徒然草枕

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ベルリンフィルデジタルコンサートホールでストルゴールズによるブルックナー

ベルリンフィルデジタルコンサートホール

指揮:ヨン・ストルゴールズ
コントラバス:マシュー・マクドナルド

ニールセン 《ヘリオス》序曲
バリー コントラバス協奏曲「《ペトラ・フォン・カントの苦い涙》より」(財団法人ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団委嘱作品・初演)
ブルックナー 交響曲第6番イ長調

 指揮のヨン・ストルゴールズはベルリンフィル初登場。フィンランド出身の中堅指揮者。サロネン率いるスウェーデン放送交響楽団のコンサートマスターを務めた後、指揮法を学んで指揮者に転じたようである。2012年からBBCフィルの首席客演指揮者に就任しているという。

 一曲目のニールセンはなかなかに勇壮な曲という印象。ベルリンフィルの華々しい音色がなかなかに決まる。

 二曲目はアイルランドの現代作曲家ジェラルド・バリーの新作のコントラバス協奏曲。おどろおどろしく始まった曲は何かを語りかけてくるようなコントラバスの音色とオケが対話をしながら展開していくという印象。奇妙な曲ではあるが意外に旋律的。そういう点では聞きやすくはあるが、のんべんだらりと山場が分からない曲調なのでそれが私的にはややしんどい。

 なお昔、お喋りバイオリンというバイオリンで台詞を喋る芸を見たことがあるが、この曲のコントラバスも何か外国語を喋っているように聞こえて仕方ない場面が多々。そういう点でも奇妙な曲である。そして唐突に曲が終了。やはり残念ながら私にはよくわからない曲だった。

 

 

 後半のブルックナーについては、重厚に音色を重ねていくというよりも、もっと旋律的な部分を前面に出して錯綜させていくタイプの演奏。躍動感があって動的ではあるが、その分やや腰高に聞こえなくなくもない。だがその分、第二楽章なんかで美しさが前面に出てくる。ここでは非常に繊細な演奏を繰り広げている。ただいささか繊細すぎてややしんどさもある。

 第三楽章は「速くない」スケルッツオ。ストルゴールズの指揮はフォルテよりもピアノに特徴のあるような演奏。そして大団円の最終楽章だが、ストルゴールズの指揮はぶちかますというところはない。その辺りは品が良くまとまっているのだが、私のような真のブルックナーマニアと違う者にとっては、もっと派手派手にぶちかましてくれた方が楽しめるというのも本音である。

 全体を通しての印象はやけに繊細なブルックナーだなというもの。全体的に音量が1レベル低いように聞こえた。これはこれで1つのあり方だろうが、私はもっと力強く沸き上がってくるような演奏が好きなように思う。音量もテンポも終始抑え気味という感覚を受けた。


 フィンランドは最近になってかなり個性の強い若手指揮者が相次いで登場しているが、そういう俊英達に比べると手堅い中堅という印象の強い指揮者である。ただ手堅さが前に出すぎていて、今回を聞いただけではこれがストルゴールズの芸術というのが今ひとつ見えなかった感がある。