食も摂っていないのだが)を摂ろうと思っていた店は店外に長蛇の列。それどころか土産を買い求めようかと思っていた店まで長蛇の列。話にならないので美術館に直行することに。京セラ美術館に到着すると「ポンペイ展」と「兵馬俑展」の当日券を購入する。
「ポンペイ展」京セラ美術館で7/3まで
ヴェスヴィオス火山の突然の噴火で、それまで普通に生活していた状態で町ごと火山灰に埋もれて古代ローマ都市のタイムカプセルと化したポンペイ。18世紀以降になってこの悲劇の都市の発掘作業は進行し、多くの遺跡や生活用品、美術品などが発見されている。本展は膨大な遺物を収蔵するナポリ国立考古学博物館の所蔵品より、逸品を集めて展示したものである。
第一部は町の風景に関わるもの。ブロンズの鏡像や日常風景のフレスコ画、さらには見事な彫刻から水道バルブまで様々なものが展示されている。さすがにかなり技術レベルが高かったことが覗える。
第二部が市民の生活に纏わる品で、上流階級が用いていた豪華な食器やテーブル、装飾品から金庫まで展示されているが、奴隷の拘束具のような奴隷制社会であったことを示す品も存在している。その一方で、どんな階級の者にも死は等しく訪れるということを示す「メメント・モリ」を記したテーブル天板のようなものも存在する。
第三部は日常生活に密着した品で、ワインを貯蔵したツボや、さらには炭化した当時のパンまで見つかっている。まさに日常生活の場がそのまま埋まったことを示している。
第四部はポンペイの繁栄を示す豪邸の壁画やそこに存在した彫像など。富裕層はかなり立派な屋敷を構えていたようである。
第五部はポンペイの反対側に位置する都市で、やはり同じくヴェスビオス火山の噴火で溶岩に沈んだソンマ・ヴェスヴィアーナで発掘された彫像などを展示。要するにポンペイと同様の悲劇に直面した都市が他にもあると言うことである。
以上、ポンペイ展は今まで何度か見たことがあるが、今回の展示物は立派な彫像に見事なフレスコ画、モザイクなどが多く、かなり見応えのあるものであった。なお物販部門も例によって力が入っている模様。
ポンペイ展の見学を終えると続けて「兵馬俑展」に入場する。こちらの会場は2階である。
「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」京セラ美術館で5/22まで
兵馬俑展と言われているが、実際は兵馬俑のみならず秦漢文明に纏わる文物を広く展示している。最初は西の野蛮国と言われていたところから中国統一に及んだ秦帝国の文明を示す文物、主に青銅器の類いを展示してあり、素朴な辺境国から戦国最強の国へと進化したこの国の技術を示す。
次のコーナーが漢帝国に纏わる文物である。秦帝国に比べると技術も進んで洗練された部分もあるが、簡略化された部分もあるようである。秦帝国の等身大の兵馬俑に対し、漢帝国の兵馬俑は小さなものになっているのが興味深い。またハッキリと彩色されているものが多い。
後半は兵馬俑展示のコーナーとなり、ここからが撮影可能エリア。個性豊かな兵士の像に将軍像まで存在している。
兵馬俑については今まで何度か展覧会が行われているので、正直なところそう驚いたという感はない。また規模で言えば以前にあった展覧会でもっと大規模なものもあった。それよりも秦と漢のつながりを見せて、その相違を示すという観点の方が面白いところである。なお劉邦は楚の国の出身なので、秦と漢の違いには秦と楚の違いが反映しているとのこと。なるほど、そういうこともあったのかと納得。
そろそろ腹も減ってきたが、向かいの近代美術館に向かうことにする。ここは一階にレストランがあるので、展示を見る前に立ちよろうかと思ったが数人が店外にまで並んで待っている状態だったので諦めて展覧会の方へ。
「サロン!雅と俗-京の大家と知られざる大坂画壇」京都国立近代美術館で5/8まで
江戸時代、京都画壇では池大雅に与謝蕪村などの文人画家、さらには写生の円山応挙など多彩な画家が大活躍し、一方の大坂では町人の画家がサロンを形成して独自のネットワークを構築していたという。これらの画家たちの作品を展示。
前半の京都画壇については円山応挙に呉春、長沢芦雪などかなり馴染みのある画家の作品が展示されていてなかなかに楽しめる。相変わらす芦雪はなぜか楽しそうである。
一方の大坂画壇となると、やはり画家の知名度が低くなる。正直なところ浦上玉堂、田能村竹田、谷文晁あたりなら私でも何とか知ってはいるが、それ以外は全く聞いたことのない画家が少なくない。またかなりバラバラの展示なので各画家の個性を把握するところまでは及ばない。どうしても私のようなド素人には文人画の山水図の類いはどれも一緒に見えてしまうきらいがある。それよりもサロンでの交流を反映して、多くの画家による寄せ書きのような共作が多いののが特徴。その中にはまさに寄せ書きで各人がバラバラの画題で好きに書いているような作品もあるが、中には複数人の共作でありながら雰囲気の統一感があって一貫性のある作品なども存在し、その辺りが面白いところ。
江戸時代のこれらの交流がそのまま近代にもつながって、その流れを受けた画家として北野恒富などが現れるのだが、ここまで来るとようやく私のテリトリー。恒富の作品数点に島成園が1点。結局この辺りが私には一番無難に楽しめるところになってしまうようである。
館内のレストランで昼食
展覧会の見学を終えて降りてくると、ちょうどレストランの待ち客がはけていたところなので入店することにする。気分としてはパスタが欲しいところだったので、春パスタのタケノコとイカのスープパスタを注文する。
最初に前菜とパンが登場するが、このサラダが美味い。フルーツがアクセントになっていて実に爽やかである。
その後にメインのパスタが登場。具材はタケノコとイカに加えてサヤエンドウとアサリのようである。非常にあっさりしたパスタであり、スープパスタであることから和風ラーメンという趣。なかなかに優しい味が心地よく、タケノコの甘味が良く分かる。
最後はアイスセイロンティーを飲んで一服。これで大体2000円というのはCPとしてはしんどいところがあるが、そもそも京都で食事をする時にはCPを求めてはいけない。まずまず楽しめたらそれで良しとすべきだろう。それにそろそろガス欠で動けなくなりそうだったところである。
ようやく一息つくともう帰宅することにする。正直なところ美術館巡りは意外に歩くのでかなり疲労が来ている。今日はまだ7000歩ほどだが、昨日は大阪周辺を歩き回ったことで1万4000歩も歩いていてそのダメージは大きい。これ以上京都をウロウロしていたら帰りの体力が尽きる。それにまだコロナが沈静化からほど遠い状況で、完全に緩みきっている京都の町をウロウロするのも危険性が高い。
結局は東山から京阪で浜大津に戻ることにしたのである。京都の菓子店は帰りに覗いた時もまだ大行列だったので、京都での土産物購入は諦めて、大津で「三井寺力餅」を購入して帰ることにする。しかしこの店も店内は大混雑していて驚かされることになったのである。こりゃGW後にコロナの再爆発は必至ではという気がしてきた。結局はこの後、結構混雑している高速をヘロヘロになりながら長駆して帰宅と相成ったのである。
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